千葉地方裁判所松戸支部 平成14年(ワ)945号 判決 2004年4月28日
原告
A野花子
同訴訟代理人弁護士
小林譲二
同
君和田伸仁
同
菅俊治
被告
東日本旅客鉄道株式会社
同代表者代表取締役
大塚陸毅
同訴訟代理人支配人
大川博士
同訴訟代理人弁護士
茅根熙和
同
春原誠
同
和田健児
主文
一 被告は、原告に対し、五九二三万一四四六円及びこれに対する平成一三年一一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決の第一項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、七六九〇万〇七四三円及びこれに対する平成一三年一一月一日(後記第二の一(1)の事故発生の翌日)から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、被告が運行する列車の車両間に転落し、列車とホームに挟まれて死亡したA野一郎(以下「一郎」という。)の相続人である原告が、被告に対し、商法五〇九条、民法七一五条・七〇九条に基づき、損害賠償を請求したところ、被告において過失を争った事案である。
一 当事者間に争いがない事実及び証拠により容易に認定できる事実(以下「争いのない事実等」という。)
(1) 事故の発生(以下「本件事故」という。)
一郎は、平成一三年一〇月三一日午後九時三〇分ころ、《住所省略》所在の常磐線松戸駅一、二番線ホームにおいて、一番線に停止した一五両編成の取手行き快速電車(以下「本件列車」という。)を降車し、同ホームを歩行していたが、本件列車の車両連結部の隙間に頭から転落し、進行している本件列車とホームとの間に身体を挟まれて列車の進行方向へ引きずられていき、ホーム下に落下して死亡した。
(2) 本件事故に気づいた一、二番線ホーム上の旅客のB山松夫(以下「B山」という。)が列車非常停止警報装置を押したが、本件列車はすぐには停止できず進行し、最後尾の一号車が一番線ホームを抜けて停止した(ただし、同旅客の押した列車非常停止警報装置について、原告は別紙図面二表示の「一番線PB9」であると、被告は同図面表示の「一番線PB10」であると主張している。)。
列車非常停止警報装置は、ホーム上に設置されているボタンが押されると、同装置のランプが点灯するとともに警報が鳴り、車掌及び運転士に危険の発生を知らせるしくみになっているものであるが、列車は自動的には停止しない。
(3) 本件列車は、一五両編成であり、一両の長さは約二〇メートル、全長は約三〇〇メートルである。本件列車の最後尾(上野駅側)から順に、一号車、二号車と号車番号がつけられ、先頭車両(取手駅側)は一五号車となる。
(4) 被告は、東日本地方を中心として旅客鉄道輸送等を業務とする株式会社である。
本件事故発生当時、松戸駅一番線ホーム上には、被告の従業員であるD原竹夫(以下「D原」という。)がホーム要員としての安全確認業務に従事していた。また、本件列車は、被告の営業の用に供するため、その従業員らによって運行されており、運転士一名の外、車掌としてC川梅夫(以下「C川」という。)が乗車勤務していた。
(5) 松戸駅の一番線ホームは、二番線ホームとともに、一本のホームの両側を列車が発着する島式の構造である。
ホームの全長は三〇〇メートル余りであり、本件列車の全長より数メートル長い程度である。ホームの横幅は、五~一〇号車付近は約八~九メートルほどあるが、両先端に近づくにつれ次第に狭くなり、一号車と一五号車が停車する付近は五メートル程度であって、全体として緩やかに凸状に湾曲している。
また、四~一〇号車付近にかけては、連絡通路に通じる上り階段が計四個あり(別紙図面一表示のA~D)、階段AとB、階段CとDを上るとそれぞれ別の連絡通路に出ることができる。松戸駅の改札を出る乗客も、常磐線各駅停車または新京成電鉄に乗り換える乗客も、すべてこの四つの上り階段のいずれかを利用するが、階段自体の幅が六~七メートルあるため、階段の上り口付近のホームの幅は、一、二番線側とも約一・五メートル程度である。
(6) 松戸駅の一番線ホームには、ホームの状況を写し出す四個のカメラが設置されており、別紙図面一表示のとおり、最後尾(上野駅側)から順に、車掌用カメラ(後)、同(中)、同(前)及びホーム要員カメラとなっている。
車掌用カメラ(後)(中)(前)で受信した画像は、列車停止時に車掌が立つ位置に合わせて設置された車掌用モニター(後)(中)(前)にそれぞれ映し出される。一五両編成の最後尾にも車掌用モニターが設置され、右から順に車掌用カメラ(後)(中)(前)からの画像が並び、同時に見ることができるようになっている。
