千葉地方裁判所 平成2年(行ウ)11号 判決
原告 三里塚芝山連合空港反対同盟
右代表者事務局長 北原鉱治
原告 吉川金廣
右原告両名訴訟代理人弁護士 葉山岳夫
同 高橋傭尚
同 古川勞
同 大口昭彦
同 一瀬敬一郎
同 久保田理子
同 辻惠
同 飯田正剛
同 荒木昭彦
右一瀬訴訟復代理人弁護士 川村理
被告 国
右代表者法務大臣 保岡興治
被告 運輸大臣 森田一
右両名指定代理人 小池充夫
同 根本実
同 上武光夫
同 酒井修
同 長田太
同 水嶋智
同 加藤琢二
同 三宅正寿
同 大沼俊之
同 北村朝一
被告 千葉県
右代表者知事 沼田武
右訴訟代理人弁護士 石川泰三
同 岡田暢雄
同 今西一男
同 三宅幹子
同 滝田裕
右指定代理人 平田健
同 宮崎理男
同 本間敏也
同 山田和彦
同 長谷川茂
同 椎名繁
同 鵜澤邦彦
同 山口雄一郎
同 宮内英治
同 和泉文衛
主文
一 原告らの被告運輸大臣に対する訴えをいずれも却下する。
二 原告らの被告国及び被告千葉県に対する請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告運輸大臣が平成二年三月一九日付けで別紙一物件目録一ないし四記載の各建物等(通称「木の根育苗ハウス」。以下「本件工作物」という。)に対してした除去処分(以下「本件除去処分」という。)を取り消す。
二 被告運輸大臣は、別紙一物件目録五記載の土地(以下「本件土地」という。)の占有を原告らに回復させるための命令、勧告等適切な措置を講ぜよ(以下「命令・勧告等措置請求」という。)。
三 被告国及び被告千葉県(以下「被告県」という。)は、連帯して、原告三里塚芝山連合空港反対同盟(以下「原告反対同盟」という。)に対し金三〇八万円、原告吉川金廣(以下「原告吉川」という。)に対し金一〇〇万円及び右各金員に対する平成二年三月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 前提となる事実(証拠の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)
1 当事者
(一) 原告反対同盟は、新東京国際空港(以下「成田空港」とも「新空港」ともいう。)の建設について反対する運動を展開することを目的として、空港予定地内及び周辺騒音地域の農民その他の住民により、昭和四一年七月一〇日に結成された権利能力なき社団であり、その後、現在まで新空港建設反対運動を展開している。
原告反対同盟の現在の代表者は北原鉱治(以下「北原」という。)である(原告代表者本人(一、二回))。
(二) 原告吉川は、昭和五四年夏ころから、原告反対同盟からの依頼に基づいて、本件工作物を管理し居住してきた(原告吉川本人及び原告代表者本人)。
(三) 被告運輸大臣は、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(以下「緊急措置法」という。なお、同法は、昭和五九年法律第八七号、昭和六二年法律第五二号、平成五年法律第八九号及び平成七年法律第九一号による各改正が行われているが、各改正箇所は、本件における争点と直接関係がないので、以下においては、後記各処分が決定又は執行された当時施行されていたものがいずれのものであるかの摘示は省略する。)三条一項、八項所定の権限により新空港およびその周辺の一定の規制区域内に所在する工作物等について除去処分を講ずる権限を有する。
2 本件工作物の建設及び被告運輸大臣による各処分
(一) 本件工作物の建設
(1) 本件土地は、緊急措置法二条三項所定の規制区域である新空港の範囲の外側三〇〇〇メートルの線までの区域内に存在しており、その登記簿上の所在地は千葉県成田市木の根字拓美一八四番二であり、面積は九九・三三平方メートルである(甲一一、乙二三二)。
(2) 別紙一物件目録一記載の工作物(以下「<1>建物」という。)は昭和五四年一月に、同目録二記載の工作物(以下「木櫓」という。)は昭和六二年三月に、同目録三記載の工作物(以下「鉄骨櫓」という。)及び同目録四記載の工作物(以下「<2>建物」という。)は昭和六三年七月にそれぞれ建設された(乙二三七の4、弁論の全趣旨)。
(3) 本件工作物は、本件除去処分当時には、本件土地上に存在していた。
(二) 本件除去処分の存在
(1) 被告運輸大臣は、平成元年九月一九日、本件工作物について緊急措置法三条一項一号所定の「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供されるおそれがあるとして、同日から同二年九月一八日までの間、同条項に基づき、右の用に供することを禁止する命令(以下「本件使用禁止命令」という。)を発した(乙二三三)。
(2) 原告反対同盟らは、平成元年一〇月四日、被告運輸大臣及び被告国を被告として、千葉地方裁判所に対して、本件工作物の使用禁止命令取消等請求訴訟(千葉地方裁判所平成元年(行ウ)第一二号)を提起した。
(3) 被告運輸大臣は、平成二年三月一九日午前六時一五分ころ、緊急措置法三条八項に基づき、本件工作物内に居る者に対し本件除去処分を通告して、その執行に着手し、同月二一日本件工作物の撤去を終了した。
(4) さらに、新東京国際空港公団(以下「空港公団」という。)は、本件土地を鉄パイプで囲い込んで、立入りを不可能にした。
3 千葉県警察本部(以下「千葉県警」という。)は、平成二年三月一九日から同月二〇日までの間に、本件工作物内にいた七名全員を、凶器準備集合罪、火炎びんの使用等の処罰に関する法律(以下「火炎びん法」という。)違反、公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕した(乙二七九、二八〇、弁論の全趣旨)。
二 原告らの主張
1 本件除去処分取消請求について
本件除去処分によって、空港公団による本件土地の不法占有という結果が発生したという因果関係が存在する以上、不当に占有を奪われた原告らと被告運輸大臣との間には明らかな紛争状態が現在しているというべきであって、原告らに訴えの利益が存することは明らかである。
2 命令・勧告等措置請求について
本件除去処分は、空港公団が被告運輸大臣の委任を受けて実施したものであるが、空港公団は、本件除去処分終了後、除去処分によって原告らの占有権が消滅したとして、現在、本件土地を不法に占有している。すなわち、空港公団は、受任者たる地位を奇貨として、原告らの占有を排除した後、ほしいままに本件土地を占有しているのである。
空港公団の右占有は、本件除去処分の違法性を継承し、その違法性に立脚して初めて獲得されたものであり、本件除去処分の違法性・違憲性の確認とその取消しによって当然廃棄されなければならないものであるところ、被告運輸大臣は、受任者たる空港公団が事務を適正に実施するよう監視・監督する義務があり、空港公団に受任者の地位を濫用する違法行為があった場合にはこれを是正し、被処分者の正当な権利行使を回復するに足りる相当な措置を講じる義務がある。
緊急措置法によれば、もともと本件除去処分の対象は、あくまでも「建築物その他の工作物」であって、その工作物の敷地(土地)ではない。ところが、本件除去処分の結果、空港公団が本件土地を排他的に占有するという事態が出現している。右の占有は、実際においては本件除去処分と一体としてなされたものである。
したがって、被告運輸大臣には、本件除去処分の取消しに関連するものとして、空港公団による前記のような本件土地占有につき、本来の占有者(原告ら)の占有回復に資する適切な措置をとるべき責務がある。
3 緊急措置法の違憲による本件除去処分の違法
緊急措置法は、以下の理由から違憲であり、したがって本件除去処分も違憲である。
(一) 憲法一九条違反
緊急措置法は、以下に述べるとおり、個人が成田空港建設に反対する思想をもつことを禁圧するものであり、憲法一九条に違反する。
第一に、緊急措置法上の工作物に対する使用禁止・封鎖・除去の行政処分の要件は、「暴力主義的破壊活動者」という行為者概念を中心に組み立てられている。しかし、右の「暴力主義的破壊活動者」は、本法の運用実務をみれば明らかなとおり、実際には成田空港建設に反対する考え方の持ち主を指している。
第二に、除去処分の場合には、暴力主義的破壊活動等にかかわる「おそれ」が著しいと認めたとき除去処分が発動されるようになっている。しかし右のような「おそれ」は、運用実務に明らかなとおり、工作物の日常的な使用も含めて認定されており、結局のところ、実際には成田空港建設に反対するという考え方に不利益を課すこととなっている。
第三に、緊急措置法の工作物は団結小屋を念頭にしたものであるが、団結小屋は成田空港反対運動に不可欠の存在である。したがって、本法の真の目的は、成田空港反対運動に不可欠の団結小屋を撤去することにより、支援者らを原告反対同盟から分断し、もって三里塚闘争そのものを禁圧するものである。
(二) 憲法二一条一項違反
緊急措置法三条一項一号は、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されまたは供されるおそれがあると認められることを使用禁止命令発動の条件とし、さらに同条六項は右禁止違反を封鎖の条件とし、なおかつ同条八項は代替手段がない場合に除去処分をするとして、態様に応じて段階的に規定している。
集会の目的を達成するための効果的な集会場所は、集会目的・内容に自ずと規定され、それゆえ、効果的な集会を実行しようとする者に対して、これを強権的に否定し場所的制限を強制することは、集会それ自体の否定である。殊に集会場所の除去処分は、それ自体集会日時・場所選択の自由の侵奪行為である。
集会の自由が、その場所の公共性を理由に制限されることがありうるとしても、およそ私的な建物内部での集会がそれ自体公共の安全や福祉を害し、あるいは害するおそれがあることはありえないのであり、私的な建物内部での集会に対し、公共の福祉を理由に何らかの制限をすること自体全く合理性を欠く。除去処分という建物自体の破壊は、当該建物でのおよそいかなる集会も不能ならしめる行為である。それ故に、何ら危険性のない集会をも必然禁圧するという過剰を招来させてしまう。建造物に対する除去処分は特定の集合禁止の実効性を担保する手段として、いかなる集会をも実現不能にするという意味で集合禁止目的に則しても合理的な処分ではなく、著しく過剰・逸脱しており、集会の自由を侵害する行為である。
よって、緊急措置法は、憲法二一条一項が保障する集会の自由を侵害するもので、違憲である。
(三) 憲法二二条一項違反
緊急措置法三条一項一号は、現に建物に居住している者の居住をも制限する適用を可能にするものである。また、同条八項の除去処分は、現に居住している者の居住の権利を全面的に奪うものである。しかも、本件では、原告吉川が昭和五四年以来一一年間居住し、生活してきた権利を剥奪したものである。
(四) 憲法二九条違反
緊急措置法三条一項及び同条八項は、何らの合理性のない財産権の制限処分であり、憲法二九条一項に違反する。
しかも、緊急措置法三条一項各号の「暴力主義的破壊活動者」、「妨害の用」及び「供されるおそれ」という曖昧な要件に関する認定を被告運輸大臣に委ねて財産権を侵害することを認めるもので、このような財産権の制限は、財産権が法律によってのみ制限されるという憲法二九条二項に違反する。
さらに、同条八項の除去処分は、その所有に係る建造物等の破壊という財産権侵害を受ける者への事前の告知・聴聞手続を欠く。このような財産権侵害は、憲法二九条一項、二項に違反する。
また、補償について、請求がなければ支払わなくても良いとされている点も憲法二九条三項に違反する。
(五) 憲法三一条、一三条違反
緊急措置法三条一項各号は、「暴力主義的破壊活動等」、「暴力主義的破壊活動者」、「妨害の用」及び「供されるおそれ」などと規定するが、右各要件は曖昧・不明確なものであり、また右曖昧・不明確な要件にもかかわらず、緊急措置法三条一項及び八項の各処分は、不利益処分を受ける建物の所有者、管理者及び占有者に対して、告知、弁解及び防御の機会を与える規定を欠くうえ、第三者機関の関与もなく、憲法三一条、一三条に違反する。
また、使用禁止命令の実現のために許される直接強制としての除去処分は、その必要性及び手段の相当性において比例原則に反しており、この点でも憲法三一条ないし一三条に違反する。
(六) 緊急措置法は、右のとおり憲法の諸規定に抵触するにもかかわらず、現行法秩序の破壊を意図して制定されたものであり、その目的と団結小屋の使用禁止等の措置との間には合理的な関連性がなく、かつ実質審理を欠如したものであるから違憲立法である。
4 適用違憲及び制限的合憲解釈
緊急措置法それ自体が違憲ではないとしても、本件除去処分は、次のとおり違憲である。
(一) 除去処分は、目的達成のため不可欠で、かつ、代替的な処分を追求した上で行われることが憲法二一条一項による保障の重要性から要請されるところ、本件除去処分は、右要件を逸脱してされたもので、違憲評価を受けるものである。
(二) 一貫して告知・聴聞手続を経ないで行われた本件除去処分は、憲法二九条一項、二項に違反する。
(三) 本件除去処分は、事実とは全く乖離した被告運輸大臣すなわち行政権力の恣意的認定によって行われたものであり、憲法三一条に違反する。
5 また、緊急措置法は、成田空港及びその機能に関連する施設の設置、管理の安全の確保を図ると共に、航空の安全に資することを目的とすると定められている(一条)が、昭和四一年七月五日公布施行された「新東京国際空港の位置を定める政令」および右政令を決定した同年七月四日の閣議決定は航空法三八条、三九条に違反し、かつ地元住民を無視、敵視したクーデター的なもので国民主権の原則に反すること、昭和四二年一月三〇日付けで右要件の欠如した成田空港についてなされた工事実施計画認可処分及び進入表面等の指定もまた違憲違法であること、昭和四四年一二月一六日になされた事業認定処分は、土地収用法二〇条一ないし四号に違反し違法であること、昭和四五年一二月二八日になされた新東京国際空港第一期工事にかかる特別措置法に基づく特定公共事業認定処分は、右事業認定処分の違法をそのまま引き継いだ違法な行政処分である上、右特別措置法自体、憲法二九条三項及び九二条に違反し違憲であるから、右処分も違憲であること、特別措置法二〇条四項は憲法三一条に違反するので、これに基づく千葉県収用委員会の緊急裁決は無効であり、したがって第二次代執行は違法な権力行使にほかならないこと等、成田空港は違憲、違法行為の累積の結果であり、これを保護するに値しないものであるから、緊急措置法はその保護法益自体違憲違法なものであり、緊急措置法に基づく各処分はいずれも無効である。
6 本件除去処分の違法性
本件除去処分は、以下のとおり、それ自体が要件を欠く違法なものである。
(一) 前提たる本件使用禁止命令の違法
(1) 緊急措置法三条一項は、「建築物その他の工作物について、その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるとき」その用に供することを禁止することができるとし、同項一号は、工作物が「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供されたこと、ないしは、供されるおそれがあると認められる事実が発生したことを要件としている。
ア 「暴力主義的破壊活動等」について
被告らは、後記のとおり、新東京国際空港の設置又は管理を阻害する緊急措置法二条一項各号に該当する行為として四類型に分類し、それに新空港又はその周辺における航空機の航行を妨害する緊急措置法二条一項各号に該当する行為を加えた五つの類型に該当する行為が緊急措置法二条一項の「暴力主義的破壊活動等」に該当するとする。しかし、第二類型ないし第四類型は、その対象が「新東京国際空港の機能を確保するために必要な施設」であるところ、緊急措置法二条一項で規定する政令が存在しない現在、これを「暴力主義的破壊活動等」に該当すると解することはできない。
イ 「暴力主義的破壊活動者」について
被告らは、暴力主義的破壊活動者とは、<1>暴力主義的破壊活動等の検挙歴を有するか否か、<2>暴力主義的破壊活動等を主張し、これを行う団体ないし組織集団(以下「セクト」ともいう。)に所属するか否か、<3>暴力主義的破壊活動等を主張し、これを行うセクトに所属する者と行動を共にする者であるか否かを重視して認定したという。
しかしながら、被告運輸大臣が本件工作物の出入り者と認定している三〇名中一四名につき、「暴力主義的破壊活動等」の第一類型として挙げられているものは、昭和六〇年一〇月二〇日の三里塚十字路事件だけであり、その他は「暴力主義的破壊活動等」には該当せず、しかも右事件も、集会デモ後の公務執行妨害罪などにすぎず、第一類型には該当しない。
また、本件工作物の出入り者の所属セクト又は行動を共にする者との認定根拠は、警察が認定したとするだけで具体的な理由は明らかにされていない。
ウ 「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」について
被告らは、緊急措置法三条一項一号にいう「多数」は二人以上を指すと解するが右解釈は不当な拡大解釈である。また、「集合」についても「暴力主義的破壊活動等に関連して」いればよいという解釈は間違っており、ここにいう集合は、立法者によれば、暴力主義的破壊活動者が集合して次の暴力主義的破壊活動に行動を起こす場合をいうことになる。また、「集合」は当然にも、同一時刻に一定程度の人数の者が集まることを必要としており、この点でも被告らの主張は間違っている。被告らの解釈では、すべての日常的一般的使用までが該当してしまうことになり、不当である。
また、被告らは、緊急措置法三条一項一号の「多数の暴力主義的破壊活動者の集合」については、<1>当該工作物の建設経緯、構造、外形及び使用の態様、<2>当該工作物に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属するセクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明及び実施状況、<3>当該工作物に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属するセクトの当該工作物に関連する暴力主義的破壊活動等の意思の表明状況及び実施状況を総合考慮して認定した旨主張するが、具体的認定になると、本件工作物が団結小屋であること及び反対運動の拠点として使用すると意思表明していることが「暴力主義的破壊活動等」との関連性があるといっているにすぎず、結局、原告反対同盟の集会への参加者が団結小屋に立ち寄ったことや、支援者が団結小屋に居住したり出入りしたりしていることをもって「集合の用」に供されていると認定しているのであって不当である。
(2) 本件工作物は、原告反対同盟が呼びかけて資金と労働力を募って建設したものであり、所有者である原告反対同盟から管理を委託されていた原告吉川にとってはその生活場所であったほか、木の根部落の稲の育苗のためのビニールハウス並びに管理小屋であり、また昭和五五年ころからは、農作物や家畜などの成育実験場所としても使用されていた。さらに木の根公民館が再建されるまで、木の根部落など原告反対同盟の寄り合いの場所であり、原告反対同盟の集会・会合の場所としても使用された。さらには、他の労働団体・住民団体等の現地調査、視察や援農の受け入れを行ってきた。
このように、本件工作物は、その所有が原告反対同盟に帰属するものであり、かつ使用状況が右のとおりであって、「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供された事実も存在しないのであるから、本件使用禁止命令は、緊急措置法三条一項一号に違反する違法なものである。
(3) 被告らは、本件使用禁止命令が緊急措置法三条一項の要件を充足していることについて、本件工作物が、緊急措置法二条三項の規制区域内に所在すること、本件工作物が異様な外観を有する工作物であること、本件工作物は中核派構成員が中心となり最盛時一九名を動員してプレハブ小屋等の建設を行ったこと、本件工作物には、建設直後の昭和五四年一月一二日から中核派構成員三名が常駐を開始し、平成元年七月四日現在で原告吉川の常駐が確認され、暴力主義的破壊活動者である中核派構成員等三〇名の出入りが確認されていること、本件工作物が中核派の新東京国際空港設置反対闘争の集会・デモへの出撃拠点として使用され、三里塚闘争支援連絡会議主催による二期工事実力阻止現地闘争のデモ出撃拠点として使用されていること等の事実を挙げている。
しかし、右事実によっても「暴力主義的破壊活動」のための集合に本件工作物を使用したとはいえないし、そのおそれの理由にすらならない。
なぜならば、右(2) で述べたとおり、成田空港反対闘争に参加している者が本件工作物に居住していることや本件工作物において集会を行うことは、まさに本件工作物の一般的使用に該当するものであり、「暴力主義的破壊活動に関連して行う集合」とはいえず、したがって、これを本件使用禁止命令の理由とすることはできないからである。
さらに被告らは、千葉県警の捜索・差押えが本件工作物になされたことを掲げるが、捜索の結果、被疑事件に関する証拠は何一つ存在しなかったことが確認されており、捜索の実施は、「暴力主義的破壊活動に使用されるおそれ」の裏付けには到底ならない。
(二) 本件除去処分自体の違法
(1) 被告らは、本件使用禁止命令に引き続き、平成二年三月一九日、本件除去処分を通告して右処分を行ったが、そもそも前記(一)のとおり、前提となる本件使用禁止命令が違法である以上、本件除去処分も違法である。
(2) 本件除去処分は、その発出要件を満たしておらず違法である。
ア 被告らは、本件除去処分の発出理由について、<1>中核派の者一名が常駐するほか、平成二年一月二八日ころから過激派集団各派の者及び過激派集団の構成員とみられる者四名合計六名が新たに本件工作物に入り、籠城を開始したこと、<2>平成二年二月三日には、本件工作物の鉄骨櫓の上から発煙筒様の物一本を警察車両に向けて投てきなどしたことを挙げている。
イ しかし、本件除去処分は、事前に通知もされず、告知・聴聞の機会も与えられていない。このため、その場に居合わせた者が不当な行政処分に抗議・抵抗することは国民の抵抗権の範囲に入る当然の権利といわなければならない。しかも、平成二年一月九日付けサンケイ新聞には「団結小屋三か所に封鎖命令」と題して、運輸省が本件工作物を含む三か所の団結小屋に封鎖・退去命令を適用する方針を固めたと報道された。そして、その直後の一月一六日に天神峰現地闘争本部に抜き打ちでの封鎖処分が発出された。一月末には本件工作物の周辺の整地が終了し、いつ封鎖・除去されるかもしれない状況に入っていた。一月末時点では、被告運輸大臣は、抜き打ちで即座に本件工作物を破壊する意図を顕にしているため、住居に供している本件工作物を守ろうとすることは至極当然の行為であった。もし、紛争を回避しようとすれば、少なくともあらかじめ告知・聴聞の機会を所有者に与えなければならない。このような当然の抵抗を理由として、本件除去処分が発出されることは憲法上許されないし、緊急措置法三条八項の規定にも反している。
ウ 緊急措置法三条八項は、除去処分の要件について、同条一項や同条六項よりもより多くの要件を定めている。
すなわち、緊急措置法三条八項の除去処分は、
(ア) 「第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されている場合」
(イ) 「当該工作物の現在又は既往の使用状況、周辺の状況その他諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ」るとき
(ウ) 「他の手段によっては同項の禁止命令の履行を確保することができないと認められるとき」
(エ) 「第一条の目的を達成するため特に必要があると認められるとき」
の四つの要件をすべて満たしているときに限り発出できると規定する。前述した右<1><2>の事実が右(ア)ないし(エ)の本件除去処分の発出要件すべてに該当するのかどうかを検討すると、<2>の事実は本件工作物の除去策動に対する抵抗の範囲のことであり、かつ成田空港に対する攻撃とは異質の事件であり(ア)には該当しない。また(ウ)にも該当しない。現在、空港公団は不当に本件土地を囲い込み、立ち入ることが不可能となっており、封鎖処分では不十分だという理由はまったくない。被告運輸大臣は、はじめから本件工作物の除去を意図していたものであり、右<1><2>の事実もこじつけのための理由にすぎなく、「本件工作物はC滑走路予定地内にあ」ることが真の理由であり、不当極まりない。
(3) 除去処分に名を借りた空港反対運動への暴力的弾圧
次に述べるとおり、本件除去処分の経緯と被告運輸大臣の準備状況に鑑みれば、平成二年三月一九日から二〇日にかけて行われた行為は、緊急措置法に基づく除去処分の執行行為ではなく、単に除去を名目とした国家的暴力行為に外ならず、違法であることは明らかである。
ア 本件除去処分の準備状況
第一期(平成二年一月中旬ないし下旬)
平成二年一月九日付けサンケイ新聞、そして一月一三日付け千葉日報にそれぞれ掲載された記事には、二期工事予定敷地内に残る三か所の団結小屋(天神峰現地闘争本部、木の根育苗ハウス、横堀団結小屋)を事実上撤去するために治安法「封鎖処分」をかける方針であるとの運輸省・空港公団の動きが伝えられ、同月一六、一七日には天神峰現地闘争本部に対し、実際に封鎖処分がなされた。
同月一八日、空港公団と工事業者により本件工作物南西部にある一坪共有地の周囲が赤いビニールひもで囲まれた(これは除去時に誤って一坪共有地をつぶしてしまわないための用意である。)。
その後、空港公団は、この一坪共有地の近辺、即ち本件工作物に直に接する公団用地の測量を行った。同月二〇日には、右箇所にブルドーザーが入り、草や立木の生えている表土をはぎ取った。そして、同月二三日、右個所には、空港公団と工事業者によって、多量の砂利が運び込まれ、右近辺一帯が造成された。
第二期(平成二年二月上旬ないし三月上旬)
同年二月になると、運輸省、空港公団及び警察による本件工作物破壊のための協議が数回にわたり開かれた。
同月上旬、空港公団と工事業者によって、本件工作物南東部に置かれていた二期工事用ビニール管がどこかへ持ち去られ、跡地は更地となった。同時期、空港公団と工事業者によって、本件工作物南東部の工事用道路の脇に砂利が多量に運び込まれ、機動隊並びに私服警察官らの駐車場が造成された。
同月四、五日ころには、本件工作物南東部において私服警察官が二四時間監視を始めていることが確認された。
さらに、同日ころ、本件工作物と外界を結ぶたった一本の道につき、木の根バス停において機動隊が封鎖し、二四時間の検問体制に入った。そして、原告反対同盟婦人行動隊の差入れについても、機動隊の不当検問が繰り返されるようになった。
同月一〇日ころ、警察によって、本件工作物南東部の約八〇メートルしか離れていない至近の公団用地にC-1と呼称される監視櫓が完成し、夜間もサーチライトが本件工作物に向けて照射された。
同月中旬ころには、空港公団と工事業者によって、本件工作物東部の金網フェンスの奥側が長方形に掘削され、プールのような形の穴(貯水池)が掘られた。
第三期(平成二年三月一〇日ないし一八日)
同年三月一〇日ころ、空港公団、工事業者、警察によって、本件工作物南東部の砂利造成の権力用駐車場が拡張された。同日ころ、空港公団と工事業者によって、本件工作物東部のプール様穴に大きな黒いビニール(一枚に加工してあるもの)が敷きつめられ、完全にプール様になった。また、プールの脇(直近)に大型ポンプのようなものが設置された。さらにプールの東側にホースが入れられ、このホースは横堀の調整池と直結された。そして、プールには水が入れられた。
同月一〇日ないし一五日ころ、工事業者によって、資材道路からC-1櫓へ向け、また資材道路から木の根機動隊駐車場に向け、計六本ほどの電柱が建てられた。
同月一五日ころ、空港公団と工事業者によって、木の根機動隊駐車場からハウスへ向け一直線に(資材道路を横断して)進入路が造成された。
同月一五日ないし一六日ころ、本件工作物南部、C-1櫓横に放水用タンク一〇基くらいが搬入され、プールとホースで直結された。また、空港公団によって、本件工作物西部の仮置土、北半分の土が搬出され、跡は平らな更地となった。
同月一六日ころ、空港公団によって、プレハブ事務所が搬入された。さらに、空港公団によって、木の根機動隊駐車場に鳥かご一個が搬入されて、周囲に金網が張り巡らされた。同月一六日ないし一八日にかけては、クレーンやショベルカーなどの重機多数が次々と運び込まれた。また、空港公団と工事業者によって、C-1櫓から本件工作物南部に向け道路が延伸(砂利で造成)され、さらにプール、C-1櫓、タンクにかけての一帯が造成され、砂利の山も数個作られると共に、鉄板約四〇枚が搬入された。
同月一七日ないし一八日、空港公団によって、本件工作物南西部の道のバラ線の一画に赤いペンキで印がつけられた。
イ 本件除去処分の経緯
本件工作物に対しては、封鎖措置は経ず、いきなり除去と称する建物破壊・土地強奪行為が行われた。
本件工作物に対する除去処分の執行は、全国から六五〇〇名の警察機動隊を動員し、超厳戒態勢ともいうべき中で、平成二年三月一九日未明から強行された。
早朝午前五時過ぎ、本件工作物は、多数の警察機動隊と多数の大型重機等で重包囲された。大型クレーン車五台、高圧放水車六台、パワーショベル、装甲ユンボ、櫓破壊用ゴンドラ、ブルドーザー、高所放水車、大型カッターそして、円形ゲージ等が導入され、本件工作物及び中にいる者に対して襲いかかった。
高圧放水は、除去処分通告と前後した一九日早朝から始まった。警察機動隊は、四方から一斉に高圧放水を浴びせ、一回の放水は二〇分ないしそれ以上にも及んだ。それが、一九日日没まで断続的に強行され、二〇日には、三、四台の放水車が穴の中にいる人間に向かって至近距離から下方へ叩き付ける集中攻撃を行い、身体に受けた者は、床に叩き付けられたため、むち打ち状態に陥った。高圧放水は一〇気圧ともいわれ、人体を横に直撃した場合、人体は吹き飛ばされて高さ一〇数メートルの鉄骨櫓から叩き落とされる程の威力を有していた。高圧放水を集中的に浴びた者らは、苦痛により気絶寸前にまで陥った。
さらに、「鳥かご」と通称される重さ五トンもの鉄製円形ゲージを鉄骨櫓にすっぽりと被せ、そこに四方から放水を集中し、中の者を窒息状態に陥らせるという危険な攻撃も行われた。
そして、機動隊は、木製合板小屋を破壊するや、至近距離からの人体めがけた四方からの高圧放水の集中攻撃を続け、中の者たちは、数一〇分も続く集中放水のため、呼吸も困難なほどの窒息状態になった。中の者を放水で衰弱し切らせ、それを見計らって放水を止め、それと同時に、一五名の機動隊員が上から飛びかかり、鉄棒で突く、ジュラルミンの楯で殴る等の暴行をほしいままに行い、右七名を逮捕した。
7 以上のとおり、被告運輸大臣及び千葉県警は共謀して、違憲・違法な本件除去処分を計画・実行して、原告らに対し以下の損害を加えたものであるから国家賠償法一条一項に基づいて第一請求の三記載の損害賠償を求める。
(一) 原告反対同盟 三〇八万円
(1) 物損 二〇八万円
原告反対同盟は、本件工作物の人件費・材料費等について次の合計二〇八万円の損害を被った。
ア <1>建物につき六〇万円
右工作物は、建築につき、人件費として一人一日五〇〇〇円の日当として一〇人で二日分の計一〇万円を要する。また、その材料費として五〇万円を要する。
イ 木櫓につき四〇万円
右工作物は、建築につき、人件費として一人一日五〇〇〇円の日当として五人で八日分の計二〇万円を要する。また、その材料費として二〇万円を要する。
ウ 鉄骨櫓につき一〇〇万円
右工作物は、建築につき、人件費として一人一日五〇〇〇円の日当として二〇人で二日分の計二〇万円を要する。また、その材料費として八〇万円を要する。
エ <2>建物につき八万円
右工作物は、建築につき、人件費として一人一日五〇〇〇円の日当として一人で六日分の計三万円を要する。また、その材料費として五万円を要する。
(2) 無形的損害 一〇〇万円
本件工作物は、原告反対同盟が建設して以来、全国の幅広い支持者・支援者から「木の根育苗ハウス」と呼称され、原告反対同盟も集会への使用をはじめ、農作物の実験場として機能させてきた。
本件除去処分は、建物等の破壊行為であり、原告反対同盟は、被告運輸大臣及び千葉県警の違法な本件除去処分によって、本件工作物の所有権を奪われた。
本件工作物の喪失によって原告反対同盟の被った反対運動の阻害・干渉・妨害の無形的損害は、一〇〇万円を下らない。
(二) 原告吉川 一〇〇万円
原告吉川は、原告反対同盟から本件工作物の管理を委任されて、ここに居住し管理に専念してきた。しかし、本件工作物が被告らによって違法に破壊されたため、居住が不能となり、同人の活動の拠点を失った。右事実に基づく無形的損害は、一〇〇万円を下らない。
8 また、原告反対同盟は本件工作物の所有者であり、原告吉川は本件工作物の管理者であるところ、本件除去処分によって、右7のとおりの損害を被ったものであるから、予備的に、憲法二九条三項に基づいて第一請求の三記載の金額の損失補償を求める。
三 被告国及び被告運輸大臣の主張
1 本案前の申立て
(一) 本件除去処分取消請求について
原告らの本件除去処分の取消しを求める訴えは、訴えの利益がなく、不適法である。
本件では平成二年三月二一日までに本件工作物の除去行為が終了しており、紛争の本質的要素である本件工作物そのものが除去の執行によって既に存在しない以上、もはや取消判決を受けて回復すべき法益は存しないといわざるを得ず、したがって訴えの利益がないというべきである。
(二) 命令・勧告等措置請求について
