千葉地方裁判所 昭和44年(借チ)15号 決定 1972年3月02日
一五号事件申立人(一一号事件相手方、以下単に申立人という) 内田てい
右代理人弁護士 佐々木正義
同 真木幸夫
一五号事件相手方(一一号事件申立人、以下単に相手方という) 高原茂
右代理人弁護士 大庭登
主文
一、相手方から申立人に対し別紙目録一記載の土地賃借権および同目録二記載の建物を八、〇二〇、〇〇〇円で譲渡することを命ずる。
二、相手方は前項の金員を受けるのと引換えに申立人に対し右建物の所有権移転登記手続をせよ。
三、申立人は、右建物所有権移転登記手続と引換えに、相手方に対し八、〇二〇、〇〇〇円の支払いをせよ。
理由
一、相手方から別紙目録一の1記載の土地(以下本件土地という)にかかる同目録一記載の土地賃借権譲渡許可の申立てがなされたところ、賃貸人である申立人から本件土地賃借権および右土地上に存する同目録二記載の建物(以下本件建物という)の譲受けの申立てがなされた。
右各申立ては、いずれも適法であるので、借地法九条の二第三項により、右建物および土地賃借権の対価を定めて譲渡を命ずる。
二、譲渡の対価につき検討する。
1 鑑定委員会の意見の要旨は、「賃貸人が譲り受ける借地権および建物の対価を七、二七六、六四〇円とする。すなわち本件土地の更地価格を九、八八〇、〇〇〇円(三・三平方米当り三八〇、〇〇〇円)、借地権価格をその六〇パーセントの五、九二八、〇〇〇円、建物価格を三、二三六、四〇〇円(三・三平方米当り九〇、〇〇〇円)と評価し、相手方が本件建物を他に賃貸しているので、右合計九、一六四、〇〇〇円から、右借家人に帰属すべき借家権価格(借地権価格の一〇パーセント五九二、八〇〇円と、建物価格の四〇パーセント一、二九四、五六〇円との合計一、八八七、三六〇円)を控除して、申立人が相手方に支払うべき対価を七、七六二、二〇〇円とする」というのである。
2 しかし、当裁判所は、鑑定の結果により、本件土地の更地価格を一四、五七〇、〇〇〇円(一平方米当り一七〇、〇〇〇円)、借地権価格をその六六パーセントの九、六二〇、〇〇〇円、建物価格を三、二五〇、〇〇〇円(合計一二、八七〇、〇〇〇円)と認める。
ところで本件対価の決定のためには、右金額から本件建物の賃借権の存在による減価がなされなければならないが、借家人が借地権者兼建物所有者である相手方から借地権および建物を買い取る場合には、借家条件は借家人と相手方との間の自由な合意によって定められているのであるから、単純に、右合計一二、八七〇、〇〇〇円から鑑定の結果によって認められる借家権価額四、二二〇、〇〇〇円を差し引いた八、六五〇、〇〇〇円に減価すれば足りるものと解されるけれども、土地賃貸人である申立人が、相手方から買い受ける場合には、その結果、借家人からは申立人の意思によらずに決定された借家条件に基づく借家権の対抗を受けることになり、従って申立人は本件買受けの結果現行家賃による収益を受けることができるのみであり、その後借家条件を変更(家賃を増額)することは、現実にはかなり難しいことを考慮すると、現行家賃をもとにその家賃改定の実現性とその程度を検討して算定した鑑定の結果による収益価額八、〇二〇、〇〇〇円をもって、譲渡の対価とするのが相当であると認める。
三、よって申立人が譲り受ける本件土地賃借権および建物の対価を八、〇二〇、〇〇〇円とし、主文のとおり決定する。
(裁判官 木村輝武)
<以下省略>