ホーム要員用カメラで受信した画像は、ホーム要員が詰める事務室(階段A及びBの間にある。一五両編成車では、五号車付近)付近に設置されたホーム要員用モニターに映し出される。
車掌は、車掌用モニター(前)によって、階段Dの上り口付近から取手駅方面の先端までの範囲でホームを視認することができるが、これは一五両編成車が停止中の一一~一五号車付近である。また、同モニター(中)によって七~一一号車付近の、同モニター(後)によって三~六号車付近のホームを視認することができる。モニターで映し出されない一~三号車については、車掌の直接の目視が可能である(《証拠省略》)。
さらに、ホーム要員用モニターによって、一五両編成車が停止中の一二号車の中ほどから一五号車までの視認が可能である。また、一二~一五号車は直接の目視が可能である(《証拠省略》)。
(7) 車掌には、次のように旅客の安全確認を行う義務がある。
ア 列車入線の際にホーム上に危険等がないか確認する。
イ 列車閉扉前に、ホーム上に出て、直接目視及び車掌用モニター監視により、自ら旅客の安全確認を行うとともに、ホーム要員からの手旗(昼間)または合図灯(夜間)による客扱い終了合図を確認する。危険を発見した場合には閉扉してはならず、直ちに危険回避措置を講じなければならない。
ウ 列車が閉扉後発車前に、再度同様に旅客の安全を確認し、危険を察知した場合は直ちに列車非常停止警報装置を押して、列車の発進を阻止するなどして、危険回避措置を講じなければならない。
エ 列車が発車した後も、列車が完全にホームを抜けきるまでの間、引き続いてホーム上の安全を確認する。危険を察知した場合は直ちに非常停止措置をとって、列車を停止させるなどして、危険回避措置を講じなければならない。
その結果、車掌には、旅客がホームから転落した場合には速やかにこれを発見し、直ちに緊急停止ボタンを押して列車を停止させるなどして、旅客の死亡事故を未然に防止すべき注意義務があった。
(8) ホーム要員には、次のように旅客の安全確認、誘導等を行う義務がある。
ア 列車進入時には、線路やホームに異常がないか確認して、ホーム上の確認においては乗降客の動向を注意する。
イ 列車が停止してからは、直接目視及びホーム要員用モニター監視により、旅客乗降時の旅客乗降状態を注意する。また、発車直前の発車準備時には、ホーム上の旅客の乗降終了及び安全を確認して、危険がない場合には、手旗(昼間)または合図灯(夜間)を用いて、車掌に対し、客扱終了の合図を送る。危険を発見した場合には、直ちに車掌に合図を送り、乗客を誘導・救護するなどして、危険回避措置を講じなければならない。
ウ 列車が閉扉後発車前に、再度同様にホーム上の安全を確認し、危険を察知した場合は直ちに列車非常停止警報装置を押して、列車の発進を阻止するなどして、危険回避措置を講じなければならない。
エ 列車が発車した後も、列車が完全にホームを抜けきるまでの間、引き続いてホーム上の旅客の動向に注意するなどして、安全を確認する。危険を察知した場合は直ちに列車非常停止警報装置を押して、列車を停止させるなどして、危険回避措置を講じなければならない。
その結果、ホーム要員には、旅客がホームから転落した場合には速やかにこれを発見し、直ちに列車非常停止警報装置を押して列車を停止させるなどして、旅客の死亡事故を未然に防止すべき注意義務があった。
(9) 原告は、一郎の母であり、唯一の相続人である(《証拠省略》)。
二 争点
(1) 本件事故の発生状況
(原告の主張)
一郎は本件列車降車後、本件列車が停車しドアが開いている状態のとき、一番線ホームの端をかなり遅い速度で歩き、その後右に傾くようにして、右肩を二、三度本件列車の一二号車最後尾の窓及び鉄の部分にぶつけながら、本件列車にもたれかかるような状態で歩いていた。その後、それまで開いていた本件列車のドアが閉まって、本件列車は進行を開始し、一郎は一一号車と一二号車との間の連結部とすれ違う際、右側の支えを失い、連結部の隙間に頭を下にして逆さまに転落した。そして、一郎は、逆立ち状態で本件列車と一番線ホームとに腰を挟まれ、その後加速を続けた本件列車とホームの間に腰を挟まれた状態のまま、ドライバーを回すような形で全身をくるくると回転させながら列車の進行方向へ引きずられ、同ホームの先端(取手駅寄り)で地上に落下した。
本件列車は争いのない事実等(2)のように進行して停止したが、停止したのは、列車最後尾が一番線ホーム先端から数十ないし百数十メートル進行した地点である。
(被告の主張)
一郎は、本件列車降車後、ドアが閉まり本件列車が発車するまでの間、本件列車に接触していない。一郎は、本件列車のドアが閉まり、進行を開始した後、本件列車に近づき、一三号車と一四号車の連結部分に頭から転落して、列車の進行方向に引きずられた。