原告らの命令・勧告等措置請求の訴えは、無名抗告訴訟のうちの義務付け訴訟と解されるところ、そもそも被告運輸大臣は、空港公団に対し、原告らに占有を回復せしめる命令・勧告等を発し得る権限が法律上与えられておらず、したがって、被告運輸大臣がかかる命令・勧告等をなすべきことについて法律上羈束されるということもあり得ず、原告らの右訴えは義務付け訴訟の要件を欠き不適法である。
なお、本件工作物の除去処分とその後の本件土地の占有は、別個の主体による別個の法律的根拠に基づく行為であるから、原告の主張するように一体性があるとはいえない。
2 緊急措置法の合憲性について
緊急措置法三条一項一号及び同条八項は、憲法一九条、二一条一項、二二条一項、二九条一項、二項、三一条及び一三条に違反しない。また、緊急措置法三条六項に関する主張は、本件とは無関係であるから失当である。
3 本件除去処分の適法性
本件使用禁止命令は、緊急措置法三条一項一号の要件を満たし適法なものであり、右処分を前提とした本件除去処分もまた同八項の要件を満たし適法である。
(一) 新空港開港及び緊急措置法制定に至る経緯
(1) 新空港は、昭和四一年七月四日の閣議決定によりその建設が決定されたものであり、当時、東京国際空港(羽田空港)においては、我が国の経済成長と所得水準の向上を反映した旅客需要の伸びと発着回数の増加傾向がそのまま推移すれば、昭和四五年ころにはその処理能力が限界に達すると予想され、これに対処するため、新空港の緊急なる設置及び能率的管理によって航空輸送の進展に対応し、もって諸外国との政治的、経済的、文化的な交流の維持促進による我が国の国際的地位の向上に貢献することを目的としたものであった。右閣議決定を受けて昭和四一年一二月一二日に策定された基本計画は、おおむね昭和四五年度末までに、四〇〇〇メートル級の長さの滑走路及びこれに対応する諸施設の工事完成を予定し、昭和四八年度末を目途として、面積一〇六〇ヘクタールに滑走路三本及び諸施設による空港を完成させるというものであった。しかし、新空港は、国民の間に一日も早い開港を待ち望まれながら、用地取得問題、後記の過激派集団による反対運動等により開港が大幅に遅れ、ようやく、被告運輸大臣は、昭和五二年一一月二八日、新空港の供用開始日を昭和五三年三月三〇日とする旨の告示を行い、以後関係各方面において開港のための最終的準備が進められた。
(2) ところが、既に昭和四三年ころから、新空港建設断固実力阻止を標ぼうしていた革命的共産主義者同盟全国委員会(以下「中核派」という。)、戦旗・共産主義者同盟(以下「戦旗荒派」という。)、革命的労働者協会(以下「革労協」という。)、共産主義者同盟戦旗両川派(以下「戦旗両川派」という。)、日本革命的共産主義者同盟(第四インターナショナル日本支部。以下「第四インター」という。)、プロレタリア青年同盟全国協議会(以下「プロ青同」という。)などの過激派集団は、新空港周辺地域において、いわゆる団結小屋、団結砦等を設け、これらを拠点として暴力主義的な破壊活動を繰り返し、右告示の供用開始日直前の昭和五三年三月二六日、第四インター、戦旗荒派、プロ青同所属の約五〇〇名が、新空港内に火炎車を突入させると共に新空港内に乱入して火炎びんを投てきするなどした上、新空港の中枢部である管制塔内に乱入して管制機器を破壊し、空港の機能を失わせた(以下「管制塔襲撃事件」という。)ため、同月三〇日に予定されていた新空港の開港は延期のやむなきに至った。
(3) 過激派集団の行為による右のような事態に対し、政府は、同月二八日、「このような暴挙は、…法と秩序の破壊であり、民主主義体制そのものに対する重大な挑戦であって、断じて許すことはできない。政府は、この際極左暴力集団の徹底的検挙・取締りのため断固たる措置をとることとし、開港後を含めた長期警備体制の一層の強化を図るとともに、管制塔をはじめ空港を不法な暴力から完全に防護するため更に空港施設の整備を図る等各般にわたる抜本的対策を強力に押し進める決意である。」旨の異例の声明を発した。また、国会は、衆議院においては同年四月六日全会一致で、参議院においては同月一〇日全党一致で、「新東京国際空港問題に関する決議」をそれぞれ採択し、国民を代表して過激派集団の暴力を非難する意思を明らかにした。
(4) そして、政府は、右国会両院の決議を受け、全力を傾けて新空港の安全を図るための措置を講ずることに努めることとし、被告運輸大臣が、右過激派集団によって破壊された管制機器修復、新空港の安全確保措置の実現見込み等を勘案し、同月七日付け告示をもって、改めて新空港の供用開始日を同年五月二〇日とした。他方、国会においても前記のような異常な事態に対処し、新空港若しくはその機能に関連する施設の設置若しくは管理を阻害し、又は、新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する暴力主義的破壊活動を防止するため、その活動の用に供される工作物の使用禁止等の措置を定め、もって新空港及びその機能に関連する施設の設置及び管理の安全の確保を図るとともに航行の安全に資することを目的として、議員提案による緊急措置法を成立させ、同法は同年五月一三日施行された。
(二) 緊急措置法三条一項一号の要件充足性の判断基準
(1) 暴力主義的破壊活動等の定義について
緊急措置法二条一項によれば、「暴力主義的破壊活動等」とは、新空港若しくは新空港における航空機の離陸若しくは着陸の安全を確保するために必要な航空保安施設(以下「航空保安施設」という。)若しくは新空港の機能を確保するために必要な施設(以下「機能確保施設」という。)のうち政令で定めるものの設置若しくは管理を阻害し、又は新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する同項各号に掲げる一定の行為をすることをいう旨定められている。
そして、被告運輸大臣が認定した暴力主義的破壊活動等を行為の類型で分類すると、新空港の設置若しくは管理を阻害する緊急措置法二条一項各号に該当する行為として、<1>滑走路、エプロン、管制塔、ターミナルビル、空港管理ビル等の新空港告示区域(航空法四〇条)内の施設及び航空保安施設に対する右各号該当行為(以下「第一類型」という。)、<2>パイプライン施設、鉄道、道路等の輸送施設、上下水道施設、用水路等の機能確保施設及びこれらの施設の管理者、同職員等に対する右各号該当行為(以下「第二類型」という。)、<3>運輸省、空港公団、千葉県及び警察機関等の施設並びにこれらの施設等の管理者、同職員等に対する右各号該当行為(以下「第三類型」という。)、<4>新空港及び新空港に密接に関連する施設の設置に関係する業務を行う建設会社等の施設等及びこれらの施設等の管理者、同職員等に対する右各号該当行為(以下「第四類型」という。)が挙げられ、新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する緊急措置法二条一項各号に該当する行為(以下「第五類型」という。)を加えた五類型となる。
原告らは、緊急措置法二条一項の政令が定められていない以上、同項に基づく暴力主義的破壊活動等とは、新空港の設置若しくは管理を阻害する行為と、新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する行為に限られるとして暴力主義的破壊活動等を制限的に解するようであるが、仮に前記<2>ないし<4>が暴力主義的破壊活動等の概念からはずれるとしても、後記のとおり、本件各処分の合憲性及び適法性に何ら影響を及ぼすものではない。
(2) 暴力主義的破壊活動者の定義について
緊急措置法二条二項に定める「暴力主義的破壊活動等を行う者」とは、現に暴力主義的破壊活動等を行っている者をいい、「暴力主義的破壊活動等を行うおそれのある者」とは、「暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高い者」をいうところ、ある者が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高いか否かは、その者及びその者が所属するなどしている団体の平素の活動状況並びに過去の活動状況等から総合的に判断する必要があることはいうまでもないが、被告運輸大臣がとりわけ重視した事項は、<1>暴力主義的破壊活動等の検挙歴を有する者かどうか、<2>暴力主義的破壊活動等を主張し、これを行う団体(セクト)に所属する者かどうか、<3>暴力主義的破壊活動等を主張し、これを行う団体(セクト)に所属する者と行動を共にする者かどうかという点である。
原告らは、前述のとおり暴力主義的破壊活動等とは新空港の設置及び管理を阻害する同法二条一項各号に定める行為及び新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する同項各号に定める行為に限られるべきである(具体的には、第一、第五類型に対するものだけが暴力主義的破壊活動等にあたる。)と主張するようであるが、仮に百歩譲って、暴力主義的破壊活動等の定義が原告らの主張するとおりのものであるとしても、本件においては、以下の理由から、前述の暴力主義的破壊活動者の認定に何らの影響を及ぼすものではないことは明らかである。
すなわち、原告反対同盟を支援する中核派、戦旗両川派、革労協及び共産主義者同盟蜂起派(以下「蜂起派」という。)は、新空港を武装闘争などの実力行使の方法で廃港に追い込むという基本的姿勢ないし運動方針を機関紙等で宣明した上、右方針の下に反対闘争を繰り広げ、中核派、戦旗両川派及び革労協は、その闘争の一環として直接に新空港の設置若しくは管理を阻害する暴力主義的破壊活動等を行っているほか、新空港以外の空港関連諸施設等(前記第二ないし第四類型にあたる。)に対するゲリラ行為、又は新空港反対闘争に関連した違法行為を繰り返している。
そして、直接に新空港の設置若しくは管理を阻害する暴力主義的破壊活動等を行ったことが、その将来において同様の暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高いと認定する有力な判断材料となることはもちろんであるが、右新空港関連諸施設等に対するゲリラ行為や新空港反対闘争に関連した違法行為についても、同様に、右蓋然性の有無を判断する上で有力かつ重要な判断材料となり得るものである。なぜなら、当該過激派集団による右新空港関連諸施設等に対する違法行為も、結局は、新空港を実力で廃港に追い込むという右集団独自の基本的姿勢ないし運動方針に基づくものであって、そこに貫かれた考え方において、右違法行為の対象が、新空港そのものであるのか、それとも新空港以外の関連諸施設等であるのかによって異なるものでないことは明白であり、右集団が右新空港関連諸施設等に対してのみ違法行為を行い、新空港に対しては違法行為を行わないことを窺わせる事情は何ら認められない。
したがって、緊急措置法二条一項各号に定める行為が、過激派集団が反対闘争の一環として当該集団の新空港に対する基本的姿勢ないし運動方針に基づき、新空港関連諸施設等に対して行われた場合には、仮に原告らが主張するように、その行為そのものは暴力主義的破壊活動等には該当しないと解釈するとしても、これらの行為が行われたことにより、その将来において直接に新空港の設置若しくは管理を阻害する右各号記載の行為を行う蓋然性が高いと判断することには十分な合理性が認められる。したがって、右事情を蓋然性判断の材料とすることに何ら違法はないというべきであり、結局、原告らの暴力主義的破壊活動等の定義に関する理によっても、前述の暴力主義的破壊活動者の認定をすることの妨げとはならず、右認定ひいては緊急措置法三条一項一号の要件充足性には何らの影響も与えるものでないことは明らかであるといわざるを得ないのである。
(3) 「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」の定義について
当該工作物が、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供され、又は供される蓋然性が高いと認められるか否かを判断するに当たっては、当該集合が暴力主義的破壊活動等に関連して行われたか否か、すなわち集合の目的・内容等は直接的な要件とされていないのであって、客観的に当該工作物が右集合の用に現に供され、又は供される蓋然性が高いと認められれば足りると解すべきである。
そして、具体的には、被告運輸大臣は、<1>当該工作物の建設経緯、構造、外形が日常生活を行うためのものとは通常認められず、暴力主義的破壊活動等を行う闘争の拠点たる性格を有するものであるか否か、また、その使用態様において、実際に多数の暴力主義的破壊活動者が常駐ないし出入りし、暴力主義的破壊活動等を主張する集会への出発拠点や機関紙の発行拠点等として使用されているか否か、<2>常駐ないし出入りしている者が所属する過激派集団が、これまで暴力主義的破壊活動等を実施することを数多く主張し、また実際に暴力主義的破壊活動等を実施しているか否か、<3>右過激派集団が機関紙等において、当該工作物を暴力主義的破壊活動等の拠点(要塞化、砦化など)とする、使用禁止命令に反発して当該工作物を死守する等の挑戦的な意思を表明し、その具体化として工作物を要塞化したり、当該工作物への緊急措置法適用に反発して暴力主義的破壊活動等を行ったか否か等の事情を総合考量して、当該集合が暴力主義的破壊活動等に関連して行われたか否かを判断したのである。
(4) 過激派集団による暴力主義的破壊活動等と使用禁止命令との関連性について
原告反対同盟を支援する過激派集団である各セクトは、昭和四六年ころ、各セクトの連絡調整機関として「三里塚闘争支援連絡会議」(以下「三支連」という。)を発足させたが、その後、昭和五八年三月に右同盟が北原派と熱田派に分裂したことに伴い、三支連も右同盟各派の支援セクトごとに別々に構成され、現在に至っている。すなわち、原告反対同盟北原派を支援し、三支連を構成する過激派集団は、中核派、革労協、戦旗両川派及び蜂起派の四セクトであり、その運営には、現地常駐最大セクトである中核派が主導権を握っており、新空港反対闘争に伴う各種現地小規模集会においても、中核派に所属する岸上雅博が同会議の代表となって集会・デモの届出を行っている。
右三支連は、月一回程度の会議を開催して現地に常駐する右各セクトの連絡調整を行っているほか、昭和六二年三月に成田用水工事が完了した後は、活動の重点を二期工事用地内に移すと共に、「用地内同盟切り崩し攻撃粉砕」等を目的として、「二期工事実力阻止現地闘争」を中心とした取り組みを一層強化し、右各セクト総計一〇名前後が参加して連日にわたって集会・デモを実施している。
以上のとおり、原告反対同盟を支援する中核派、革労協、戦旗両川派及び蜂起派の各セクトは、武装闘争により空港を廃港に追い込むとの共通の目標の下に三支連を結成し、これを通じて共闘関係を保っているのであるから、被告運輸大臣が本件各処分の要件充足性を、本件工作物を常駐拠点とする中核派の動向を基本とした上、本件工作物に出入りが認められる戦旗両川派、革労協及び蜂起派の各セクトの動向を含めて総合的に判断したことは、至極当然といえるのである。
(三) 本件使用禁止命令の要件充足性について
(1) 暴力主義的破壊活動者の認定
前述のとおり、ある者が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高いか否かは、その者及びその者が所属するなどしている団体(セクト)の平素の活動状況及び過去の活動状況等から総合して判断する必要がある。より具体的には、<1>暴力主義的破壊活動等の検挙歴を有する者か否か、<2>暴力主義的破壊活動等を主張しこれを行う団体(セクト)に所属する者か否か、<3>暴力主義的破壊活動等を主張し、これを行う団体(セクト)に所属する者と行動を共にする者か否かが右蓋然性を判断する上で有力な判断材料となる。
ところで、右基準によって暴力主義的破壊活動者の該当性を具体的に判断する場合、まず、当該工作物に出入りする者などが、<2>及び<3>の暴力主義的破壊活動等を主張し、これを行う団体に所属する者であるか否か、あるいはこれらの者と行動を共にする者であるか否かを検討し、次に、当該団体がどのような暴力主義的破壊活動等を主張し、また実行しているかを検討すべきである。そして、当該団体が積極的に暴力主義的破壊活動等を主張し実行している場合、当該団体に所属するなどする者は、当然当該団体の主張に賛同し、かつ、その掲げる目標の実現に向け活動しているのであるから、当該団体の主張に沿って暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高いと認められるので、暴力主義的破壊活動者と認定できるものである。
ア 本件使用禁止命令発出前に本件工作物に出入りしていた者
まず、本件使用禁止命令発出の二か月ほど前である平成元年七月現在、本件工作物には警察による現認活動等により<1>原告吉川の常駐が認められた。また、原告吉川は、本件工作物所在地に住民登録していることが認められる。
そして、昭和六二年四月一四日から平成元年三月一五日までの間に、右常駐者の他に氏名が判明している者だけで、<2>岸上雅博、<3>西藤芳弘、<4>秋山和雄、<5>小山衛一、<6>藤崎達哉、<7>岸宏一、<8>大森寿憲、<9>新田浩一、<10>野田隆夫、<11>片田寿雄、<12>菅野照雄、<13>沖山芳忠、<14>岸本豊和、<15>魚津敏夫、<16>元永修二、<17>黒田亨、<18>多田良作、<19>伏谷晃司、<20>伊藤功一、<21>馬渡友子、<22>石丸修三、<23>古谷真由美、<24>杉本富美代、<25>池田久、<26>村上唱子、<27>大田明、<28>寺崎修一、<29>松沢学、<30>徳田真貴子の計二九名の出入りが警察により確認されている。
イ 右の者が所属する団体(セクト)について
右に掲げた者のうち、<1>原告吉川、<2>岸上雅博、<3>西藤芳弘、<4>秋山和雄、<5>小山衛一、<6>藤崎達哉、<7>岸宏一、<8>大森寿憲、<9>新田浩一、<10>野田隆夫、<11>片田寿雄、<12>菅野照雄、<13>沖山芳忠、<14>岸本豊和、<15>魚津敏夫、<16>元永修二、<17>黒田亨、<18>多田良作の一八名は中核派に所属することが、<19>伏谷晃司、<20>伊藤功一、<21>馬渡友子の三名は戦旗両川派に所属することが、<22>石丸修三、<23>古谷真由美、<24>杉本富美代、<25>池田久の四名は革労協に所属することが、<26>村上唱子、<27>大田明の二名は蜂起派に所属することが、また、<28>寺崎修一、<29>松沢学、<30>徳田真貴子は、これら中核派、戦旗両川派、革労協若しくは蜂起派に所属する者と行動を共にしていることが警察によって確認されていた。
ウ 中核派の本件使用禁止命令発出前における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び活動状況
中核派は、その機関紙「前進」において、以下のように暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。
<1>「二期実力阻止・空港廃港を実際にたたかいとらなければならない。」(昭和六三年八月一日付け第一三九五号)、<2>「B滑走路予定地のど真ん中で、強制代執行・収用委員会の再開を阻む不抜の本部として自らを武装した。」、「強制代執行の攻撃にたいしては、この不抜の現闘本部を武器に徹底的にたたかう戦闘宣言を発したのだ。」(昭和六三年一〇月一〇日付け第一四〇三号)、<3>「三里塚決戦基軸に八九年へ武装進撃を」(昭和六三年一一月二八日付け第一四一〇号)、<4>「農民殺しの二期工事強行に大反撃せよ」(平成元年五月八日付け第一四三一号)、<5>「われわれ革共同は、九〇年天皇決戦=八九年~九〇年天皇・三里塚決戦の方針をすでに提起し、四・二九宮内庁宿舎爆破のゲリラ戦争を本格的な戦闘宣言として、その実践に猛然と突入している。」(平成元年五月二九日付け第一四三四号)、<6>「『強制代執行反対』『二期工事強硬反対』を高く掲げ、革命軍のゲリラ戦争の戦略的エスカレーションをかちとり、日帝にかつてない打撃を強制するのだ。」(平成元年七月二四日付け第一四四二号)。
次に、本件使用禁止命令発出前に、中核派は以下のように暴力主義的破壊活動等を現実に実行していた事実が認められる。
<1>昭和五三年五月二〇日、埼玉県所沢市の運輸省東京航空交通管制部と羽田空港、新空港等をつなぐ電々公社市外地下同軸ケーブル回線を切断し、同航空交通管制部の機能を麻痺させて航空交通管制を混乱に陥れた(第五類型)。<2>昭和五三年五月二七日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉県佐原市の国鉄成田線佐原駅と大戸駅間で、CTC(列車集中制御装置)につながる回線と鉄道専用電話回線を切断して、ジェット燃料の輸送列車を立往生させた(第二類型)。<3>昭和五三年九月七日、千葉県八千代市等数箇所において電話同軸ケーブルを切断するなどにより新空港内の航空会社のテレックスあるいは茨城県北相馬郡守谷町VOR(超短波全方向式無線標識施設)及び同県稲敷郡阿見町阿見VORの機能を麻痺させた(第五類型)。<4>昭和五三年一二月一八日、新空港関連の貨物ターミナルである千葉県市川市の東京エアカーゴ・シティ・ターミナル会社の構内駐車場に停めてあったワゴン車を時限発火装置を用いて炎上させた(第二類型)。<5>昭和五四年三月一四日、千葉県佐倉市臼井台及び同県習志野市鷲沼台の二箇所において、新空港への重要な交通手段である京成電鉄線路上に火炎車をそれぞれ突入させてスカイライナーをはじめとする列車の運行を妨害した(第二類型)。<6>昭和五四年八月三〇日、千葉市高浜の新空港ジェット燃料輸送パイプラインの工事現場に時限式発火装置を仕掛けて発火させ、杭打機四台を全焼させた(第二類型)。<7>昭和五四年一〇月一八日、京成電鉄高砂検車区、京成上野駅及び京成電鉄宗吾検車区にそれぞれ入庫中ないし停車中のスカイライナーの一部を焼毀した(第二類型)。<8>昭和五五年三月一三日、千葉市浪花町において、新空港ジェット燃料輸送パイプライン工事のための地下水位観測所六箇所に時限装置を仕掛けて発火させ、同観測所及びその内部に設置された観測機器に被害を与えた(第二類型)。<9>昭和五五年三月二四日、新空港ジェット燃料輸送パイプライン工事妨害の一環として、千葉市にある新空港関連工事会社三社の作業員宿舎等に時限装置を仕掛けて発火させ、同宿舎を全焼させた(第四類型)。<10>昭和五五年五月一八日、成田市土屋の新空港ジェット燃料輸送暫定パイプラインの起点である土屋燃料基地に向けて同基地先の市道に自動火炎放射装置を仕掛けたトラックを駐車させて同装置を作動させた(第二類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「…三里塚空港粉砕、二期工事阻止」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<11>昭和五五年九月一日、新空港内の給油センター駐車場に駐車する車両三台に時限装置を仕掛けて発火させ、同車両に被害を与えた(第二類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「あらゆる戦争手段を駆使しても三里塚二期攻撃粉砕・空港実力廃港を必ずや実現していくというわが革共同と革命的人民の決意」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<12>昭和五六年三月一〇日、千葉市畑町の新空港ジェット燃料輸送パイプライン工事第七立坑施設に向けて、火炎放射装置を仕掛けた小型トラックを駐車させて同装置を作動させ、作業員詰所を焼毀した(第二類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「三里塚二期着工策動に先制打」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<13>昭和五六年六月八日、東京都千代田区霞が関の第三中央合同庁舎(運輸省等庁舎)南側路上に火炎放射装置を仕掛けたトラックを乗りつけ、これを運輸省に向けて作動させ、一階から八階までの窓ガラス等を焼損させた(第三類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「…三里塚二期工事着工を策動する日帝・運輸省にたいして強力無比な火炎放射攻撃を敢行した。…」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<14>昭和五七年三月一三日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉県佐原市の国鉄成田線大戸駅と佐原駅間の岩ケ崎踏切で、架設されている通信・信号ケーブルを切断して、電車の運行を妨害した(第二類型)。<15>同日、千葉県銚子市の国鉄成田線下総豊里駅と椎柴駅間に架設されている通信・信号ケーブルを切断して、電車の運行を妨害した(第二類型)。<16>同日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる茨城県行方郡潮来町の国鉄鹿島線延方駅と潮来駅間の側溝内部に時限発火装置を仕掛けて発火炎上させ、敷設されていた通信・信号ケーブル等を焼毀切断して、電車の運行を妨害した(第二類型)。<17>同日、千葉県船橋市の国鉄西船橋駅構内にある国鉄西船変電所の敷地内に時限発火装置を仕掛け発火炎上させ、高圧送電ケーブル等を焼毀切断して、電車の運行を妨害した(第二類型)。<18>同日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる成田市の国鉄成田線久住駅と滑河駅間に埋設されている通信・信号ケーブルを焼毀切断して、電車の運行を妨害した(第二類型)。<19>同日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉市の国鉄総武本線東千葉駅と都賀駅間に埋設されている通信・信号ケーブルを焼毀切断して、電車の運行を妨害した(第二類型)。<20>同日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉市の国鉄総武本線都賀駅と四街道駅間に埋設されている通信・信号ケーブルを焼毀切断して、電車の運行を妨害した(第二類型)。以上の<14>ないし<20>の事件について中核派は、「前進」において、「…三里塚空港を実力で廃港にたたきこむ。三・一三戦闘こそその偉大な第一弾である。…」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<21>昭和五七年九月一〇日、成田市の京成電鉄成田線で時限発火装置を搭載した改造自走トロッコを京成電鉄成田空港駅方向へ走行させ同線台田隊道内で、同装置を作動させた(第二類型)。<22>同日、成田市吉倉の京成電鉄空港線線路わきでクレーン付きトラックを焼毀した(第二類型)。以上の<21>及び<22>の事件について中核派は、「前進」において、「空港突入・占拠・解体の展望開く」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<23>昭和五八年三月八日、東京都葛飾区の京成電鉄高砂電車区車庫裏に時限火炎発射装置を仕掛けたトラックを駐車し、同装置を同車庫内のスカイライナーに向けて作動させ、これを破損させた(第二類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「二期着工策動にゲリラ戦炸裂作裂」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<24>昭和五八年六月七日、新空港ジェット燃料輸送パイプラインの関連工事を担当していた千葉県四街道市の東鉄工業物井作業所簡易宿舎に時限発火装置を仕掛けて発火炎上させ、就寝中の社員二人を焼死、一人を火傷させた上、同建物を全焼させた(第四類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「日帝の二期着工策動を粉砕」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<25>昭和五八年九月二〇日、千葉市の新空港へジェット燃料を輸送する千葉港頭パイプライン給油基地へ送電を行っている東京電力黒砂開閉所U字構内に配線された送電ケーブル四本に時限式発火装置を仕掛けて発火焼毀させた(第二類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「…わが革命軍の二期工事実力阻止、パイプライン粉砕にかけたかたい決意を示すものである。」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<26>昭和五九年三月一日、東京都中央区の首都高速一号線上に停車した火炎発射装置を仕掛けたトラックより、空港公団本社の入っている日本橋本町ビルに向けて同装置を作動させ、同ビル六階の事務所を半焼、五階ないし八階の一部を延焼させた(第三類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「二期攻撃にダメージ」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<27>昭和五九年八月六日、千葉県船橋市、東京都大田区及び神奈川県横浜市の空港公団幹部(三人)のそれぞれの自宅に時限発火装置を仕掛けて各建物の一部を焼損させた(第三類型)。<28>昭和六〇年四月一二日、成田市の新空港及び東京都大田区の東京国際空港に向け時限式発射装置を使用し火炎ロケット弾を発射し、新空港においては、一時滑走路が閉鎖され航空機の運行に支障を与えると共に、駐車中の普通貨物車一台を大破させ、また、新空港内にある空港郵便局等の建物の一部を損壊させた(第一類型)。<29>昭和六〇年七月二〇日、千葉県印旛郡富里町の空港公団職員自宅に時限式発火装置を仕掛けて車庫及び普通乗用車、オートバイ等計八台を全焼させた(第三類型)。<30>昭和六〇年九月六日、成田市の空港公団職員自宅に時限式発火装置を仕掛け居宅一棟、倉庫、車庫を全焼させた(第三類型)。<31>同日、千葉市の千葉県土木部長自宅に時限式発火装置を仕掛けて居宅一棟、乗用車一台を全焼させた(第三類型)。<32>昭和六〇年一〇月二〇日、中核派、戦旗両川派の過激派集団は、新空港への突入を図り成田市の新空港第三ゲート近くの三里塚十字路で丸太・鉄パイプ等を準備して集合した上、警備中の機動隊警察官に対し大量の火炎びん及び石塊等を投てきし、車両等を焼毀させ、同警察官五九名に傷害を負わせた(第一及び第三類型)。<33>昭和六一年四月一五日、千葉県八日市場市の吉田駐在所敷地内に時限式発火装置を仕掛け普通乗用車等を焼毀させ駐車場の一部を焼損させた(第三類型)。<34>同日、千葉県八日市場市の飯高駐在所物置に時限式発火装置を仕掛けオートバイ一台を全焼させ同物置を焼損させた(第三類型)。<35>昭和六一年九月四日、神奈川県伊勢原市の運輸省航空局職員自宅を全焼させると共に付近の家屋七戸に延焼させ、うち二戸を全焼、五戸を一部焼損させた(第三類型)。<36>同日、千葉県船橋市の運輸省航空局職員自宅に時限式発火装置を仕掛け普通乗用車一台を全焼させた(第三類型)。<37>昭和六一年一一月二八日、新空港第二旅客夕ーミナルビルの設計を担当している千葉県松戸市の梓設計相談役宅に時限式発火装置を仕掛け家屋を半焼させた(第四類型)。<38>同日、新空港第二旅客ターミナルビルの設計を担当している神奈川県横浜市の梓設計社長(元空港公団理事)宅に時限式発火装置を仕掛け、家屋の一部及び普通乗用車一台の一部を焼損させた(第四類型)。<39>昭和六二年五月二二日、新空港二期工事関連会社である埼玉県大宮市の大成建設機材部大宮機械センターに時限式爆発物を仕掛け、同建物の屋根、床、天井及び窓ガラスを破損させた(第四類型)。<40>昭和六二年六月三〇日、新空港二期工事関連会社である成田市の木下建材敷地内に駐車中のダンプカーに時限式発火装置を仕掛け、ダンプカー四台を焼損させた(第四類型)。<41>同日、新空港二期工事関連会社である千葉県八千代市の花島建材砂置き場に駐車中のダンプカーに時限式発火装置を仕掛け、ダンプカー四台を焼損させた(第四類型)。<42>昭和六二年一一月五日、千葉県佐倉市の空港公団職員自宅に時限式発火装置を仕掛け、物置兼居室及び車庫を全焼させた(第三類型)。<43>昭和六三年一月一八日、成田市の三里塚小学校付近に駐車中のトラックより、新空港に向けて時限式爆発物発火装置を使用して、翼付き弾を発射させた(第一類型)。<44>昭和六三年二月二九日、東京都新宿区の東京都駐車場公社所有西新宿臨時駐車場に駐車中の新空港へのバス交通を行っている東京空港交通株式会社所有のリムジンバス四台に、時限式発火装置を仕掛け、全焼させた(第二類型)。<45>昭和六三年七月一日、新空港二期工事に建設機械をリースしている成田市の鶴島建機成田営業所内に時限式発火装置を設置し、同社所有の車両四台、プレハブ事務所を全焼させた(第四類型)。<46>同日、茨城県真壁郡関城町の常南交通県西営業所駐車場と車庫に駐車中のバス、トラックに時限式発火装置を設置し、車両五台をそれぞれ半焼させた。常南交通は、その関連会社の建設機械が新空港建設工事に使用されていた(第四類型)。<47>昭和六三年九月二一日、千葉市祐光一丁目の路上において、帰宅途中の新空港用地の収用を担当する千葉県収用委員会会長を襲撃し、両手足骨折等の重傷を負わせた(第三類型)。<48>昭和六三年一二月一五日、新空港二期工事用に生コンクリートを納入していた千葉県船橋市の船橋レミコン株式会社第二工場内に駐車中のコンクリートミキサー車三台に時限式発火装置を設置し、同車両を一部焼毀させた(第四類型)。<49>平成元年一月二九日、神奈川県藤沢市の公共用地審議会会長代理自宅の物置に時限式爆発物を仕掛け、同物置と居宅の一部を損壊させたほか、付近住宅七戸の窓ガラス等を損壊させた(第三類型)。<50>平成元年三月一二日、新空港関連の千葉市内の道路建設会社に山砂を納入していた千葉県富津市の丸和建材駐車場に駐車中のダンプカー三台に時限式発火装置を設置し、同車両を全焼させた(第四類型)。<51>平成元年三月二六日、成田市及び千葉県山武郡芝山町の新空港二期工事用地内で収用阻止を掲げて全国総決起集会とデモを行い、検問中の警察官の公務執行を妨害するなどした(第三類型)。<52>平成元年三月三〇日、新空港二期工事関連企業である成田市の国井組の水路工事現場に放火し、工事現場事務所及びパワーショベル等二台を全焼させた。同事件につき中核派は、その現地ビラ「日刊三里塚」において、「極悪の二期推進企業、国井組に怒りの鉄槌」、「すべての二期推進企業は、二期工事より手を引け!」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている(第四類型)。<53>平成元年六月五日、新空港二期工事関連企業である千葉県東葛飾郡沼南町の藤田陸運柏営業所の駐車場に駐車中のトラック三台に時限発火装置を設置し、三台を全焼、四台を半焼させた(第四類型)。<54>平成元年七月二四日、千葉市の千葉県収用委員会事務局主査宅の乗用車と玄関わきに時限式発火装置を設置し、乗用車を半焼、住宅の外壁を焦がした(第三類型)。<55>平成元年九月八日、成田市の片岡組の事務所に時限発火装置を設置し、プレハブ平家建ての事務所を全焼し、隣接のプレハブ平家建ての倉庫を半焼し、軽ワゴン車等三台を焼損させた。片岡組社長は、北総建設業組合の会長をしており、その組合加盟会社が新空港二期工事に関係している(第四類型)。
