千葉地方裁判所 昭和48年(ワ)18号 判決 1974年1月25日
原告 湯地ひろ子
原告 皿良安嘉
原告 中原康子
右三名訴訟代理人弁護士 石葉泰久
同 上村正二
被告 進和建設株式会社
右代表者代表取締役 神代重夫
被告 清水多喜雄
右両名訴訟代理人弁護士 大崎康博
主文
一、被告清水多喜雄は、原告湯地ひろ子に対し四、六七六、〇七四円、原告皿良安嘉に対し二、〇五八、〇三六円、原告中原康子に対し二、〇五八、〇三六円および右各金員に対する昭和四八年一月二三日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二、原告らの被告清水多喜雄に対するその余の請求および被告進和建設株式会社に対する本訴請求を棄却する。
三、訴訟費用は、原告らと被告進和建設株式会社との間においては全部原告らの負担とし、原告らと被告清水多喜雄との間においてはこれを二分し、その一を原告らの負担とし、その一を被告清水多喜雄の負担とする。
四、この判決の主文一項は仮に執行できる。
事実
第一、申立て
(原告ら)
一、被告らは連帯して、1原告湯地ひろ子に対し六、一六五、〇九二円および五、七六五、〇九二円に対する昭和四八年一月二三日から支払いずみまで年五分の割合による金員、2原告皿良安嘉および同中原康子のそれぞれに対し各三、一二五、〇四六円宛および各二、九七五、〇四六円に対する右同日から支払いずみまで同割合による金員を支払え。
二、訴訟費用は被告らの負担とする。
三、仮執行の宣言。
(被告ら)
一、原告らの請求を棄却する。
二、訴訟費用は原告らの負担とする。
第二、請求の原因
一、(事故の発生)
訴外湯地忠博(以下忠博という)は、次の交通事故により頭蓋骨々折の傷害を受け即死した。
1 事故発生日 昭和四七年五月一日午前二時四五分頃
2 場所 千葉市幕張五―四一七番地先路上
3 加害車輛 ライトバン(千葉四四せ九、三八〇、以下被告車という)
4 右運転者 被告清水多喜雄(以下被告清水という)
5 右保有者 被告進和建設株式会社(以下被告会社という)
6 被害者 忠博(満二七歳)
7 態様 忠博が被告清水の運転する被告車に同乗中、被告清水が第二車線走行中いねむり運転のため歩道にのり上げ電柱に激突。
8 受傷状況 頭蓋骨々折で即死。
二、(帰責事由)
1 被告会社は、被告車を所有し、かつ自己のため運行の用に供していた。
2 被告清水は、被告車を運転中いねむりをしていた過失により、本件事故を惹起した。
三、(損害)
1 葬儀費用 七二五、〇〇〇円
原告湯地ひろ子(以下原告湯地という)は、忠博の妻であり、忠博の葬儀のために七二五、〇〇〇円出捐した。
2 逸失利益 一一、五四〇、一八五円
忠博は、本件事故当時満二七歳であり、鹿児島県曽於郡志布志町郵便局の貯金課に勤務しており、もし本件事故にあわなければ、次の収入を得ることができた。
(イ) 就労可能年数 六三歳まで三六年間
(ロ) 年収 一、一六二、三七九円
(ハ) 生活費 四割
(ニ) 中間利息控除方法 ライプニツツ方式
3 慰藉料 四、〇〇〇、〇〇〇円
(イ) 原告湯地は忠博の妻であり、忠博が久し振りに東京に遊びに行って帰って来るのを待っていた時の事故であるためその精神的ショックも大きい。 二、〇〇〇、〇〇〇円
(ロ) 原告皿良安嘉(以下原告皿良という)は忠博の実母である。 一、〇〇〇、〇〇〇円
(ハ) 原告中原康子(以下原告中原という)は忠博の養母である。 一、〇〇〇、〇〇〇円
4 自賠責保険の充当 五、〇〇〇、〇〇〇円
よって被告らに対し原告湯地は八、四九五、〇九二円、原告皿良および同中原は各三、八八五、〇四六円の損害賠償請求権を有するところ、原告らは、本件事故により忠博の死亡に伴い自賠責保険から五、〇〇〇、〇〇〇円受領した。これを葬儀費用に七二五、〇〇〇円、原告湯地の慰藉料に二、〇〇〇、〇〇〇円、逸失利益相続分に一五五、〇〇〇円、原告中原、同皿良の各慰藉料に各一、〇〇〇、〇〇〇円、逸失利益相続分に各六〇、〇〇〇円を充当した。