これに気づいたB山が、同ホーム上の列車非常停止警報装置を押し、同装置の鳴動に気づいた本件列車の車掌であるC川が、直ちに車掌用引きスイッチを扱い、非常停止措置をとって、非常ブレーキを作動させた。しかし、本件列車は既に一定の加速がついていたためすぐには停止せず、列車最後尾が一番線ホーム先端から約五〇メートル進行した地点で停止した。
その間に一郎は線路上に落下し、発見されたときは死亡していた。一郎が発見されたときは、同人は、一番線ホーム先端から進行方向寄りに一〇メートル付近の線路上にうつぶせとなった状態で横たわっていた。
(2) 被告側の過失の有無
ア C川(車掌)の過失
(原告の主張)
車掌は、争いのない事実等(7)記載のとおりの安全確認をする義務がある。
本件において、C川は、争いのない事実等記載のとおり、車掌用モニター(前)により、一一~一五号車付近を視認することができるのであるから、(1)記載のように本件事故発生場所について原被告間で争いがあるとしても、一郎が電車に右肩をぶつけながら歩き、電車にもたれかかるようになり、連結部分に転落した各場所及びその付近の様子を視認できたはずであり、一郎を発見できれば、何らの措置を講じることなく列車を発進させた場合に本件のような事故に至るであろうことは容易に予見できたものである。そして、即座に列車を発進させずに安全確認をすることで容易に本件事故の発生を回避できたものである。
しかし、C川は、一郎を全く発見していなかったから、乗降客の安全確保という観点から求められる注意力をもってモニターを見ていなかったといわざるをえず、その結果として本件事故を招来したものである。よって、C川には本件事故発生につき、過失がある。
そして、被告はC川の使用者であるから、民法七一五条に基づく不法行為責任を負う。
(被告の主張)
(ア) C川は、本件列車の発車前・発車後ともに、争いのない事実等(7)記載の注意義務を果たしており、異常も発見していないうえ、列車非常停止警報装置が鳴動するのを聞くや、直ちに非常停止措置をとっているから、過失はない。
(イ) 仮に発車前から一郎が列車に接触していたとしても、一郎の列車への接近、接触から列車の起動及び一郎の転落に至るまでは時間的にきわめて近接した一瞬の出来事であり、それ以前には特に不審な行動はとっていなかったものであって、旅客自身が列車の発車に注意し、接触することがないように行動することが期待されていることも考えれば、わずかな時間の中で多数の旅客全体の安全に気を配らなければならないC川がこれを発見できなかったとしても、過失はない。
イ D原(ホーム要員)の過失の有無
(原告の主張)
ホーム要員は、争いのない事実等(8)記載のとおりの安全確認をする義務がある。
本件において、争いのない事実等記載のとおり、ホーム要員は、ホーム要員用モニターによって、一五両編成車の一二号車の中ほどから一五号車までの視認が可能であり、一二~一五号車は直接の目視が可能であるうえ、本件事故発生前ころは、一番線ホーム上は乗降客が少なくなり、見通しがよい状況であった。そこで、(1)記載のように本件事故発生場所について原被告間で争いがあるとしても、D原は、一郎が電車に右肩をぶつけながら歩き、電車にもたれかかるようになり、連結部分に転落した各場所及びその付近の様子を視認できたはずであり、一郎を発見できれば、何らの措置を講じることなく列車を発進させた場合に本件のような事故に至るであろうことは容易に予見できたものである。そして、その場合には、D原において「客扱終了合図」を出さず、列車が発車することもないのであり、容易に本件事故の発生を回避できたものである。
しかし、D原は、発車準備段階での客の乗降終了の確認の際に一郎を全く発見していないし、発車後に一郎が列車連結部に頭から転落して列車とホームに腰部をはさまれて回転しながら進行方向に引きずられていく状態をも見ていない。以上より、D原は、注意力をもって目視したり、モニターを見ることを怠ったといわざるをえず、その結果として本件事故を招来したものである。よって、D原には本件事故発生につき、過失がある。
そして、被告はD原の使用者であるから、民法七一五条に基づく不法行為責任を負う。
(被告の主張)
(ア) D原は、争いのない事実等(8)記載のとおりの注意義務を果たしており、異常も発見していないうえ、列車非常停止警報装置が鳴動するのを聞くや、ホーム事務室内にいた同僚らと直ちに現場に向かったから、過失はない。