エ 本件工作物に出入りしている中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属している者並びにこれらの者と行動を共にしている者の暴力主義的破壊活動者該当性について
右のような中核派の活動状況等からすれば、同派が新空港突入及び新空港廃港を新空港反対闘争における最大目標としており、右目標の実現に向け積極的に活動していることは明らかであるから、中核派が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性の極めて高い集団であることは疑うべくもない。したがって、本件工作物に出入りしていた中核派に所属する者は、その所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向け活動していると認められるので、暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が高いことが明らかである。
また、本件使用禁止命令発出前において、原告反対同盟を支援する三支連を通じて中核派と共闘関係にある戦旗両川派、革労協及び蜂起派も、別紙二記載のとおり、数々の暴力主義的破壊活動等に関する過激な主張を表明し、かつ、戦旗両川派及び革労協は、実際に暴力主義的破壊活動等を繰り返している状況が認められた。したがって、前記アの<1>ないし<30>の者のうち、戦旗両川派に所属する<19>ないし<21>の者、革労協に所属する<22>ないし<25>の者及び蜂起派に所属する<26>及び<27>の者は勿論のこと、これらの者と行動を共にする<28>ないし<30>の者も、その所属するあるいは行動を共にする者が所属する過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動していることは明白であるから、これらの者が将来にわたって暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が極めて高いことは明らかである。
したがって、これらの者を暴力主義的破壊活動者と認定した被告運輸大臣の判断は、極めて合理的なものであるといえる。
オ 検挙歴
前記アの<1>ないし<30>の者のうち、中核派に所属する一一名、革労協に所属する一名、蜂起派に所属する一名及びこれらの者と行動を共にする一名については、新空港反対闘争に関連した暴力主義的破壊活動等の検挙歴を有している。
すなわち、中核派に所属する者としては、
原告吉川 昭和五九年 九月二七日 公務執行妨害罪
秋山和雄 昭和五三年 三月二七日 凶器準備集合罪、火炎びん法違反、公務執行妨害罪、傷害罪、航空法違反
西藤芳弘 昭和六〇年一〇月二〇日 公務執行妨害罪
新田浩一 昭和六〇年 八月二五日 右同
片田寿雄 昭和五九年 九月二七日 右同
沖山芳忠 昭和五九年 九月二七日 右同
岸本豊和 昭和五九年 九月二七日 右同
黒田 亨 昭和六〇年 一月一五日 右同
昭和六〇年 七月二一日 右同
昭和六〇年一〇月二〇日 公務執行妨害罪、凶器準備集合罪、火炎びん法違反
の各検挙歴が認められる。なお、いわゆる「管制塔襲撃事件」の前ではあるが、菅野照雄については、昭和五二年五月二九日に凶器準備集合罪、公務執行妨害罪、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、傷害罪に関して、多田良作については、昭和五一年二月二五日に公務執行妨害罪に関して検挙歴を有している。
革労協に所属する者については、
石丸修三 昭和五三年九月一六日 火炎びん法違反、凶器準備集合罪、往来妨害罪、有線電気通信法違反、放火罪
の検挙歴が、
蜂起派に所属する者については、
村上唱子 昭和五九年九月二五日 公務執行妨害罪
の検挙歴が、
また、中核派、戦旗両川派、革労協又は蜂起派と行動を共にする者については、
寺崎修一 昭和五九年九月二五日 公務執行妨害罪
の検挙歴がそれぞれ認められる。
このように、本件使用禁止命令発出前に本件工作物への出入りが認められた者のうち、氏名が判明した前記アの<1>ないし<30>の者は、すべて中核派、戦旗両川派、革労協又は蜂起派に所属する者か、これらの者と行動を共にする者であり、そのことによってこれらの者を暴力主義的破壊活動者と認定することについて何ら妨げとなる事実は認められない上、右のとおり、そのうちの一四名については暴力主義的破壊活動等による検挙歴すら認められる。
したがって、右吉川ら前記アの<1>ないし<30>の者を暴力主義的破壊活動者と認定した被告運輸大臣の判断には、いかなる意味においても非難されるべき点は見いだすことができない。
(2) 本件工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれの要件充足性
ア 暴力主義的破壊活動者による集合状況
当該工作物が「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用」に供される蓋然性が高いか否かを判断するに当たっては、客観的に当該工作物が右集合の用に供され、又は供される蓋然性が高いと認められれば足りるものである。
ところで、具体的に右判断をするに当たっては、当該工作物における使用禁止命令発出前の暴力主義的破壊活動者による集合状況の検討が重要である。すなわち、当該工作物が過去において暴力主義的破壊活動者の集合の用に実際に供されている場合には、特段の事情が認められない限り、当然、将来にわたって引き続き暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される蓋然性が高いといえるからである。
そこで、本件工作物における本件使用禁止命令発出前の暴力主義的破壊活動者の集合状況について検討するに、暴力主義的破壊活動者と認められる原告吉川ら三〇名は、警察によって現認されただけでも、以下のとおり一一回にもわたり本件工作物に集合していた事実が確認されている。
(昭和六二年)
<1> 九月 二日午前 七時四七分 新田浩一を本件工作物内で確認
八時四五分 車両に乗車して本件工作物から出る藤崎達哉を確認。
(右の者らは近接した時間内に本件工作物内にいることが確認されたものであるから、本件工作物で集合したと認められる。)
<2> 九月二七日午前 八時五七分 原告吉川、大森寿憲、新田浩一を本件工作物内で確認。
<3> 九月三〇日午前 七時四二分 新田浩一、藤崎達哉を本件工作物内で確認。
<4>一〇月一二日午前 七時五〇分 新田浩一、藤崎達哉を本件工作物内で確認。
<5>一一月一九日午後 三時二四分 新田浩一、原告吉川を本件工作物内で確認。
(昭和六三年)
<6> 五月 二日午前 九時 二分 原告吉川、菅野照雄、沖山芳忠、岸本豊和を本件工作物内で確認
<7> 五月 四日午前 九時二二分 岸本豊和、原告吉川を本件工作物内で確認。
<8> 六月一五日午前 八時〇〇分 村上唱子を本件工作物内で確認
八時 七分 古谷真由美、伏谷晃司、馬渡友子を本件工作物内で確認。
(右の者らは近接した時間内に本件工作物内にいることが確認されたものであるから、本件工作物で集合したと認められる。)
<9> 六月二二日午前 八時 三分 徳田真貴子を本件工作物内で確認。
八時 五分 伊藤功一を本件工作物内で確認。
八時一〇分 杉本富美代を本件工作物内で確認。
(右の者らは近接した時間内に本件工作物内にいることが確認されたものであるから、本件工作物で集合したと認められる。)
<10> 七月一二日午前 八時 一分 秋山和雄、魚津敏夫を本件工作物内で確認。
<11> 七月一三日午後 一時一三分 沖山芳忠、秋山和雄を本件工作物内で確認。
午後 一時三四分 車両に乗車して本件工作物から出る元永修三を確認。
(右の者らは近接した時間内に本件工作物内にいることが確認されたものであるから、本件工作物で集合したと認められる。)
以上のとおり、本件使用禁止命令発出前に、原告吉川ら多数の暴力主義的破壊活動者が、本件工作物において、しばしば集合していたことが明らかである上、暴力主義的破壊活動者が本件工作物を集合の用に供することを放棄したなどの特段の事情も認めることができない。したがって、本件工作物が将来にわたって引き続き暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される蓋然性が極めて高いと認められることは明白であり、被告運輸大臣が、本件使用禁止命令を発出するにあたり、本件工作物が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあると判断した行為は十分に合理的なものである。
イ 集合と暴力主義的破壊活動等との関連性について
被告運輸大臣は、実際に緊急措置法三条一項一号を適用するにあたり、同法の立法目的を十分に考慮し、当該集合と暴力主義的破壊活動等との関連性などについても検討した上で同号を適用してきたところである。そして、右判断に際しては、<1>当該工作物の建設経緯、構造、外形及び使用の態様、<2>当該工作物に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属する団体(セクト)の暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明及び実施状況、<3>当該工作物に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属する団体(セクト)の当該工作物に関連する暴力主義的破壊活動等の意思の表明状況及び実施状況の三点を中心に総合考量し、当該集合が暴力主義的破壊活動等に関連して行われたか否かを判断したのであるが、以下に述べるとおり、本件使用禁止命令発出前の本件工作物における暴力主義的破壊活動者の集合には、当該集合と暴力主義的破壊活動等との関連が十分に認められるものであるから、本件工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあるとした被告運輸大臣の判断は、極めて正当なものである。
(ア) 本件工作物の建設経緯、構造、外形及び使用の態様等
a 建設経緯
本件工作物は、成田市木の根字拓美一八四番二に所在する工作物であり、緊急措置法二条三項の規制区域内に所在している。
昭和五四年一月一〇日、中核派は、原告反対同盟に対して、「二月一二日に木の根地区の叛旗団結小屋から東方約三〇〇メートルの地点にプレハブ二階建ての団結小屋を建設する」と通告し、同年一月一二日、中核派に所属する岸上雅博が中心となり、最盛時一九名を動員して、鉄骨プレハブ小屋等の建設、木製塀の設置作業等を行い、中核派に所属する者等三名が常駐を開始した。また、昭和六二年三月三日から同月二六日までの間、鉄骨プレハブ小屋の東側に丸太等を使用して高さ約一七メートルの櫓一基を構築するなど本件工作物の強化を図った。
b 本件工作物の要塞化への着手と仮処分による中断
昭和六三年三月二七日、二期工事区域内である成田市天神峰において開催された原告反対同盟による「二期工事実力阻止、敷地内破壊攻撃粉砕、脱落派粉砕・一掃、三・二七全国総決起集会」において、北原が「闘争拠点の砦化、要塞化」をはじめとする闘争方針を提起した。
さらに、同年五月二二日、千葉県山武郡芝山町菱田において開催された原告反対同盟による「二期工事阻止、B・C滑走路着工実力阻止、芝山廃村攻撃粉砕、脱落派粉砕・一掃五・二二全国総決起集会」において、萩原進事務局次長が「用地内闘争拠点の強化、要塞化」をはじめとする闘争方針を提起した。
中核派は、右闘争方針に呼応し、同年五月一日から同月五日の間、中核派に所属する沖山芳忠以下、延べ五二名を動員して、本件工作物の木製外塀を取り壊すと共に、新たに鉄板製の塀(高さ約三メートル)を取り付けたほか、同年七月一二日から一三日にかけて、中核派に所属し、本件工作物に常駐する原告吉川以下、延べ四三人を動員して、鉄骨プレハブの建物の西側に高さ約一三メートルの鉄骨製櫓を構築するなど、要塞化に着手した。
しかしながら、本件工作物の存する成田市木の根字拓美一八四番二の土地は、空港公団が三三分の一六の持分を有し、かつ、三三分の一六の持分権を有する共有者訴外岩澤和己から本件土地の管理を委任されていたところ、空港公団は、本件工作物の要塞化の状況にかんがみ、右土地の持分権に基づく建物等収去土地明渡請求権を保全するため、同年七月一三日、千葉地方裁判所に対し、反対同盟及び本件工作物の常駐者で中核派に所属する原告吉川を債務者として、本件工作物の敷地等について、占有移転禁止、鉄塔建設続行禁止及び現状変更禁止の仮処分を申請した(同裁判所昭和六三年(ヨ)第二九六号)。これを受けて、千葉地方裁判所は、同日、右債務者及び物件に対して、占有移転禁止、鉄塔建設続行禁止及び現状変更禁止の仮処分決定を発し、空港公団は、同日、千葉地方裁判所執行官に右仮処分決定の執行を申立て、同日、同裁判所執行官漆原登が仮処分執行に臨んだ。このため、中核派はやむなく本件工作物の要塞化を中断するに至った。
c 構造及び外形
本件工作物は、約三メートルの鉄板製の外塀で周囲が囲まれており、外部からは本件工作物の状況をうかがい知ることすら不可能であり、また、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派などの過激派集団に所属する者や、これに関連する者以外の者が立ち入ることすらできない構造となっている。さらに、その敷地内には、鉄骨プレハブ二階建、トタン葺きの建物一棟、木製の櫓(高さ約一七メートル)及び鉄骨製の櫓(高さ約一三メートル)等が設置され、鉄骨製櫓には「Cラン爆砕」と書かれた看板が掲げられているなどおよそ通常の家屋とは著しく異なっており、極めて異様な外観を有する工作物である。
d 使用の態様等
本件使用禁止命令発出前に、本件工作物には一名の暴力主義的破壊活動者が常駐し、また、警察によって現認され氏名の確認ができた者だけでも、右一名を含む三〇名の暴力主義的破壊活動者の出入りが認められる上、昭和六二年四月一四日から平成元年六月一五日までの間に、延べ一一回にわたり、暴力主義的破壊活動者が本件工作物に集合していたことが認められる。
さらに、本件工作物は、中核派の新東京国際空港設置反対闘争の集会、デモ等の際、警察によって確認されただけでも、以下のように中核派に所属する者またはこれらの者と行動を共にする者である暴力主義的破壊活動者が集合し、集会、デモ等への出撃拠点等として使用されていたことが認められる。
<1> 全国集会における使用状況
昭和六二年一一月二九日、反対同盟が主催した「二期工事実力阻止、不法収用法弾劾、敷地内破壊攻撃粉砕、脱落派粉砕・一掃一一・二九全国総決起集会」に伴い、同日午前八時二二分頃、本件工作物内にヤッケ、運動靴を着装した中核派に所属する者二六名が集結し、本件工作物からデモ出発地点まで全員が移動したのが確認された。
<2> 全国集会以外の集会における使用状況
昭和六三年一月二四日午前八時一六分頃、本件工作物前空地に中核派に所属する者一二二名を含む一五五名の過激派集団が集結し、「C滑走路着工阻止緊急現地行動」として集会を行った。同集会において、中核派全学連中央執行委員が、「我が革命軍は一月一八日空港本体、空港中枢心臓部に対して、人民の怒りを込めたロケット弾をたたき込み、まさに二期本格着工爆砕に断固として決起した。」と発言した。
また、三支連主催による「二期工事実力阻止現地闘争」のデモ出発拠点として、昭和六二年一月から一二月までの間四五回(延べ参加者八一〇名)、昭和六三年一月から一二月までの間一二八回(延べ参加者一一〇〇名)、平成元年一月から三月までの間四回(延べ参加者四一名)にわたり、それぞれ本件工作物が使用されたのを確認した。
e 原告らは、本件工作物が新空港反対闘争の集会・デモへの出撃拠点として使用されているからといって、本件工作物において多数の暴力主義的破壊活動者の集合がなされたことにはならず、緊急措置法三条一項及び同条八項の要件を充足するものではない旨主張する。しかしながら、被告運輸大臣は、単に本件工作物が各種集会、デモ等の出撃拠点とされている事実だけを判断要素としたものではなく、本件工作物から出撃した者らが参加した集会、デモ等に、どのような者が参加し、また、その際どのような発言が行われたかに着目したのである。すなわち、本件工作物から出撃した者らが参加した集会、デモ等に、過激派集団に所属するとみられる者が数多く参加し、右集会、デモ等において暴力主義的破壊活動等を行う旨の意思表明がされるなどの場合には、当該集合、デモ等が暴力主義的破壊活動等に関連したものであることが認められる。かかる場合に、このような集会、デモ等に参加している者らは、当該集会、デモ等における過激派集団による意思の表明に賛同していると推認できるから、右の者らが本件工作物から出撃することは、本件工作物が暴力主義的破壊活動等に関連した集合の用に供されているか否かを判断するに際して、重要な要素となるものであり、原告らの右主張は失当である。
f また、本件工作物は、昭和五九年から平成元年の間に二六回にわたり、新空港の設置若しくは管理を阻害する暴力主義的破壊活動等の違法行為の被疑事実に基づいて千葉県警による捜索・差押えが実施されていることが認められる。
g 以上のとおり、本件工作物が、その建設経緯、構造、外形及び使用の態様等から、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される性格を有すると認められることは明らかというべきである。
(イ) 本件工作物に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び実施状況
本件使用禁止命令発出前に、本件工作物における集合が認められた原告吉川らの暴力主義的破壊活動者が所属している中核派は、本件使用禁止命令発出前において、暴力主義的破壊活動等の実行により新空港を廃港に追い込むことを目標とし、暴力主義的破壊活動等を右目標達成の唯一の手段として活動していくことを標ぼうしている。しかも、中核派は、暴力主義的破壊活動等を標ぼうするにとどまらず、右意思表明のとおり、現実に数多くの暴力主義的破壊活動等を行っているところでもある。
また、本件使用禁止命令発出前に、本件工作物には中核派と共闘関係にある戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する暴力主義的破壊活動者の出入りも認められるところ、戦旗両川派、革労協及び蜂起派も中核派と全く同様に、新空港を廃港に追い込むとの目標を実行することを標ぼうするばかりか、戦旗両川派及び革労協は、現に右目標実現のために極めて多数の暴力主義的破壊活動等を行ってきた事実が認められる。
なお、本件工作物は、主に中核派に所属する者によって建設、使用されてきたことが認められるが、本件使用禁止命令の発出前において、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する暴力主義的破壊活動者一二名が本件工作物に出入りしていることが認められるところ、中核派は、三支連を通じて戦旗両川派、革労協及び蜂起派と共闘関係にあり、原告反対同盟を支援していることが認められる。そして、右共闘関係にある過激派集団は、新空港建設実力阻止という共通の目的のもとに、数々の暴力主義的破壊活動等を繰り返し、互いにその活動を競い、あるいは互いに呼応同調しながら自らの活動を展開してきた経緯に照らせば、中核派以外の過激派集団に所属する暴力主義的破壊活動者が暴力主義的破壊活動等を繰り返すことにより、本件工作物が中核派に所属する者によって、緊急措置法三条一項一号に規定する集合の用に供されるおそれは一層増大するものといわざるを得ない。
したがって、本件工作物と暴力主義的破壊活動等との関連を検討するに当たって、被告運輸大臣が、本件工作物の建設及び使用に当たり、中心的な役割を果たしていたと認められる中核派の暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び暴力主義的破壊活動等の実施状況にとどまらず、中核派と共闘関係にある戦旗両川派、革労協及び蜂起派の暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び暴力主義的破壊活動等の実施状況についても、その判断の基礎としたことは、極めて合理的な方法であるといえる。
(ウ) 本件工作物に出入りする暴力主義的破壊活動者の所属セクトの本件工作物に関連する暴力主義的破壊活動等の意思の表明状況
中核派は、同派の機関紙「日刊三里塚」において、<1>「木の根育苗ハウスに対するフェンス攻撃徹底弾劾」「われわれは敷地内をはじめとする拠点を強化し砦化し、二期工事を絶対阻止する空前の武装闘争に決起する」(昭和六三年六月二五日付け第二九六七号)、<2>「七月一二日、わが中核派と現地支援連絡会議は、C滑走路のどまんなかの木の根に、高さ一三メートル、縦横各三・二メートルの新鉄塔を建設するという快挙をなしとげた」「完成した『木の根鉄塔』は、二期推進企業を炎上・粉砕した七・一ゲリラをひきつぐ、収用法攻撃粉砕の戦闘宣言である。」(昭和六三年七月一七日付け第二九八六号)と、新空港反対闘争の拠点として本件工作物を使用していく旨の意思を表明しており、本件工作物における暴力主義的破壊活動者の集合の用と暴力主義的破壊活動等の関連性は容易に推認できるのである。
(エ) 以上のとおり、本件工作物については、本件使用禁止命令発出前に多数の暴力主義的破壊活動者がしばしば集合の用に供していた事実が認められることから、将来にわたっても本件工作物が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される蓋然性が高いことは明白である上、<1>本件工作物が暴力主義的破壊活動等の実行を標ぼうし、かつ、暴力主義的破壊活動等を実行している中核派に所属する者らによって建設されたこと、<2>本件工作物は、周囲を高さ約三メートルの強固な鉄板で囲まれ、高さ約一七メートルの木製の櫓及び高さ約一三メートルの鉄骨製の櫓が設置される等、通常の家屋とは著しく異なった異様な建造物であること、<3>本件工作物が暴力主義的破壊活動者である中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者又はこれらの者と行動を共にする者の暴力主義的破壊活動等を標ぼうすることなどを目的とした集会、デモ等の出撃及び帰投の拠点として使用されていたこと、<4>本件工作物を主として使用してきた中核派は、暴力主義的破壊活動等の実行を標ぼうするにとどまらず、多数の暴力主義的破壊活動等を現に実行してきたこと、<5>中核派は、本件工作物を暴力主義的破壊活動等の拠点として使用する旨宣言していたことなどの事実を総合して判断すると、本件使用禁止命令発出前において、本件工作物は、暴力主義的破壊活動者である中核派に所属する者又はこれらの者と行動を共にする者の集合の用に供されていたことは明白であるから、将来にわたって引き続き暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される蓋然性が極めて高いことは明らかである上、本件工作物における暴力主義的破壊活動者の集合には、暴力主義的破壊活動等との関連性も十分に認められるところである。
したがって、本件工作物について、被告運輸大臣が、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあると判断したことは、十分合理的な判断であり、本件使用禁止命令が相当であることは明白である。
さらには、本件工作物を主として使用してきたものではないものの、本件使用禁止命令発出前にその所属する者の本件工作物への出入りが認められ、中核派とは共闘関係にある戦旗両川派、革労協及び蜂起派が、中核派と同様に暴力主義的破壊活動等の実行を標ぼうし、かつ、戦旗両川派及び革労協は、多数の暴力主義的破壊活動等を現に実行してきたことも考慮すれば、およそ右被告運輸大臣の判断が相当であることに疑問を差し挟む余地は皆無である。
(3) 所有者、管理者又は占有者の確知について
被告運輸大臣は、本件使用禁止命令発出にあたり、不動産登記簿や建築確認申請書の調査等では、本件工作物の所有者、管理者又は占有者が確知できなかったため、緊急措置法三条二項の規定により、これらを官報に公告して行ったものであり、右手続には何ら違法は認められない。
(四) 緊急措置法三条八項に係る要件充足性の判断基準について
(1) 緊急措置法三条八項は、「運輸大臣は、第一項の禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に掲げる用に供されている場合においては、当該工作物の現在又は既往の使用状況、周辺の状況その他諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ、かつ、他の手段によっては同項の禁止命令の履行を確保することができないと認められるときであって、第一条の目的を達成するため特に必要があると認められるときに限り、当該工作物を除去することができる。」と定めている。
すなわち、除去処分は、使用禁止命令が発出された後も引き続き多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物に出入りし、集合していると認められる状況において、以下の具体的な要件が充たされた場合に認められるものである。
ア 当該工作物が使用禁止命令に違反して集合の用に供されていること
当該工作物が使用禁止命令に違反して多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されたか否かを判断するに当たっては、使用禁止命令発出時における要件充足性の判断と同様、当該集合が暴力主義的破壊活動等に関連して行われたか否か、すなわち集合の目的・内容等は要件とされていないのであって、客観的に、当該工作物が使用禁止命令発出後、右集合の用に供されていると認められれば足りると解すべきである。
また、当該工作物自体が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されているか否かは、除去処分時点において、当該工作物に暴力主義的破壊活動者による事実としての集合が認められるか否かによって判断するのではなく、当該工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供するものとして使用されている状態が継続しているか否かによって判断されるべきである。すなわち、緊急措置法三条八項の規定によって、当該工作物を除去するとの決定をなした時点で収集されていた資料等により、暴力主義的破壊活動者が当該工作物を集合の用に供しているという状態が認められれば、その後、当該工作物の使用状況に変化があったと認められる事情がない限り、当該工作物は引き続き暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていると認められるのである。したがって、例えば、暴力主義的破壊活動者が何らかの理由によって、除去処分実施時に当該工作物内に現在していなくても、当該工作物の既往の使用状況等から、当該工作物が依然として暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていると認められる状態であれば、除去処分を行うについて何ら違法はないというべきである。
なお、被告運輸大臣は、実際に同項を適用して除去処分を行うに当たり、同法の立法趣旨を十分に考慮し、当該集合と暴力主義的破壊活動等との関連性についてもできる限り慎重に検討した上で除去処分を実施してきたところである。すなわち、右判断に際しては、使用禁止命令が発出された後も引き続き多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物に出入りし、集合していると認められる状況において、<1>当該工作物に出入りする者が所属する過激派集団が、当該工作物を要塞化し死守する、使用禁止命令に対し報復行為を行う等の挑戦的な意思を表明しているか否か、<2>右意思表明のとおり、実際に当該工作物を要塞化・砦化したか、実際に当該工作物から火炎びん、石塊などを投てきするなどしたか、又は報復ゲリラを実施するなどの暴力主義的破壊活動等に該当する行為を実行したか否か等の事情を総合考量して、使用禁止命令発出後の当該工作物における集合が暴力主義的破壊活動等に関連した集合であるか否かを判断しているのである。
イ 当該工作物が暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められること
当該工作物が将来的に暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれの有無は、「当該工作物の現在又は既往の使用状況、周辺の状況その他の諸般の状況から判断」する必要があるところ、右諸般の状況については、集合と暴力主義的破壊活動等との関連性について、被告運輸大臣が検討した前記事項を総合的かつ具体的に判断して決すべきである。すなわち、もし集合と暴力主義的破壊活動等との関連性が認められれば、それ自体で当該工作物が暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが推認されるからである。そして、右のおそれが「著しい」と認められる場合とは、過激派集団が使用禁止命令に反発して、当該工作物を要塞化し死守するなどの挑戦的な意思を表明していることに加えて、右意思表明のとおり、実際に当該工作物を要塞化・砦化したか、また実際に暴力主義的破壊活動等に該当する行為を実行したと認められるような場合を想定しているものと思料される。
ウ 他の手段によっては使用禁止命令の履行を確保することができないこと
暴力主義的破壊活動者において、法に基づく使用禁止命令やその他の措置を遵守せず、これを無視して、当該工作物が存在する限り、これを実力で従前どおり集合の用に供するという強固な意思が外形的にも明確に認められる場合には、使用禁止命令の履行を確保するための代替手段がない場合に当たるといえる。例えば、暴力主義的破壊活動者が、封鎖措置の対象となった工作物をこじ開けるなどして同工作物内に立ち入り、これを集合の用に供している場合が典型例として想起されるが、本件のように使用禁止命令を引き続き発出することの事前通告を行った場合に、当該工作物から石塊等が投てきされるなどの抵抗行為がある場合なども含まれると解される。なぜなら、当該工作物の使用禁止命令に対する実力による激しい抵抗は、当該工作物を闘争拠点とする過激派集団が、法に基づく使用禁止命令やその他の措置を無視し、当該工作物が存在する限り、これを実力で従前どおり集合の用に供するという強固な意思を表明したものにほかならないばかりでなく、当該工作物に対する並々ならぬ執着と使用禁止命令に対する徹底的な抗戦の意思も併せて表明したものと理解することができ、仮に逮捕活動等により内部に立てこもった者の抵抗を排除して封鎖等の他の措置を講じたとしても、当該工作物を拠点とする過激派集団は、当該工作物が存置される限り、すぐさま封鎖破り等の実力行使を行い、当該工作物の奪還を敢行するおそれが高く、このような状況において封鎖措置により使用禁止命令の履行を確保することは、不可能といわざるを得ないからである。
