千葉地方裁判所 平成8年(少)2400号
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(罪となるべき事実)
少年は、A(当時17歳)ほか数名の共犯者と共謀の上、
第1 平成8年9月2日午前1時30分ころ、千葉県市川市○△×丁目×番××号所在のコンビニエンスストアー「○○」付近路上を原動機付自転車2台に分乗して走行中、同所にたむろしていたB(当時17歳)、C(当時17歳)らを認め、「お前らどこの者だ」などと言ったところ、関わり合いをおそれて原動機付自転車で逃走する上記両名らを追い掛け、同日午前2時ころ、東京都江戸川区○△×丁目×番所在の○○脇駐車場付近において、逃げ遅れた上記両名を追い詰め、上記両名らの態度に憤慨していた少年が上記Bの身体を足蹴りするなどし、共犯者がこもごも上記両名に対し、その身体を多数回にわたり手拳等で殴打したり、足蹴りするなどし、上記Aが上記両名に向かって灰皿を投げつけるなどの暴行を加え、さらに、その後、千葉県市川市△○×丁目所在の○○公園において、共犯者が上記両名に対し、その身体を木刀様の物等で殴打するなどの暴行を加え、よって、上記Bに対し約2週間の加療を要する頭部・両肘・両下腿・頸部打撲兼挫創の傷害を、上記Cに対し約10日間の通院加療を要する前額部・背部・左前腕打撲擦過症、右第2指・左第3・4指打撲、頸椎捻挫の傷害をそれぞれ負わせ
第2 同日午前4時ころ、同市△○×丁目所在の○○ハイムにおいて、上記Bを普通乗用自動車の後部座席に乗車させ、少年と上記Aがその両側から挟むようにして乗り込み、同人に目隠しをするなどしてその身体の自由を拘束し、もって不法に同人を逮捕し、さらに、これに引き続き、同人を同市△○×丁目××番××号所在の○○マンション×××号室D方まで連行して、同日午後零時40分ころまでの間、同人を同所に閉じ込め、見張りをするなどして同所から脱出することを不能にし、もって不法に同人を監禁し
たものである。
(法令の適用)
上記第1の事実について 各被害者毎に刑法60条、204条
上記第2の事実について 包括して刑法60条、220条1項
(処遇の理由)
少年は、幼少時から両親が不仲で父が母に暴力を振るうなどし、平成元年(小学校4年生時)ころ両親が別居(平成6年11月の中学校3年生時に協議離婚)して母に引き取られたが、母が仕事に追われて不在がちで、また片親にしたという負い目もあって、母からのきめ細やかな働き掛けが不足していたことなどから、不安定で共感性の希薄な性格傾向が形成されたことなどが影響して、中学生時代から、生活に崩れが生じ、比較的高い知的能力を有していたにもかかわらず、低調な学校生活を送るようになり、不良文化に親和して不良仲間との交遊に発散と受容の場を求めるようになって、恐喝や有機溶剤吸引の非行に走り、平成7年4月に高等学校に進学しても、怠学傾的を強め、不良仲間と有機溶剤を吸引するなどしたため、退学を迫られて、同年5月に自主退学し、その後、定職に就かずに不良仲間との遊び優先の生活に流され、社会規範を軽視し自己中心的な行動傾向を強めていた状況の中で、強姦致傷(認定は強姦致傷幇助)事件を犯し、観護措置を経て、同年11月に保護観察の決定を受けた。
少年は、上記決定後、時々引っ越しセンターのアルバイトをしたり、平成8年3月に高等学校を受験するも不合格となり、同年6月ころからクロス張りの内装工事に従事したが、そのころから地元の暴走族関係者の先輩らとの交遊が始まり、これら不良仲間との交遊を優先するなどして間もなく退職し、その後は夜遊びしては昼夜逆転の無職徒遊の不安定で不健全な生活を送る状況の中で、上記(罪となるべき事実)の非行を犯すに至ったものである。
本件非行は、上記保護観察の特別遵守事項の「規則正しい生活を送ること」、「友人をよく選び、悪い誘いには決して乗らないこと」、「毎月進んで担当保護司を訪ね、指導を受けること」に違反して、その保護観察中に敢行された再非行であり、少年には、更生への意欲が欠けていたものと言わざるを得ない。しかも、本件非行は、少年が、被害者に対して行った直接的な暴行は上記認定の限度に止まるとしても、その発端を形成した上、自ら率先して上記暴行に及び、不良仲間の先輩等を携帯電話を使って連絡するなどして本件非行に巻き込み、事件を拡大させるとともに、その間終始行動を共にし、積極的に関与しているものであって、その動機や態様が悪質であり、加えて、本件非行が、後記の少年の性格等において指摘するように、少年の自己中心性が強く共感性や自己統制力に乏しいという性格・行動傾向等が顕在化したものと評価することができること、さらには、少年の非行性が進んでおり、地元の先輩等不良交遊関係者を通じて再非行に走る危険性が高いことなどを併せて考えると、本件非行を軽視することはできない。