(イ) 仮に発車前から一郎が列車に接触していたとしても、一郎の列車への接近、接触から列車の起動及び一郎の転落に至るまでは時間的にきわめて近接した一瞬の出来事であり、それ以前には特に不審な行動はとっていなかったものであって、旅客自身が列車の発車に注意し、接触することがないように行動することが期待されていることも考えれば、わずかな時間の中で多数の旅客全体の安全に気を配らなければならないD原がこれを発見できなかったとしても、過失はない。
ウ 被告自身の過失
(原告の主張)
本件事故以前にも、旅客のホーム転落事故は数多く繰り返されてきているから、被告には、旅客が何らかの事情によりホームに転落する危険性について予見可能性があり、旅客がホームに転落した場合に死亡事故という重大な結果が生じることについても予見可能性があるというべきである。
鉄道は、大量旅客運送機関であり人の生命・身体等を侵害する多大な危険性を伴うものであるから、被告は、旅客の安全確保については、列車の定時運行をはかるなどの他の業務に優先して、最大限の努力をはかる義務を負っている。
したがって、被告は、ホームからの転落による死傷事故が再発しないように、事故原因を究明し、これをふまえた効果的な安全政策を策定実施する義務があり、車両やホーム等を常に構造上安全な設備に改善し、必要な人員を配置し、旅客の安全を確保できるよう乗務員・駅員のマニュアルを策定改善して、これを社員に指揮教育する義務がある。
しかし、被告は、本件ホームが構造上極めて危険であるにもかかわらず、旅客の安全を確保するために必要な人員を配置したり、防護柵を設置するなど構造上安全な設備に改善するなどの措置をとらなかった。とりわけ、同じ松戸駅の地下鉄千代田線乗り入れホームでは列車自動停止装置が作動しているにもかかわらず、本件一番線ホームでは、ホーム上に設置された列車非常停止警報装置を押しても自動的に列車が停止することなく、信号が切替わるのみであった。列車自動停止装置は、万が一事故が発生した場合にもその被害を最小限に食い止めるために非常に意味のあるものである。本件においても、同装置が作動すれば、一郎の死亡という最悪の事態は回避できた可能性がある。
したがって、被告には、ホームから転落した場合の死傷事故を予測しながら、その再発を防ぐ効果的な対策を実施することなく、本件ホームにおいても必要な改善措置をとらず、漫然時を過ごして本件事故を発生せしめた過失があり、民法七〇九条に基づく不法行為責任を負う。
(被告の主張)
(ア) 本件事故以前に被告の駅のホームから乗客が線路内に転落する事故があったことは認めるが、本件ホームを含め松戸駅において本件と同種事故が発生したことはない。
被告について、本件事故の態様を離れて、旅客が何らかの事情によりホームに転落するといった一般的抽象的な危険性について予見可能性を論じるのは無意味である。
(イ) 被告に原告主張のような一般的な注意義務が存すること、本件一番線ホームに防護柵が設置されていなかったこと、千代田線乗り入れホームでは列車自動停止装置が設置されており、これが作動すると自動的に列車が停止することは認めるが、本件一番線ホームは構造上危険ではなく、また被告は十分旅客のための安全確保のための措置をとっていた。
すなわち、被告は、①同ホームの構造を普通鉄道構造規則の定める基準に従ったものとし、②ホームの形状、乗降客の数、混雑状況等の諸事情を総合的に考慮して、ホーム要員を一名配置し、③争いのない事実等(6)記載のようにカメラ及びモニターを設置して、すべての車両及びホームの旅客の安全を確認できるようにし、④首都圏のほとんどの駅で採用されている列車非常停止警報装置を設置しており、⑤車掌やホーム要員について旅客の安全のためのマニュアルを作成して指導教育を行うとともに、⑥日常、利用者に対し黄色い線の外側に出ないよう構内放送で注意を促し、ポスターや構内放送により、旅客に対し列車非常停止警報装置のボタンの周知を図っていた。
(ウ) しかし、被告は、大量輸送を行う公共交通機関であるから、コストや効率性といった経済性等を無視することはできない。また、そのような被告の特性からいえば、利用者にもそれ相応の自己の安全を守る注意義務が存するというべきであるから、被告の義務の程度を決するにあたって考慮の対象となるというべきである。
一番線ホームには、黄線により危険区域を明示しているのであるから、被告において、一郎のような異常な行動をとる乗客がいることを想定して、より多いホーム要員を配置する義務はない。
本件ホームには、特急列車用車両、快速列車用車両、普通列車用車両など一両当たりのドア数とドア位置が異なる様々な種類の車両が停止するため、これらすべてに対応する防護柵を設けることは、現状においては技術的に難しいのみならず、利用者にも自己の安全を守る注意義務が存することからすれば、被告において、防護柵を設置すべき義務はない。