なお、工作物に立てこもった者の抵抗が排除された後は、除去処分ではなく、封鎖措置を行い得る旨の主張も考えられるが、そもそも抵抗する者を逮捕すれば封鎖措置ができるというのは本末転倒であって、抵抗する者を逮捕するのは当該抵抗者の犯罪行為の有無を検討して警察が独自に決定すべきことであるから、右逮捕活動によって除去処分の要件充足性が左右されるものではない。除去処分の要件が満たされ、除去の執行が開始された後、警察による逮捕活動により抵抗が止むに至ったとしても、引き続き除去処分を継続し得ることは当然である。そもそも、緊急措置法三条一〇項自体が、除去処分に際して退去処分ができる旨規定しており、当該工作物を無人化した後に工作物を撤去することが除去処分においては法律上当然に予定されているのであるから、右主張も失当であることは明らかである。
エ 第一条の目的を達成するため特に必要があると認められること
緊急措置法は、除去処分を実施するに際し、右アないしウの要件に適合すると共に、「第一条の目的を達成するため特に必要があると認められる」ことを要求している。そもそも、緊急措置法は、昭和五三年の凶悪な管制塔襲撃事件を契機として、不法な暴力から新空港を完全に防護するための抜本的な対策として、新空港の設置、管理等の安全の確保という、極めて人道的、国家的要請を受けて制定されたものである。そのような高度かつ緊急の公益的要請に応えるものであるゆえに、本法は、暴力主義的破壊活動者以外の第三者の権利を侵害する可能性もある除去処分を行う権限を被告運輸大臣に与えている。
緊急措置法がこのような趣旨、目的で制定されたものであることからすると、特に必要があるという要件は、新空港及びその機能に関連する施設の設置及び管理の安全の確保を図ると共に、航空の安全に資することの目的を達成するために、当該工作物の除去が必要不可欠であることをその要件とするものである。そして、右アないしウの要件を具備している場合には、当該工作物を除去する必要性も通常十分に認められるところであるが、緊急措置法が第一条の目的を達成するために特に必要があることを要件としたのは、このように前記アないしウの要件を具備した場合であっても、直ちに除去処分を実行することなく、除去処分を現実に実施することの必要性について、同法の趣旨に照らして慎重に確認し、第一条の目的を達成するため特に必要があると判断できる場合に限り除去処分を行えるものとして規定されたものである。
(2) 緊急措置法三条八項の要件充足性に関する原告らの主張に対する反論
原告らは、緊急措置法三条八項の要件充足性の判断に関連して、工作物からの火炎びん等の投てきによる抵抗行為は、直接に新空港の設置若しくは管理を阻害し、又は新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する行為ではないので、「暴力主義的破壊活動等」に該当しない旨主張する。
右の主張は、暴力主義的破壊活動等を制限的に解する原告らの論理的帰結であろうが、既に述べているように、仮に百歩譲って暴力主義的破壊活動等の定義を原告らの主張するとおりのものであるとしても、本件においては、以下の理由から、右抵抗行為をもって同法三条八項の要件充足性を判断することの妨げとはならず、結論に何ら影響を及ぼすものでないことは明らかである。
すなわち、本件工作物への出入りが認められる中核派、革労協及び戦旗両川派の各過激派集団は、前掲並びに別紙二のとおり、新空港の設置若しくは管理を阻害するなどの違法行為を敢行している上、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派の各過激派集団は、新空港を武装闘争などの実力行使の方法で廃港に追い込むとの基本的姿勢ないし運動方針を機関紙等で宣明した上、右方針の下に反対闘争を繰り広げ、その一環として、本件工作物から火炎びん、鉄筋片等を警察官、空港公団職員等に向けて投てきし、これらの者の生命・身体に対する著しく危険な行為に及んだものである。本件工作物の使用の態様が右のような状態に立ち至った以上、仮に原告らが主張するように、その行為そのものは直接的に暴力主義的破壊活動等に該当しないと解釈するとしても、本件工作物を拠点として過激派集団によって右抵抗行為が行われたことにより、新空港を実力による廃港に追い込もうとする当該過激派集団の強固な意思が容易に読み取れ、近い将来新空港の設置又は管理に支障を来す直接的な暴力主義的破壊活動等が行われる蓋然性は極めて高いといえるので、この点を暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められることなどの除去処分の要件充足性の判断要素とすることは当然であるというべきである。結局、原告らの暴力主義的破壊活動等の定義に関する理解によっても、右行為をもって同法三条八項の要件充足性を判断することの妨げとはならず、結論に何ら影響を及ぼすものではないことは明らかであるといわざるを得ないのである。
(五) 本件除去処分の要件充足性について
(1) 本件除去処分を行うに至った経緯
中核派は、本件工作物に対して使用禁止命令が発出されたことに反発し、機関紙や現地のビラ等で、団結小屋死守や、二期工事実力阻止を叫び、暴力主義的破壊活動等を継続する意思を表明し、さらには、平成元年一一月から同二年三月にかけて、本件工作物等に対する使用禁止命令に対する報復として、運輸省の幹部職員、千葉県職員、空港関連企業に対する放火ゲリラや京成電鉄などに対する同時多発ゲリラを敢行した旨の犯行声明を発表した。
さらに、本件工作物には、中核派に所属する原告吉川が常駐していたが、平成二年一月二八日ころから、中核派並びに同派と共闘関係にあった戦旗両川派、革労協及び蜂起派は、本件工作物に対する封鎖・除去処分を予想して、「死守隊」と称する者、すなわち、中核派に所属する者三名、戦旗両川派に所属する者一名、革労協に所属する者一名及び蜂起派に所属する者一名合計六名を本件工作物に籠城させた。
原告吉川を含め、本件工作物に籠城を開始した者らは、櫓の補強工事を行い、火炎びんを製造し、木櫓及び鉄骨櫓に火炎びん等を搬入し、かつ、鉄骨櫓に各セクトの旗を掲出した上、櫓から昼夜監視活動を行い、火炎びんの投てき訓練などを繰り返して、死守戦に向けた準備を進めた。そして、同年二月三日には、鉄骨櫓の上から発煙筒様の物一本を警察車両に向けて投てきし、同月八日には、同じく鉄骨櫓の上から火炎びん合計三本を空港公団が建設中の監視塔及び警戒中の警察官に向けて投てきし、同月一六日には、同じく鉄骨櫓の上から火炎びん合計二九本を投てきした。この他にも空港公団職員、作業員、警戒中の警察官に対し、パチンコ様の用具による鉄筋片等を投てきするなど、暴力主義的破壊活動等を繰り返し、本件使用禁止命令に違反し続けた。
このように、暴力主義的破壊活動者七名が本件工作物に籠城して実力で封鎖・除去処分に抵抗する態勢を整えていたところ、過激派集団各派は、その機関紙において、運輸大臣の緊急措置法に基づく本件工作物の封鎖・除去処分に対しては、武装闘争を行うことを表明していた。
以上のような事実に鑑みて、被告運輸大臣は、本件工作物が暴力主義的破壊活動等に関連して集合の用に供されている蓋然性が高く、緊急措置法三条六項が規定する封鎖措置または同条八項が規定する除去処分を行う要件を充足しているか否かについて検討を行う必要があると思料し、独自に調査を開始すると共に、関係行政機関と協議を開始し、本件工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されているか否か、また、封鎖措置若しくは除去処分を行う必要があるか否かの判断を下すための検討作業を開始した。平成二年三月一四日、被告運輸大臣は、同法三条一六項にもとづき、警察庁長官に意見の提出及び資料の提供を求め、同日、同長官から右資料の提供を受けると共に、本件工作物が同法三条八項の要件を具備しているとの意見の提出を受けた。被告運輸大臣は、右警察庁提供資料を子細に検討し、また独自の調査も併せて行った結果、本件工作物が緊急措置法三条八項の要件を充足していることは明らかであると認められたことから、同月一六日、同項にもとづき本件工作物を除去することを決定し、空港公団に本件除去処分の実施を命ずると共に、警察庁長官に警備を依頼し、同月一九日から本件除去処分を行ったものである。
平成二年三月一九日早朝、緊急措置法七条一項により封鎖措置等を行う権限を有する職員として指定された運輸省航空局飛行場部新東京国際空港課(以下「空港課」という。)の高橋朋敬課長(以下、「高橋課長」という。)ほか二名の運輸省職員、同法六条一項により右措置の実施にあたることとされていた多数の空港公団職員及び右公団から作業を請け負った民間業者の作業員は、本件除去処分を実施するため、本件工作物付近に赴き、一方、被告運輸大臣から警備要請を受けていた千葉県警察本部長指揮下の多数の警察官が現場周辺の警戒警備に当たった。同日午前六時一五分ころ、高橋課長は、補佐官をして、本件工作物に向けて、拡声器及び横断幕を使用して、緊急措置法三条八項に基づく本件工作物に対する除去処分の実施及び同条一〇項に基づく本件工作物に籠城していた者に対する退去命令の一回目の通告をなさしめ、空港公団職員等が本件除去処分のための整地作業を開始した。
しかるに、本件工作物に籠城する七名は、右退去命令に従わず、原告吉川が木櫓に、他の六名は鉄骨櫓にそれぞれ立てこもり、運輸省職員、空港公団職員等及び警察官に向けて、火炎びん、鉄筋片等の投てき、パチンコ器具による石塊の発射などを開始した。
そのため、空港公団職員等により、鉄骨櫓上部に火炎びん等の投てきを防ぐための防護ケージが被せられたほか、火炎びん等の投てきがなされた際に、警察官らにより、各櫓に対して高所放水車による放水がなされた。しかし、前記七名は、これに対して、右ケージの鉄網を破るなどして、両櫓上から、多数のブロック片等を投てきし続け、これらは空港公団が作業を中断した同日午後五時三〇分ころまで続いた。
翌二〇日は、午前六時一五分ころに、再度、退去命令を通告して、空港公団により除去処分の作業が開始されたが、その直後から、右七名は、前日同様、櫓上からブロック片等を、さらに、木櫓上の原告吉川においては、火炎びんを投てきする妨害・抵抗を続けた。そのため右七名が右の物を投てきするなどした際に、警察官らにより高所放水車による各櫓への放水がなされ、さらに、空港公団職員等は、同日午前七時ころ、防護ケージを鉄骨櫓上部に被せた上、その支柱を切断し、予め掘ってあった穴にクレーンで櫓上部を降ろし、同所において、午前八時一四分から同三二分にかけて同櫓に立てこもっていた六名が、また、木櫓上で午前一〇時二一分ころに原告吉川が、それぞれ凶器準備集合、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕された。右七名は、逮捕されるまでの間、ブロック片を投てきするなどの抵抗行為を続けていた。
翌二一日午前九時五〇分ころ、運輸省及び空港公団は、本件工作物の除去処分の作業を終了した。
(2) 本件除去処分の緊急措置法三条八項の要件充足性
ア 緊急措置法三条一項一号の使用禁止命令に係る本件工作物が当該命令に違反して多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されている場合であること
当該工作物が使用禁止命令に違反して多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されたか否かを判断するに当たっては、使用禁止命令発出時における要件充足性の判断と同様、客観的に当該工作物が使用禁止命令発出後、右集合の用に供されていると認められれば足りると解すべきである。また、当該工作物自体が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されているか否かは、当該工作物において暴力主義的破壊活動者の事実としての集合が現になされているか否かで判断するのではなく、当該工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供するものとして使用されている状態が継続しているか否かによって判断されるべきであり、緊急措置法三条八項の規定によって、当該工作物を除去するとの決定をなした時点で収集されていた資料等により、暴力主義的破壊活動者が当該工作物を集合の用に供しているという状態が認められれば、その後、当該工作物の使用状況に変化があったと認められる事情がない限り、当該工作物は引き続き暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていると認められるのである。
(ア) 暴力主義的破壊活動者の認定
本件使用禁止命令発出後、同命令発出前から本件工作物に常駐していた<1>原告吉川に加え、平成二年一月二八日ころからは、警察によって現認され、氏名が判明した<2>鈴木宏明、<3>徳田真貴子の二名及び氏名不詳の者四名が籠城を開始した。なお、右記七名は本件工作物に閉じこもったまま出入りは一切ない。そして、右に掲げた<1>原告吉川は中核派に、<2>鈴木宏明は戦旗両川派に、<3>徳田真貴子は蜂起派に所属する者であることが確認されている。また、氏名不詳の四名は、その着用していたヘルメット等から、三名の者は、中核派に所属する者であるか、またはこれらの者と行動を共にする者であり、一名の者は、革労協に所属する者であるか、またはこれらの者と行動を共にする者であることは、優に認められることであった。なぜなら、中核派など過激派集団に所属する者は、集会、デモ等に参加するに際し、自らが所属する団体(セクト)の特徴を有するヘルメットを着用しているところ、右三名の者が着用していた白文字で「中核」と記載された白色ヘルメットは、中核派に所属する者が集会、デモ等において着用しているヘルメットと同様の物であり、右一名の者が着用していた白文字で「解放」と記載された青色ヘルメットは、革労協に所属する者が集会、デモ等において着用しているヘルメットと同様の物であることが認められる。これらのヘルメットは、その所属する過激派集団によって、色、文字等が厳格に峻別されており、およそ特定の過激派集団に所属する者や、右過激派集団の思想主張に賛同して行動を共にする者以外の者が、その過激派集団が使用しているヘルメットと同一の色で着色され、同一の文字が記載されたヘルメットを着用することはあり得ないのである。
したがって、ある特定の過激派集団が使用しているヘルメットと同一の色で、同一の文字が記載されているヘルメットを着用している者は、右過激派集団に所属する者か少なくともこれらの者と行動を共にする者であることは容易に推認できるところである。現に、右の氏名不詳者四名については、後日、中核派に所属している中山充、加納俊朗及び岡田知士並びに革労協に所属している竹田喜代美であることが明らかになっている。
a 中核派の本件使用禁止命令発出後の暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び活動状況
本件工作物に籠城していた原告吉川を含めた四名の者らが所属している中核派は、本件使用禁止命令発出後も、以下のとおり暴力主義的破壊活動等を継続する意思を表明している。
<1>「砦戦、機動戦、敵の防衛線全体を対象とする戦闘、武器と戦闘の高度化、大衆的怒りの高揚にふまえ革命的ゲリラ戦争と大衆的武装闘争の展開を巧みに結合し敵戦闘力の疲弊を強制し、せん滅においこんでいくようにたたかうであろう。」、「きっぱりと宣言するが、日帝・警察・運輸省・空港公団よ、お前たちが団結小屋の封鎖や強制撤去の攻撃を具体的に発動してくるならば、われわれは無制限・無制約の革命的武装闘争をとことん爆発させるだろう。」(平成元年一〇月二日付け中核派機関紙「前進」第一四五〇号)、<2>「天神峰現闘本部をはじめとする団結小屋を、何がなんでも守りぬく。革命軍のゲリラ攻撃の標的は、権力機関、二期工事に手を貸す一切のものにたいして無制限・無制約である。」(平成元年一〇月一六日付け「前進」第一四五二号)、<3>「成田緊急措置法粉砕、団結小屋を死守するぞ」、(平成元年一〇月三〇日付け「前進」第一四五四号)、<4>「成田緊急措置法には、より倍加された革命的ゲリラ戦争を!非合法的闘争形態を駆使し、革命的武装闘争、砦戦、機動戦、大衆的実力闘争を全面的に爆発させよ!」(平成元年一一月六日付け「前進」第一四五五号)、<5>三里塚反対同盟の現闘本部をはじめ、木の根育苗ハウス、三里塚闘争会館などの団結小屋に、指一本でも警察権力がふれようとするならば、われわれは、七一年駒井野砦戦、七八年横堀要塞戦を上まわる激烈な砦死守戦に決起する。」(平成元年一一月一三日付け「前進」第一四五六号)、<6>「われわれは、この秋・冬を成田治安法粉砕・団結小屋死守、収用委員再任命絶対阻止の一大決戦として総力でたたかいぬく決意である。」(平成元年一一月一五日付け中核派全学連現地闘争本部機関紙「週刊三里塚」第三〇七号)、<7>「団結小屋実力阻止戦闘を徹頭徹尾たたかいぬく。団結小屋への破壊攻撃に対しては、最大級の報復の鉄槌を加える。」(平成元年一一月二〇日付け「前進」第一四五七号)、<8>「成田緊急措置法を実力粉砕せよ」、「成田緊急措置法(成田治安法)を発動し、国家暴力で団結小屋を破壊し、これと一体となって収用委員会再任命を一気に図ろうとする一切の策動を断じて許さない。」(平成元年一一月二七日付け「前進」第一四五八号)、<9>「成田緊急措置法に一大報復を」、「われわれは、砦攻防戦と一体となってすき(ママ)じい怒りの強襲戦、大反撃に立ちあがるであろう。」(平成元年一二月四日付け「前進」第一四五九号)、<10>「成田治安法攻撃にたいしては、徹底抗戦でたたかう。天神峰現闘本部や各団結小屋に手をかけるならかけてみろ。無制限無制約のゲリラ戦争が爆発するだろう。」(平成元年一二月二四日付け中核派全学連現地闘争本部機関紙「日刊三里塚」第三二八五号)、<11>「わが中核派は『天神峰現闘本部を体をはって死守する』と宣言した反対同盟の決意に全力でこたえる決意だ。血盟をかならずはたしぬく。九〇年二期決戦の第一の課題は、現闘本部をはじめとする団結小屋を断固死守するたたかいである。」「天神峰現闘本部防衛のたたかいを強化しよう。」(平成二年一月五日付け「日刊三里塚」第三二八六号)、<12>「木の根育苗ハウス砦死守戦強化を」「木の根育苗ハウスで、二月三日午前六時四十分、弾圧のために接近してきた警備車両にたいして火炎ビンがオレンジの弧を描いて飛んだ。」「木の根育苗ハウス死守戦は成田治安法を真向から迎え撃つ決戦だ。激突は待ったなしである。砦死守戦体制をさらに強化し、断固勝利しよう。」(平成二年二月一九日付け「前進」第一四六八号)、<13>「木の根育苗ハウス死守戦の爆発で成田治安法爆砕せよ」「砦戦士が火炎ビンで反撃」(平成二年二月二六日付け「前進」第一四六九号)、<14>「日帝権力が昨年の九月十九日に成田緊急措置法(成田新法)を発動して以来やろうとしている問答無用の暴力的攻撃が人民のいかにすさまじい怒りの爆発と正義の戦争を呼び起こすか、敵はいやというほど思い知ることになるだろう。わが革共同・革命軍は、不屈に頑張っている三里塚反対同盟と連帯して、この二~三月、戦争につぐ戦争、攻勢につぐ攻勢をたたかいとり、三里塚をめぐる敵との力関係を革命的にくつがえしてみせる。」(平成二年三月五日付け「前進」第一四七〇号)、<15>「わが革命軍の指針は鮮明だ。開始したゲリラ戦のラッシュを徹底的にエスカレートさせ、より間断なくたたきつけることだ。三里塚闘争をめぐって成田治安法発動、さらには破防法発動準備という激しいやり合いの過程に突入した以上、一歩も引かずに、攻勢に打ってでることだ。」「すでに一か月にわたって決起している木の根砦育苗ハウス死守隊の戦士に続き、木の根砦防衛、三里塚闘争会館防衛のたたかいに決起しよう。」(平成二年三月一二日付け「前進」第一四七一号)。
中核派は、右意思表明に沿って、次のとおり暴力主義的破壊活動等を実行した。
<1>平成元年一一月一六日、千葉市の千葉県議会事務局次長宅に時限発火装置を設置し、全焼させた(第三類型)。同事件について中核派は、「革命軍軍報」において、「成田治安法発動に爆発的猛攻を!」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<2>平成元年一二月七日、千葉市の千葉県企画部主幹宅に時限発火装置を設置し、全焼させた(第三類型)。同事件について中核派は、「革命軍軍報」において、「東峰団結会館撤去に報復の第一弾」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<3>平成二年一月一六日、神奈川県厚木市の三井建設厚木作業所に時限発火装置を設置し、プレハブ事務所と隣接の宿舎、作業棟及び風呂場を全焼させた(第四類型)。同事件について中核派は、「革命軍軍報」において、「天神峰現闘本部破壊への報復の第一弾」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<4>平成二年一月二三日、千葉県佐倉市の京成電鉄成田線臼井駅付近を走行中の津田沼発成田行き普通電車に時限発火装置を設置し、座席シート及び車内の壁等を焼損させ、列車の運行を妨害した(第二類型)。<5>同日、東京都葛飾区のJR東日本常磐線金町駅付近を走行中の上野発取手行き快速電車を爆破し、ガラス窓、座席シート及び網棚を破損させ、列車の運行を妨害した(第二類型)。<6>同日、東京都立川市のJR東日本中央線立川駅に停車中の電車の座席に石油をまき、車両を焼損させ、列車の運行を妨害した(第二類型)。<7>同日、東京都国立市のJR東日本南部線保谷駅付近を走行中の電車に時限発火装置を設置し、車両を焼損させ、列車の運行を妨害した(第二類型)。<8>同日、神奈川県川崎市のJR東日本横須賀線新川崎駅に停車中の電車に時限発火装置を設置し、車両を焼損させ、列車の運行を妨害した(第二類型)。<9>同日、神奈川県横浜市のJR東日本横浜線十日市場駅付近を走行中の電車に時限発火装置を設置し、車両を焼損させ、列車の運行を妨害した(第二類型)。<10>同日、横浜市のJR東日本根岸線本郷台駅付近を走行中の電車に時限発火装置を設置し、車両を焼損させ、列車の運行を妨害した(第二類型)。以上の<4>ないし<10>の事件について、中核派は、「革命軍軍報」において、「天神峰封鎖の暴挙に怒りの報復弾」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<11>平成二年二月一七日、東京都八王子市の丹木駐在所わきに駐車中の軽自動車に時限式発火装置を設置し、木造平屋建の駐在所とプレハブ倉庫、軽自動車二台を全焼させた(第三類型)。同事件について中核派は、「革命軍軍報」において、「三里塚団結小屋破壊に怒りの猛攻」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<12>平成二年二月一九日、千葉県八千代市の運輸省職員自宅に時限発火装置を設置し、車庫内の乗用車を全焼させ、併せて同居宅及び車庫並びに隣家の車庫を焼損させた(第三類型)。同事件について中核派は、「軍報」において、「木の根育苗ハウスをはじめとする団結小屋破壊攻撃と二~三月千葉県議会における収用委員再建策動に対する先制強襲である。」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<13>平成二年二月二七日、東京都世田谷区の清水建設社長宅の玄関と裏口付近に時限式発火装置を設置し、木造二階建住宅及び物置等を半焼させた(第四類型)。同事件について中核派は、「革命軍軍報」において、「団結小屋破壊に怒りの報復弾炸裂」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。<14>平成二年三月一四日、東京都港区の全日本航空事業連合会、全国空港ビル協会等のゴミ集積所等を焼損させた(第四類型)。同事件について中核派は、「前進」において、「二期工事の下手人集団に正義の鉄槌を打ちおろした」とし、自らの犯行であること及びその犯行の目的を明らかにしている。
b 戦旗両川派、革労協及び蜂起派の本件使用禁止命令発出後の暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び活動状況
三支連を通じて中核派と共闘関係にある戦旗両川派、革労協及び蜂起派の各過激派集団は、別紙二に記載したとおり、本件使用禁止命令発出前において、暴力主義的破壊活動等に関する攻撃的な意思を数多く表明し、かつ、戦旗両川派及び革労協は、数々の暴力主義的破壊活動等を敢行していた上、同命令の発出後も、中核派と同様に強くこれに反発して、戦旗両川派は、同派の機関紙等において、<1>「-声明-成田治安法使用禁止命令発動を弾劾する」「われわれは、…実力で団結小屋を守りぬき、たたかうことをここに宣言する。とりわけわが東峰団結会館を生命にかえても守りぬき、もし国家権力・機動隊が手をかけようとするものなら、八七年木の根砦死守戦を上回る空前の武装闘争でこれをはね返す決意である。」(平成元年一〇月五日付け「戦旗」第五六七号)、<2>「成田治安法粉砕!東峰決戦勝利」「…東峰決戦は、敵国家権力の暴力的撤去攻撃に対して、東峰団結会館を実力で死守するたたかいである。木の根砦死守戦を上回る徹底抗戦をかちとらなければならない。」「…東峰決戦を武装闘争の発展と全人民的決起の巨大な橋埠堡として位置づけ、死力をつくしてたたかいぬこうではないか。」(平成元年一〇月二〇日付け「戦旗」第五六八号)、<3>「東峰団結会館要塞化工事に完全勝利」「空港公団は、東峰要塞化の闘いに対して「運輸省・公団への明確な挑戦」と受けとめた。まさしくそのとおりだ。国家権力の成田治安法発動-団結小屋撤去攻撃に対する我々の断固たる戦闘宣言である。一切の準備を完了させ、武装対峙に持ち込むことによって団結小屋決戦の主導権をわれわれが握ったのだ。武装対峙で死守態勢をとる中で、取りに来るならいつでも来い!しかし機動隊の生命の保障はない。我々は生命を賭して東峰団結会館を死守する!以上が我々の決意であり、権力に対する挑戦の中身である。」(平成元年一〇月二四日付け現地ビラ「三里塚の炎」第三八一号)、<4>「治安法迎え撃つ三基のヤグラ建つ」「東峰団結会館を拠点に、『用地内』反対同盟と命運をともにし土地収用攻撃を粉砕する武装闘争を炸裂させよ。戦旗派は東峰団結会館を死守してたたかいぬく」(平成元年一一月五日付け「戦旗」第五六九号)と主張し、革労協は、同派の機関紙である「解放」において、<1>「われわれは成田治安法適用と真向から闘い、ゲリラ戦パルチザン戦の爆発を先頭に三里塚決戦勝利し、必ず二期を爆砕し廃港にたたきこむ。」「成田治安法適用粉砕し、二期決戦勝利を」(平成元年一〇月一日付け第四六二号)、<2>「『用地』内-拠点防衛し、武装闘争の嵐を」「この闘いは、反対同盟と共闘党派・共闘組織の団結をもっての『用地』内拠点の絶対防衛とすさまじい武装闘争の強化を一段と深化するものである。」(平成元年一一月一五日付け第四六五号)と主張している。
その上、三支連主催の集会において、各過激派集団に所属する者が、さらなる暴力主義的破壊活動等を継続する意思を表明しているのである。しかも、戦旗両川派、革労協及び蜂起派は、本件工作物を死守するとして、その代表を「死守隊」として、本件工作物に籠城させ、中核派と一体となって武装闘争を行う意思を表明し、さらには、本件工作物から暴力主義的破壊活動等を実行しているのである。
c 過激派集団による集会における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況
平成二年二月三日、三支連が主催した「二期工事実力阻止、成田治安法粉砕、話し合い策動粉砕現地集会」では、千葉県山武郡芝山町菱田において一七五名(そのうち中核派一〇五名、革労協二四名、戦旗両川派二名、蜂起派三名)を集め、その中で蜂起派に所属する寺崎修一が、「本日育苗ハウス死守隊は、実力武装闘争で闘いを始めた。」「県知事は、二月から三月にかけて収用委再任命策動を目論んでいるが、実力で阻止する。」と、中核派に所属する者が、「本日木の根砦戦士達は、反撃を開始した。」、「『一・八ロケット弾戦闘』と都心ゲリラで武装蜂起し、成田で空前の爆発を勝ちとる。」と、革労協に所属する者が、「本日の木の根育苗ハウスの闘いは、八七年から八九年にかけて成田治安法と真っ向から闘い抜いてきたあの戦闘的な勝利を引き継いだ闘いであり、敵・権力に対する明確な回答である。」と、戦旗両川派に所属する者が、「『六時四〇分』をもって開始された育苗戦士の闘いは、東峰団結砦に強行攻撃を仕掛けた権力・警察、運輸省、公団に対する火炎びん攻撃の第一歩である。我々も木の根死守戦士とともに断固闘う。」と主張している。
同月四日、三支連は同所に過激派集団等八九名を集め、「昨日、木の根育苗ハウスから火炎びんを投げ、死守態勢に入った」旨のアピールを行い、デモ行進では、「木の根砦戦士とともに闘うぞ」「成田治安法粉砕」「収用委員再任命阻止するぞ」とシュプレヒコールを行った。
以上のように、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派の各過激派集団はさらなる暴力主義的破壊活動等を継続していくことを標ぼうしているものである。
d 火炎びん等の投てきについて
本件工作物に籠城していた各過激派集団に所属する者及びこれらの者と行動を共にする者は、以下のとおり、本件工作物より火炎びん等を投てきしている。
<1>平成二年二月三日午前六時三九分ころ、鉄骨櫓上にいた四名中の一名が、警察車両に向けて赤色炎と白煙を発する発煙筒様の物一本を投てきした。この件について、中核派は「前進」において、「…木の根育苗ハウスで、二月三日午前六時四〇分、弾圧のために接近してきた警備車両に対して火炎ビンがオレンジの弧を描いて飛んだ。不退転の決意で死守態勢につく砦戦士からの怒りの反撃である。」「日帝権力は、二期強行と天皇即位儀式のために三里塚闘争解体に全体重をかけ、木の根育苗ハウス破壊から収用委再任命へ突進しようとしている。怒りの報復戦に立て。」と表明し、革労協は「解放」において、「二月三日早朝六時四〇分、わが解放派戦士を先頭とする木の根・育苗ハウス死守戦士たちは、木の根団結砦・東峰団結会館死守戦、そして反対同盟総決起で闘われた現闘本部攻防戦をひき継ぎ断固たる死守戦に突入した。」「一面銀世界の木の根台地に放たれた火炎ビンの赤い炎は、『本年度中に成田をきれいにする』という九・一九治安法攻撃=敵日帝の三里塚闘争破壊に対する断固たるわれわれの鉄の回答だ。」、「政府・機動隊よ!来るなら来い!われわれはそれを全力で迎えうち、木の根育苗ハウスに一指でも触れようものなら、目に物見せてやる!」と表明している。
<2>平成二年二月八日午前九時一九分ころ、監視塔建設を行っていた空港公団職員に向けて、鉄骨櫓上にいた二名のうち一名が、先端に火のついた火炎びん様の物一本を投てきし、同日午前九時三五分ころ、警察官に向けて、鉄骨櫓上にいた二名のうち一名が、火炎びん様の物一本を投てきし、さらに、同日午前一〇時一八分ころ、新聞記者に対し、鉄骨櫓上にいた二名のうち一名が火炎びん様の物一本に火をつけ、もう一名が投てきした。なお、同日火炎びん様の投てきを行った際に鉄骨櫓の上にいた一名については、戦旗両川派に所属する鈴木宏明と確認されている。この件について、中核派は「前進」において、「成田治安法攻撃に敢然と立ち向かう木の根育苗ハウスで二月八日、破壊のために接近してくる私服車めがけて怒りをこめた第二弾の火炎ビンがたたきつけられた。火炎ビン攻撃は、二月三日の攻撃に続く断固たる反撃であり、国家暴力で三里塚闘争を破壊しようとする日帝権力への心底からの怒りの爆発である。」と表明している。
<3>平成二年二月一六日、午後五時五九分ころから同日午後六時五〇分の間、鉄骨櫓の上にいた六名のうち数名が火炎びん様のもの(発煙筒を燃やした感じの濃いピンク色の火がついたもの)二九本を同櫓の西側及び南東方向にむけて投てきした。
以上のとおり、本件工作物に籠城していた過激派集団に所属する者、または、これらの者と行動を共にする者らは、火炎びん様の物を警察官または空港公団職員等に向けて投てきする暴力主義的破壊活動等を実行した(第三類型)上、さらなる暴力主義的破壊活動等を実行することを宣言していたものである。
e 右の各事実を総合して判断するに、中核派は、本件使用禁止命令発出後も一貫して、新空港突入・新空港廃港というその目標とするところを達成するために、暴力主義的破壊活動等を実行することを標ぼうし続けてきたばかりか、実際にも多数回にわたって暴力主義的破壊活動等を実行してきた団体であることが認められ、その事実は、本件除去処分の時点においても何ら変わるところはなく、本件除去処分時においても、中核派が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が極めて高い集団であったことは明白である。また、三支連を通じて共闘関係にある戦旗両川派、革労協及び蜂起派も中核派と同様に、その機関紙及び集会において、暴力主義的破壊活動等を実行することを標ぼうし続け、実際に本件工作物において暴力主義的破壊活動等を実行していることが認められ、戦旗両川派、革労協及び蜂起派が暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が極めて高い集団であることは明白である。そして、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者は、各過激派集団の思想主張に賛同し、その掲げる目標の実現に向けて活動している者であることは明白であるから、これらの者が将来にわたって暴力主義的破壊活動等を行う蓋然性が極めて高いことも論を待たないところである。
その上、本件工作物に籠城する七名のうち、<1>原告吉川が暴力主義的破壊活動等の検挙歴を有しているほか、<2>鈴木宏明も、昭和六〇年九月一六日公務執行妨害罪の暴力主義的破壊活動等の検挙歴を有することが認められる。したがって、本件除去処分の要件充足性を検討する際に、本件工作物に籠城する中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者全員を暴力主義的破壊活動者と認定した被告運輸大臣の行為は、極めて合理的な判断であることは明白である。