5 弁護士費用 一、一五〇、〇〇〇円
従って被告らに対し、原告湯地は五、六一五、〇九二円、原告中原および同皿良は各二、八二五、〇四六円の損害賠償請求権を有するところ、被告らは任意に右損害を支払わないので、原告らはいたし方なく原告ら訴訟代理人に本件訴訟の提起を依頼し、その着手金として原告ら各一五〇、〇〇〇円を支払い、さらに判決言渡しの日に原告湯地は四〇〇、〇〇〇円、原告中原、同皿良は各一五〇、〇〇〇円宛支払う旨約した。
四、よって原告らは、被告らが連帯して原告湯地に六、一六五、〇九二円、原告中原、同皿良に対し各三、一二五、〇四六円および原告湯地の右金員中五、七六五、〇九二円、原告中原、同皿良の右各金員中二、九七五、〇四六円に対する訴状送達の翌日である昭和四八年一月二三日から支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
第三、答弁(被告ら)
一、請求原因一の事実を認める。
二、同二を争う。
三、同三の1ないし5の損害額は不知。
第四、被告らの主張
一、(忠博は他人ではない)
1 被告会社は、現在の交通事情に鑑み、自社保有車輛の保管には慎重を極め、業務終了後は、自動車のキーを総務課に提出させ、キー保管箱に施錠の上保管し、自動車事故発生の防止に鋭意努力していた。
2 本件事故発生前日の同四七年四月三〇日は、日曜日であった。
3 同日は被告会社の休業日であった。
4 被告清水は、当日、被告会社が休業日のため、自己の個人的な「遊び」として、被告会社の業務と無関係であるのにもかかわらず、無断で被告車のキーを持ち出し、午前九時頃これを運転してドライブに出た。
5 被告清水は、当日、友人の訴外和田吉弘(以下和田という)とともに、一日中、箱根辺りをドライブし、午後一〇時半頃、一旦和田の姉宅に帰った。
6 その場に、右和田の友人忠博が来合わせていたため、折角鹿児島から東京まで遊びに来たのだからと言って、和田は、忠博に東京の街を案内すべく、和田の車で出発し、被告清水は、被告車でその後に従った。
7 翌五月一日午前〇時頃皇居前あたりで、被告清水は、和田および忠博の両名から、当夜忠博は、千葉県の親戚に宿泊する予定であったが、おそくて電車もなく、訪ねていくべき道順も判然としないので、被告清水の所に泊めてもらいたい旨懇願された。
8 被告清水は、忠博とは当日が初対面であり朝からの車輛運転による疲労から、一刻も早く帰宅して休みたく初対面の忠博を泊めることによる気づかいを思い、気は進まなかったが、右二人の懇願にやむを得ず、これを承諾したものである。
9 また忠博は、被告清水の当日の被告車運転の目的および行動を知悉していた。本件事故当時の運転は、いかなる意味においても、被告会社のための運行ではなく、忠博自身もそのことを承知していた。
10 従って忠博は、自動車損害賠償保障法(以下自賠法という)三条にいう他人ではないから、被告会社は、本件事故による損害賠償義務を負わない。
二、自賠法三条の責任は、報償責任、免険責任の思想を基礎としているものであるから、自動車運行による事故および被害の発生が運行供用者にとって一般的社会的に予測可能の範囲内のものでなければならず、本来予測されえない特別の事由によって生じた損害については報償責任、危険責任の原則ははたらかず、従って運行供用者の責任は生じない。
三、忠博が、被告清水の運転する被告車に同乗した経過から明らかなとおり、被告清水が気がすすまないのにもかかわらず、和田とともに同乗を懇願した事実に鑑みれば、本件事故発生時における車輛の運行につき忠博は共同の責任者であったというべく、一旦事故が発生するや、被告清水の過失を盾に、全損害の賠償を請求することは、公平の原則に反し許されない。
四、(債権放棄)