(エ) さらに、列車非常停止警報装置は、列車自動停止装置と比べて、走行させることができる車両の種類が豊富であることが利点である。常磐線は、特急列車用車両、普通列車用車両、あるいは貨物列車の機関車などを運行しており、それぞれがさらに何種類かに分かれているが、それぞれ加速・ブレーキ性能などが異なる仕様となっている。列車自動停止装置の場合は、車両の性能にあわせた速度指示に関する信号を送信することができないため、運転保安上の観点から、その線区を走る車両等の中で一番制動距離の長いものにあわせて制御区間を設定せざるをえないところ、制限区間が長くなるため、運転間隔があいて、通勤ラッシュに対応するための高密度・等間隔という効率的な運転の実現が困難になる。列車非常停止警報装置は、この欠点に対処することができる。また、列車非常停止警報装置が押されることによって、列車非常停止警報機が動作し、それを確認した乗務員が直ちに非常ブレーキを操作するのであるから、安全対策として欠けるところはない。よって、列車自動停止装置を採用しないことに過失はない。
本件において、列車非常停止警報装置が鳴動した時点では本件列車は一定の加速がついていたものであるから、列車自動停止装置であっても、一郎の死亡は不可避であったとも考えられる。
(3) 旅客運送人の責任(商法五九〇条)
(原告の主張)
一郎は、被告高田馬場駅から同松戸駅の区間を含む定期乗車券を購入し、実際にこれに乗車して松戸駅一番ホームを歩行していたのであるから、被告は、旅客運送人として、一郎を松戸駅を出るまで安全に運送すべき債務を負担していた。
よって、被告は、一郎に生じた損害を賠償すべき責任がある。
(被告の主張)
被告は、(2)ア~ウの被告主張のとおり、自己または使用人であるC川及びD原において、運送に関し注意を怠らなかったものであるから、旅客運送人としての責任はない。
(4) 損害額
(原告の主張)
ア 一郎に生じた損害
(ア) 逸失利益 五〇四〇万〇七四三円
一郎は、本件事故当時二〇歳(昭和五六年五月一五日生)で、E田専門学校に在学中であったが、本件事故がなければ翌平成一四年三月に同校を卒業し、その後就職することは確実であったから、平成一二年の賃金センサス男子労働者学歴計全年齢平均賃金を基礎とし、生活費控除率を五〇パーセントとして、就労可能な六七歳までの四七年について新ライプニッツ係数を使用して中間利息を控除すると、同人の逸失利益は以下のとおりである。
5,606,000×(1-0.5)×17.9810=50,400,743
(イ) 慰謝料 二〇〇〇万〇〇〇円
一郎は、本件事故において、駅員・乗務員らに発見されないまま、本件列車とホームとの間に挟まれて、回転しながら、約八〇メートルも引きずられたうえ、ホーム下に転落させられ、右側頭部・右前頭部の脳挫滅及び右胸部挫滅等によって死亡させられたものであり、その間に受けた恐怖及び被告の重大な過失の態様を考慮すれば、その慰謝料は二〇〇〇万円を下らない。
イ 原告の損害
(ア) 葬儀費用 一五〇万〇〇〇〇円
(イ) 原告固有の慰謝料五〇〇万〇〇〇〇円
原告は、夫太郎が昭和六三年一二月七日に死亡後、長男である一郎の将来を嘱望し、期待をかけていたもので、最愛の一郎を突然失った原告の精神的損害ははかりしれない。また、一郎は、身元確認のできる学生証や運転免許証を携帯していたのに、原告が被告から本件事故の連絡を受けたのは、本件事故翌日の午前八時ころになってからであった。さらに、被告関係者は、一郎の通夜・告別式に誰一人として弔問に訪れなかった。
以上の原告の精神的苦痛を慰謝するには、五〇〇万円が相当である。
ウ 原告は、一郎の唯一の相続人として、ア(ア)及び(イ)の合計七〇四〇万〇七四三円を相続したが、これとイ(ア)及び(イ)の合計は七六九〇万〇七四三円である。
第三争点に対する判断
一 争点(1)(本件事故の発生状況)について
(1) 《証拠省略》によれば、次の事実が認められる。
ア 一郎は、本件事故当時、E田専門学校に在学しており、同校の最寄駅である被告高田馬場駅と自宅最寄駅である新京成電鉄常盤平駅間の通学定期を購入して通学していた。
イ 平成一三年一〇月三一日、一郎は、E田専門学校の授業を終え、帰宅するために被告高田馬場駅から日暮里駅まで山手線に乗車し、日暮里駅で常磐線に乗り換えた。そして、本件列車に乗車し、同日午後九時三〇分ころ、新京成電鉄に乗り換えるため、松戸駅で降車して、一、二番線ホームの一番線側を、別紙図面一表示の階段Dの方向に歩いていた。
本件列車は、一両のドアが四つの車両であり、端のドアと直近の車両連結部との距離は約二メートルである。
