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千葉家庭裁判所佐原支部 平成7年(家)226号

主文

申立人の本件申立てを却下する。

理由

第1本件申立の要旨

1  申立の趣旨

相手方は、申立人に対し、夫婦関係を維持するための生活費として、平成7年4月から毎月末日限り金10万円を支払え。

2  申立の実情

(1)  申立人と相手方は、昭和54年11月1日に婚姻した夫婦であり、平成4年12月24日まで、相手方住所地で同居生活をし、申立人は、家業の農業の手伝いをし、また、祖父、息子夫婦ら大家族の主婦として家事に従事していた。

(2)  申立人は、長年にわたる相手方の申立人の人格を認めない非人間的態度のため、平成4年12月24日に家を出て別居した。

(3)  相手方は、千葉地方裁判所佐原支部に申立人との離婚訴訟を提起し、現在係争中であるが、申立人には何らの落ち度はなく、婚姻関係解消に至るまでは、婚姻費用分担の義務がある。

(4)  申立人は、別居後、実家で実母、弟と同居し、清掃婦等の仕事をして生活していたが、弟の結婚が決まり、現在は、肩書住所地の借家(家賃月1万7000円)に一人で住み、月約7万円の収入で生活している。

このように、申立人自身の収入では最低限度の生活を維持することが困難である。

一方、相手方には、農業経営で平均月収32万円と多額の収入があり、相手方と同居している息子夫婦にも収入がある。

(5)  そうすると、相手方は、申立人に対し、月10万円の婚姻費用分担の義務があるというべきである。

第2当裁判所の判断

1  一件記録〔関連事件千葉家庭裁判所木更津支部平成5年(家)第×××号婚姻費用分担申立審判事件、東京高等裁判所平成6年(ラ)第××号婚姻費用分担審判に対する抗告事件記録を含む〕及び調査の結果によれば、次の事実を認めることができる。

(1)  申立人は、23歳ころ結婚し、二人の子供ができたが、昭和50年ころ、子の親権者を夫と定めて離婚した。

(2)  他方、相手方は、専業農家の長男として生まれ、高校卒業後は農業に従事していたもので、昭和35年2月4日、Aと婚姻したが、同月14日に妻が交通事故で死亡し、その後、昭和37年12月3日にBと再婚し、その間に長男C(同年○月○日生、同月31日死亡)、長女D(昭和○年○月○日生、平成元年7月婚姻)、二男E(昭和○年○月○日生、平成2年11月婚姻)を儲けたものの、妻Bは昭和53年7月24日癌のため死亡した。

(3)  申立人と相手方は、昭和54年11月1日に婚姻し、相手方住所地で同居生活をし、相手方は農業に従事し、申立人は、家業の農業の手伝いをするとともに、相手方の父母、二男夫婦ら大家族の主婦として家事に従事していた。

(4)  申立人と相手方の夫婦仲は、当初順調であったが、昭和60年ころ精神病で入院していた相手方の姉が退院し同居するようになってから、申立人と相手方家族との間でトラブルが起こるようになり、平成4年8月には、申立人が相手方の姉との一緒の食事を拒否し、一人で食事をするようになり、その後、申立人の養父の入院、死亡により申立人はその看病や葬儀等に専心していたが、このころから、申立人と相手方との関係が特に悪化し、同年12月24日には申立人が家を出て別居した。

(5)  申立人は、別居後、袖ヶ浦市○○の実家で実母、弟と同居し、平成5年1月から清掃婦、スーパーのレジ係等の仕事をして生活していた。

その後、申立人の弟の結婚が決まり、申立人は、平成7年5月に肩書住所地の借家(家賃1万7000円)に転居し一人で住み、株式会社○○に勤務し、現在月約7万円ないし8万円の収入で生活している。