少年は、知能が高く、知的には恵まれているが、実際の生活場面ではその能力が十分に生かされていない上、その性格等において、「知能が高いので、自分の言動が社会常識から外れているか否かについての理解や判断はでき、統制された場面においては、そつなく振る舞うものの、強情で、しかも、独断的であり、かたくなに自分の考えを通そうとするなど、自己中心的な行動傾向が顕著である。また、自制心が弱く、欲求や感情を抑えられないため、欲求が阻害されると、すぐに不快感を抱いて感情を荒立てやすい。」「感受性が鈍く、人に対する温かさや思いやる優しさがあまりないため、人の気持ちや都合などを考えないで、強引に自分の要求を押し付けて自分の意に沿うように人を動かそうとしがちで、相手に対して無礼な態度や、冷淡な態度に出ることが多い。」などとされている。このような少年の性格・行動傾向等が、その生活態度や非行の背景に繋がっているものと考えられ、その矯正・改善が急務であると判断される。
少年の家庭は、現に監護を行う事実上の保護者である母と二人の母子家庭であるが、母が少年に対し愛情や監護の意思を持っていることは認められる。しかし、保護者の少年に対する指導が、結果的に少年の甘えやわがままといった自分本位な傾向を助長させていたこと、少年の抱えている上記資質面の改善には専門家の指導が必要であること、そして、これまでの経過等に照らして、現時点においては、少年に対する家庭の指導力に期待するのは困難な状況にある上、少年を地元の先輩等不良交遊関係者から隔離する必要性があること、加えて、少年に対しては、前記のとおり、保護観察を経て、社会内での指導が加えられてきたが、少年の抱えている問題の改善を図ることができ得ないまま再非行に至っていること、保護観察所が、処遇上の意見として、「少年院(長期)相当。本人は不良交遊し夜遊びや犯罪を繰り返している。実母が本人をかばうのに甘え、再犯についての反省の色は全くない。犯罪をした以上実母がかばってもかばいきれないことがあるということを身をもって体験させる必要がある。このまま社会内処遇を続ければ、先輩格のものから命じられるままに犯罪を繰り返す可能性は高いものと思われる。」と述べていることなどを考慮して検討すると、少年に対しては、もはや自律的な改善に期待する社会内での処遇は限界状態にあるものと言わざるを得ない。
以上の諸事情を総合して検討すると、少年が、本件捜査の当初においてアリバイを主張するなどして本件非行事実を否認したり、捜査や調査において本件非行事実の共犯者の氏名を明らかにすることを頑なに拒否したりしていたが、当審判廷において、本件非行事実を認めるとともに共犯者の氏名を明らかにするなど、それなりに反省していること、少年及び保護者が社会内処遇を希望していることなどを十分に考慮しても、少年に対しては、この際、少年を地元の先輩等不良交遊関係者から隔離し、矯正施設に収容して、系統的な矯正教育を施し、親の力や甘えの通用しない場で生活させることによって、自分のことは自分のこととして受け止め、自分を変えようという気持ちを抱かせ、そうした中で、再非行に至っていることについて内省させ、共感性に乏しく自己中心的で感情のままに行動しやすいという自分の抱えている性格・行動傾向等の資質面の問題を自覚させ、集団生活を通して自分の感情や欲求を抑えるといった訓練を重ねさせて協調性を養い、相手の立場になって物事を考えられるようにさせるなどするとともに、社会生活に対する規範意識を涵養し、健全な生活意欲を喚起させるなどして、その方向付けを図ることが、最もその福祉に資するものであり、また、非行の再発防止の要請にも合致するものと言うべきである。
よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 鈴木秀夫)