ウ A田は、帰宅のため本件列車の一五号車付近に乗車して、座って寝ていたが、松戸駅に到着して本件列車が停止し、ドアが開いて少したってから降車した。同人は松戸駅で改札を出るため、別紙図面一表示の階段Bに向かって、ホーム中央付近をゆっくりめに歩行しているうち、右側前方のホームの端付近を同方向に歩行している一郎に気づいた。一郎の頭髪が金髪も混じっているような赤色で長めであったので、目を引いたが、A田は、それ以上一郎に注意を払ったわけではなかった。A田が少し進むと一郎との間隔がやや詰まったが、一郎が右に傾き、本件列車のドアと連結部の間にある窓や鉄枠等に右肩から右腕にかけてぶつけ、少し左へ戻ってはまた右へ傾いてぶつけるという動作を二、三度繰り返しているのに気づいたので注目していると、本件列車のドアが閉まり、本件列車が発車して一郎の方向へ進行してくるのとほぼ同時に、一郎が車両連結部に頭からスポッと入ってしまった。一郎は、腰のあたりを本件列車とホームに挟まれたまま、本件列車に引きずられていったが、一郎の足が本件列車の壁に当たってバタンバタンという音をたてていた。A田と一郎との間には、他の乗客はいなかった。
エ B山は一五号車の一番前のドア付近に乗車してきて、松戸駅に停車してから、新京成電鉄に乗り換えるため、降車し、乗り換え予定の電車の出発時刻が迫っていたので、別紙図面一表示の階段Dに向かって、ホームの二番線側の端付近を急ぎ足で歩行していた。一郎には気がつかなかった。B山は、女性のきゃあという悲鳴と、バタンバタンという音が聞こえたので右後ろを振り向くと、約一〇メートルくらい先に、一郎が逆さまになって、腰のあたりを本件列車とホームとに挟まれたまま、引きずられていくのが見えたので、発見したときの一郎のそばの柱に設置してある列車非常停止警報装置に近づき、ボタンを押した。そのころホームにはあまり旅客はいなかった。ボタンを押した瞬間に、ホームから非常警報音がピピピピと大きく鳴り渡り、次の瞬間本件列車のブレーキをかけるパシュンという音がし、スピードが落ちた。B山は、ボタンを押した位置でそのまま一郎を見ていた。
オ 一郎は、挟まれた車両連結部が一番ホームの先端(取手駅寄り)を通過した後に地上に落下した。
本件列車はその後も進行して、列車最後尾が一番線ホーム先端からかなり進行した地点で停止した。
カ A田とB山は、D原が、本件事故を目撃した人と上記ボタンを押した人を探していたので、これに応じ、ホーム事務室で事情を簡単に説明した。
キ 被告の現地調査担当者は、本件事故翌日、被告松戸駅職員から聞き取り調査をして、一郎の靴が、ホームの取手側端から計測して二〇・五メートルのホーム上に、クリアーケースが、同靴から計測して上野寄りに一八・五メートルの線路内に落ちており、いずれも別紙図面二表示の列車非常停止警報装置(一番線PB)10の設置してある柱よりやや取手側であるとする報告書を作成した。同調査の際は、靴やクリアーケースは既に片づけられていた。
(2) 一郎が転落した車両連結部について、A田及びB山は、一一号車と一二号車の間であると供述する。しかし、C川及びD原によれば、本件列車は、松戸駅に二〇~三〇秒停車後、定刻の午後九時三一分に発車したものであり、これに反する証拠はないところ、人間の歩行速度を時速四キロメートルとした場合、秒速は一・一メートルであるから、二〇~三〇秒の停車中に歩行できる距離は二二~三三メートルであるといえる。ところで、前記認定のとおり、A田は本件列車の一五号車付近に乗車してきて、本件列車が停車しドアが開いて少したってから降車して、ゆっくりめに歩行しており、一方B山は一五号車の一番前のドアから降車し、乗り換え予定の電車時刻が迫っていたため、急いでいたものであるが、争いのない事実等(3)のとおり、本件列車の一両の長さは約二〇メートルであることからすると、A田やB山の速度に誤差があるとしても、A田については、一五号車付近を少し遅めに降車し、一二~一五号車の約四車両を通り過ぎて一一号車との連結部付近まで歩行することは八〇メートル近く歩行することになり、同人がゆっくりめに歩行していたことからすると困難であるといわねばならず、また、B山についても、一五号車の先端ドアから降車し、一二~一五号車の約四車両を通り過じて一一号車との連結部の先まで(B山は一郎が引きずられていくのを振り返って認めたから、一郎よりは上野駅側に進行していたものと考えられる。)進行することは八〇メートル以上歩行するものであるから、同人が急いでいたとしても同様に困難であるといわねばならない。
そうすると、B山が押した列車非常停止警報装置ボタンは、同人が供述する別紙図面二表示の「一番線PB9」ではなく、「一番線PB10」であるものというべきである。よって、一郎が転落した車両連結部は、その付近に停車した一三号車と一四号車の間であるものと認める。
