名古屋地方裁判所 平成元年(わ)1163号 判決 1989年10月19日
本籍
愛知県幡豆郡幡豆町大字西幡豆字松原四二番地
住居
右同四四番地五
建築業(幡豆町議会議員)
大西保男
昭和七年八月一二日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官髙﨑秀雄出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金四二〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、愛知県幡豆郡幡豆町大字西幡豆字松原四四番地五において、大西木材の名称で建築業を営む傍ら、継続的に有価証券の売買を行い多額な所得を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、株式取引の注文を多数の証券会社に分散するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 昭和五九年分の実際の総所得金額が二六九二万五九三円であり、これに対する所得税額が九七七万五五〇〇円であるのに、同六〇年三月一五日、愛知県西尾市熊味町南十五夜四一番地の一所在の西尾税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が四三七万八七五円であり、これに対する所得税額はすでに源泉徴収された税額を控除すると六万八〇三円の還付を受けることとなる旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額九八三万六三〇〇円を免れ
第二 昭和六〇年分の実際の総所得金額が三二六六万二三〇二円であり、これに対する所得税額が一二九八万四〇〇円であるのに、同六一年三月三日に、前記西尾税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が六五四万三六九〇円であり、これに対する所得税額が三〇万七五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一二六七万二九〇〇円を免れ
第三 昭和六一年分の実際の総所得金額が一億七七七九万五八四七円であり、これに対する所得税額が一億一一三九万九九〇〇円であるのに、同六二年三月一二日、前記西尾税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が六〇七万七六六六円であり、これに対する所得税額が三八万六六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一億一一〇一万三三〇〇円を免れ
もつて、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。
(証拠の標目) (注) 括弧内の甲・乙算用数字は、各証拠書類一枚目表欄外に表記された検察官証拠請求番号
(略語) 事調書 大蔵事務官に対する供述調書
検調書 検察官に対する供述調書
(事) 大蔵事務官
判示全部の事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の事調書5通(乙1ないし5)及び検調書八通(乙6ないし13)
一 (事)作成の脱税額計算書説明資料と題する書面(甲4)
一 (事)作成の査察官調査書六通(甲5ないし10)
一 大澤一三(甲54)、山本弘(甲55)、水野克己(甲56)、大西康亢(甲57)、杉浦松太郎(甲60)、澤田吉弘(甲63)及び坂本征生(甲64)の各検調書
一 (事)作成の査察官報告書二通(甲70、71)
一 本田蘭子(甲65)、神谷義弘(甲66)、各事調書
一 (事)作品の臨検てん末書(甲43)、写真撮影報告書二通(甲44、45)及び捜索差押調書二通(甲48、49)
判示第一の事実について
一 (事)作成の脱税額計算書(甲1)、証明書二通(甲37、90)
判示第二の事実について
一 (事)作成の脱税額計算書(甲2)、証明書二通(甲38、91)
判示第三の事実について
一 (事)作成の脱税額計算書(甲3)、証明書二通(甲39、92)
(法令の適用)
一 判示所為 いずれも所得税法二三八条一、二項
一 刑種の選択 所定刑中懲役刑及び罰金刑の併科を選択
一 併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条
刑法四八条二項
一 労役場留置 刑法一八条
一 懲役刑執行猶予 刑法二五条一項
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 前原捷一郎)