原告らは、同四七年五月一日および翌二日の二回被告会社の総務部長能野正樹に対し、本件事故は、忠博らの不注意によって生じたものであり、被告はいわば被害者であって、被告に損害賠償請求をする意思はない、自賠責保険金の受領のみに協力されたい旨申し出た。被告はこれを了とし原告らの自賠責保険金五、〇〇〇、〇〇〇円の受領に協力した。
仮に原告らが被告らに対し右金額をこえる損害賠償請求権を取得したとしても右のとおりすでに右金額をこえる部分は債権放棄ずみである。
五、(過失相殺)
被告清水は、事故当時まで十六、七時間にわたり被告車を運転し、強度の疲労に陥っており、そのことを忠博自身も熟知していたのであるから、同乗者として、単に右清水の運転を傍観するだけではなく、その状況を注意し、被告清水の正常な運転の維持に協力すべきであるにもかかわらず、これを怠り、助手席でいねむりをしたため本件事故に遭遇したものであり本件事故発生につき忠博の過失は大である。従って原告らの被告清水に対する本件損害賠償請求も相当減額されるべきである。
第五、被告らの主張に対する原告らの認否等
一、1 被告らの主張一の1の事実を争う。キー保管箱は単にキーの置場所を決めたというだけに過ぎず、従業員らが容易にキーを持ち出して車輛を運転することができる状況にあるのであるから、施錠を破壊して、保管箱からキーを取り出した場合と異なる。それどころか、被告会社は、被告清水が簡単にキーを持ち出し、日曜日に被告車を使用することを、従来より、容認していた。被告清水は、被告車を常時使用していた。従って被告会社は、いまだ被告車をその支配下においていた。
2 同2を認める。
3 同3は不知。
4 同4は不知。
5 同5のうち被告清水が午後一〇時半頃一旦和田宅に帰ったことを認め、その余は不知。
6 同6のうちその場に忠博が来合わせていたことを認め、その余は不知。
7 同7を否認する。
8 同8のうち被告清水が忠博とは当日が初対面であることを認め、その余は不知。
9 同9を否認する。
10 同10の主張を争う。忠博は、同四七年四月三〇日同郷の訴外井手富雄(以下井手という)を東京駅へ迎えに行った帰り、和田宅に寄ったところ、和田が不在で、その帰りがおそいので和田宅を退去して一橋学園駅から東京駅までの切符を買った。そこへ和田が被告清水とともに被告車でやって来て、忠博が電車で帰ろうとしているのを止めて、送るからと、被告車に強引に乗せてしまった。
忠博は、事故時も、一橋学園東京間の切符を所持していた。
このような事情から、忠博は、被告車に同乗したもので、被告清水と共同の目的の下に乗ったのではなく、また運行に関する費用を負担したこともなければ、被告車を運転したこともない。
従って忠博は、自賠法三条にいう運用供用者にあたらず、他人に該当する。
二、被告らの主張二ないし四を争う。
三、被告らの主張五の事実をすべて否認する。
運転者が疲労していて運転に支障のあることが明らかに判る場合には、同乗者は、運転をやめるよう勧告しなければならず、傍観するだけではならないであろうが、本件の場合にはこれらの事実は明らかでないから、忠博に被告清水の正常な運転の維持に協力すべき義務はなく、過失相殺の主張は失当である。
本件事故は、被告清水のいねむり運転という一方的でかつ重大な過失により発生したものである。
第六、証拠≪省略≫
理由
一、(事故の発生)
請求原因一の事実は、全部当事者間に争いがない。
二、(帰責事由)
1 被告清水
≪証拠省略≫によれば、請求原因二の2の事実を認めることができ、右事実によると、同被告は民法七〇九条により、本件事故によって原告らの蒙った後記損害を賠償すべき義務がある。
2 被告会社
(イ) 被告会社が被告車の保有者であること(請求原因一の5)は、前記のとおり、当事者間に争いがない。