(3) 被告は、本件列車が発車するまではホーム上に異常がなく、一郎が起動し始めた本件列車に近づき車両連結部に転落したと主張する。これはC川やD原がホームを確認した際、異常がなかった(すなわち、本件列車に接近していた人物はいなかった)と供述したことに基づくものであり、そのような状況であるのに本件事故が発生したのは、発車後一郎が本件列車に接近したからであると推測しているにすぎない。しかし、C川やD原においても、列車が発車した後、列車に接近する人物を全く認めていないうえ、同人らの当該供述部分は後記のとおり信用できないのみならず、一郎のそのような行為は自殺行為に等しいともいえるところ、一郎が自殺を願望していたような情況もうかがわれない。
二 争点(2)(被告の過失の有無)について
(1) C川の過失
ア 《証拠省略》によれば、次の事実が認められる。
(ア) C川は、平成一〇年七月から車掌となり、松戸車掌区の勤務となって、本件列車にも上野駅から乗車勤務した。
(イ) C川は、本件列車が松戸駅ホームに侵入するに際し、列車先端部がホームに入る少し手前で車掌室右側の窓から顔を出し、そのまま前方の様子を注意し、車掌用引きスイッチ(非常ブレーキ)に左手を添えて、ホームに侵入した。
(ウ) C川は、列車到着後、停止位置及び開扉状況を確認した。その後、発車時刻が近づいたため、発車ベルを扱い、直後の目視と車掌用モニター及びホーム要員D原の合図灯による客扱終了合図により、旅客の乗降の終了及びホーム上の安全を確認した。そして、そのままホーム上を注意しながら、乗務員室に、そのドアを開けたまま左半身だけ入り、閉扉スイッチを扱って閉扉した。
(エ) 本件列車は、閉扉後発車した。C川は、発車直後は乗務員室のドアを開けたまま列車から身を乗り出すようにして、列車が三、四メートル進行してから後は乗務員室に入ってドアを閉め、窓から半身を出し、列車の最後尾がホーム末端を通過し終わるまで、車掌用引きスイッチ(非常ブレーキ)に左手を添えていつでも作動できるようにしながら、前方の安全を目視しつつ進行した。このとき、ホーム上は上野駅寄りの階段付近が混雑していた。
(オ) 本件列車の乗務員室がD原の立っていたホーム事務室前を通過した後、C川がなおも同じ姿勢のまま進行しているとき、列車非常停止警報装置が鳴動するのを聞いたので、直ちに車掌用引きスイッチを扱い、非常停止措置をとって非常ブレーキを作動させた。そのとき、C川は取手駅寄りの階段付近の前方ホーム上に腕を頭上で交差させている旅客にも気がついた。その後もC川は非常ブレーキのスイッチを引き続けたが、前記のとおり、列車最後尾が一番線ホーム先端からかなり進行した地点で停止した。
イ しかし、本件事故の発生状況は、(1)記載のとおりである。そうすると、C川は、発車ベルを扱い、直後の目視と車掌用モニターを確認した際、一郎の周囲には他の乗客もさほどいなかった状況であるから、ホームの端で本件列車のそばを歩行している同人を発見できたはずであり、発見できればドアを閉めず、本件列車が発車することもなく、本件事故は発生しなかったものであるといえる。
C川は、上記目視及びモニター確認の際異常を発見しなかったと供述するが、目視及び確認に要求される注意を尽くさず不十分であったといわざるをえない。本件事故状況についてのA田の供述は具体的・迫真的であり、本件事故の特異性からしてもその目撃体験は感銘力があるものといえ、その記憶は大筋において信用できるものである。
よって、C川には本件事故発生に関し過失があったものである。
(2) D原の過失
ア 《証拠省略》によれば、次の事実が認められる。
(ア) D原は、ホーム事務室にいたが、本件列車が松戸駅ホームに進入する合図を受けたので、ホーム事務室からホームに出、事務室前に立って、線路上及びホーム上の安全確認を行い、列車進入の際にも目視及びモニターによってホーム上の安全確認を行った。
(イ) D原は、列車が停止してドアが開いた後、直接目視及びホーム要員用モニター監視により、旅客の乗降状態を確認した。そして、発車ベルが流れ、構内放送で「一番線、ドアが閉まります。ご注意下さい。」と閉扉に注意を促すアナウンスがなされた後に、ホーム上の安全を確認して、手に持っていた合図灯で車掌に客扱終了合図を出した。
(ウ) D原は、列車のドアが閉まった後にホーム事務室の取手寄りの階段付近に数人の酔客が千鳥足で歩いてきたのを認め、これに注意を向けた。本件列車が発車した後、酔客らが、ホームの端から動いたので、本件列車の進入方向である上野駅側に目を転じて確認し、本件列車の乗務員室がD原の立っていたホーム事務室前を通過したので、列車の後部(標識等)を確認し、列車の最後尾が見えなくなるまで注視した。そして、さらに、後方(上野駅側)に目を転じて後方の安全確認を行い、モニターの方へ体の向きを変えたとき、列車非常停止警報装置が鳴動するのを聞き、ホーム事務室内にいた同僚らと直ちに現場に向かった。