(6)  なお、相手方は、別居後、申立人に対し、何回も帰ってくるように伝えたが、申立人から拒否され、平成5年3月5日には、申立人に対して円満同居を求めて千葉家庭裁判所木更津支部に夫婦関係調整調停を申立てた(平成5年(家イ)第××号)。他方申立人は、同年8月10日、相手方に対し婚姻費用分担調停を申立て(平成5年(家イ)第×××号)、それぞれ話し合いが持たれ、同年8月17日には相手方が申立人に対して当面の婚姻費用として100万円を交付した。

しかし、離婚の条件等をめぐって双方の話し合いがつかず、同年11月2日、各調停事件は不成立となった。

〔なお、前記婚姻費用分担調停事件は審判移行し(同庁平成5年(家)第×××号事件)、平成6年1月6日、当時相手方が分担すべき婚姻費用額として月5万円が相当であるとし、相手方による100万円の支払いを考慮して、平成7年4月から月5万円の支払いを命じる審判をしたが、相手方の抗告により、東京高等裁判所は、平成6年6月30日、将来の婚姻費用分担を命じるのは不相当であるとして、前記審判を取り消し、申立人の申立てを却下する決定をした。〕

(7)  相手方は、申立人が相手方の戻って欲しいとの要請を拒否し続けた態度に失望し、申立人を受け入れ婚姻生活を続ける意欲を失い、申立人との離婚を求め、平成7年3月、千葉地方裁判所佐原支部に申立人との離婚訴訟を提起した(同庁平成7年(タ)第×号)。申立人も、同年6月26日、当庁に本件婚姻費用分担の調停を申立てたが、同年9月13日、上記調停は不成立となって、審判移行し、本件申立てとなった。

前記離婚訴訟は、平成8年3月29日、婚姻関係は破綻し、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとして離婚を認容する判決がなされ、申立人の控訴により現在東京高等裁判所に係属中である。

(8)  相手方は、二男と共に、田1ヘクタール、畑約2.5ヘクタールを耕作して農業経営をしていたもので(二男は事業専従者として月額20万円の給与の支給を受けていた。)、平成4年ころには平均月収32万円の収入があったが、ここ数年サツマイモの値崩れにより収入が激減し、平成6年の収入は185万3403円、平成7年の収入は88万8227円となっている(なお、相手方は、平成6年6月に千葉県農業改良資金から225万5000円の借入をし、平成7年から7年間で返済することとなっている。)。平成8年には満60歳となることもあって、相手方は、同年1月をもって、農業経営を二男に譲り、家計の管理も息子夫婦に任せることとした。

2  申立人と相手方は、申立人の家出により別居するに至ったものであるが、前記離婚訴訟の判決においても、申立人の家出を悪意の遺棄とまでは認められないとし、双方の性格、物の考え方の相違が顕在化したことにより婚姻関係が破綻したものとしている。

そうすると、申立人と相手方の別居は、少なくとも申立人側にのみ有責事由がある場合とは認められず、それぞれの経済状況に応じて、婚姻費用の分担をすべきこととなる。

3  ところで、前記認定のとおり、相手方の収入は、平成6年、平成7年と減少し、平成8年1月からは農業経営も二男に譲って、その収入は、近く支給される月約3万円の農業者年金程度となる。

相手方の分担能力を基礎収入(年収から公祖公課、社会保険料、職業費及び住居費を控除した額)から最低生活費を控除して計算すると、平成7年の収入88万8227円を基礎として計算しても、1か月の基礎収入は1万8392円で、その1か月の最低生活費6万2475円に及ばず、相手方には、分担能力がないこととなる。

ちなみに、申立人の分担能力について計算すると、平成7年の収入128万1380円から公租公課、社会保険料、職業費及び住居費を控除して1か月の基礎収入を計算すると6万8041円となり、申立人の1か月の最低生活費6万6103円を若干上回ることとなる。

4  そうすると、相手方には婚姻費用の分担能力がなく、申立人の本件申立ては理由がない。

5  よって、主文のとおり審判する。

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