(ロ) そして≪証拠省略≫によると、被告清水は、二級建築士の資格をもち被告会社に現場監督として勤め肩書住居の被告会社寮に一人で居住していたが、被告会社は、被告清水に被告車を貸し渡して、寮から被告会社や現場への往復に使用させ、平常の日の終業後は寮へ被告車を持ち帰ることを許可していたので、被告清水は、被告車を自己の専用車のようにいつでも使用できる状態にあったこと、しかし被告会社は、被告清水に休日に私用のため被告車を使用することを一応禁止していたことが認められる。
(ハ) ≪証拠省略≫によると、被告清水は、昭和四七年四月二九日には翌日が休日なので終業後被告車を被告会社の所定の位置に返し、キーを被告総務課へ預けたが、翌三〇日朝被告会社に行き、被告会社の担当者関口正悦から被告車のキーを受け取り、被告車を運転し、一日中ドライブなどして前記被告会社寮に帰る途中本件事故を惹起したこと、右関口正悦は被告車が被告清水の使っていた車であることおよび休日といえども交替で現場に仕事に行く従業員もいることなどから、同被告が仕事に行くものと思い、何の不審もいだかずにキーを貸し渡したことが認められる。
(ニ) ≪証拠省略≫を総合すると、次の事実を認めることができる。
被告清水は、同四七年四月二九日夜電話で翌朝和田と新宿駅近くで待ち合わせる約束をして、翌三〇日朝被告車を運転して同所で落ち合い、箱根方面をドライブして同三〇日午後一〇時半頃、東京都小平市の和田の姉の家に立ち寄った。
和田は、姉から、和田の鹿児島県の友人である忠博と井手とが和田に会いに訪ねて来ていたが直前に辞去して駅に向かったと聞いて、被告車で一橋学園駅に行ったところ、忠博と井手は、すでに一橋学園駅から東京駅までの切符を買いホームに入って電車を待っていた。
和田は、右両名を姉宅につれて帰り、姉宅で和田を朝霞まで送ろうと待っていた被告清水に右両名を紹介した。被告清水は、右両名と同郷ではあるが初対面であった。暫く世間話をした後、忠博が久し振りに上京したから東京の町へ行ってみようかと言い出し、被告清水にも田舎が一緒だから一緒に行こうと誘った。和田は姉宅の車に忠博と井手を乗せ、被告清水は被告車に一人で乗り、和田を案内し、二台の車で、四人は新宿に行き、歌舞伎町で軽食をとり、京王プラザに寄り、同四七年五月一日午前〇時三〇分頃皇居前に来た。
皇居前において、和田は、被告清水に、忠博と井手を寮に泊めてやってくれないかと頼み、被告清水はこれを承諾し、同所で忠博が被告車に同乗し間もなく眠り込んだ。
被告清水は、和田を池袋まで案内し、同日午前一時一〇分頃同所で井手が被告車に同乗し、和田と別れた。井手もやがて眠り込んでしまった。
被告清水は、被告車を運転して池袋から、首都高速に上り、京葉道路も通って幕張インターチェンジで国道一四号線に下り、その付近で三〇分程仮眠し、同日午前二時四〇分頃再び被告車を運転して肩書住所地の寮に向かって発進して五分位した頃眠ってしまい本件事故を惹起した。
被告車は、白色ライトバンで、被告会社名の記載はなく、忠博も井手も、これが被告会社のものであることおよび被告清水がこれを被告会社の休日私用運転禁止を犯して運転していることを、全く知らなかった。
忠博と井手は、同年四月三〇日和田の姉宅で、和田と被告清水の両名が同日箱根にドライブに行った話を聞いてはいるが、右両名のうちどちらが運転していたかは聞かなかったし、被告清水の表情行動その他に同被告が疲労しているということに気付く特段の徴候はなかった。
以上の事実が認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。
(ホ) 以上認定の事実によると、和田は、運行供用者である被告会社の運行支配を部分的に排除して自ら運行供用者となと、しかも運行に、より直接に関与するものとして、他人性が阻却される立場にあったもので、忠博は、被告会社との間においては、和田と同視すべき立場にあったものといわざるを得ない。従って被告らの主張一は理由がある。
三、(被告らの主張の四について)