イ しかし、本件事故の発生状況は、(1)記載のとおりである。そうすると、D原は、閉扉に注意を促すアナウンスがなされた後にホーム上の安全を確認した際、一郎の周囲には他の乗客もさほどいなかったので、ホームの端で本件列車に近接して歩行している同人を発見できたはずであり、発見できれば、車掌に対し客扱終了合図を出すことも発車ベルを扱って発車の合図を出すこともなく、結果として本件列車が発車することもなかったものであるから、本件事故は発生しなかったものであるといえる。
D原は、上記目視及びモニター確認の際異常を発見しなかったと供述するが、目視及び確認に要求される注意を尽くさず不十分であったといわざるをえない。A田の供述が信用できるものであることは前述のとおりである。
よって、D原には本件事故発生に関し過失があったものといわざるをえない。
(3) 以上の事実によれば、被告は、その余の点を判断するまでもなく、C川及びD原の過失により、同人らの使用者として、民法七一五条の不法行為責任を負うものというべきである。
三 争点(4)(損害額)について
(1) 一郎に生じた損害
ア 逸失利益 四七七三万一四四六円
《証拠省略》によれば、一郎は、本件事故当時二〇歳(昭和五六年五月一五日生)の独身男性で、E田専門学校に在学中であったが、翌平成一四年三月に同校を卒業した後は、一年間くらい留学して外国語を勉強する希望を持っていたことが認められる。そうすると、一郎は、後記のとおりの事情で原告が日本にいることを考慮し、留学後は帰国して就職したものと推測できる。よって、平成一二年の賃金センサス男子労働者学歴計全年齢平均賃金を基礎とし、生活費控除率を五〇パーセントとして、就労可能な六七歳までの四七年の新ライプニッツ係数から、留学予定期間の一年についての新ライプニッツ係数を控除して、中間利息を控除すると、同人の逸失利益は以下のとおりである。
5,606,000×(1-0.5)×(17.9810-0.9523)=47,731,446
イ 慰謝料 九〇〇万〇〇〇〇円
一郎は、本件事故において、駅員・乗務員らに発見されないまま、本件列車とホームとの間に挟まれて、回転しながら、約四〇メートルも引きずられたうえ、ホーム下に転落させられて死亡したものであるから、その間に受けた恐怖は相当なものがあったと推測される。
しかし、他方で、本件事故は、一郎が発車間際の本件列車の直近を通行し、列車側に傾くような動作を二、三度とっていたことも大きな原因である。一郎の進行状態からすれば、本件列車が発車しなくとも、右側の支えを失って車両連結部の隙間に転落し、負傷する可能性もなくはないのである。被告のみならず、大量輸送を行う交通機関においては、ホーム上の黄線等により危険区域を明示して、ホームの端に出ないよう、また起動している電車等に近づかないよう繰り返し注意を促しているのは周知の事実であり、そのような注意がなくとも、当該危険は、一郎の年齢や経歴等から当然に感得すべき事柄である。本件事故当日、一郎には、特段体調が悪かった旨の証拠はなく、また、飲酒や薬物による影響を受けていたことを疑わせる証拠も認められない。
以上の事情及び本件事故の態様その他本件に顕れた一切の事情を考慮し、一郎の慰謝料は九〇〇万円が相当である。
(2) 原告の損害
ア 葬儀費用(《証拠省略》) 一五〇万〇〇〇〇円
イ 原告固有の慰謝料 一〇〇万〇〇〇〇円
《証拠省略》によれば、原告は、夫太郎が昭和六三年一二月七日に死亡後、働きながら長男一郎及び長女一江を養育し、とりわけ長男である一郎の将来を嘱望していたものであることが認められるところ、最愛の一郎を突然失った原告の精神的損害ははかりしれない。また、上掲証拠によれば、一郎は、身元確認のできる学生証や運転免許証を携帯していたのに、原告が被告から本件事故の連絡を受けたのは、本件事故翌日の午前八時ころになってからであり、原告は帰宅しない一郎を心配して前夜を過ごしたことも認められる。
しかし、一郎について述べた危険への接近は、原告側の事情として、原告の慰謝料の算定にあたっても考慮されるべきである。
よって、原告の精神的苦痛を慰謝するには、一〇〇万円をもって相当とする。
(3) 争いのない事実等(9)記載のとおり、原告は、一郎の唯一の相続人であるから、(1)ア及びイの合計五六七三万一四四六円を相続したが、これと(2)ア及びイの合計は五九二三万一四四六円である。
なお、以上の損害賠償は不法行為に基づくものであるから、遅延損害金は民法所定の年五分の割合である。
(裁判官 木本洋子)
<以下省略>