千葉家庭裁判所 事件番号不詳 判決
本籍 千葉市寒川町一丁目八十番地
住居 同市新町九十二番地
特殊飮食店営業 大塚七之助 明治三十四年六月十五日生
主文
被告人を罰金壱万円に処する。
被告人が右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
被告人は肩書住居で特殊飮食店「さつき」を経営しておるものであるが昭和二十九年三月下旬頃から同年四月上旬頃までの間右店舖で児童である○ト○エ(昭和十三年一月十八日生)をして氏名不詳の者十数名と売淫行為をさせたものである。そうして右は単一の意思にもとずく包括一罪と認める。
右の事実は
一、○ト○エの戸籍謄本によつて同人が十八歳未満であることを認め
一、同人に対する司法警察官の供述調書謄本(但右謄本中同人が被告人方に雇はれた期間の供述記載部分を除く)一通
一、同人に対する検察官の供述調書(但前同様同人が被告人方に雇はれた期間の供述記載部分を除く)一通
一、証人平田耕太郎、同矢沢すい、同佐々木栄子の当公廷における各供
一、被告人の司法警察員に対する供述調書
一、同人の検察官に対する供述調書
を綜合して被告人が判示売淫行為をなさしめた事実を認める。
仍て判示事実はその証明十分である法律に照すと被告人の判示所為は児童福祉法第三十四条第一項第六号、第六十条第一項にあたるところその所定刑中罰金刑を選択しその額の範囲内で被告人を罰金壱万円に処し被告人が右罰金を完納することができないときは刑法第十八条に則り金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべく訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項にもとずいて全部被告人をしてこれを負担させる。
弁護人は証人等の供述によつても、○と○江なる者が十八歳未満であるということは外見上認められずいつも二十一、二歳に見えたと供述する如く被告人としても左様に信し尚それでもと、○江が店に出ることは極力止めたのであるが同人はそれをきかず自ら客をとつたのであるから被告人には責任なく従つて被告人は無罪であると主張するを以てこの点につき判断する児童福祉法第六十条第三項には児童を使用するものは児童の年齢を知らないことを理由として処罰を免かれることができない但し過失のないときはこの限りでない旨規定されてあるのに懲すればたとえ年齢について認識がなかつたとしてもその認識のないことについて過失があれば処罰を免かれないのである。
よつてこの点について審究するに被告人の司法警察員に対する供述調書中、同人の供述として○ト○エは二十二歳と言うけれども一見二十歳には見えるのでまさか未成年の十八歳以下とは思はなかつた、それに同人は耕太郎と言う人の女房だとも聞いたものですから年令の点ではすつかり安心して何時もなら早速本人の住んで居た役場え戸籍の照会をするのでありますが移動証明も何も年令を証明するものが何一つないにも拘らず雇つてしまつたのであります旨の供述記載及同人の検察官に対する供述調書中にも同人の供述として前同様趣旨の供述記載あるところよりこれを綜合して判断すれば被告人は児童である○ト○エの年令について、本人の外見並に同人の申す言話のみによつて直ちに満十八歳以上だと信じたことになるので被告人は○シ○エの移動証明なり戸籍謄本などによつて年令を確めた事実は毫も認められない即ち被告人は、唯、漫然○ト○エの言動のみによつて同人の年令を誤信したものであつてこの点につき被告人には過失ありと言はなければならない因て弁護人の無罪の主張は理由なきものとする。
仍て主文のとおり判決する。
(裁判官 窪田守久)