(イ) 多数の暴力主義的破壊活動者の集合
本件使用禁止命令以前から本件工作物に常駐していた中核派に所属する原告吉川に加え平成二年一月二八日ころから、戦旗両川派に所属する鈴木宏明など六名が本件工作物に籠城を開始し、右記七名は、本件工作物に閉じこもったまま出入りは一切ないことが確認されており、この事実のみをもってしても、本件工作物が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていることは明白であるが、なお、以下のとおり同日から同年二月一六日までの間、右吉川ら七名の暴力主義的破壊活動者が本件工作物内にいることが、警察によって確認されている。
(平成二年)
<1> 一月二八日 午前八時五一分、木櫓に原告吉川が確認された。午前九時一三分から午前一〇時五五分までの間、紺色防寒着を着装した男(以下「男A」とする。)、白色ヘルメット(前面に中核、背面に全学連二期決戦行動隊と黒字で記載あり)を着装した男(以下「男B」とする。)、白色ヘルメット(前面に中核、背面に全学連、右側面に三里塚勝利!左側面に反帝反スタと黒字で記載あり)を着装した男(以下「男C」とする。)合計三名並びに女一名(以下「女D」とする。)が、鉄骨櫓において、「中核」「解放」「戦旗」と記載されたそれぞれの旗の掲出作業を行うのが確認され、木櫓上に原告吉川が確認された。
午前一一時五四分から午後八時〇〇分までの間、鉄骨製櫓上に男A、男B、男C、女D、白色フルフェイスヘルメット(前面上部に中核、前面下部に全学連、右側面にカクマルセン滅、左側面に天皇制打倒、背面に死守隊と黒字で記載あり)を着装した者及び男一名が確認され、同櫓上に、角材、単管パイプ、消化器、一升びん、ポリタンク、電気ドラム及びベニヤ板等が搬入され、ノコギリ及び金槌で釘を打っているような音が確認され、木櫓上に原告吉川、男C及び鉄骨櫓上で確認された男一名が確認され、同櫓の補強及び「中核」と記載された旗竿の取り付け作業を行うのが確認された。
一月三一日 午前八時五六分から午前一〇時三五分までの間、鉄骨櫓上に男四名が確認された。
午後零時四七分から午後四時〇七分までの間、鉄骨櫓上に男二名が確認され、ブロック及び板が搬入されるのが確認された。
二月二日 午前一一時一五分から午後四時三八分までの間、鉄骨櫓上に少なくとも男三名(このうち一名は「中核」と記載されたヘルメットを着装)、女一名及び性別不明の者一名が確認され、「中核」と記載された旗竿を振り、金槌で釘様の物を打ちつけている音が確認され、木櫓上に「中核」と記載されたヘルメットを着装した男一名が、トタンを使用して同櫓の補強作業を行うのが確認された。
二月三日 午前八時〇〇分から午後四時四六分までの間、鉄骨櫓上に「中核」と記載されたヘルメットを着装した男三名、「蜂起」と記載されたヘルメットを着装した女一名、「戦旗」と記載されたヘルメットを着装した男一名及び「解放派」と記載されたヘルメットを着装した女一名合計六名が確認され、「中核」及び「解放」と記載された旗竿を振るのが確認され、木櫓上に男一名が確認された。
二月四日 午前九時三三分から午後四時一三分までの間、鉄骨櫓上に男四名(このうち二名は「中核」と記載されたヘルメットを着装)及び女一名が確認され、「中核」と記載されたヘルメットを着装した男一名が、「中核」と記載された旗竿を振るのが確認され、木櫓上に男一名が同櫓上の見張小屋を修理するのが確認された。
二月五日 午前八時五七分から午後一時五五分までの間、鉄骨櫓上に「中核」と記載されたヘルメットを着装した男一名及び女一名が確認され、木櫓上に「中核」と記載されたヘルメットを着装した男一名が確認された。
午後二時三七分から同三九分までの間、鉄骨櫓上で確認された男が、本件工作物西側の立木の枝の伐採作業をするのが確認された。
二月六日 午前九時三二分から午後四時四五分までの間、鉄骨櫓上に「中核」と記載されたヘルメットを着装した男二名及び「中核」と記載されたヘルメットを着装した性別不明の者一名、「蜂起」と記載されたヘルメットを着装した女一名、「戦旗」と記載されたヘルメットを着装した性別不明の者一名並びに「解放派」と記載されたヘルメットを着装した性別不明の者一名が確認され、このうち四名の者が、同櫓上から何かを投てきするのが確認された。
二月七日 午前八時一〇分から午後三時一〇分までの間、鉄骨櫓上に「中核」と記載されたヘルメットを着装した男三名のほか、男女一名ずつ合計五名が確認され、全員が、同櫓上から何かを投てきするのが確認され、木櫓上に原告吉川が板二枚を搬入するのが確認された。
二月八日 午前八時二〇分から午後五時〇〇分までの間、男二名及び性別不明の者三名合計五名が鉄骨櫓上に確認され、ブロック及びベニヤ板の搬入作業を行うのが確認された。
また、午前九時一九分、同三五分、午前一〇時一八分に同櫓上から火炎びんをそれぞれ一本ずつ投てきするのが確認された。
二月九日 午前九時一六分から午後四時四八分までの間、鉄骨櫓上に六名の者(このうち二名が「中核」と記載されたヘルメットを着装)が確認され、コンクリートブロック様のものが搬入され、全員が、同櫓上から石様の物及びびん様の物を投てきするのが確認された。
二月一〇日 午前一一時三分から午後零時一〇分までの間、鉄骨櫓上に「中核」と記載されたヘルメットを着装した男一名及び性別不明の者三名合計四名が確認された。
午後零時四三分から午後五時二四分までの間、鉄骨櫓上に性別不明の者一名が確認され、「中核」と記載された旗竿を振り、何かを投てきするのが確認された。
午後零時四三分から午後五時二四分までの間、鉄骨櫓上に男一名が「中核」と記載された旗を振り、パチンコ様のもので何かを投てきするのが確認され、木櫓の上に原告吉川が確認された。
午後八時四一分から午後一〇時〇四分までの間、鉄骨櫓上に六名の者が確認され、全員が、何かを投てきするのが確認された。
二月一二日 午前九時〇〇分から午後五時二四分までの間、鉄骨櫓上に中核派に所属する者三名、戦旗両川派に所属する者一名、革労協に所属する者一名及び蜂起派に所属する者一名合計六名が確認され、「中核」「全学連二期決戦行動隊」「戦旗」「蜂起」と記載されたそれぞれの旗の掲出作業を行うと共に、投石及び火炎びん投てき訓練と思料される木の棒の投てき等を行うのが確認され、木櫓上に原告吉川が櫓の補強作業及び監視活動を行うのが確認された。
二月一四日 午前六時一一分から午前八時五〇分までの間、鉄骨櫓上に三名の者が確認され、「解放」及び「戦旗」と記載されたそれぞれの旗を振るのが確認された。
二月一六日 当日の火炎びん様の物の投てきについては、前述したとおりである。
二月一七日 午前六時〇四分から午前九時までの間、鉄骨櫓上に男一名、女二名及び性別不明の者二名合計五名が確認され、「中核」と記載された旗の掲出作業及び「解放」と記載された旗を振るのが確認され、木櫓上に吉川が確認された。
以上のように、原告吉川をはじめ、多数の中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者が、本件使用禁止命令発出後も、同命令に違反して引き続き本件工作物に集合し続け、本件工作物が集合の用に供されていたことは明白である。
(ウ) 本件除去処分実行時における集合
本件除去処分の際にも、中核派に所属する者四名(そのうち一名は原告吉川)、戦旗両川派に所属する鈴木宏明、革労協に所属する者一名、蜂起派に所属する徳田真貴子の合計七名の暴力主義的破壊活動者は、あらかじめ本件除去処分に抵抗するため、大量の火炎びん、ブロック片、コンクリート片等を本件工作物の櫓上に用意した上、これを平成二年三月一九日から同月二〇日の二日間にもわたって投てきし、本件除去処分に従事した運輸省職員、空港公団職員等、また、警備に当たった警察官等の身体、生命に重大な危害を加えかねない極めて危険な行為に及んだものであり、第三類型に該当するものであるから、本件除去処分時においても本件工作物は、まさしく暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていたことは、疑うべくもない事実である。
(エ) 結論
以上のとおり、本件使用禁止命令発出後、少なくとも平成二年一月二八日から同年三月一九日までの約一か月半の間に、本件工作物には本件使用禁止命令に違反して暴力主義的破壊活動者が集合していた事実が認められる上、同年二月三日、同月八日及び同月一六日の三日にわたって本件工作物から暴力主義的破壊活動等を実行した事実が認められる。
すなわち、本件工作物については、本件使用禁止命令発出後も同命令に違反して多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていた事実が認められ、かつ、平成二年二月三日、同月八日及び同月一六日にも、多数の暴力主義的破壊活動者が本件工作物を現に集合の用に供して、本件工作物において暴力主義的破壊活動等を実行した事実が認められる。さらに、同年三月一九日、本件工作物において暴力主義的破壊活動等を実行するに至ったものであるから、本件工作物が緊急措置法三条一項の使用禁止命令に違反して同項一号に掲げる用に供されている場合に該当すると判断した被告運輸大臣の判断は、合理的であり、何らの違法も認められないことは明白である。
イ 当該工作物の現在及び既往の使用状況、周辺の状況その他諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められること
当該工作物が将来的に暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれの有無は、「当該工作物の現在又は既往の使用状況、周辺の状況その他の諸般の状況から判断」する必要がある。そして、暴力主義的破壊活動者の集合と暴力主義的破壊活動等との関連性が認められれば、それ自体で当該工作物が暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが推認されることになるから、右諸般の状況については、<1>当該工作物に出入りする者が所属する過激派集団が、当該工作物を要塞化し死守する、使用禁止命令に対し報復行為を行うなどの挑戦的な意思を表明しているか否か、<2>右意思表明のとおり、実際に当該工作物を要塞化・砦化したか、実際に当該工作物から火炎びんなどを投てきするなどしたか、または報復ゲリラを実施するなどの暴力主義的破壊活動等に該当する行為を実行したか否か等の事情を総合的かつ具体的に判断して決すべきである。その上で、右のおそれが「著しい」と認められる場合とは、右<1>の過激派集団が使用禁止命令に反発して、当該工作物を要塞化し死守するなどの挑戦的な意思を表明していることに加えて、右<2>の意思表明のとおり、実際に当該工作物を要塞化・砦化したか、または、実際に暴力主義的破壊活動等に該当する行為を実行したと認められるような場合を想定しているものである。そこで、以下、本件工作物について、暴力主義的破壊活動者の現在及び既往の使用状況等、本件工作物に対する使用禁止命令に反発した意思表明状況、右意思表明の実行状況の順で、本件除去処分が右要件に合致したものであることについて主張する。
(ア) 本件工作物の現在又は既往の使用状況
本件工作物は、昭和五四年の建設以降、一貫して中核派の常駐拠点として使用されてきたところであり、建築及び増改築作業にはことごとく同派に所属する者が従事していることが確認されている。
そして、本件工作物については、中核派に所属する原告吉川をはじめ、合計七名の暴力主義的破壊活動者が常駐を開始し、本件使用禁止命令に違反して、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていたばかりか、平成二年二月三日、同月八日及び同月一六日には、本件工作物から、暴力主義的破懐活動者による暴力主義的破壊活動等が実行されるに至っていたことが認められる。
(イ) 各過激派集団の使用禁止命令に反発した挑戦的な意思の表明
本件工作物には、本件使用禁止命令発出後も引き続き中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にしているものが籠城していたことが認められるところ、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派は使用禁止命令に反発した挑戦的な意思を表明し、右命令発出後、これに一斉に反発して、使用禁止命令を遵守する意思がないばかりか、緊急措置法を粉砕する等の挑戦的な意思を表明していた。
(ウ) 右挑戦的な意思表明の現実化
さらに中核派等は、使用禁止命令を遵守せず、これを実力で粉砕するなどの意思を表明するにとどまらず、これを実行に移していたことが認められる。
すなわち、右の意思表明に現れているように、本件工作物に対する本件使用禁止命令に反発し、本件工作物を死守する旨を宣言していた中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者は、本件使用禁止命令発出後、各過激派集団の旗を掲出したほか、櫓の補強工事を行って本件工作物を強化し、平成二年二月二日には、投石、火炎びんの投てき訓練までも行っていた。さらに、中核派は前記アの・aで述べた意思表明に沿って、同項で述べたとおり、数々の暴力主義的破壊活動等を実行してきた。
その上、平成二年二月三日、同月八日及び同月一六日に、火炎びん等を警察官及び公団職員等に向けて投てきする暴力主義的破壊活動等を実行した事実が認められた。
(エ) 右に述べたような、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派の各過激派集団の暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明及びこれを具体化する行動等に照らせば、右各派は、新空港を武装闘争により廃港に追い込むことを最大の活動目標としているところ、緊急措置法三条一項一号の使用禁止命令の履行を確保するために本件工作物に対して封鎖等の措置を講じようとすれば、右各派は、右目標の実現のため、右措置に抵抗して暴力主義的破壊活動等を実行する意図であることは明白であった。すなわち、右各派は、本件工作物に対する使用禁止命令を遵守する意思はなく、かえってこれに反発し、その報復として暴力主義的破壊活動等を行う意思を表明したにとどまらず、本件工作物の補強作業、さらには右意思表明を受けて暴力主義的破壊活動等を行ったものであり、それ自体で、本件工作物が暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいことは明らかである。
しかも、平成二年二月三日、同月八日及び同月一六日に本件工作物から行われた暴力主義的破壊活動等は、本件工作物の鉄骨櫓の上から火炎びん様の物を大量に投てきするというものであるところ、投てきされた火炎びん様の物は、あらかじめ周到な計画の下で用意され、本件工作物内に準備されていたものであるとしか認めようがなく、右の状況からは、本件工作物内には、相当量の火炎びん等の危険物が備え置かれていると推認でき、本件工作物が暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいことは疑うべくもない状況であったことは明らかである。
したがって、本件工作物は、現在または既往の使用状況その他諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められることは明らかである。
ウ 他の手段によっては同項の使用禁止命令の履行を確保することができないと認められること
(ア) 当該工作物が存在する限り、暴力主義的破壊活動者において、緊急措置法に基づく使用禁止命令やその他の措置を遵守せず、これを無視して当該工作物を実力で集合等の用に供するという強固な意思が外形的にも明確に認められる場合には、使用禁止命令の履行を確保するための代替手段がない場合に当たる。例えば、暴力主義的破壊活動者が、封鎖措置の対象となった工作物をこじ開けるなどして同工作物に立ち入り、これを集合の用に供している場合が典型例として想起されるが、本件のように当該工作物から火炎びん等が投てきされるなどの抵抗行為がある場合なども含まれると解される。なぜなら、当該工作物の使用禁止命令に対する実力による激しい抵抗は、当該工作物を闘争拠点とする過激派集団が、緊急措置法に基づく使用禁止命令やその他の措置を無視し、当該工作物が存する限りこれを実力で従前どおり集合の用に供するという強固な意思を表明したものにほかならないばかりでなく、当該工作物に対する並々ならぬ執着と使用禁止命令に対する徹底的な抗戦の意思も併せて表明したものと理解することができ、仮に逮捕活動等により内部に立てこもった者の抵抗を排除して封鎖等の他の措置を講じたとしても、当該工作物を拠点とする過激派集団は、すぐさま封鎖破り等の実力行使を行い、当該工作物の奪還を敢行するおそれが高く、このような状況において封鎖措置により使用禁止命令の履行を確保することはおよそ不可能といわざるを得ないからである。
(イ) そこで、右に述べたことを本件工作物についてあてはめると、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派は、本件使用禁止命令発出後も、右命令を無視して本件工作物に集合し、本件工作物を暴力主義的破壊活動者の集合の用に供し続け、本件使用禁止命令の履行が確保されたことは一度としてなかった。また、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派の本件工作物に対する使用禁止命令に対する挑戦的な意思の表明状況からして、本件工作物が存在する限り、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派が、今後も使用禁止命令を無視し、本件工作物を暴力主義的破壊活動者の集合の拠点として使用を続けることも明らかであった。しかも、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派は、現に、平成二年二月三日、同月八日及び同月一六日に本件工作物の鉄骨櫓の上から火炎びん等を警察官及び空港公団職員等に向けて投てきする暴力主義的破壊活動等に及んでいるのである。
このように、あらかじめ火炎びん等を多数準備するなど計画的で、かつ激しい抵抗行為を行ったのであるから、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者が緊急措置法に基づく使用禁止命令及びその他の措置を遵守せず、本件工作物が存する限り、これを実力を行使しても集合の用に供しようとする並々ならぬ執着は極めて容易に推認することができるものである。そして、本件工作物が新空港周辺における中核派の活動拠点であることに加え、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派の本件使用禁止命令発出後における同命令に反発した本件工作物に関連した意思の表明状況を併せ考慮すれば、本件使用禁止命令の履行を確保するために、本件工作物に対して緊急措置法三条六項が規定する封鎖等の措置を講じようとすれば、本件工作物またはその周辺から暴力主義的破壊活動者によるブロック片の投てきを始めとする極めて激しい物理的な抵抗が行われることが確実に予想される状態では、そもそも封鎖等の措置を講ずること自体が不可能であるとしかいいようがないのである。
しかも、仮に逮捕活動等により、本件工作物に対する封鎖等の措置を講じることを実力で阻止しようとする暴力主義的破壊活動者の抵抗を排除することができたとしても、右のように中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者が、本件工作物に対して、並々ならぬ執着と封鎖等の措置に対する徹底的な不遵守と抗戦の意思を表明している状況にかんがみれば、暴力主義的破壊活動者を排除し、一時は封鎖等の措置を講じることで本件工作物が多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されることを防ぎ、使用禁止命令の履行を確保することができたとしても、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者は、あらゆる手段を用いて封鎖破り等の実力行使に及び、本件工作物の奪還を敢行するおそれが極めて強く、結局、本件工作物に対する使用禁止命令の履行を確保することは不可能であると認められるのである。すなわち、仮に、本件工作物に対して封鎖等の措置を講じるにしても、その方法は、本件工作物の周囲を鉄板等で囲繞し、かつ警備の人員を配置する等の方法によらざるを得ないところ、中核派が過去に線路上に火炎車を突入させる、また機動隊を襲撃するなどの暴力主義的破壊活動等を敢行している事実にかんがみれば、各過激派集団が、板等で囲繞されて封鎖され警備員が配置されるなどした本件工作物に対して、封鎖破りの実力行使を行うことは容易に敢行可能な行為であり、また、中核派の本件工作物に対する徹底的な抗戦の意思を表明している状況を考慮すると、右のような実力行使に及んで本件工作物を奪還するおそれは極めて強いといわざるを得ないのである。
よって、本件工作物について、除去以外の封鎖その他の措置によって、使用禁止命令の履行を確保することがおよそ不可能であったことは明らかである。
エ 同法一条の目的を達成するために特に必要があると認められること
右要件は、除去処分が前記ア、イ、ウの三要件に適合すると共に、更に当該工作物を現実に除去することが緊急措置法一条の目的を達成するために「特に」必要であることを明らかにしたものと解される。これを本件工作物について検討すれば、本件工作物に籠城する中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派は、武装闘争など暴力主義的破壊活動等に関する意思を数多く表明し、かつ、中核派及び革労協に至っては、現実に新空港に対し火炎ロケット弾を発射し航空機の運航に支障を与える等の暴力主義的破壊活動等を繰り返し敢行しているところである。このような中、現に中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に所属する者並びにこれらの者と行動を共にする者により本件工作物から多量の火炎びん等を投てきするなどの激しい抵抗行為が行われ、さらに、相当量の危険物等が蓄積されていることがほぼ確実に推認される状況においては、本件工作物が現に暴力主義的破壊活動等の拠点とされており、これを除去し、新空港の安全を確保しなければ、今後、次に述べるとおり、空港利用者の身体、生命の安全を守るという人道的要請に応えることができず、また、国家的、社会経済的利益も維持することができなくなることは明白といわざるを得ない。
すなわち、新空港は昭和五三年五月に開港して以来その利用者は一貫して増加を続け、本件除去処分が実施された平成二年度において我が国国際航空需要の約七割を担うなど我が国の国際交流の拠点として基幹的機能を果たしている。したがって、本件除去処分により保護される利益は、年間二〇〇〇万人以上にも上る内外の空港利用者の安全のほか、我が国の基幹的国際交流機能など我が国の経済的社会的発展を支える上で不可欠な国家的利益である。
これをみれば、被告運輸大臣が、本件除去処分の実施が同法一条の目的を達成するために特に必要があると判断したことは適正かつ合理的なものである。
(3) 本件除去処分の準備作業の適法性について
原告らは、平成二年一月九日の新聞報道や、同年一月中旬ないし下旬ころ、本件工作物付近で空港公団による整地、造成作業等が行われたことなどを根拠に、被告運輸大臣が本件除去処分を右時点ですでに決定していた旨主張する。しかしながら、被告運輸大臣が本件工作物に対する除去処分の要件充足性を検討する必要性を認めたのは、同年一月二八日ころから、常駐者吉川に加え、六名のいずれも過激派集団に所属するとみられる者が本件工作物に籠城を開始し、ポリタンク、コンクリートブロック等が頻繁に搬入され、さらに同年二月三日には本件工作物の鉄骨櫓の上から発煙筒様のもの一本が警察車両に向けて投てきされ、同月八日には、同櫓から火炎びん三本が空港公団が建設中であった監視塔及び警戒中の警察官に向けて投てきされ、その後も同月一六日に火炎びん等が投てきされる事態が発生したことによるものであって、右事態の発生以前から本件除去処分の準備がなされていた事実はない。原告らのいう整地、造成工事等は、当時空港公団が本件工作物周辺で行っていた二期工事の一環としてなされたものであり、本件工作物に対する除去処分とは何ら関係のない工事である。
被告運輸大臣は、右事態の発生後、本件除去処分を決定した同年三月一六日以前の同年二月上旬から本件除去処分の準備作業を空港公団に行わせたことは事実であるが、緊急措置法三条にもとづく封鎖、除去等の処分は、その性質上、執行に際して様々な機材・資材の調達、周辺環境の整備等の作業が必要であり、処分決定後、直ちに執行に着手できるものではない上、本件工作物からは、平成二年二月八日以降、現に繰り返し多くの火炎びん等が投てきされていたことにかんがみれば、本件工作物に立てこもっている者らが、除去処分に抵抗して大量の火炎びん等を投てきすることは容易に推認できたことから、被告運輸大臣は、このような状況において、仮に除去処分を執行するとすれば、その執行に従事する者、これを警備する警察官及び本件工作物に立てこもっている者すべての生命・身体の安全を確保したうえで処分を執行するには周辺における準備作業が必要不可欠であると認め、除去処分の要件充足性の判断作業と並行して右準備作業を行わせたものである。本件除去処分の要件充足性の判断自体は、前述のとおり、同年三月一六日の除去処分決定当日までの本件工作物すべての状況をもとにして行ったものであることはいうまでもない。
以上のとおり、本件除去処分に際し、被告運輸大臣がその決定以前に空港公団に対して右処分の準備作業を行わせたことは、必要不可欠なものであった上、右作業によって、本件除去処分の要件充足性が何ら左右されることもないのであるから、本件除去処分の決定以前に右作業が行われたことを理由として、本件除去処分が違法であるとする原告らの主張は失当である。
(4) 本件除去処分の執行方法の適法性について
本件工作物に対して封鎖措置を行おうとした場合、これまでに多くの火炎びん等が投てきされていたことに鑑みれば、本件工作物に立てこもった者らは、右封鎖措置に激しく抵抗して、大量の火炎びん等を投てきすることが容易に推認できたから、このような状況において、本件工作物を封鎖することは、著しく困難と認められた。
さらに、封鎖措置に対する実力による激しい抵抗は、本件工作物を拠点とする各過激派集団の本件工作物に対する並々ならぬ執着と封鎖措置に対する徹底的な抗戦の意思の表明と理解することができ、仮に警察による逮捕活動等によって内部に立てこもった者の抵抗が排除された後に封鎖措置を行ったとしても、本件工作物を拠点とする各過激派集団は、すぐさま封鎖破り等の実力行使を行い、本件工作物の奪還を敢行するおそれが強く、このような状況において、封鎖措置により使用禁止命令の履行を確保することは到底できないと考えられた。
このように、本件工作物は、緊急措置法三条八項の要件を充足しており、封鎖措置等によっても使用禁止命令の履行を確保することができないと認められたものであるが、さらに除去処分の執行に際して、前記予想のとおり、現に本件工作物に立てこもった者らが大量の火炎びん等を投てきし、これに激しく抵抗するに至ったため、このような状況においては、本件除去処分の執行に従事する者、これを警備する警察官及び本件工作物に立てこもった者全ての生命・身体の安全を確保しつつ、本件除去処分を行う必要が極めて強く要請された。そこで被告運輸大臣は、安全確保のため、内部に立てこもり、退去命令に応じない者らが抵抗していた鉄骨櫓にケージを被せ、これを固定した上で切断させたものである。
したがって、被告運輸大臣が右状況下において、除去処分の執行に際して右のような方法を取ったことは、安全確保のために是認されるものであって、その結果、現に本件除去処分は安全に執行され終了したところであるから、執行方法が相当性を欠き、本件除去処分が違法であるとする原告らの主張は失当である。
(5) 結論
本件除去処分は、<1>緊急措置法三条一項の使用禁止命令に係る工作物が当該命令に違反して同項各号に規定する用に供されていたのであり、<2>当該工作物の現在及び既往の使用状況、周辺の状況その他の諸般の状況から判断して、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ、<3>他の手段によっては緊急措置法三条一項の使用禁止命令の履行を確保することができないと認められ、<4>緊急措置法一条の目的を達成するために特に必要であると認められるものである。よって、被告運輸大臣がなした本件除去処分は右四つの要件を満たしており、適法なものである。
四 被告県の主張
1 新空港及びその周辺における警察活動
(一) 千葉県警は、かねてから新空港建設反対闘争に伴って発生する不法事案の予防、検挙を図り、新空港の安全と航空機の円滑な運行を確保するため、新空港及びその周辺地域において警戒警備などの警察活動を行なってきた。
(二) 一方、本件工作物は、昭和五三年五月二〇日の新空港開港以後に、本件土地上に、中核派に所属する者が中心となって、新空港の第二期工事着工阻止を目的として建設されたものであり、新空港及びその周辺地域における千葉県警の警戒警備の範囲内に存在していた。
2 本件工作物をめぐる情勢
(一) 平成元年九月一九日、被告運輸大臣は本件工作物ほか八か所の工作物に対し、緊急措置法三条一項一号に基づき使用禁止命令を適用した。
(二) 右使用禁止命令の適用に対し、中核派は「前進」第一四五〇号の紙上において、九月一九日の緊急措置法発動に際し重大な決意をもってここに戦闘宣言を発するとして、直ちに非常臨戦態勢に突入して三里塚決戦に立ち上がるよう呼びかけを行った。
また、同派と新空港建設反対闘争において共闘関係にある革労協、戦旗両川派及び蜂起派の各派も本件使用禁止命令に対して強く反発した。
(三) そして、本件使用禁止命令の適用を受けていた九か所の工作物のうち、通称「東峰団結会館」に対し、平成元年一二月四日に、緊急措置法三条八項に基づく除去処分が適用され、更に平成二年一月一六日には、通称「天神峰現地闘争本部」に同法三条六項に基づく封鎖処分が適用されたことから、中核派をはじめとする各派は、本件工作物に対する封鎖、あるいは除去処分も近いとして、平成二年一月下旬、各派の代表から成る七名を「死守隊」と称して本件工作物に籠城させるに至り、同月二八日、死守隊は「運輸省、警察権力よ、来るならいつでも来い。木の根育苗ハウスを絶対死守し、東峰団結会館破壊、天神峰現闘本部封鎖の報復をいまこそやりぬいて見せる」との戦闘宣言なるものを発した。
(四) 平成二年二月三日、死守隊は右宣言を履践するごとく、本件工作物の視察警戒活動に従事していた警察車両に向けて、櫓上から火炎びんを投てきする違法行為を敢行した。
また、同日早朝から、本件工作物近くの山武郡芝山町菱田地先で、中核派をはじめとする各派で構成された三里塚闘争支援連絡会議は、「二期工事阻止、成田治安法粉砕」をスローガンとする現地集会を開催し、同集会の中で、右事案の発生直後に、「六時四〇分に火炎びんが飛んだ。」「国家権力によるだまし討ち攻撃は本当に許せない。木の根での火炎ビンは当然だ。一・八ゲリラに続き、報復戦を爆発させよう」等の発言を行った。
(五) 右違法行為の発生後、前記のとおり死守隊及び中核派をはじめとする各派の主張・方針をして、死守隊による火炎びん投てき等の違法行為及び死守隊の行動に呼応した各派によるゲリラ事件等の発生が予想されたことから、千葉県警では、発生のおそれのある死守隊による違法行為の採証活動等の捜査活動並びに本件工作物への凶器の搬入防止及び本件工作物周辺におけるゲリラ等の予防・検挙を目的とする警戒警備活動をそれぞれ強化した。
(六) こうした状況下の同年二月八日、死守隊は警戒中の警察官及び取材中の新聞記者の目前で数回に渡って火炎びんを投てきし、更に同月一六日には火炎びん約三〇本を投てきした。これら死守隊の行動に対し、中核派をはじめとする各派は、その機関紙などで右行動を戦果として報告すると共に、死守戦・武装闘争を引き続き徹底して行うことを表明した。
(七) また、同年三月二五日には、成田市東峰地先で、中核派等が支援する原告反対同盟主催の「三・二五全国総決起集会」の開催が予定されていた。
3 本件工作物に対する除去処分に伴う警察活動
(一) 平成二年三月一六日、運輸省航空局長から千葉県警察本部長に対し、緊急措置法三条八項に基づく本件工作物に対する除去処分の執行に伴う警備依頼がなされた。
右依頼に対し、千葉県警では、既に本件工作物からは、死守隊により火炎びんが多数投てきされていること及び中核派をはじめとする各派の主張から、右処分の執行に際しても違法行為等の発生が高度に予想されたことから、同処分の執行に際して所要の警戒警備を行うと共に、前記「三・二五全国総決起集会」の開催に向けたゲリラ等の予防・検挙を図るため、新東京空港警察署内に警備本部を、県下全警察署に署現地警備本部をそれぞれ設置し、警察官総数約六五〇〇名による警戒警備を行うこととした。
(二) 被告運輸大臣は、同年三月一九日午前六時一五分ころから、本件除去処分に着手した。