原告らが、自賠責保険金の額をこえる債権を放棄したことは、≪証拠省略≫によっても認めることはできず、他に右の事実を認めるに足る証拠はないから、被告らの主張四は理由がない。
四、(過失相殺等)
1 忠博が被告清水の疲労を知っていたことを認めるに足る証拠はないから、被告らの主張の五は理由がない。
2 しかし前認定の事実によると、公平の原則に照らし被告清水に全損害の賠償をさせることは相当でないから、被告らの主張の三は理由があり、前認定の事情を考慮すると、被告清水に対しては全損害の八割を負担させるにとどめるのを相当と認める。
五、(損害)
1 葬儀費用 七〇〇、〇〇〇円
≪証拠省略≫によると、同原告は、忠博の妻であり、事故地の千葉で仮葬儀をして三〇〇、〇〇〇円、住所地の鹿児島で本葬儀をして四〇〇、〇〇〇円余を支出したことを認めることができる。
2 逸失利益 一一、五四〇、一八五円≪証拠省略≫によると、請求原因三の2の事実を十分認めることができる。
(1,162,379×0.6×16.54685=11,540,226.373690)
3 慰藉料
(イ) 原告湯地 二、〇〇〇、〇〇〇円
原告湯地が忠博の妻であることは前認定のとおりであり、同原告が本件事故によって夫を失った精神的苦痛の慰藉料としては右金額を相当と認める。
(ロ) 原告皿良 一、〇〇〇、〇〇〇円
≪証拠省略≫によると、原告皿良が忠博の実母であることが認められ、同原告が子を失った精神的苦痛を慰藉するものとしては右金額をもって相当と認める。
(ハ) 原告中原 一、〇〇〇、〇〇〇円
≪証拠省略≫によると、原告中原が忠博の養母であることを認めることができ、その慰藉料としては右金額が相当と認められる。
4 自賠責保険金五、〇〇〇、〇〇〇円の充当
(イ) 原告湯地の損害は、葬儀費用七〇〇、〇〇〇円、逸失利益の相続分(二分の一)五、七七〇、〇九二円、慰藉料二、〇〇〇、〇〇〇円の合計八、四七〇、〇九二円であり、被告清水は、このうち八割の六、七七六、〇七四円を賠償しなければならないところ、自賠責保険金五、〇〇〇、〇〇〇円の給付のあったことは当事者間に争いがないから、その二分の一を同原告の右損害に充当すべきである。右損害金の残は四、二七六、〇七四円となる。
(ロ) 原告皿良および同中原の損害は、それぞれ逸失利益の相続分(四分の一)二、八八五、〇四六円および慰藉料一、〇〇〇、〇〇〇円の計三、八八五、〇四六円宛であるところ、被告清水はこのうち八割の三、一〇八、〇三六円宛を賠償しなければならないが、前記自賠責保険金の各四分の一の一、二五〇、〇〇〇円宛を右原告の各損害に充当すべきであるから、右損害金の残は一、八五八、〇三六円となる。
5 弁護士費用
被告清水が右各損害を任意に支払わないため原告らが原告ら代理人らに本訴の提起および追行を委任したものであることは、弁論の全趣旨および本件記録上明らかであり、前記請求認容額その他本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、その弁護士費用のうち原告湯地四〇〇、〇〇〇円、同皿良および同中原各二〇〇、〇〇〇円は本件事故と相当因果関係のある損害として、被告清水に賠償させるのを相当と認める。
六、(結論)
以上の理由により、本訴請求のうち被告清水に対し原告湯地が四、六七六、〇七四円、同皿良および同中原が各二、〇五八、〇三六円宛の損害金および右各金員に対する本件不法行為後の昭和四八年一月二三日から支払いずみまで民法所定年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分は正当と認められるから、この限度でこれを認容し、原告らの被告清水に対するその余の請求および被告会社に対する本訴請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 木村輝武)