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千葉地方裁判所 昭和59年(わ)232号 判決 1984年8月09日

本籍

千葉県印旛郡本埜村大字將監八二番地の内一

住居

右同

会社役員

木村幹雄

昭和六年一二月三〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官細田美知子出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金二、七〇〇万円に処する。

被告人において右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、自己の所得税を免れようと企て、自己の営む餠製造販売業における売上の一部除外及び仕入の水増し等により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五六年三月一六日、千葉県成田市花崎町八一二の一二番地所在成田税務署において、同税務署長に対し、昭和五五年分の総所得金額が金二、八八八万七、四九九円でありこれに対する所得税額が金一、〇二七万一、六〇〇円であったにもかかわらず、同年分の総所得金額が金一、〇〇〇万四、八八七円でありこれに対する所得税額が金一五二万六、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の所得税金八七四万五、六〇〇円を免れ、

第二  昭和五七年三月一五日、同税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の総所得金額が金五、三八八万六、一七七円でありこれに対する所得税額が金二、五七五万〇四〇〇円であったにもかかわらず、同年分の総所得金額が金六八九万七、二一七円でありこれに対する所得税額が金八三万八、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の所得税金二、四九一万一、五〇〇円を免れ、

第三  昭和五八年三月一二日、同税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の総所得金額が金一億二、五五九万七、四〇八円でありこれに対する所得税額が金七、七六一万円であったにもかかわらず、同年分の総所得金額が金一、四〇八万八、一三六円でありこれに対する所得税額が金三一〇万一、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の所得税金七、四五〇万八、一〇〇円を免れ

たもである。

(証拠の標目)

判示全部の事実を通じて

一  被告人の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  被告人作成の申述書

一  被告人の検察官に対する供述調書二通及び大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  中村英司(五通)、木村典子(二通)及び中村英克作成の各申述書

一  木村玲子(二通)、木村喜一、木村久美(二通)、木村雪子(二通)、大貫勝教、藤郷明実、荻原久雄(二通)、荻原英一、富井正章及び松本義一の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の検査てん末書一〇通

一  大蔵事務官作成の調査書四七通

一  検察事務官作成の捜査報告書五通

一  押収してある所得税確定申告書三通(昭和五九年押第一二四号の1ないし3)、所得税青色申告決算書四綴り(同号の4ないし6)、売上帳四冊(同号の7ないし9)、仕入帳一冊(同号の10)、経費帳一冊(同号の11)、売掛帳一冊(同号の12)及び納品書等綴り一綴り(同号の13)

判示第一及び第二の事実を通じて

一  木村玲子の検察官に対する供述調書

判示第三の事実について

一  木村典子の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書二通

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項に、裁判時においては右改正後の同条一項に各該当するが、右は犯罪後の法律により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第二及び第三の所為は所得税法二三八条一項に各該当するところ、判示各罪につき各所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し、罰金刑については情状により所得税法二三八条二項を適用してその免れた所得税の額に相当する金額以下とし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第三の罪の懲役刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金二、七〇〇万円に処し、被告人において右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

被告人の本件犯行は、国民としての最も基本的義務である納税義務を免れんとし、三年間に一億円を超える所得税を脱税したものであって、被告人の責任は重いものがあるので、被告人に対し、主文掲記の各刑を科することとするが、被告人に前科がないこと、被告人が本件犯行につき反省悔悟し、本件にかかる所得税、延滞税、過少申告加算税及び重加税を既に納付し、今後は税理士の指導の下に正しく申告納税することを誓っていること等被告人にとって酌むべき情状もあるので、今回に限りその懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 太田浩 裁判官 沼里豊滋 裁判官 長沢幸男)

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