右処分の執行に対して、死守隊は、櫓上から同処分の執行に従事する多数の運輸省職員及び空港公団職員等並びに同処分の執行に伴う警戒警備の任務に従事する多数の警察官に対し、火炎びん、石塊、鉄筋片などを投てきし、あるいはパチンコ器具を使用して石塊を発射するなどして、右多数の運輸省職員、空港公団職員等及び警察官の生命、身体、財産に危険を生じさせると共に、その職務の執行を妨害した。
千葉県警は、これら違法行為を行っている死守隊に対し、拡声器を使用して、再三に渡って違法行為を止めるように警告したが、死守隊は警告を無視し、違法行為を継続した。このため、千葉県警では、原告吉川を含む死守隊七名を公務執行妨害、凶器準備集合、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の被疑者と認め、同月二〇日までに全員を現行犯逮捕した。
4 結論
以上のとおり、千葉県警は、成田空港建設反対闘争に伴って発生するゲリラ等の不法事案の予防、検挙を目的とする警戒警備等の警察活動を行い、更に原告吉川を含む死守隊の一連の違法行為に対し、逮捕活動を含む警察活動を行ったが、これら警察活動は、いずれも適法且つ適正な警察活動であり、原告らの被告県に対する請求は理由がない。
第三判断
一 本案前の申立てについて
1 本件除去処分取消請求について
前記前提となる事実のとおり、被告運輸大臣による本件除去処分は、平成二年三月一九日に着手され、同月二一日に終了したものと認められる。そして、除去が終了した以上、本件除去処分が取り消されたとしても、それによって、被告運輸大臣に本件工作物の再築等原状回復義務が生じるものではなく、また除去の適法性を前提とする後続手続が予定されているものでもない。したがって、原告らには、本件除去処分の取消しを求める法律上の利益は認められず、本件除去処分の取消請求は、訴えの利益がなく、不適法というべきである。
2 命令・勧告等措置請求について
(一) 原告らは、本件除去処分の後、被告空港公団が本件土地を占有しているのは除去処分と一体をなす違法な事態であるとして、被告運輸大臣に、空港公団に対して本件土地部分の占有を原告らに回復させるための命令・勧告等の適切な措置を講じることを求めている。
(二) しかし、本件工作物の除去が終了した時点で本件除去処分もまた終了しているのであって、その後の被告空港公団による本件土地の占有は本件除去処分とは別個の法律的原因に基づくものであり、したがって右占有につき被告運輸大臣に対する抗告訴訟の対象とすることはできない。
(三) また、いわゆる義務付け訴訟が認められるのは、行政庁の第一次的な判断権の尊重という観点から、行政庁が一定の行為をすべきこと又はすべからざることが法律上覊束されていて、作為・不作為義務についての行政庁の第一次的な判断を重視する必要がない程度に明白で、かつ、事前の司法審査によらなければ国民の権利救済が得られず回復し難い損害が生ずるというような緊急の必要性があると認められる場合に限られるというべきである。
しかるに、被告運輸大臣が、本件土地の占有を原告らに回復させるように命令等の措置を行うべきことについて法律上覊束されているとする根拠はなく、また、右措置を行うべきことについて、被告運輸大臣の第一次的判断を尊重する必要がない程度に明白であるということもできない。加えて、土地の占有侵奪に対しては、占有回収の訴えないしは本権に基づく妨害排除請求として、民事訴訟手続により、その占有や損害を回復することができるのであって、事前の行政訴訟による司法審査によらなければ国民の権利救済が得られず、回復し難い損害が生ずるというような緊急の必要性を認めることはできない。
(四) したがって、いずれにしても原告らの右訴えは不適法である。
二 緊急措置法の合憲性について
前記前提となる事実によれば、本件除去処分は緊急措置法三条八項に基づいてなされ、その前提となる本件使用禁止命令は同法三条一項一号に基づいてなされていることから、以下、本件除去処分との関係で、緊急措置法三条一項一号及び同条八項の合憲性を検討する。
1 緊急措置法の制定経緯
証拠(乙一の1・2、二、三の1ないし6、四の1・2、五の1ないし4、六)及び弁論の全趣旨によれば、緊急措置法の制定経緯として以下の事実が認められる。
(一) 昭和四一年七月四日、新空港の位置を成田市三里塚を中心とする地区とし、その規模につき敷地面積は一〇六〇ヘクタール程度とする旨の閣議決定がなされ、当初は昭和四八年度末を目途に、滑走路三本及び諸施設を完成する計画であったが、用地取得問題や反対運動等のため大幅に遅れ、ようやく被告運輸大臣は、昭和五二年一一月二八日付け官報において、新空港の供用開始日を昭和五三年三月三〇日とする旨の告示を行い、以後関係各方面において開港の最終的準備が進められた。ところが、その直前の同年三月二六日、新空港建設に反対する過激派約五〇〇名が、新空港に火炎車を突入させると共に、新空港の中枢部である管制塔内に乱入して管制機器を破壊する等の管制塔襲撃事件が起き、新空港の供用開始日を延期せざるを得なくなった。
(二) このような事態に対し、政府は、同月二八日、過激派集団の暴挙を厳しく批判し、新空港を不法な暴力から完全に防護するため抜本的対策を強力に押し進める旨の声明を発表した。また、国会においても、衆議院では同年四月六日に全会一致で、参議院でも同月一〇日に全党一致で、過激派集団の破壊行動を許し得ざる暴挙と断じた上、政府に対し、暴力排除に断固たる措置を採ると共に、地元住民の理解と協力を得るよう一段の努力を傾注すべきこと及び新空港の平穏と安全を確保し、我が国内外の信用回復のため万全の諸施策を強力に推進すべきことを求める「新東京国際空港問題に関する決議」をそれぞれ採択した。その間、被告運輸大臣は、同月七日付け官報によって、改めて新空港の供用開始日を同年五月二〇日とする告示をした。
緊急措置法は、右のような経緯を経て議員提案による法律として、新空港若しくはその機能に関連する施設の設置若しくは管理を阻害し、又は新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する暴力主義的破壊活動を防止するため、その活動の用に供される工作物の使用の禁止等の措置を定め、もって新空港及びその機能に関連する施設の設置及び管理の安全の確保を図ると共に、航空の安全に資することを目的(同法一条)に制定された。
2 緊急措置法三条一項一号及び同条八項の憲法一九条違反の有無について
緊急措置法三条一項一号及び同条八項は、その規定内容からすれば、憲法一九条が保障する思想及び良心の自由という人の内心を規制の対象とするものではなく、実質的にも新空港建設に反対する思想を持つことを禁圧する規定であるとは認められない。したがって、緊急措置法三条一項一号及び同条八項の規定は、憲法一九条に違反するものではない。
3 緊急措置法三条一項一号及び同条八項の憲法二一条違反の有無について
(一) 緊急措置法三条一項一号
憲法二一条の保障する集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならないが、他方、あらゆる場合に無制限に保障されなければならないものではなく、公共の福祉による必要かつ合理的な制限を受けることはいうまでもなく、このような自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を考量して決めるのが相当である。
緊急措置法三条一項一号について検討すれば、同号に基づく工作物使用禁止命令により保護される利益は、新空港又は航空保安施設等の設置、管理の安全の確保並びに新空港及びその周辺における航空機の航行の安全の確保であり、それに伴い新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保も図られるのであって、これらの安全の確保は、国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請されるところであり、他方、右工作物使用禁止命令により制限される利益は、多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物を集合の用に供する利益にすぎない。
しかも、前記のような緊急措置法制定の経緯に照らせば、暴力主義的破壊活動等を防止し、新空港等の設置、管理等の安全を確保することには高度かつ緊急の必要性があったということができ、規制区域内において暴力主義的破壊活動者による工作物の使用を禁止する措置を執り得るとすることは、集会の自由に対する公共の福祉による必要かつ合理的な制限であるということができる。緊急措置法によって図られる国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から求められる利益は存在しない、あるいは、右利益よりも右使用禁止命令によって受ける不利益の方が多大であるとの原告らの主張は是認できない。
また、同法二条二項にいう「暴力主義的破壊活動等を行い、又は行うおそれがあると認められる者」とは、同法一条に規定する目的や同法三条一項の規定の仕方、さらには、同項の使用禁止命令を前提として、同条六項の封鎖等の措置や同条八項の除去の措置が規定されていることなどに照らし、「暴力主義的破壊活動を現に行っている者又はこれを行う蓋然性の高い者」の意味と解される。そして、同条一項にいう「その工作物が次の各号に掲げる用に供され、又は供されるおそれがあると認めるとき」とは、「その工作物が次の各号に掲げる用に現に供され、又は供される蓋然性が高いと認めるとき」の意味に解すべきである。したがって、同項一号が過度に広範な規制を行うものとはいえず、その規定する要件も不明確なものであるとはいえない。
よって、緊急措置法三条一項一号は、憲法二一条一項に違反するものではない。
(二) 緊急措置法三条八項について
緊急措置法三条八項に規定する工作物除去の目的が、新空港又は航空保安施設等の設置、管理等の安全の確保並びに新空港及びその周辺における航空機の航行の安全の確保であり、それに伴って新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保も図られ、これらの安全の確保は、国家的、社会経済的、公益的、人道的見地から極めて強く要請され、暴力主義的破壊活動等を防止し、新空港等の設置、管理等の安全を確保することに高度かつ緊急の必要性があることは、同条一項の使用禁止命令の場合と変わりはない。
しかも、同条八項に規定する、工作物を除去し得るための要件が満たされる場合は、使用禁止命令に比して、新空港等の設置、管理等の安全及び新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全という保護すべき利益に対する危険がより一層高まっている場合であって、これが現実のものとなった場合の被害の重大性を考慮すると、右被害を未然に防止すべき必要性は極めて高いというべきである。したがって、工作物が同条一項一号の使用禁止命令に違反して多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていて、暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認められ、また、当該工作物を除去する以外の手段によっては使用禁止命令の履行が確保できず、かつ、当該工作物の除去が特に必要と認められるなどの同条八項の要件を満たす場合には、当該工作物を除去することに十分な合理性が認められる。他方、除去により制限される集会の自由は、多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物を集合の用に利用する利益であり、以上を総合考慮すれば、緊急措置法三条八項の要件が備わっている場合に、当該規定によって当該工作物を除去することもまた公共の福祉による集会の自由に対する必要かつ合理的な制限といえる。
したがって、緊急措置法三条八項は憲法二一条一項に違反するものではない。
4 緊急措置法三条一項一号及び八項の憲法二二条一項違反の有無について
緊急措置法三条一項一号の使用禁止命令及び同条八項の除去処分によって多数の暴力主義的破壊活動者が当該工作物に居住することができなくなるとしても、使用禁止命令及び除去処分は、前記のとおり、新空港の設置、管理等の安全を確保するという国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からの極めて強い要請に基づき、高度かつ緊急の必要性の下に発せられるものであるから、これによってもたらされる居住の制限は、公共の福祉による必要かつ合理的なものと認められる。
したがって、緊急措置法三条一項一号及び八項は憲法二二条一項に違反するものではない。
5 緊急措置法三条一項一号及び八項の憲法二九条違反の有無について
(一) 財産権は、基本的人権として保障されるのであるが、同時に、社会全体の利益を考慮して、公共の福祉に適合する限りにおいて規制を加えられるものでもあり、この規制が憲法二九条二項にいう公共の福祉に適合するかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決せられるものである。
(二) 緊急措置法三条一項一号について
緊急措置法三条一項に基づく工作物使用禁止命令は、当該工作物を、(1) 多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供すること、(2) 暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎びん等の物の製造又は保管の場所の用に供すること、(3) 新空港又はその周辺における航空機の航行に対する暴力主義的破壊活動者による妨害の用に供すること、以上の三態様の使用を禁止することを目的とするものである。
そして、右三態様の使用のうち、多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することを禁止することが、新空港等の設置、管理等の安全を確保するという国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からの極めて強い要請に基づくものであり、高度かつ緊急の必要性を有するものであることは前記のとおりであり、それによる財産権の制限の程度と比較すると、右使用禁止は財産の使用に対する公共の福祉による必要かつ合理的な制限であると解される。また、同項及び同項一号の規定する要件が不明確なものであるといえないことは前記のとおりである。
したがって、緊急措置法三条一項一号は憲法二九条一項、二項に違反しない。
(三) 緊急措置法三条八項について
(1) 緊急措置法三条八項についても、その目的は、新空港等の設置、管理等の安全の確保及び新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保であるところ、前述のような同項の要件を満たす場合には、右法益に対する危険が一層高まっている場合であって、これが現実のものとなったときの被害の重大性を考慮すると、かかる被害を未然に防止するため、当該工作物を除去することによって危険を排除し、新空港等の設置、管理等の安全の確保を図ると共に新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全を確保する必要性が十分に認められる。
そして、同条八項は、封鎖などの代替措置によっては同条一項の使用禁止命令の履行を確保することができず、かつ、前記緊急措置法の立法目的を達成するために特に必要な場合に限り当該工作物の除去を認めているのであるから、たとえそれによって当該工作物に対する所有権等を失わせる結果になるとしても(被処分者は、同法四条の規定に基づき損失の補償を受け、財産上の損失について回復をはかることができる。)、前記法益保護のための必要かつ合理的な財産権の制限であると認められる。
(2) また、緊急措置法三条八項の前提とする同条一項一号の文言が不明確といえないことは前記のとおりである。
(3) なお、原告らは、告知・聴聞の機会を与えられていないことを理由に、本件除去処分が憲法二九条に違反するとも主張するが、告知・聴聞の機会が与えられなかったからといって、直ちに憲法二九条に違反するものとは解されない。
(4) また、緊急措置法四条に規定する損失補償の支払が、被処分者からの請求を受けてなされるからといって、憲法二九条三項に違反するとはいえない。
(5) したがって、緊急措置法三条八項は、憲法二九条に違反しない。
6 緊急措置法三条一項一号及び同条八項の憲法三一条、一三条違反の有無について
(一) 憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあるとするのは相当でない。
しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様のものがあるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合考量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない。
(二) 緊急措置法三条一項に基づく使用禁止命令により制限される権利利益の内容、性質は、前記のとおり当該工作物における三態様の使用であり、これに対し、右禁止命令により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、新空港等の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からその確保が極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを総合考量すれば、右命令を発するに当たり、その相手方に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、同条一項が憲法三一条の法意に反するものということはできない。また、同条一項の規定する要件が不明確なものであるといえないことは前記のとおりである。
したがって、緊急措置法三条一項一号は、憲法三一条ひいては一三条の法意に反するものではなく、原告らの違憲の主張は理由がない。
(三) 緊急措置法三条八項が規定する工作物の除去は、前記のとおり、新空港等の設置、管理等の安全及び新空港を利用する乗客等の生命、身体の安全の確保という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からの要請に基づくものであり、しかも同項の要件を満たす場合は、使用禁止命令にもかかわらず、右法益に対する危険が高まっていて、他に有効な規制方法がなく、特に当該工作物の除去が必要とされるときであって、右法益保護の必要性がより高度かつ緊急といえること、一方、工作物の除去は使用禁止命令を前提にした措置であり、通常は、使用禁止命令によって除去に対する予測可能な警告があったといえること、除去処分によって侵害される権利利益の内容は、工作物に対する財産権であり、除去が行われると当該工作物の所有者等はその財産権を失うこととなるが、同法四条の規定に基づき通常生ずべき損失の補償を受けられることなどを総合して考慮すれば、工作物の除去をするに当たって、その所有者等に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、緊急措置法三条八項が憲法三一条、一三条の法意に反するものとはいえない。
(四) また、除去処分が行われるのは、前述のとおり、使用禁止命令にもかかわらず、法益に対する危険が高まっていて、しかも他に有効な規制方法がないといった使用禁止命令の段階よりも高度かつ緊急な危険の解消が求められている場合であるから、比例原則に反するものでもない。
7 原告らは、緊急措置法が、現行法秩序の破壊を意図して制定されたものであり、かつ実質審理を欠如したものであるから違憲立法である旨主張するが、本法案が衆議院及び参議院でそれぞれ可決され、昭和五三年五月一三日、同年法律第四二号として公布されたことは公知の事実であるところ、これが現行法秩序の破壊を意図した立法とは認められず、また法案の審議にどの程度の時間をかけるかは専ら各議院の判断によるものであり、その時間の長短により公布された法律の効力が左右されるものではない。
8 また、原告らは、緊急措置法の限定合憲解釈又は本件における適用違憲を理由に、本件除去処分の憲法二一条一項、二九条一項、二項、三一条違反を主張する。
しかしながら、緊急措置法三条の前記各規定によって保護される利益の重要性に照らせば、原告ら主張のような限定合憲解釈を加えなければ本件除去処分が憲法二一条に違反するとは解されず、本件除去処分について告知・聴聞の機会を保障しなかったからといって、憲法三一条に違反するものではないことは前記のとおりであり、また、後述するとおり、本件除去処分の発令過程において、被告運輸大臣による恣意的認定が行われたとは認められないことからすれば、原告らの主張には理由がない。
9 さらに、原告らが新空港の設置等に多々違憲・違法な点が見られ、したがって緊急措置法の保護法益自体が違憲・違法なものであるとして、本件使用禁止命令、本件除去処分が違法であるとする点については、原告らの右主張を認めるに足りる証拠がない上、政府の行った新空港の位置決定手続や決定内容に法令違反がないとした上で昭和四二年一月三〇日付け工事実施計画認可処分及び進入表面等の指定が航空法三九条一項一号、二号及び五号所定の各認可要件に適合するとされた東京地裁昭和四二年(行ウ)第六一号、平成六年一月二七日判決・行政裁判例集四五巻一・二号一頁、昭和四四年一二月一六日付け事業認定処分が土地収用法二〇条三号及び同四号に違反しないとし、また昭和四五年一二月二八日付け特定公共事業認定処分の適法性を是認した東京地裁昭和四五年(行ウ)第四八号・同四六年(行ウ)第一〇五号、昭和五九年七月六日判決・行政裁判例集三五巻七号八四六頁及びその控訴審である東京高裁昭和五九年(行コ)第三八号、平成四年一〇月二三日判決・行政裁判例集四三巻一〇号一二七五頁、千葉県収用委員会の緊急裁決が公共用地の取得に関する特別措置法二〇条四項等に違反しないとされた東京地裁昭和五五年(行ウ)一四二号、昭和六三年六月二八日判決・行政裁判例集三九巻五・六号五三五頁及びその控訴審である東京高裁昭和六三年(行コ)第四〇号、平成五年八月三〇日判決・行政裁判例集四四巻八・九号七二〇頁等、新空港の設置手続等について違憲・違法な点が認められないとした裁判例が多く存することは当裁判所に顕著であることからすれば、原告らの主張には理由がない。
三 本件除去処分の違法性の有無について
1 前提たる本件使用禁止命令の違法性の有無について
前記前提となる事実、証拠(甲一〇の1・5、乙七、一〇、一九、二〇、二五、二八の1・2、三〇、三四、四〇、四九、五一、五三ないし五六、六〇、六六の1・2、六七、六九、七〇、七一の1・2、七二、七九ないし八一、八二の1ないし3、八五、八六、八九、九〇、九二、九三、九七、九八、一〇一ないし一〇三、一〇八、一〇九、一一二、一一五の1・2、一一六、一一七の1ないし3、一一八、一二一の1・2、一二二ないし一二四、一二五の1・2、一二六ないし一二九、一三一の1ないし3、一三二、一三四の1ないし4、一三五、一三八、一三九、一四二、一四三、一四四の1・2、一四五の1ないし3、一四六ないし一四九、一五一の1ないし4、一五二、一五三の1ないし3、一五四、一五六の1・2、一五七、一五九、一六二、一六三の1・2、一六五の1・2、一六六、一六八、一七一、一七二の1ないし3、一七四、一七七の1・2、一七八の1ないし3、一八一ないし一八三、一八五の1・2、一八六の1ないし4、一八七、一八九、一九一、一九二の1・2、一九四、一九七、一九八、二〇〇の1・2、二三一の1ないし6、二三二、二三三、二三七の1ないし8、二四〇の1ないし6、二四三、証人河野正文及び同鎌田聡)及び弁論の全趣旨によれば、次の(一)ないし(六)の各事実を認めることができる。
(一) 本件工作物の建設経緯等
本件工作物の建設経緯は、前記前提となる事実のとおりであるが、<1>建物は、中核派が二期工事阻止闘争の一環として、新空港建設予定地内に新たな闘争拠点として団結小屋を建設する目的で、昭和五四年一月一二日、最盛時一九人を動員して建設作業を行い、同日中に完成したものである。
その後、中核派は、昭和六二年三月三日から二六日までの間、<1>建物東側に丸太等を使用して木櫓を建設し、さらに原告反対同盟が闘争方針として「用地内闘争拠点の強化・砦化」を提起したことから、これを受けて、昭和六三年五月一日から五日にかけて中核派構成員等五二人を動員して、<1>建物の外塀を新たに高さ三メートルの鉄板製の塀に換え、同年七月一二日から一三日にかけては、<1>建物西側に鉄骨櫓を建築するなど、強化を図った。
(二) 本件工作物の使用状況
(1) 本件工作物では、<1>建物の建設直後の昭和五四年一月一二日から中核派構成員三名が常駐を開始し、昭和五六年二月六日からは、原告吉川が一人で常駐している(なお、原告吉川は、昭和五七年一一月一〇日に本件工作物の所在地である千葉県成田市木の根字拓美一八四番二に住民登録している。)。
また、昭和六二年四月一四日から平成元年三月一五日までの間、本件工作物に居た者あるいは出入りが確認された者の中には、中核派一八名(原告吉川、岸上雅博、西藤芳弘、秋山和雄、小山衛一、藤崎達哉、岸宏一、大森寿憲、新田浩一、野田隆夫、片田寿雄、菅野照雄、沖山芳忠、岸本豊和、魚津敏夫、元永修二、黒田享、多田良作)、蜂起派二名(村上唱子、大田明)、戦旗両川派三名(伏谷晃司、伊藤功一、馬渡友子)、革労協四名(古谷真由美、杉本富美代、石丸修三、池田久)及びセクト不明三名(寺崎修一、松沢学、徳田真貴子)の合計三〇名が含まれている。
なお、右のうち、一四名は新空港反対闘争に関連して、凶器準備集合罪、公務執行妨害罪、傷害罪、火炎びん法違反等の前科前歴を有する者であった。
(2) そして、本件工作物は、次のとおり使用されていた。
ア 昭和六二年一一月二九日、原告反対同盟が開催した「二期工事実力阻止、不法収用法弾劾、敷地内破壊攻撃粉砕、脱落派粉砕一掃一一・二九全国総決起集会」に伴い、同日午前八時二二分ころ、本件工作物内にヤッケ、運動靴を着装した中核派構成員二六名が集結し、本件工作物からデモ出発地点まで全員で移動した。
イ 昭和六三年一月二四日午前八時一六分ころ、本件工作物前空地に、中核派構成員一二二名を含む一五五名の集団が集結し、「C滑走路着工阻止緊急現地行動」として集会が行われたが、その際、中核派全学連中央執行委員から「我が革命軍は一月一八日空港本体、空港中枢心臓部に対して、人民の怒りを込めたロケット弾をたたき込み、まさに二期本格着工爆砕に断固として決起した。」旨表明した。
ウ また、三里塚闘争支援連絡会議主催による「二期工事実力阻止現地闘争」のデモ出発拠点として、昭和六二年中四五回(延べ参加者八一〇名)、昭和六三年中一二八回(延べ参加者一一〇〇名)、平成元年一月から三月までの間四回(延べ参加者四一名)にわたり、それぞれ本件工作物が利用されている。
エ なお、昭和六三年三月二七日、原告反対同盟主催による「二期工事実力阻止、敷地内破壊攻撃粉砕、脱落派粉砕一掃三・二七全国総決起集会」が開催された際、原告代表者北原は、基調報告の中で「闘争拠点の強化、砦化」をはじめとする闘争方針を提起し、同年五月二二日の原告反対同盟主催による「二期工事阻止、BC滑走路着工実力阻止、芝山廃村攻撃粉砕、脱落派粉砕一掃五・二二全国総決起集会」の中でも、原告反対同盟萩原進事務局次長は、「用地内闘争拠点の砦化、要塞化」をはじめとする闘争方針を提起した。
中核派は、原告反対同盟のこうした方針を受けて、前述のとおり昭和六三年五月一日から五日の間、延べ五二名を動員して、<1>建物の外塀を木製から鉄板製に換えたほか、昭和六三年七月一二日から翌一三日にかけて、延べ四三名を動員して<1>建物西側に高さ約一三メートルの鉄骨櫓を構築するなど、本件工作物の強化を図ったものである。
また、中核派全学連現地闘争本部発行の昭和六三年六月二五日付け日刊三里塚第二九六七号には、「木の根育苗ハウスに対するフェンス攻撃徹底弾劾」の見出しで「われわれは敷地内をはじめとする拠点を強化し砦化し、二期工事を絶対阻止する空前の武装闘争に決起する」等と記載して、本件工作物の砦化の目的を明らかにし、同年七月一日付け同機関紙第二九八六号には、「木の根に新鉄塔建つ、高さ一三メートル鉄骨総重量四・二トン」の見出しで、「七月一二日、わが中核派と現地支援連絡会議は、C滑走路のどまんなかの木の根に、高さ一三メートル、縦横各三・二メートルの新鉄塔を建設するという快挙をなしとげた」等と記載し、二期工事建設阻止の目的で本件工作物を砦化した旨を表明している。
(三) 中核派の活動状況及び意思表明
(1) 中核派の活動状況
