名古屋地方裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人亀山義久、同金田一雄、同小島孝行を各罰金五千円に、被告人佐藤常弥を罰金弐千円に処する。
被告人等に於て右罰金を完納できないときは何れも金五拾円を壱日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。
理由
(事実)
被告人亀山は土木建築請負業株式会社鹿島組に雇はれ昭和二十年十月頃より名古屋支店調度課購買係を命ぜられ資材購入の任務を担当しているもの、被告人金田は当時右鹿島組名古屋支店経理課長として同支店金銭出納一切の業務を鞅掌していたもの、被告人佐藤は中部自由人倶楽部専務理事、被告人小島は木材証券株式会社の外務員であるが、被告人亀山は会社業務の遂行に必要な資材の購入に当つて封鎖支払にては非常に困難を来し、殊に昭和二十一年七月中旬頃より着手した進駐軍用宿舎建設工事に付てその竣工期日を厳守せねばならぬところより右工事遂行の為に十万円前後の現金の必要に迫られ、その資材購入の衝に当る者として困却していた折柄、同年八月四日頃偶々被告人佐藤が名古屋市東区手代町の鹿島組名古屋支店に来訪した際、被告人亀山は右佐藤に対してその苦衷を訴へ新円入手の斡旋方を依頼したところ、被告人佐藤は更に被告人小島に右の旨を伝へてその斡旋を依頼した結果、被告人小島は之を承諾し株式会社鹿島組と田中栄太郞との間に何等真実の取引関係のないことを知りながら被告人佐藤に対し田中栄太郞宛の封鎖小切手額面金七万一千五百円のもの二通を持参すれば割引によつて十万円程度の現金に換へる旨申向けた為、被告人佐藤、同亀山は同月六日頃鹿島組名古屋支店事務所に於て田中栄太郞商店が株式会社鹿島組に対しテツクス及べニヤ板を売却した形式による請求金額七万一千五百円の虚構なる請求書二通(証第五号はその写)を作成し、その間被告人佐藤は被告人小島と連絡の上同人の指示を得て右書面の形式を整へ、その頃被告人亀山は被告人金田に右の事情を告げて該請求書を手交し、被告人金田は之を承諾して経理課長としての決裁を与へ、茲に被告人等四名の間に公認せられた平和産業の業務遂行の為の原材料購入名義に仮託し架空の請求書を用ひて金融機関を欺罔し封鎖預金の封鎖支払を為さしめることの共謀が成立し、被告人金田は社員岩田某に命じて同月七日及八日の二回に亙り何れも額面金七万一千五百円、振出人株式会社鹿島組名古屋支店長松井真吉、支払人株式会社帝国銀行名古屋支店田中栄太郞商店宛の小切手二通(小切手番号FE1870及FE4316)(証第四号はその写)を作成せしめてその都度同市中区広小路通六丁目二番地帝国銀行名古屋支店に於て前記請求書と共に同銀行係員に提出せしめ、情を知らぬ同係員をして右請求書に基き鹿島組及田中栄太郞との間に該書面記載の如き真実の取引関係が存し金融緊急措置令により封鎖預金の封鎖支払を為すべき場合に該当するものなりとの誤信の下に何れも即日右小切手に封鎖支払の認証を為さしめた上、更に同月九日頃二回に亙り同銀行係員をして右認証を受けたる封鎖小切手に基き鹿島組の封鎖預金中より封鎖支払を為さしめたものであつて、右支払を為さしめた所為は犯意継続に係るものである。
(証拠省略)
(適条)
被告人等の判示所為は金融緊急措置令第一条第一項(第三条第二項)、同令施行規則第一条、(第六条第五号(乙)昭和二十年二月大蔵省告示第二十六号)、同令第十一条、刑法第六十条、第五十五条に該当するので所定刑中罰金刑を選択しその所定金額範囲内に於て被告人亀山、同金田、同小島を各罰金五千円に、被告人佐藤を罰金弐千円に処し、被告人等に於て右罰金を完納できないときは同法第十八条に従い何れも金五十円を壱日に換算した期間その被告人を労役場に留置することとし、主文の通り判決する。(昭和二二年八月九日名古屋地方裁判所第一刑事部)