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千葉地方裁判所 平成3年(わ)1228号 判決 1992年3月02日

本店所在地

千葉県佐倉市六崎二三三番地

法人の名称

有限会社 トクスイ不動産

代表取締役

中村加代子こと朴加代子

国籍

韓国

住居

東京都中央区佃一丁目一一番地六-三〇〇六号

不動産業

中村春雄こと李春雄

一九四三年五月一一日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官奥村丈二出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社トクスイ不動産を罰金三五〇〇万円に、被告人李春雄を懲役一年六月に各処する

被告人李春雄に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社トクスイ不動産は、千葉県佐倉市六崎二三三番地に本店を置き、不動産売買業等を営むもの、被告人中村春雄こと李春雄は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人李春雄において、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外しあるいは架空費用を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和六二年四月一日から同六三年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得額が一億三三一六万四一三二円、課税土地譲渡利益が一億三三九〇万四〇〇〇円であったのにかかわらず、同年五月三一日、千葉県成田市加良部一丁目一五番地所在の所轄成田税務署において、同税務署長に対し、その所得額が一五六万一二一九円、課税土地譲渡利益額が三五七七万一〇〇〇円でこれらに対する法人税額が合計一〇六六万二二〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規に申告した場合の法人税額八七八七万二五〇〇円と右申告税額との差額七七二一万〇三〇〇円を免れ

第二  同六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得額が八九六八万四四六九円、課税土地譲渡利益額が一億五九五〇万八〇〇〇円であったのにかかわらず、同年五月三一日、右成田税務署において、同税務署長に対し、その所得額が九七万四四二五円、課税土地譲渡利益額が五〇五八万八〇〇〇円でこれらに対する法人税額が合計一五四〇万五三〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の申告した場合の法人税額八四四九万六三〇〇円と右申告税額との差額六九〇九万一〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する平成三年一〇月一九日付け、同月二四日付け、同月二五日付け及び同月二六日付け各供述調書

一  被告人作成の上申書

一  樋口文雄の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の

1  各査察官報告書

2  土地建物売上調査書

3  土地等手数料調査書

4  期首棚卸高調査書

5  商品仕入高調査書

6  仕入附帯費用調査書

7  各仕入支払手数料調査書

8  外注工事費調査書

9  各期末棚卸調査書

10  広告宣伝費調査書

11  各販売手数料調査書

12  管理費調査書

13  給料手当調査書

14  厚生費調査書

15  減価償却費調査書

16  賃借料調査書

17  地代家賃調査書

18  修繕費調査書

19  事務費調査書

20  消耗品費調査書

21  水道光熱費調査書

22  旅費交通費調査書

23  手数料調査書

24  租税公課調査書

25  交際接待費調査書

26  保険料調査書

27  通信費調査書

28  諸会費調査書

29  新聞図書費調査書

30  各謝礼金調査書

31  雑費調査書

32  受取利息調査書

33  雑収入調査書

34  支払利息割引料調査書

35  前記損益修正益等調査書

36  固定資産売却損調査書

37  固定資産廃棄損調査書

38  貸倒金調査書

39  減価償却超過額調査書、

40  支払利息損金不算入額調査書

41  交際費等の損益不算入額調査書

42  商品受入額調査書

43  借入金受入額等調査書

44  繰越欠損金の当期控除額調査書

45  各事業税認定損調査書

46  各その他所得より調査書

47  支払利益分配当金調査書

48  土地譲渡利益金額に対する税額調査書

49  その他所得調査書

50  証明書

51  期末棚卸高補正調査書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  登記官作成の各登記簿謄本

一  有限会社トクスイ不動産作成の証明書

一  青色申告の承認請求書一枚(平成四年押第一五号の4)

判示第一の事実について

一  被告人の検察官に対する平成三年一〇月二一日付け及び同月二二日付け(二八枚綴りのもの)各供述調書

一  佐藤郁夫、若宮和夫、五十嵐克司、坂本豊吉、保坂龍彦、岡田正一郎、五十嵐修、朴加代子及び小川とみ子の検察官に対する供述調書

一  押収してある法人税確定申告書一冊(同押号の1)、更正の請求書一枚(同押号の3)

判示第二の事実について

一  被告人の検察官に対する平成三年一〇月二二日付け(二六枚綴りのもの)供述調書

一  竹本政幸、横田眞男、小暮幸一、呉正煥及び中村豊子の検察官に対する各供述調書

一  押収してある法人税確定申告書一冊(同押号の2)

(法令の適用)

被告人両名の判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告人会社については、更に同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人李については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内で罰金三五〇〇万円に、被告人李については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判第一の罪の刑に加重をした刑期の範囲内で懲役一年六月にそれぞれ処し、被告人李に対して同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の代表取締役であった被告人李が、昭和六三年三月期及び平成元年三月期の二事業年度にわたり、不動産仕入資金等を得るため、主として不動産取引に関し、第三者名義を利用し、あるいは裏契約によって上乗せ金を得るなどして売上の一部を除外し、また、ダミーの仲介人を介在させて仲介手数料を仮装して費用を架空計上するなどの方法により合計一億四六三〇万円余の法人税を免れた脱税事案であるが、その動機に酌むべきものはなく、手口も巧妙であり、脱税額も多いのはもとより、ほ脱率も約八五パーセントに及ぶものであって、その犯情は悪質である。

しかしながら、被告人李は本件発覚後は犯行を素直に認め国税局の調査に積極的に協力し、被告人会社においても、国税局に指導され修正申告に従って法人税の本税、過少申告税、延滞税、重加算税はもちろん、県民税、市民税等合わせて約四億一〇〇〇万円余(昭和六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度分も含む)を全て完納し、更に、経理体制を充実してこれからは納税義務を果たしていく姿勢を示していること、被告人李には前科、前歴はなく、養うべき家族や、その経営手腕を頼りとする従業員があることなど、被告人両名に有利な、あるいは酌むべき事情もあるので、これらを総合考慮して、被告人両名に主文掲記の刑を科したうえ、情状により被告人李についてはその刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 神作良一 裁判官 遠藤和正 裁判官 馬場純夫)

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