中核派は、少なくとも本件使用禁止命令発出前において、昭和五三年五月二〇日、埼玉県所沢市の運輸省東京航空交通管制部と羽田空港、新空港等をつなぐ日本電信電話公社市外地下同軸ケーブル回線を切断し、同航空交通管制部の機能を麻痺させて航空交通管制を混乱に陥れ、同年五月二七日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉県佐原市の旧国鉄(現JR)成田線佐原駅と大戸駅間で、CTC(列車集中制御装置)につながる回線と鉄道専用電話回線を切断して、ジェット燃料の輸送列車を立往生させ、同年九月七日、千葉県八千代市等数箇所において電話同軸ケーブルを切断する等により、新空港内の航空会社のテレックス、茨城県北相馬郡守谷町VOR(超短波全方向式無線標識施設)及び同県稲敷郡阿見町阿見VORの機能を麻痺させ、同年一二月一八日、新空港関連の貨物ターミナルである千葉県市川市の東京エアカーゴ・シティ・ターミナル会社の構内駐車場に停めてあったワゴン車を時限式発火装置を用いて炎上させ、昭和五四年三月一四日、千葉県佐倉市臼井台及び同県習志野市鷲沼台の二か所において、京成電鉄線路上に火炎車をそれぞれ突入させてスカイライナーを始めとする列車の運行を妨害し、同年八月三〇日、千葉市高浜の新空港ジェット燃料輸送パイプラインの工事現場に時限式発火装置を仕掛けて発火させ、杭打機四台を全焼させ、同年一〇月一八日、前記京成電鉄高砂検車区、京成電鉄上野駅及び京成電鉄宗吾検車区にそれぞれ入庫中又は停車中のスカイライナーの一部を焼損し、昭和五五年三月一三日、千葉市浪花町において、ジェット燃料輸送用パイプライン工事のための地下水位観測所六か所に時限式発火装置を仕掛けて発火させ、同観測所及びその内部に設置された観測機器に被害を与え、同月二四日、ジェット燃料輸送パイプライン工事妨害の一環として、千葉市にある新空港関連工事会社三社の作業員宿舎等に時限装置を仕掛けて発火させ、同宿舎を全焼させ、同年五月一八日、成田市土屋の新空港ジェット燃料輸送暫定パイプラインの起点である土屋燃料基地に向けて、同基地先の市道に自動火炎放射装置を仕掛けたトラックを駐車させ、同装置を作動させて火炎を噴射させ、同年九月一日、新空港内の給油センター駐車場に駐車する車両三台に時限装置を仕掛けて発火させ、同車両に被害を与え、昭和五六年三月一〇日、千葉市畑町の新空港ジェット燃料輸送用地下パイプライン工事第七立坑施設に向けて、火炎放射装置を仕掛けた小型トラックを駐車させて同装置を作動させ、作業員詰所を焼損し、同年六月八日、東京都千代田区霞が関の第三中央合同庁舎(運輸省等庁舎)南側路上に火炎放射装置を仕掛けたトラックを乗りつけ、これを運輸省に向けて作動させ、一階から八階までの窓ガラス等を焼損させ、昭和五七年三月一三日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉県佐原市の旧国鉄成田線大戸駅と佐原駅間の岩ケ崎踏切で、架設されている通信・信号ケーブルを切断し、千葉県銚子市の旧国鉄成田線下総豊里駅と椎柴駅間に架設されている通信・信号ケーブルを切断し、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる茨城県行方郡潮来町の旧国鉄鹿島線延方駅と潮来駅間の側溝内部に時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させ、敷設されていた通信・信号ケーブル等を焼毀切断し、千葉県船橋市の旧国鉄西船橋駅構内にある旧国鉄西船橋変電所の敷地内に時限式発火装置を仕掛け発火炎上させ、高圧送電ケーブル等を焼損切断し、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる成田市の旧国鉄成田線久住駅と滑河駅間に埋設されている通信・信号ケーブルを焼損切断し、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送ルートに当たる千葉市の旧国鉄総武本線東千葉駅と都賀駅間に埋設されている通信・信号ケーブルを焼損切断し、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉市の旧国鉄総武本線都賀駅と四街道駅間に埋設されている通信・信号ケーブルを焼損切断してそれぞれ電車の運行を妨害し、同年九月一〇日、成田市の京成電鉄成田線で時限式発火装置を搭載した改造自走トロッコを京成電鉄成田空港駅方向へ走行させ、同線台田隧道内で同装置を作動させ、同市吉倉の京成電鉄空港線線路脇でクレーン付きトラックを焼損し、昭和五八年三月八日、東京都葛飾区の京成電鉄高砂電車区車庫裏に時限式火炎発射装置を仕掛けたトラックを駐車し、同装置を同車庫内のスカイライナーに向けて作動させてこれを破損させ、同年六月七日、新空港ジェット燃料輸送パイプラインの関連工事を担当していた千葉県四街道市の東鉄工業物井作業所簡易宿舎に時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させ、就寝中の社員二人を焼死、一人を火傷させた上、同建物を全焼させ、同年九月二〇日、千葉市の新空港へジェット燃料を輸送する千葉港パイプライン給油基地へ送電を行っている東京電力黒砂開閉所U字溝内に配線された送電ケーブル四本に時限式発火装置を仕掛けて発火焼損させ、昭和五九年三月一日、東京都中央区の首都高速一号線上に停車した火炎発射装置を仕掛けたトラックより、空港公団本社の入っている日本橋本町ビルに向けて同装置を作動させ、同ビル六階の事務所を半焼、五階ないし八階の一部を延焼させ、同年八月六日、千葉県船橋市、東京都大田区及び神奈川県横浜市の空港公団幹部(三人)の自宅に時限式発火装置を仕掛けて各建物の一部を焼損させ、昭和六〇年四月一二日、成田市の新空港及び東京都大田区の東京国際空港に向け、時限式発射装置を使用して火炎ロケット弾を発射し、新空港においては、一時間半にわたって滑走路が閉鎖され、航空機の運行に支障を与えると共に、駐車中の普通貨物自動車一台を大破させ、また、新空港内にある空港郵便局等の建物の一部を損壊させ、同年七月二〇日、千葉県印旛郡富里町の空港公団職員の自宅に時限式発火装置を仕掛け、車庫、普通乗用車及びオートバイ等計八台を全焼させ、同年一〇月二〇日、戦旗両川派の集団と共に、新空港への突入を図り、新空港第三ゲート近くの三里塚十字路で丸太・鉄パイプ等を準備して集合した上、警備中の機動隊警察官に対し大量の火炎びん及び石塊を投てきし、車両等を焼損させ、同警察官五九名に傷害を負わせ、昭和六一年四月一五日、千葉県八日市場市の八日市場警察署吉田駐在所敷地内及び同署飯高駐在所物置にそれぞれ時限式発火装置を仕掛け、前者において普通乗用車等を焼損させた上、駐車場の一部を焼損させ、後者において、オートバイ一台を全焼させた上、同物置を焼損させ、同年九月四日、神奈川県伊勢原市の運輸省航空局職員の自宅を全焼させると共に、付近の家屋七戸を延焼させ、うち二戸を全焼、五戸を一部焼損させ、さらに、千葉県船橋市の運輸省航空局職員の自宅に時限式発火装置を仕掛け、普通乗用自動車一台を全焼させ、同年一一月二八日、新空港第二旅客ターミナルビルの設計を担当している、千葉県松戸市の梓設計相談役宅及び横浜市の梓設計社長(元空港公団理事)宅にそれぞれ時限式発火装置を仕掛け、前者において家屋を半焼、後者において家屋の一部及び普通乗用自動車一台の一部を焼損させ、昭和六二年五月二二日、新空港二期工事関連会社である埼玉県大宮市の大成建設機材部大宮機械センターに時限式爆発物を仕掛け、同建物の屋根、床、天井及び窓ガラスを破損させ、同年六月三〇日、新空港二期工事関連会社である成田市の木下建材敷地内及び八千代市の花島建材砂置き場において、駐車中のダンプカーに時限式発火装置を仕掛け、ダンプカー各四台を焼損させ、同年一一月五日、千葉県佐倉市の空港公団職員の自宅に時限式発火装置を仕掛け、物置兼居宅及び倉庫を全焼させ、昭和六三年一月一八日、成田市の三里塚小学校付近に駐車中のトラックから新空港に向けて、時限式爆発物発火装置を使用して、翼付き弾を発射させ、同年二月二九日、東京都新宿区の東京都駐車場公社所有西新宿臨時駐車場に駐車中の新空港へのバス交通を行っている東京空港交通株式会社所有のリムジンバス四台に時限式発火装置を仕掛けて、全焼させ、同年七月一日、新空港二期工事に建設機械をリースしている成田市の鶴島建機成田営業所内に時限式発火装置を設置し、同社所有の車両四台、プレハブ事務所を全焼させ、また、茨城県真壁郡関城町の常南交通県西営業所駐車場と車庫に駐車中のバス、トラックに時限式発火装置を設置し、車両五台をそれぞれ半焼させ、同年九月二一日、千葉市祐光一丁目の路上において、帰宅途中の新空港用地の収用を担当する千葉県収用委員会の会長を襲撃し、両手足骨折等の重傷を負わせ、同年一二月一五日、新空港二期工事用に生コンクリートを納入していた千葉県船橋市の船橋レミコン株式会社第二工場内に駐車中のコンクリートミキサー車三台に時限式発火装置を設置し、同車両を一部焼損させ、平成元年一月二九日、神奈川県藤沢市の公共用地審議会会長代理の自宅の物置に時限式爆発物を仕掛け、同物置と居宅の一部を損壊させたほか、付近の住宅七戸の窓ガラス等を損壊させ、同年三月一二日、新空港関連の千葉市内の道路建設会社に山砂を納入していた千葉県富津市の丸和建材の駐車場に駐車中のダンプカー三台に時限式発火装置を設置し、同車両を全焼させ、同月二六日、成田市及び芝山町の新空港二期工事用地内で収用阻止を掲げて全国総決起集会とデモを行い、検問中の警察官の公務執行を妨害するなどし、同月三〇日、新空港二期工事関連会社である成田市の国井組の水路工事現場に放火し、工事現場事務所及びパワーショベル等二台を全焼させ、同年六月五日、新空港二期工事関連企業である千葉県東葛飾郡沼南町の藤田陸運柏営業所の駐車場に駐車中のトラック三台に時限式発火装置を設置し、三台を全焼、四台を半焼させ、同年九月八日、新空港二期工事関連会社が加盟する建設業組合の会長である成田市の片岡組の事務所に時限式発火装置を設置し、プレハブ平家建の事務所を全焼し、隣接のプレハブ平家建の倉庫を半焼し、軽ワゴン車等三台を焼損させるなどの行為を行った。
(2) 中核派の意思表明
また、中核派は、本件使用禁止命令発出前に、「前進」において、「二期実力阻止・空港廃港を実際にたたかいとらなければならない」(昭和六三年八月一日号)、「三里塚決戦基軸に八九年へ武装進撃を」(昭和六三年一一月二八日号)、「農民殺しの二期工事強行に大反撃せよ」(平成元年五月八日号)、「われわれ革共同は、九〇年天皇決戦=八九~九〇年天皇・三里塚決戦の方針をすでに提起し、四・二九宮内庁宿舎爆破のゲリラ戦争を本格的な戦闘宣言として、その実践に猛然と突入している。」(平成元年五月二九日号)、「『強制代執行反対』『二期工事強行反対』を高く掲げ、革命軍のゲリラ戦争の戦略的エスカレーションをかちとり、日帝にかつてない打撃を強制するのだ。」(平成元年七月二四日号)等と空港建設反対に基づく暴力主義的破壊活動等を行う意思表明をしていた。
(四) 戦旗両川派の活動状況及び意思表明
(1) 戦旗両川派の活動状況
戦旗両川派は、昭和五九年九月九日、新空港建設と密接に関連した事業である成田用水工事を請け負っている芝山町の萩原土建作業員宿舎に時限式発火装置を仕掛けて同宿舎を全焼させ、昭和六〇年九月一六日、同派二〇〇人によって、成田市の三里塚十字路で「空港突入」を叫んで警備中の機動隊に突入し、四九人が公務執行妨害罪等により現行犯逮捕され、昭和六一年一〇月二三日、千葉県香取郡大栄町の佐原警察署吉岡駐在所に時限式発火装置を仕掛け、同装置を発火炎上させると共に、千葉市の千葉県警察本部自動車整備工場に駐車中のマイクロバスに時限式発火装置を仕掛け、これを焼損させ、また、中核派と共に、昭和六〇年一〇月二〇日、前記三里塚十字路で、丸太・鉄パイプ等を準備して集合した上、警備中の機動隊警察官に対し大量の火炎びん及び石塊等を投てきし、車両等を焼毀させ、同警察官五九名に傷害を負わせた。
(2) 戦旗両川派の意思表明
戦旗両川派は、本件使用禁止命令発出前、機関紙「戦旗」において、<1>「空港突入、解体戦に向かってわが戦旗派と全三里塚勢力が武装決起で進撃し、…反革命と闘争敵対者の打倒、血で血を洗う凄惨な闘争を不可避とするのだ。」(昭和五九年一月二〇日号)、<2>「…わが共産同(戦旗派)は…三里塚空港建設=二期工事強行に対して、革命党としての全力量を投入してこれを粉砕することを宣言する。…八〇年代において必ずや二期阻止-空港廃港をかちとる決意である。」、「2・22-27東峰十字路戦闘裁判闘争に総決起せよ」(昭和六〇年一月二〇日号)、<3>「われわれが第一に確認しなければならない点は、日帝-中曽根の八四年八・二八、二期着工プランとの全面対決・武装対決こそが『日帝打倒-三里塚二期決戦勝利』の基軸中の基軸であるということだ。」、「わが戦旗派は、八三年三・八以来の重大な決意をもって八五年用水決戦に全党をあげ武装決起しなければならない。八五年決戦はわが戦旗派のBUND(党)としての真価が本当に問われる歴史的闘いである。わが戦旗派は三里塚農民、すべての三里塚勢力と共に、八五年決戦の偉大な内乱に総決起する。」(同年八月一日号)、<4>「十・二〇空港-突入・解体戦の地平をうけつぎ、三・三〇闘争への圧倒的動員・組織戦に勝利し、的(敵の誤記か)権力の弾圧を粉砕し、日帝-公団の野望を完膚なきまでに粉砕しつくさねばならない。」(昭和六一年三月五日号)、<5>「中曽根の二期着工指示を粉砕せよ」、「…公団用地の鉄条網包囲、自主耕作地破壊攻撃を粉砕し、駐車場・工事用道路・空港用貯水池建設を阻止する闘いに断固勝利し、敵権力を『用地内』へ一歩も踏みこませてはならない。」、「…われわれは反対同盟農民の革命精神に立脚し、二期工事実力阻止、武装闘争の貫徹、機動隊せん滅、空港突入-解体の空前の大闘争に決起することを今こそ決意しようではないか。第二、第三の十・二〇戦取で内乱-蜂起・内戦戦略を物質化し、勝利の血路を切り拓こう。」(同年八月五日号)、<6>「総武装で10・26へ」、「10・26武装決戦に総力決起せよ」、「…わが戦旗派は十・二六闘争を一大階級激突戦として闘い勝利する。十・二〇戦を上回る武装闘争、大衆的実力闘争で三里塚二期本格着工攻撃を絶対阻止する。」(同年一〇月五日号)、<7>「『第二の十・二〇』こそ、三里塚二期決戦の勝利を切り拓く唯一の道であることをあらためて確認し、この闘いを連続的・系統的に実現しうる革命党建設の前進に死力を尽くして決起しなければならない」、「そして具体的な二期工事強行に軍事的打撃を与えるゲリラ・パルチザン戦貫徹を何が何でも継続的にやりとげなければならない。成田用水決戦の中でかちとったように、工事計画に決定的な打撃を与えることができる。そして一切の権力施設、空港施設への攻撃は、二期戦略総体の破産をひきずり出すのである。」、「第二に、八-九月現地攻防を総力をあげて闘いぬくことである」、「この間の東峰十字路制圧戦、ダンプ搬入阻止の実力行動…といった闘いを連続的に打ちぬくことは極めて重要な闘いだ。ひとつひとつの闘いが二期工事の決定的な遅延をひき出していくだけでなく、反対同盟農民の勝利へ向けた士気の高揚と全国の三里塚勢力-労働者人民の現地結集の気運を強力に創り出していくのである。」(昭和六二年八月一五日号)、<8>「東峰要塞化に着手し、B・C滑走路着工阻止へ」、「われわれは自主耕作地破壊に断固として反撃を開始しなければならない。…三里塚現闘団、戦旗派行動隊と共に東峰死守の臨戦体制を打ち固めよ。」(昭和六三年四月五日号)、<9>「四月二十日、日帝-空港公団はついにB滑走路北端着工に手を染めた。…情勢は風雲急を告げる煮つまりを見せている。われわれは、今こそ党の総力を結集し、怒りの反撃戦に打って出なければならない。」「東峰団結会館は、B滑走路予定地のど真中に位置するわが戦旗派最大の拠点である。われわれは、八三年建設以来、ここを出撃拠点に数々の実力闘争・武装闘争を闘いぬいてきた。…何よりも東峰団結会館への拡大適用・除去処分攻撃を絶対に許してはならない。何としても東峰団結会館の大要塞化をかちとり、ここを出城にした東峰・天神峰決戦の壮大な爆発をかちとらなければならない。5・8成田治安法粉砕集会こそ、来るべき東峰決戦の一大前哨戦である。5・8を皮切りに、七一年代執行阻止決戦、七八年開港阻止決戦を上回る空前の武装闘争の時代を切り拓こうではないか。」(昭和六三年五月五日号)、<10>「土地収用委員会再開策動粉砕 東峰要塞化に全人民は決起せよ」、「五月二十二日…三里塚総決起集会がたたかわれた。…戦旗派はこの日、東峰決戦に進撃する歴史的戦闘宣言を発した。東峰団結会館を難攻不落の大要塞としてうち固め、八七年木の根死守戦を上まわるたたかいでB・C滑走路建設を粉砕しつくすこと、三里塚武装闘争の一切の成果を継承・発展させ、空港へ突入-解体する内乱的死闘戦を革命党の飛躍をかけ攻勢的に貫徹することを全責任をもって宣言したのだ。」(昭和六三年六月二〇日号)等と空港建設反対に基づく暴力主義的破壊活動等を行う意思表明をしていた。
(五) 革労協の活動状況及び意思表明
(1) 革労協の活動状況
革労協は、本件使用禁止命令発出以前、昭和五三年九月一二日、茨城県鹿島郡鹿島町(現在の茨城県鹿嶋市。以下「鹿島町」と表示する。)において新空港用ジェット燃料暫定貨車輸送のいわゆる「鹿島ルート」に当たる鹿島臨海鉄道の線路上に生コンクリートをまいて列車の運行を妨害し、昭和五五年五月一六日、東京都千代田区霞が関の運輸省等庁舎の脇に自動火災放射装置を仕掛けたライトバンを駐車させ、同庁舎内の運輸省に向けて同装置を作動させ、昭和五六年五月一一日、ジェット燃料輸送を妨害するため、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる鹿島町の旧国鉄鹿島線第二宮中架道橋を切断し、昭和五七年三月一六日、成田市の新空港ジェット燃料暫定貨車輸送の拠点である土屋燃料中継基地前の県道に火炎放射装置を仕掛けたワゴン車を乗りつけ、同中継基地に向けて同装置を作動させ、同年七月一日、東京都中央区の親父橋派出所、東京都墨田区の太平四丁目派出所、東京都北区の馬坂派出所、東京都新宿区の戸塚町三丁目派出所、東京都新宿区の中落合西派出所及び東京都足立区の小台派出所に、それぞれ時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させ、同年九月二四日、成田市三里塚の空港公団工事局ビル前の路上に時限式火炎放射装置を設置した小型トラックを停車させて、同ビルに向けガソリンを大量噴射させ、昭和五八年七月四日、成田市の新空港の旅客ターミナルビル内コインロッカー二か所に時限式発火装置を仕掛けて発火させ、昭和五九年三月八日、成田市の京成電鉄成田空港駅内の京成スカイライナーに時限式発煙装置等を仕掛けて発煙させ、同年九月一五日、千葉県香取郡多古町の新空港建設と密接に関連した事業である成田用水の芝山加圧機場のフェンスに時限式発火装置を仕掛け、フェンス外側の枯れ草を焼き、同年一一月一三日、千葉県佐倉市に埋設されている新空港ジェット燃料輸送パイプラインに穴を開けてジェット燃料を流出させ、昭和六〇年二月一五日、成田市の十余三駐在所に時限式発火装置を仕掛け同駐在所の一部を焼損させ、昭和六〇年三月二四日、芝山町の成田用水の菱田工区四号配水施設内の配水管にセメントを流し込み、昭和六一年七月一七日、成田市の新空港二期用地内において時限式発射装置を使用し、同用地内の元・千葉県警察機動隊宿舎に向けてロケット弾三発を発射し、昭和六二年一月一四日、芝山町の菱田の成田用水工事を警備中の機動隊員に対して火炎びんを投げたり、鉄パイプやパールで殴りかかったりして、機動隊員三人を負傷させ、昭和六三年九月二六日、千葉県鎌ケ谷市の船橋西警察署道野辺派出所に時限式爆発物を設置し、同派出所の壁の一部を破損したほか、近所の民家のガラス一枚を破り、自動販売機に穴を開け、警察官一名を負傷させた。
(2) 革労協の意思表明
そして、革労協は、本件使用禁止命令発出前、機関紙「解放」において、「空港包囲・突入-解体」、「現空港を攻略(解体)する乾坤一擲の武装闘争を戦取せよ」(昭和六〇年九月一五日号)、「ゲリラ戦パルチザン戦の爆発を先端とし、木の根団結砦をおしたて二期を阻み、現空港突入・解体へつきすすめ!」(昭和六一年九月一五日号)、「いよいよ渾身の力をこめて武装決起する時がきた!木の根は、いまや、彼我双方が敵をうち伏せてつき進もうとする決戦場だ!武器をとり、木の根-二期決戦に決然と起て!勝利を求め、現空港に殺到せよ!機動隊をせん滅せよ!木の根砦を拠点とし、壮大な死闘戦をきりひらけ!二期工事を爆砕せよ!」(昭和六一年一一月一五日号)、「わが解放派は、この三里塚二期決戦の只中で二期阻止・空港爆砕の実力闘争・武装闘争の大爆発をお前の眼前で連続的に貫徹してやる」(平成元年八月一日号)等と空港建設反対に基づく暴力主義的破壊活動等を行う意思表明をしていた。
(六) 本件使用禁止命令の発出過程
(1) 空港課の高橋課長、同課河野正文補佐官、越智秀信補佐官らは、平成元年七月以降、現地を視察したり、警察庁ないし千葉県警から情報の提供を受け、また空港公団から提供された資料を検討したりして、緊急措置法三条一項の要件判断のための情報収集に努めた。他方、警察庁公安三課所属の鎌田聡警視や竹花悟警部は、その頃、同課の伊達興治課長に対して、千葉県警をはじめとする各都道府県警察に情報の提供を求めるなどしてまとめた本件工作物建設の経緯、構造、外観、本件工作物に出入りしている者のリストとセクト所属状況及び成田闘争に関連する事件での検挙状況、出入りしている者が所属する中核派、戦旗両川派、蜂起派等の各セクトの絡んだテロ・ゲリラ事件の発生状況等に関する資料を提出した。
高橋課長は、その結果、同月下旬には、使用禁止命令を発する要件を満たす資料が集まりそうであることを確認し、上司の木村操審議官や丹羽航空局長らに報告した。
(2) そして、被告運輸大臣は、緊急措置法三条一六項に基づいて、平成元年九月一一日付け文書において、金澤昭雄警察庁長官に対して、資料の提供及び意見の提出を求めたところ、翌一二日、金澤警察庁長官から右資料等と共に、緊急措置法三条一項の要件を具備するという意見が提出された。高橋課長は、右資料のほか、自ら入手していた各セクトの機関紙、現地のビラ、空港公団から得た現地の情報等を併せて検討した結果、本件工作物につき緊急措置法三条一項一号の要件に該当すると判断した。
(3) 高橋課長は、右資料等をもとにして、木村審議官及び丹羽航空局長と検討した上で、被告運輸大臣の判断を仰ぎ、その結果、被告運輸大臣は、緊急措置法三条一項一号の要件に該当すると判断し、平成元年九月一九日、本件使用禁止命令を発し、同日、官報に掲載された。
(七) 以上の事実からすれば、本件工作物には、中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派にそれぞれ所属する者及びそのシンパと思われる者らが出入りしていたことが認められるところ、右各セクトの新空港反対闘争に関する前記意思表明に沿って、少なくとも各セクトがそれぞれ行ったものと認められる前記活動状況に掲げた各事件のうち、中核派による昭和五三年五月二〇日の事件は新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する行為に、同年九月七日の事件は航空機の航行を妨害する行為であると同時に航空保安施設の設置若しくは管理を阻害する行為に各該当し、また中核派による昭和六〇年四月一二日及び昭和六三年一月一八日の各事件、中核派と戦旗両川派による昭和六〇年一〇月二〇日の事件、戦旗両川派による同年九月一六日の事件、革労協による昭和五八年七月四日の事件はいずれも新空港施設の設置若しくは管理を阻害する行為に該当するものであって、緊急措置法二条一項にいう暴力主義的破壊活動等に当たるものということができ、その余の各事件についても同項に定める暴力主義的破壊活動等には該当しないとしても、前記各セクトによる意思表明の内容と併せて考えれば、暴力主義的破壊活動等を行うおそれのあることを示すものであり、したがってこのような中核派、戦旗両川派、革労協及び蜂起派に属し、あるいはそのシンパとして、右の暴力主義的破壊活動等に該当すると認められる各事件に関与したり、あるいは各セクトの活動拠点である本件工作物に出入りしたりしている前記の三〇名は、同法二条二項にいう暴力主義的破壊活動等を行い、又は行うおそれがある者として暴力主義的破壊活動者であると認めることができる。
そして、右に加えて、前述したような本件工作物の建設経緯・構造・外形・使用の態様や、中核派をはじめとする各セクトが本件工作物を拠点とし、かつ暴力主義的破壊活動等を行う意思を表明している事実をも併せ考慮すれば、本件使用禁止命令発出当時、本件工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供される蓋然性が高く、暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されるおそれがあったものと認められる。
なお、原告らは、緊急措置法二条一項に規定されている政令が存在しないことから、同項にいう暴力主義的破壊活動等となりうるのは新空港そのものの設置若しくは管理を阻害する行為と新空港若しくはその周辺における航空機の航行を妨害する行為だけであって、航空保安施設や機能確保施設の設置若しくは管理を阻害する行為は含まれないとも主張するかの如くであるが、同項の文言や航空保安施設の範囲はあらためて政令で限定するまでもなく明らかといえることからすれば、政令による施設の限定が必要とされるのは機能確保施設に限られるものと解されるのであって、航空保安施設の設置、管理を阻害する行為も暴力主義的破壊活動等に該当しうるものというべきである。また、機能確保施設の設置、管理を阻害する行為は、直接には暴力主義的破壊活動等に該当しないものではあるが、これに関して同条一項各号の行為を行った者は、暴力主義的破壊活動等を行うおそれがある者として、同条二項の暴力主義的破壊活動者に該当するものと認められる場合のあることはいうまでもない。
したがって、被告運輸大臣による本件使用禁止命令は、緊急措置法三条一項一号の要件を満たし、適法である。
(八) 原告らは、本件工作物は農作物や家畜等の成育場所として使用し、あるいは、寄り合いや援農交流場所として使用していたにすぎない旨主張するが、仮に本件工作物が右のような使用目的に利用されていた事実があるとしても、前記(一)ないし(五)の認定事実のとおり、本件工作物が新空港反対闘争を展開する中核派等の拠点として利用されているという側面から緊急措置法三条一項一号の要件に該当すると認められる以上は、本件使用禁止命令が違法であるとはいえない。
また、原告らは、新空港反対闘争のための集会等に本件工作物を利用することは、本件工作物の一般的使用に該当するにすぎないと主張するが、この点も、前記(一)ないし(五)の認定事実のとおり、本件工作物における集会は、機関紙において二期工事実力阻止を唱え、実際にゲリラ活動を展開する中核派等の集団により行われるものであり、本件工作物の構造や緊急措置法二条三項に定める規制区域内にある点等を考慮すれば、暴力主義的破壊活動に関連して行う集合であると認定できるのであって、原告らの主張には理由がない。
2 本件除去処分自体の違法性の有無について
前記前提となる事実、証拠(甲一〇の5、乙二〇一ないし二〇八、二〇九の1ないし3、二一〇ないし二一三、二一四の1・2、二一五ないし二一七、二一八の1・2、二一九、二二〇の1・2、二二一、二二二、二二三の1ないし3、二二四ないし二二八、二二九の1・2、二三〇、二三一の1ないし6、二三五の1・2、二三六、二三八、二三九、二四〇の1ないし6、二四八ないし二七七、二八一ないし二八三、証人河野正文及び同鎌田聡)及び弁論の全趣旨によれば、次の(一)ないし(六)の各事実が認められる。
(一) 本件工作物の使用状況
(1) 本件使用禁止命令以後も、本件工作物には、原告吉川が一人で常駐していた。その後、平成二年一月二八日ころ、新たに六名(戦旗両川派の鈴木宏明、蜂起派の徳田真貴子、氏名等不明四名。このうち、鈴木、徳田は新空港反対闘争に関連した検挙歴を有する者である。)が、本件工作物に入り、以後、原告吉川を含む七名が籠城すると共に、同日から本件工作物の櫓二基をベニア板やトタン等で補強した。更に、中核派、革労協、戦旗両川派、蜂起派の四セクト旗を掲げて、櫓上で昼夜監視活動を行っていた。
(2) 他方、本件工作物には、平成二年一月から二月にかけて、ポリタンク、コンクリートブロック等が頻繁に搬入され、次のとおり投てき行為が行われた。
ア 同年二月三日午前六時三九分ころ、本件工作物南方約二〇〇メートル付近空地において警戒活動中の警備車両に向けて、鉄骨櫓上にいた四名(白ヘル、赤ヘル、青ヘル各一名、氏名不詳一名)中の一名が赤色炎と白煙を発する発煙筒様の物一本を投てきした。この件に関しては、同日、菱田地区で行われた北原派の集会の中で、「木の根に立てこもっている戦士七名が、火炎びんを投てきし、闘いに突入した。」等の発言がみられたほか、平成二年二月一九日付け「前進」第一四六八号、同月一五日付け「解放」第四七一号にそれぞれ火炎びんを投てきしたとする内容が掲載されている。
イ 同月八日午前九時一九分ころ、空港公団が、本件工作物から南方約九〇メートルの地点に監視塔を建設すべく作業を行っていたところ、本件工作物の鉄骨櫓上にいた二名(白ヘル着用・紺色ヤッケの者及び鈴木宏明)のうち、白ヘルの者が監視塔建設現場方向に向け、先端に火のついた火炎びん様の物一本を投てきした。投てき物は、櫓から約二〇メートル付近に落下、同所枯れ草に燃え移ると共に高さ一メートルの炎が上がった。そして、九時三五分ころ、右投てき行為についての採証活動のため、本件工作物東側に近づいた警察官に対しても、火炎びん様の物一本が投てきされ、櫓から約三〇メートル付近に落下した。さらに、新聞記者が取材中の午前一〇時一八分ころにも、火炎びんが投てきされた。なお、平成二年二月二六日付け「前進」第一四六九号では、「砦戦士が火炎ビンで反撃」と記載されている。
ウ 同月一六日午後五時五九分ころから午後六時五〇分までの間、鉄骨櫓上にいた六名(白ヘル三名、青ヘル一名、赤ヘル二名)のうち数名が火炎びん様のもの二九本を、主として櫓の西側及び南東側方向に向けて投てきした。そのため、午後六時四六分ころ、同櫓南側約三〇メートル付近において草様のものが一〇秒にわたり炎上し、午後六時四七分ころには、同櫓南側付近地上で約五秒間、炎が上がった。
また、このほかにも、本件工作物からは、空港公団の作業員や警察官に対し、パチンコ様の用具による鉄筋片等の投てきが繰り返された。
(二) 右時期における集会等の状況
平成二年二月三日、三里塚闘争支援連絡会議(代表者は中核派に属する岸上雅博)が主催した「二期工事実力阻止、成田治安法粉砕、話し合い策動粉砕現地集会」では、午前八時二一分から午前九時〇二分の間、千葉県山武郡横芝町菱田八六五先龍崎敏博方空地に一七五名(中核派一〇五、革労協二四、戦旗両川派二、蜂起派三、原告反対同盟七、その他三四)を集めて集会を行った後、午前九時〇三分から午前九時四〇分の間、千葉県山武郡横芝町菱田八二〇番地鈴木幸司方畑までの二・二キロメートルをデモ行進した。この集会では、東京都議(杉並革新連盟)長谷川英憲が、「木の根に立てこもっている戦士七名が、火炎びんを投てきし、闘いに突入した。我々もこの戦士の気持ちをもって闘う。」と主張し、蜂起派の寺崎修一が「本日、育苗ハウス死守隊は、実力武装闘争で闘いを始めた。県知事は、二月から三月にかけて収用委再任命策動を目論んでいるが、実力で阻止する。」、中核派構成員某が「本日、木の根砦戦士達は、反撃を開始した。「一・八ロケット弾戦闘」と都心ゲリラで武装蜂起し、成田で空前の爆発を勝ちとる。運輸大臣、千葉県警察本部長井上を許すことはできない。」、革労協狭間派某が「本日の木の根育苗ハウスの闘いは、八七年から八九年にかけて成田治安法と真っ向から闘い抜いてきたあの戦闘的な勝利を引き継いだ闘いであり、敵・権力に対する明確な回答である。」、戦旗両川派某は「六時四〇分をもって開始された育苗戦士の闘いは、東峰団結砦に強行攻撃を仕掛けた権力・警察・運輸省・公団に対する火炎びん攻撃の第一歩である。我々も木の根死守戦士とともに断固闘う。」等とそれぞれ主張している。
また、平成二年二月四日、前日に引き続いて「三里塚闘争支援連絡会議」では、前同所に八九名を集め、午前八時三〇分から午前九時〇二分の間は集会を、その後午前九時四〇分まではデモを行ったが、この集会でも、前日同様、各セクトが、「昨日、木の根育苗ハウスから火炎びんを投げ、死守態勢に入った。」旨のアピールを行っているほか、デモ行進では、「木の根戦士とともに闘うぞ。成田治安法粉砕。収用委員再任命阻止するぞ」等のシュプレヒコールを行った。
(三) 中核派の意思表明及び活動の継続状況
(1) 本件使用禁止命令後も、中核派は、<1>「砦戦、機動戦、敵の防衛戦全体を対象とする戦闘、武器と戦闘の高度化、大衆的怒りの高揚にふまえ革命的ゲリラ戦争と大衆的武装闘争の展開を巧みに結合し敵戦闘力の疲弊を強制し、せん滅においこんでいくようにたたかうであろう。」(平成元年一〇月二日付け「前進」第一四五〇号)、<2>「天神峰現闘本部をはじめとする団結小屋を、何がなんでも守りぬく。革命軍のゲリラ攻撃の標的は、権力機関、二期工事に手を貸す一切のものにたいして無制限・無制約である。」(平成元年一〇月一六日付け「前進」第一四五二号)、<3>「成田緊急措置法粉砕、団結小屋を実力死守するぞ」「二期絶対阻止・千葉県収用委再任命実力阻止かちとれ」(平成元年一〇月三〇日付け「前進」第一四五四号)、<4>「成田緊急措置法には、より倍加された革命的ゲリラ戦争を!非合法的闘争形態を駆使し、革命的武装闘争、砦戦、機動戦、大衆的実力闘争を全面的に爆発させよ!」(平成元年一一月六日付け「前進」第一四五五号)、<5>「全学連三里塚現闘及び二期決戦行動隊は、反対同盟との二十三年の血盟の真価を天下に示すときである。九〇年決戦にふさわしい激しいたたかいを実現しよう。」(平成元年一一月一三日付け「前進」第一四五六号)、<6>「三里塚、臨戦態勢に突入」「われわれは、この秋・冬を成田治安法粉砕・団結小屋死守、収用委再任命絶対阻止の一大決戦として総力でたたかいぬく決意である。」(平成元年一一月一五日付け「週刊三里塚」第三〇七号)、<7>「収用委再任命策動に火炎攻撃」「千葉県議会事務局次長宅を全焼さす。」「成田治安法発動に爆発的猛攻を!」(平成元年一一月一六日付け「革命軍軍報」)、<8>「団結小屋実力阻止戦闘を徹頭徹尾たたかいぬく。団結小屋への破壊攻撃に対しては、最大級の報復の鉄槌を加える。十二月千葉県収用委再任命策動をどんなことがあっても阻止する。いかなる手段に訴えても阻止する。」「すべての二期工事は破壊の対象であり、また二期工事のあらゆる推進者、協力者は、農民圧殺の共犯者として処断されることを警告する。」(平成元年一一月二〇日付け「前進」第一四五七号)、<9>「収用委再建策動に火炎攻撃」「千葉県議会事務局次長宅全焼さす」「成田緊急措置法を実力粉砕せよ」(平成元年一一月二七日付け「前進」第一四五八号)、<10>「成田緊急措置法に一大報復を」「機動隊せん滅せよ」「一二月収用委再任命を粉砕」「われわれは砦攻防戦と一体となってすき(ママ)まじい怒りの強襲戦、大反撃戦に立ち上がるであろう。」(平成元年一二月四日付け「前進」第一四五九号)、<11>「幕張メッセ主幹宅に火炎攻撃」「東峰団結会館撤去に報復の第一弾」(平成元年一二月七日付け「軍報」)、<12>「天神峰現闘本部や各団結小屋に手をかけるならかけてみろ。無制限無制約のゲリラ戦争が爆発するだろう。」(平成元年一二月二四日付け「日刊三里塚」第三二八号)、<13>「わが中核派は『天神峰現闘本部を体をはって死守する』と宣言した反対同盟の決意に全力でこたえる決意だ。血盟をかならずはたしぬく。九〇年二期決戦の第一の課題は、現闘本部をはじめとする団結小屋を断固死守するたたかいである。」「天神峰現闘本部防衛のたたかいを強化しよう。」(平成二年一月五日付け「日刊三里塚」第三二八六号)、<14>「われわれは、三里塚への反農民的・反人民的な悪質な攻撃に対して全面戦争をもって激烈無比に応えることを宣言する。」(平成二年一月一六日付け「革命軍軍報」)、<15>「われわれは無制限・無制約の報復戦を、さらに徹底的に展開することを厳粛に宣言する。また、今後どのような団結小屋攻撃も断じて許さない。二月千葉県議会で農地強奪・農民圧殺の『死刑人執行(ママ)』たる県収用委員会を再建しようとする策動を、いかなる手段に訴えても阻止する。」(平成二年一月二三日付け「革命軍軍報」)、<16>「三里塚への警察の暴虐を絶対に許さない」「三里塚破壊の攻撃にたいしては、無制限・無制約の戦争を猛然と貫徹する。」(平成二年二月一七日付け「革命軍軍報」)、<17>「わが革命軍は、団結小屋破壊の攻撃を絶対に許さない。さらなる徹底した報復戦をエスカレートさせていく。そしてなによりも千葉県議会における収用委員再任命攻撃に対しては、いかなる手段をも駆使した無制限・無制約の戦闘に決起し、必ずこれを爆砕することを宣言するものである。」(平成二年二月一九日付け「革命軍軍報」)、<18>「木の根育苗ハウス砦死守強化を」、「木の根育苗ハウスで、二月三日午前六時四十分、弾圧のために接近してきた警備車両にたいして火炎ビンがオレンジの弧を描いて飛んだ。」(平成二年二月一九日付け「前進」第一四六八号)、<19>「わが革命軍は、日帝の治安法-破防法-代執行-革命党(軍)壊滅攻撃に対して、現空港爆砕-二期工事阻止の革命的ゲリラ戦を連続してかちとると同時に、非合法革命党(軍)建設の飛躍的強化・発展をとおして、日帝の破防法攻撃を断固として爆破する決意である。」(平成二年二月二四日付け「軍報」)、<20>「木の根育苗ハウス死守戦の爆発で成田治安法爆砕せよ」「砦戦士が火炎ビンで反撃」(平成二年二月二六日付け「前進」第一四六九号)、<21>「団結小屋破壊に機動隊とともに手を貸すならば、われわれは、いかなる手段をも駆使し、無制限・無制約の戦闘をエスカレートさせていく。わが革命軍は、この九〇年、三里塚二期決戦をとことん激化させる決意だ。団結小屋破壊には、猛然たる正義の戦争を大爆発させ、千葉県収用委再任命を絶対に阻止することを宣言する。」(平成二年二月二七日付け「革命軍軍報」)、<22>「この両戦闘は、一・八京都御所・常盤宮邸ロケット攻撃、一・一六三井建設火炎攻撃、一・二三首都圏交通網寸断ゲリラ戦に続く三里塚報復戦の爆発であり、九〇年天皇・三里塚決戦を攻勢的、先制的に切り開くものである。しかし、報復戦はまだ始まったばかりだ。これは序の口である。」(平成二年三月五日付け「前進」第一四七〇号)、<23>「清水建設よ。ただちに二期工事から手を引け。」「そうしなければ、清水建設の全重役、幹部職員は、われわれの標的である。」「わが革命軍は、この九〇年、三里塚二期決戦をとことん激化させる決意だ。」(平成二年三月一二日付け「前進」第一四七一号)と暴力主義的破壊活動等を継続する意思を表明した。
