大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

千葉地方裁判所 平成7年(わ)1960号 判決 1996年6月06日

裁判所書記官

吉岡智男

本店の所在地

千葉県市原市今富七三〇番地一

法人の名称

生塩工業株式会社

(代表者代表取締役 生塩弘)

本籍

川崎市川崎区小田三丁目一〇番地

住居

千葉県市原市今富七三〇番地の一

会社役員

生塩弘

昭和一九年二月一六日生

右の者に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官竹内寛志、弁護人秋田良一各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人生塩工業株式会社を罰金三二〇〇万円に、被告人生塩弘を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人生塩弘に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人生塩工業株式会社(以下「被告人会社」という。)は、千葉県市原市今富七三〇番地一に本店を置き、プラント建設工事等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人生塩弘は、被告人会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人生塩弘は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注加工費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成三年五月一日から同四年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が三億八二八九万一三二〇円であったにもかかわらず、同年六月三〇日、千葉市中央区蘇我町一丁目五六六番地の一所在の千葉南税務署において、同税務署長に対し、被告人会社の所得金額が一億三九二一万五一五円で、これに対する法人税額が五〇三九万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一億四一七七万一四〇〇円と右申告税額との差額九一三八万四〇〇円を免れ

第二  同四年五月一日から同五年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一億八〇二三万三三六円であったにもかかわらず、同年六月三〇日、前記千葉南税務署において、同税務署長に対し、被告人会社の所得金額が一億三七三九万八九六三円で、これに対する法人税額が五二三七万三二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額六七九八万四九〇〇円と右申告税額との差額一五六一万一七〇〇円を免れ

第三  同五年五月一日から同六年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が一億三二九六万二九八八円であったにもかかわらず、同年六月二九日、前記千葉南税務署において、同税務署長に対し、被告人会社の所得金額が九〇三二万二〇一二円で、これに対する法人税額が三一八六万一〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額四七八五万一〇〇〇円と右申告税額との差額一五九九万円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(注)括弧内の数字は、証拠等関係カードの検察官の請求証拠の甲乙別の番号を示す。

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書(乙一ないし三)

一  佐藤フミ子(甲九)、前田正好(甲一一)、林勝己(甲一二)、黒岩光男(甲一六)、佐伯修(甲一七)の検察官に対する各供述調書

一  須藤信男の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲一〇)

一  検察事務官作成の報告書(甲三)、電話聴取書(甲七)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(甲八)

一  登記簿謄本(甲二)

判事第一の事実について

一  松村鐵一郎の検察官に対する供述調書(甲一五)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲四)

判事第二及び第三の事実について

一  奥宮今行の検察官に対する供述調書(甲一三)

一  検察事務官作成の電話聴取書(甲一四)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲五)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲六)

(法令の適用)

被告人生塩工業株式会社及び被告人生塩弘の判示各行為は、各事業年度毎に、いずれも法人税法一五九条一項(被告人会社についてはさらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社の判示第一の行為については情状に照らし、同法一五九条二項を適用し、被告人生塩弘については所定刑中懲役刑を選択し、以上は平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条一項本文により、同法による改正前の刑法四五条前段(以下「刑法」は改正前の刑法をいう。)の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金三二〇〇万円に処し、被告人生塩弘については、同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において懲役一年六月に処し、同被告人に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

本件は、プラント建設工事等を目的とする被告人会社の代表取締役してその業務全般を統括している被告人生塩弘が、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外したり、架空の外注加工費を計上するなどの方法により所得を圧縮した上、所轄税務署長に対し虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、被告人会社の平成四年四月期から同六年四月期までの正規の法人税合計二億五七六〇万七三〇〇円のうちの四七・七四パーセントにあたる一億二二九八万二一〇〇円を免れたという事案である。

脱税行為は、国の課税権に対する侵害であり、かつ、誠実な納税者を裏切る極めて反社会性の強い行為である。また、被告人会社が免れた法人税の額が右のとおり多額であり、かつ、本件の態様は他の業者を執拗にまきこみ巧妙な手口でなされるなどその犯情が悪質である。さらに、本件の動機は不況に備えて利益を会社に留保する目的というのであるが、自己の利益のみを追求する、まことに身勝手な考えである。

一方、被告人生塩弘は、事実を認めて捜査に協力し、本件において脱税した法人税につき修正申告し、被告人会社が納付すべき法人税、重加算税等合計二億七五八一万四四〇〇円のうち法人税等合計一億四三一七万七四〇〇円を納付済であること、本件の重大性を認識、反省し、二度とこのようなことをしないと誓っていること、被告人会社の顧問税理士が被告人会社に対して今後二度と本件のようなことがないよう指導していく旨誓っていることなど、酌むべき事情もあるので、これらの事情を総合考慮の上、主文の刑に処するのを相当と認めた。

(求刑 被告人会社 罰金四〇〇〇万円、被告人生塩弘 懲役一年六月)

(裁判官 竹花俊徳)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例