(2) 中核派は、右意思表明に沿って、<1>平成元年一一月一六日、千葉市の千葉県議会事務局次長宅に時限発火装置を設置し、全焼させ、<2>同年一二月七日、千葉市の千葉県企画部主幹宅に時限発火装置を設置し、全焼させ、<3>平成二年一月一六日、神奈川県厚木市の三井建設厚木作業所に時限発火装置を設置し、プレハブ事務所と隣接の宿舎、作業棟及び風呂場を全焼させ、<4>同年一月二三日、千葉県佐倉市の京成電鉄成田線臼井駅付近を走行中の津田沼発成田行き普通電車に時限発火装置を設置し、座席シー卜及び車内の壁等を焼損させ、列車の通行を妨害し、<5>同日、東京都葛飾区のJR東日本常磐線金町駅付近を走行中の上野発取手行き快速電車を爆破し、ガラス窓、座席シート及び網棚を破損させ、列車の運行を妨害し、<6>同日、東京都立川市のJR東日本中央線立川駅に停車中の電車の座席に石油をまき、車両を焼損させ、列車の運行を妨害し、<7>同日、東京都国立市のJR東日本南部線谷保駅付近を走行中の電車に、時限発火装置を設置し、車両を焼損させ、列車の運行を妨害し、<8>同日、神奈川県川崎市のJR東日本横須賀線新川崎駅に停車中の電車に時限発火装置を設置し、車両を焼損させ、列車の運行を妨害し、<9>同日、神奈川県横浜市のJR東日本横浜線十日市場駅付近を走行中の電車に時限発火装置を設置し、車両を破損させ、列車の運行を妨害し、<10>同日、横浜市のJR東日本根岸線本郷台駅付近を走行中の電車に時限発火装置を設置し、車両を焼損させ、列車の走行を妨害し、<11>同年二月一七日、東京都八王子市の丹木駐在所わきに駐車中の軽自動車に時限式発火装置を設置し、木造平屋の駐在所とプレハブ倉庫、軽自動車等二台を全焼させ、<12>同年二月一九日、千葉県八千代市の運輸省職員自宅に時限発火装置を設置し、車庫内の乗用車を全焼させ、併せて同居宅及び車庫並びに隣家の車庫を焼損させ、<13>同年二月二三日、千葉県佐倉市の志津派出所の裏側に時限発火装置を設置し発火させ、<14>同年二月二七日、東京都世田谷区の清水建設社長宅の玄関と裏口付近に時限発火装置を設置し、木造二階建住宅及び物置等を半焼させ、<15>同年三月一四日、東京都港区の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の本社のビルの地下二階駐車場に駐車中の乗用車に時限式発火装置を設置し、乗用車三台を焼損させ、<16>同日、東京都港区の全日本航空事業連合会、全国空港ビル協会等のビルのゴミ集積所等を焼損させる等、暴力主義的破壊活動を継続した。
(四) 戦旗両川派、革労協及び蜂起派等の意思表明の継続状況
本件使用禁止命令の後も、これらの各派は、中核派と同様に強くこれに反発して、戦旗両川派は、その機関紙等において、「-声明-成田治安法使用禁止命令発動を弾劾する」「われわれは、…実力で団結小屋を守りぬき、たたかうことをここに宣言する。とりわけわが東峰団結会館を生命にかえても守りぬき、もし国家権力・機動隊が手をかけようとするものなら、八七年木の根砦死守戦を上回る空前の武装闘争でこれをはね返す決意である。」(平成元年一〇月五日付け「戦旗」第五六七号)、「成田治安法粉砕!東峰決戦勝利」「…東峰決戦は、敵国家権力の暴力的撤去攻撃に対して、東峰団結会館を実力で死守するたたかいである。木の根砦死守戦を上回る徹底抗戦をかちとらなければならない。」(平成元年一〇月二〇日付け「戦旗」第五六八号)、「東峰団結会館要塞化工事に完全勝利」「一切の準備を完了させ、武装対峙に持ち込むことによって団結小屋決戦の主導権をわれわれが握ったのだ。武装対峙で死守態勢をとる中で、取りに来るならいつでも来い!しかし機動隊の生命の保障はない。我々は生命を賭して東峰団結会館を死守する!以上が我々の決意であり、権力に対する挑戦の中身である。」(平成元年一〇月二四日付け現地ビラ「三里塚の炎」第三八一号)と主張し、革労協は、同派の機関紙である「解放」において、「われわれは成田治安法適用と真向から闘い、ゲリラ戦パルチザン戦の爆発を先頭に三里塚決戦勝利し、必ず二期を爆砕し廃港にたたきこむ。」「成田治安法適用粉砕し、二期決戦勝利を」(平成元年一〇月一日付け第四六二号)、「『用地』内-拠点防衛し、武装闘争の嵐を」「この闘いは、反対同盟と共闘党派・共闘組織の団結をもっての『用地』内拠点の絶対防衛とすさまじい武装闘争の強化を一段と深化するものである。」(平成元年一一月一五日付け第四六五号)と主張している。
(五) 本件除去処分の決定過程
(1) 高橋課長は、本件使用禁止命令以後も、本件工作物の使用状況等について、千葉県警や警察庁等と連絡を取るなどして情報収集に努めていたが、本件工作物籠城者による前記(一)の投てき行為について、新聞あるいはテレビ報道、現地の公団職員や警備の警察等によって情報を得るにつれて、緊急措置法三条六項の封鎖処分ではなく、同条八項の除去処分の必要性を感じ始め、その要件を充足するかどうかについて、警察庁ないし千葉県警に情報の提供を求めた。他方、高橋課長は、平成二年二月上旬ころ、空港公団の本松雅長工事局長に対して、除去処分等の発動があった場合に備えて、作業方法の検討等、その準備をするよう依頼した。
(2) 被告運輸大臣は、平成二年三月一四日、金澤警察庁長官に対して、緊急措置法三条一六項に基づいて、同条八項の要件の判断に必要な資料の提供を求めたところ、同日付けで、金澤警察庁長官から、本件工作物の出入り状況、出入り者の各セクト所属状況、現地の火炎びん投てき状況(投てき状況に関する写真や投てき行為に関する証拠物の押収状況に関する資料等)、運輸省の幹部職員や県職員に対する中核派等のゲリラ活動状況に関する資料が提出され、同月一五日に緊急措置法三条八項に該当するとの意見が提出された。
(3) そして、高橋課長は、上司と共に右資料等を検討し、被告運輸大臣の判断を仰ぎ、その結果、被告運輸大臣は、同月一六日、緊急措置法三条八項に該当すると判断し、空港公団に対して、除去の実施に関する指示をすると共に、金澤警察庁長官に対し、除去処分にあたっての警備の依頼をした。また、丹羽航空局長からも、千葉県警本部長に対して除去処分に関連する警備依頼がなされた。
(六) 本件除去処分当日の経緯
(1) 緊急措置法七条一項により、いずれも被告運輸大臣から除去処分等を行う権限を有する職員としての指定を受けた高橋課長、越智補佐官及び口田補佐官は、平成元年三月一九日午前六時ころ、現地に到着したが、本件工作物では、鉄骨櫓の上に、白や赤や青のヘルメットをかぶった者たちが、五、六人、また木櫓の上には、白いヘルメットをかぶった者が、それぞれ居り、火炎ビンや石のようなものを南側の方に投てきしていた。
(2) 越智補佐官は、同日午前六時一五分ころ、本件工作物から四、五〇メートルくらい離れた位置から、車両に搭載してある拡声器を使用して、除去処分が出されたこと、緊急措置法三条一〇項に基づく退去命令が出されていることを通告すると共に、通告した内容と同じ内容を書いた横断幕を掲示した。これに対し、本件工作物に籠城した者達は、火炎びんや石等の投てきを開始し、投げられた石は、高橋課長、越智補佐官、通告作業の補助者である空港公団の職員や、通告作業を警備している警察官等が居た前記通告場所付近にまで飛んできた。
(3) 高橋課長らは、投石が届かないような場所まで移動した上、約五分後に、二回目の通告をした。その後、空港公団及び作業指示を受けた業者によって、除去処分のための作業が開始された。
作業は、まず本件工作物周辺の除去作業に必要なスペースを確保するための整地作業から始められたが、右作業に対して、本件工作物内に居る者達は、火炎びんや石の投てき行為を繰り返し、これに対して、空港公団側は、整地作業が進んだ段階で、火炎びん、投石防止用に作られたネットが張ってある鉄製のかごのような防護ケージを、鉄骨櫓のほうに設置した。これに対して、本件工作物内に籠城した者達は、防護ケージのネットを鉄パイプ等で切り、隙間を作って、そこから投てき行為を続けた。
(4) 同日昼すぎ近くになり、高橋課長及び口田補佐官は、再度、鉄骨櫓の三〇メートル近くまで車両で接近し、口田補佐官から、本件工作物内に居る者に対して、除去処分及び退去命令が出されていることについて通告をしたところ、右通告作業中に、防護ケージのネットが大きく破られて、そこから石様のものが高橋課長らに対して投てきされ、右車両のボンネットのところに当たった。
(5) その後、高橋課長らは、同日午後の除去作業開始のときと、夕方の二回にわたり、除去処分及び退去についての通告をした。同日の作業は午後五時半くらいに終了した。
(6) 翌二〇日午前六時ころ、高橋課長らは、現地に到着した。すると、鉄骨櫓の上に、数名の者がおり、前日と同じような状況で石等を投てきしてきたので、同日午前六時一五分ころ、口田補佐官が、本件工作物の中にいる者に対して、除去処分及び退去命令が出されているとの通告をしたが、本件工作物の中に居る者はこれに従わず、投石等を繰り返した。
(7) そこで、運輸省、空港公団及び千葉県警は、午前七時すぎ、再び防護ケージを鉄骨櫓に掛け、防護ケージで鉄骨櫓の上部部分をそのまま支え、その下の部分を切断して、櫓の上部を地上に降ろし、その上で千葉県警による逮捕活動を行った。
(8) また、木櫓の方にも一人籠城者が居たが、高橋課長らは、鉄骨櫓のときと同様に車両で木櫓の方まで移動し、搭載してある拡声器を使用して越智補佐官が除去処分が出されているとの通告をした。しかしながら、右籠城者は、退去せず、千葉県警は、警察官の乗ったゴンドラを木櫓に近づけて、逮捕活動を行った。
(9) その後、除去作業が、同日午後五時半ころまで続けられ、また翌二一日も午前六時ころから再開されて、同日午前中に終了した。
(七) 以上のとおり、本件使用禁止命令後も、これに違反して本件工作物が暴力主義的破壊活動者の集合の用に供されていたと認められる上、本件工作物が一層補強された経緯があり、しかも中核派等の各セクトにおいて暴力主義的破壊活動等に関する意思を継続して表明し、これに沿った活動も続いていたこと、加えて、平成二年二月三日以降、本件工作物から、警戒中の警察官などに対する火炎びんの投てき行為等が度々繰り返されていたこと、その他前記認定したような本件工作物の従前の使用状況や周辺の状況等諸般の事情に鑑みれば、本件工作物が暴力主義的破壊活動等にかかわるおそれが著しいと認めることができる。
そして、前述したような本件工作物に関する各セクトの意思表明の内容、本件工作物の構造や使用状況等からすれば、封鎖措置をもってしては奪還行為等の対象とされるおそれが十分に予想されたものということができ、実際にも本件除去処分の執行時における火炎びんなどの投てき等による前述したような激しい抵抗のあった事実をも併せ考慮すると、封鎖措置等の他の処分では本件使用禁止命令の履行を確保することはできなかったものと認められる。
そして、これまでに述べてきたところからして、緊急措置法の前記目的を達成するために本件工作物の除去が必要であったものと認めることができる。
3 原告らの主張について
原告らは、本件除去処分の準備状況及び本件除去処分当日の状況に照らせば、本件除去処分が単に除去を目的とした国家的暴力行為にすぎない旨主張する。
しかしながら、証拠(乙二四〇の5、二六二ないし二六五及び二六八)によれば、平成二年一月二三日ころ、本件工作物周辺において行われた整地作業は、空港予定地内の造成工事の一環として行われたものにすぎないことが認められる上、前記認定事実によれば、被告運輸大臣が緊急措置法三条八項の適用を決めたのは同年三月一六日であること、その前の同年二月上旬に、高橋課長が本松工事局長に対して除去処分等がなされた場合の準備を依頼しているが、本件工作物の前記状況や処分の執行に対する抵抗の予想されることなどから、封鎖措置や除去処分の執行のためには相当程度の準備作業が必要と考えられるのであって異とするに足らず、原告らの主張を認めることはできない。
また、証拠(乙二四〇の6、二七一、二七五及び証人河野正文)によれば、本件除去処分の執行時において、防護ケージを使用したり、高圧放水をしたりした理由は、本件工作物からの火炎びんや石等の投てきを防ぐと共に、本件工作物に籠城した七名に対する逮捕活動の安全を期するためであったと認めることができる上、前記認定したとおり、本件除去処分に当たって、右七名は、火炎びん等の投てき行為を繰り返していたのであるから、これに比して著しく不相当な方法であったともいえない。
4 以上のとおり、本件除去処分は、その決定時において、緊急措置法三条八項の要件を充足していたものと認めることができ、その決定過程及び執行過程にも違法の点は認められない。
四 被告国及び被告県に対する損害賠償請求について
1 前記のとおり、本件使用禁止命令は、緊急措置法三条一項一号の要件を満たす適法なものであり、本件除去処分も、同条八項の要件を満たす適法なものと認められる。
2 そして、前記認定したとおり、平成二年三月一九日からの本件除去処分時に本件工作物内にいた七名が、運輸省や空港公団職員及び警察官らに対して、本件除去処分を妨害しようとする意思に基づいて、火炎びんや石、鉄筋片などを投てきして攻撃を繰り返しているといった状況において、放水や防護ケージ、ゴンドラ等を使用して、これを制圧し逮捕したことも不相当とはいえない。
3 そうすると、被告運輸大臣及び千葉県警の警察官には原告ら主張のような違法な公権力の行使は認められず、原告らの被告国及び被告県に対する損害賠償の各請求はいずれも理由がない。
五 損失補償請求について
原告らは本件工作物の除去処分により多大な損失を被ったのであるから、予備的に憲法二九条三項に基づいて、本件工作物の除去に伴う損失の補償請求の一部として、前記第一の三記載の各金員の支払を求めている。
ところで、原告らの右損失補償の請求は、本訴においては請求の予備的追加的変更に該当するところ、これがなされたのがすでに本件訴訟の審理が最終段階に至り、弁論の終結を予定した期日であることが当裁判所に顕著であり、また、これを許せば、原告らの右補償請求権の有無や損失額等について判断するために、当事者双方にさらに主張・立証を尽くさせることが必要となって、その審理になお相当期間を要することが認められるのであって、これによりすでに終結の段階にある本件訴訟が著しく遅滞することが明らかである。
よって、右請求の予備的追加的変更は、職権によりこれを許さないこととするのが相当である。
六 よって、原告らの被告運輸大臣に対する訴えはいずれも不適法なものであるからこれを却下し、被告国及び被告県に対する請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、平成一一年一二月二〇日に終結した口頭弁論に基づいて主文のとおり判決する。
(裁判官 伊藤敏孝 裁判長裁判官 西島幸夫及び裁判官 鈴木秀雄は、転補につき署名捺印することができない。裁判官 伊藤敏孝)
別紙一
物件目録
一 千葉県成田市木の根字拓美一八四番二所在
鉄骨プレハブ造亜鉛メッキ鋼板葺二階建建物
面積 約四二・三平方メートル
二 同所同番地所在
コンクリ-卜基礎 木製櫓
高さ 約一七メートル
三 同所同番地所在
コンクリート基礎 鉄骨製櫓
高さ 約一四メートル
四 同所同番地所在
木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建
面積 約五平方メートル
五 所在 千葉県成田市木の根字拓美
地番 一八四番二
地目 宅地
面積 九九・三三平方メートル
別紙二
戦旗両川派、革労協及び蜂起派の本件使用禁止命令発出前における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び活動状況
1 戦旗両川派の本件使用禁止命令発出前における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び活動状況
(一) 暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況
本件使用禁止命令発出前に、戦旗両川派は、その機関紙「戦旗」において、以下のとおり暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。
<1> 「空港突入、解体戦に向かってわが戦旗派と全三里塚勢力が武装決起で進撃し、…反革命と闘争敵対者の打倒、血で血を洗う凄惨な闘争を不可避とするのだ。」(昭和五九年一月二〇日付け第四五一号)
<2> 「…わが共産同(戦旗派)は…三里塚空港建設=二期工事強行に対して、革命党としての全力量を投入してこれを粉砕することを宣言する。…八〇年代において必ずや二期阻止-空港廃港をかちとる決意である。」(昭和六〇年一月二〇日付け第四六三号)
<3> 「われわれが第一に確認しなければならない点は、日帝-中曽根の八四年八・二八着工プランとの全面対決・武装対決こそが『日帝打倒-三里塚二期決戦勝利』の基軸中の基軸であるということだ。」、「わが戦旗派は、八三年三・八以来の重大な決意をもって八五年用水決戦に全党をあげ武装決起しなければならない。八五年決戦はわが戦旗派のBUND(党)としての真価が本当に問われる歴史的闘いである。わが戦旗派は三里塚農民、すべての三里塚勢力とともに、八五年決戦の偉大な内乱に総決起する。」(昭和六〇年八月一日付け第四七四号)
<4> 「十・二〇空港-突入・解体戦の地平をうけつぎ、三・三〇闘争への圧倒的動員・組織戦に勝利し、的(ママ)権力の弾圧を粉砕し、日帝-公団の野望を完膚なきまでに粉砕しつくさねばならない。」(昭和六一年三月五日付け第四八六号)
<5> 「…公団用地の鉄条網包囲、自主耕作地破壊攻撃を粉砕し、駐車場・工事用道路・空港用貯水池建設を阻止する闘いに断固勝利し、敵権力を『用地内』へ一歩も踏みこませてはならない。」、「…われわれは反対同盟農民の革命精神に立脚し、二期工事実力阻止、武装闘争の貫徹、機動隊せん滅、空港突入-解体の空前の大闘争に決起することを今こそ決意しようではないか。第二、第三の十・二〇戦取で内乱-蜂起・内戦戦略を物質化し、勝利の血路を切り拓こう。」(同年八月五日付け第四九六号)
<6> 「…わが戦旗派は十・二六闘争を一大階級激突戦として闘い勝利する。十・二〇戦を上回る武装闘争、大衆的実力闘争で三里塚二期本格着工攻撃を絶対阻止する。」(同年一〇月五日付け第四九九号)
<7> 「『第二の十・二〇』こそ、三里塚二期決戦の勝利を切り拓く唯一の道であることをあらためて確認し、この闘いを連続的・系統的に実現しうる革命党建設の前進に死力を尽くして決起しなければならない。」、「そして具体的な二期工事強行に軍事的打撃を与えるゲリラ・パルチザン戦貫徹を何が何でも継続的にやりとげなければならない。成田用水決戦の中でかちとったように、工事計画に決定的な打撃を与えることができる。そして一切の権力施設、空港施設への攻撃は、二期戦略総体の破産をひきずり出すのである。」(昭和六二年八月一五日付け第五一八号)
<8> 「わが共産同(戦旗派)は、八三年三・八の革命的精神を堅持・発展させ、日帝打倒の戦略的導水路としての三里塚二期決戦勝利へ向けて、断固たる権力闘争、武装闘争の貫徹へ、渾身の力をふりしぼって総決起をかちとる。」、「われわれは、<1>日帝国家権力中枢と二期工事に対して、さらに空港本体に対する徹底的なゲリラ・パルチザン戦を叩きつける。日帝-公団の農地強奪・農民殺しの攻撃に対する一大反撃、報復戦を何がなんでも敢行する。<2>切迫する木の根砦撤去攻撃に対して革命党の決起として木の根死守戦を闘い抜く。反対同盟の拠点、革命派の拠点を命がけで守り抜き、機動隊殲滅・砦死守の武装決戦として、木の根大地を血みどろの戦場にして闘い抜く。<3>そして『第二の十・二〇』を必ずや戦取し、日帝の二期強行攻撃と『九〇年概成プラン』を最後的に叩きつぶす、空港突入-解体の全人民的武装闘争に総決起するであろう。」(昭和六二年一〇月二〇日付け第五二二号)
<9> 「日帝-運輸相石原は、木の根砦に対して成田治安法を適用し、砦破壊を強行した。…死守隊の魂を受け継ぎ、権力を震憾せしめるゲリラ戦、党・組織を作り出し、三里塚二期決戦に勝利せん。」(昭和六三年二月五日付け第五二八号)
<10> 「われわれは自主耕作地破壊に断固とした反撃を開始しなければならない。…三里塚現闘団、戦旗派行動隊と共に東峰死守の臨戦体制を打ち固めよ。」(同年四月五日付け第五三二号)
<11> 「四月二十日、日帝-空港公団はついにB滑走路北端着工に手を染めた。…情勢は風雲急を告げる煮つまりを見せている。われわれは、今こそ党の総力を結集し、怒りの反撃戦に打って出なければならない。」、「5・8成田治安法粉砕集会こそ、来るべき東蜂決戦の一大前哨戦である。五・八を皮切りに、七一年代執行阻止決戦、七八年開港阻止決戦を上回る空前の武装闘争の時代を切り拓こうではないか。」(昭和六三年五月五日付け第五三四号)
(二) 暴力主義的破壊活動等の実施状況
本件使用禁止命令発出前において、戦旗両川派は、以下のような暴力主義的破壊活動等を現実に実行していた事実が認められる。
<1> 昭和五九年九月九日、新空港建設と密接に関連した事業である成田用水工事を請け負っている千葉県山武郡芝山町の萩原土建作業員宿舎に時限発火装置を仕掛けて同宿舎を全焼させた(暴力主義的破壊活動等(以下、同じ)の第四類型)。
<2> 昭和六〇年九月一六日、成田市の新空港第三ゲート近くの三里塚十字路で「空港突入」を怒号して警備中の機動隊警察官約一五〇人の隊列に約二〇〇人のデモ隊が突入し、四九名が公務執行妨害等の現行犯として逮捕された(第一及び第三類型)。
<3> 同年一〇月二〇日、中核派集団と共に、成田市の新空港第三ゲート近くの三里塚十字路で丸太・鉄パイプ等を準備して集合した上、警備中の機動隊警察官に対し大量の火炎びん及び石塊等を投てきし、車両等を焼毀させ、同警察官五九名に傷害を負わせた(第一及び第三類型)。
<4> 昭和六一年一〇月二三日、千葉県香取郡大栄町の吉岡駐在所に時限式発火装置を仕掛け、同装置を発火炎上させた(第三類型)。
<5> 同日、千葉市の千葉県警察本部自動車整備工場に駐車中のマイクロバスに時限発火装置を仕掛け、これを焼損させた(第三類型)。
2 革労協の本件使用禁止命令発出前における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況及び活動状況
(一) 暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況
本件使用禁止命令発出前に、革労協は、その機関紙「解放」において、以下のように暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。
<1> 「空港包囲・突入-解体」、「現空港を攻略(解体)する乾坤一擲の武装闘争を先取せよ」(昭和六〇年九月一五日付け第三六八号)
<2> 「ゲリラ戦パルチザン戦の爆発を先端とし、木の根団結砦をおしたて二期を阻み、現空港突入・解体へつきすすめ!」(昭和六一年九月一五日付け第三九〇号)
<3> 「いよいよ渾身の力をこめて武装決起する時がきた!木の根は、いまや、彼我双方が敵をうち伏せてつき進もうとする決戦場だ!武器をとり、木の根-二期決戦に決然と起て!勝利を求め、現空港に殺到せよ!機動隊をせん滅せよ!木の根砦を拠点とし、壮大な死闘戦をきりひらけ!二期工事を爆砕せよ!」(同年一一月一五日付け第三九三号)
<4> 「わが解放派は、この三里塚二期決戦の只中で二期阻止・空港爆砕の実力闘争・武装闘争の大爆発をお前の眼前で連続的に貫徹してやる。」(平成元年八月一日付け第四五八号)
(二) 暴力主義的破壊活動等の実施状況
本件使用禁止命令発出前に、革労協は、以下のように暴力主義的破壊活動等を現実に実行していた事実が認められる。
<1> 昭和五三年七月二九日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のいわゆる「鹿島ルート」の起点である茨城県鹿島郡神栖町鹿島石油製油所の石油パイプラインに時限装置を仕掛けて発火させた(第二類型)。
<2> 同年八月二日、新空港へのリムジンバス発着所及び新空港から出発する旅客の搭乗等の手続の場所である東京都中央区日本橋箱崎町東京シティ・エア・ターミナルに火炎車を突入させた(第二類型)。
<3> 同年八月三〇日、神奈川県足柄下郡湯河原町にある箱根航空路監視レーダーを火炎びん等で襲撃した(第五類型)。
<4> 同年九月四日、成田市において、新空港への重要な交通手段である京成電鉄空港線のガード下でトラックを炎上させた(第二類型)。
<5> 同年九月一二日、茨城県鹿島郡鹿島町において新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のいわゆる「鹿島ルート」に当たる鹿島臨海鉄道の線路上に生コンクリートをまいて列車の運行を妨害した(第二類型)。
<6> 同年九月一六日、新空港計器着陸用施設の一部である成田市荒海のアウターマーカーを火炎びん等を用いて襲撃した(第一及び第五類型)。
<7> 昭和五四年九月一四日、茨城県鹿島郡鹿島町において、新空港ジェッ卜燃料暫定貨車輸送のいわゆる「鹿島ルート」に当たる鹿島臨海鉄道の北鹿島駅と南神栖駅間の線路上に土砂を満載した無人のダンプカーを突入させて列車の運行を妨害した(第二類型)。
<8> 同年一〇月一〇日、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる千葉県香取郡下総町の国鉄成田線滑河駅と久住駅間において、ジェット燃料輸送列車を発煙筒を用いて急停車させ、これを襲撃した(第二類型)。
<9> 昭和五五年五月一六日、東京都千代田区霞が関の運輸省等庁舎わきに自動火炎放射装置を仕掛けたライトバンを駐車させ、同庁舎内の運輸省に向けて同装置を作動させた(第三類型)。同事件について革労協は、「解放」において、「この闘いの意義は第一に、『空港施設』破壊・飛行阻止の闘いと結合し…」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<10> 昭和五六年五月一一日、ジェット燃料輸送を妨害するため、新空港ジェット燃料暫定貨車輸送のルートに当たる茨城県鹿島郡鹿島町の国鉄鹿島線第二宮中架道橋を酸素ボンベで切断した(第二類型)。同事件について革労協は、「解放」において、「二期-廃港決戦の巨弾」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<11> 昭和五七年三月一六日、成田市の新空港ジェット燃料暫定貨車輸送の拠点である土屋燃料中継基地前の県道に火炎放射装置を仕掛けたワゴン車を乗りつけ、同中継基地に向けて同装置を作動させた(第二類型)。同事件について革労協は、「解放」において、「空港爆砕-二期着工実力阻止へゲリラ的戦闘炸裂!」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<12> 同年七月一日、東京都中央区の親父橋派出所に、時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させた(第三類型)。
<13> 同日、東京都墨田区の太平四丁目派出所に、時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させた(第三類型)。
<14> 同日、東京都北区の馬坂派出所に、時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させた(第三類型)。
<15> 同日、東京都新宿区の戸塚町三丁目派出所に、時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させた(第三類型)。
<16> 同日、東京都新宿区の中落合西派出所に、時限式発火装置を仕掛けて発火炎上させた(第三類型)。
<17> 同日、東京都足立区の小台派出所に、時限式可燃物を仕掛けて発火炎上させた(第三類型)。
以上の<12>ないし<17>の事件について革労協は、「解放」において「…三里塚二期着工実力阻止…」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<18> 同年九月二四日、成田市三里塚の空港公団工事局ビル前の路上に小型トラックを停車させてガソリンを大量噴射させた(第三類型)。同事件について革労協は、「解放」において、「二期廃港への突破口をひらく。」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<19> 昭和五八年七月四日、成田市の新空港旅客ターミナルビルコインロッカー二か所に時限式発火装置を仕掛けて発火させた(第一類型)。
<20> 昭和五九年三月八日、成田市の京成電鉄成田空港駅内の京成スカイライナーに時限式発煙装置等を仕掛けて発煙させた(第二類型)。同事件について革労協は、「解放」において、「空港心臓部を再度直撃」、「空港動脈を完全に切断」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<21> 同年九月一五日、千葉県香取郡多古町の新空港建設と密接に関連した事業である成田用水の芝山加圧機場のフェンスに時限式発火装置を仕掛けフェンス外側の枯れ草を焼いた(第二類型)。
<22> 同年一一月一三日、千葉県佐倉市に埋設されている新空港ジェット燃料輸送パイプラインに穴をあけジェット燃料を流出させた(第二類型)。同事件について革労協は、「解放」において、「…一路、現『空港』機能爆砕-廃港戦取に真一文字に進撃せよ!」、「十一・一三戦闘の巨弾に、死の苦悶にうちふるえる廃港寸前の現『空港』にとどめの一撃を」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<23> 昭和六〇年二月一五日、成田市の十余三駐在所に時限式発火装置を仕掛け同駐在所の一部を焼損させた(第三類型)。同事件について革労協は、「解放」において、「…本戦闘は、成田用水着工、東峰十字路フェンス張り、表土移送とうちつづく二期攻撃の敵権力反革命最前線拠点そのものを攻略・破壊した。…十余三駐在所炎上破壊の戦果をさらにおし拡げ、二期阻止・空港廃港に向けた、更なる連続的ゲリラ戦をたたかいとることを宣言する。」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
<24> 同年三月一四日、千葉県香取郡多古町の新空港建設と密接に関連した事業である成田用水の関連業者である山崎運輸会社の車両置き場に駐車中の大型重機搬送車に時限式発火装置を仕掛け同車両の一部を焼損させた(第四類型)。
<25> 同年三月二四日、千葉県山武郡芝山町の新空港建設と密接に関連した事業である成田用水の菱田工区四号配水施設内の配水管にセメントを流し込んだ(第二類型)。
<26> 同年五月三〇日、成田市の新空港建設と密接に関連した事業である成田用水土地改良区事務所の事務室兼倉庫に時限式発火装置を仕掛けて同事務室兼倉庫を全焼させた(第二類型)。
<27> 同年九月二四日、成田市の新空港滑走路近くに駐車中のトラックより同空港に向け時限式発射装置を使用して火炎弾を発射した(第一類型)。
<28> 同年一〇月二〇日、成田市の新空港管理棟ビルに向けて、同ビル前路上に駐車した偽装消防自動車に仕掛けた装置からパチンコ玉を発射させ同ビルの窓ガラス等を破損し、同自動車に仕掛けた時限式発火装置により同自動車を焼毀した(第一類型)。
<29> 昭和六一年七月一七日、成田市の新空港二期用地内において時限式発射装置を使用し、同用地内の元・県警機動隊宿舎に向けてロケット弾を発射した(第三類型)。
<30> 昭和六二年一月一四日、千葉県山武郡芝山町の新空港建設と密接に関連した事業である成田用水工事を警備中の機動隊に対して火炎びんを投げたり、鉄パイプやバールで殴りかかり、機動隊員三人を負傷させた(第二及び第三類型)。
<31> 昭和六三年九月二六日、千葉県鎌ケ谷市の道野辺派出所に時限式爆発物を設置し、同派出所の壁の一部を破損したほか、近所の民家のガラス一枚を破り、自動販売機に穴を開けた。また、警察官一名を負傷させた(第三類型)。同事件について革労協は、同月二八日に革労協革命軍軍報において「土地収用、代執行に対する革命軍の鉄の回答である」とし、自らの犯行であること及びその犯行目的を明らかにしている。
3 蜂起派の本件使用禁止命令発出前における暴力主義的破壊活動等に関する意思の表明状況
本件使用禁止命令発出前に、蜂起派は、その機関紙「蜂起」において、以下のとおり暴力主義的破壊活動等に関する意思を表明している。
<1> 「敷地内決戦を迎えんとする三里塚現地に馳せ参じ、侵略反革命軍事空港の解体に向けて、『農地死守・実力闘争』を貫く反対同盟とガッチリ団結して勇躍二期実力戦闘に起とうではないか!」(昭和六三年五月一〇日付け第二〇四号)
<2> 「山谷・沖縄・三里塚から出撃せよ!」「収用法攻撃粉砕!」(同年八月一〇日第二〇七号)
<3> 「代執行阻止へ更なる進撃を」「敷地内拠点を実力戦闘で防衛し抜き、もって侵略反革命軍事空港解体へと攻めのぼるであろう。二期実力戦闘の硝煙の只中で、我が蜂起派の真紅の旗を掲げなければならない。」(同年一一月一〇日第二一〇号)
<4> 「『話し合い』策動と対決し、強制代執行を粉砕せよ!」「我が蜂起派が三里塚の大地で実力戦闘に武装して決起し、強制代執行を阻止し勝利の大道を進撃することが決定的に問われている。」「実力闘争の大道を刻印せよ!」(平成元年三月一〇日第二一三号)