名古屋地方裁判所 平成元年(わ)1334号 判決 1989年11月21日
本籍
名古屋市中川区尾頭橋四丁目四一〇番地
住居
同好本町一丁目八八番地
会社役員
中村薫
昭和二〇年六月二日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官畝本毅出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金四五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日として換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、名古屋市中川区尾頭橋四丁目四番二一号において、丸正突板株式会社の代表取締役としてその経営にあたるかたわら、継続して有価証券の売買を行うことにより所得を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、株式取引名義を自己のほか家族名等を使用して取引を分散するなどの方法により所得を秘匿した上、昭和六一年分の実際の総所得金額が二億九一一六万六九三五円であり、これに対する所得税額が一億九〇四四万三六〇〇円であるのに、昭和六二年三月一六日、名古屋市中川区尾頭橋一丁目七番一九号所在の中川税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一三七五万七六七一円であり、これに対する所得税額が一六六万八〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一億八八七七万五六〇〇円を免れ、もって、不正の行為により所得税を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二通
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の証明書(甲1)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲2)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料(甲3)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(甲4ないし15)
一 小林功ほか一名作成の保護預り口座設定申込書等の写し(甲16、18、19)
一 小林功ほか一名作成の有価証券明細簿等の写し(甲17)
一 山田晶彦ほか一名作成の印鑑紙等の写し三通(甲20ないし22)
一 山田晶彦ほか一名作成の顧客別有価証券元帳(信用)等の写し(甲23)
一 大蔵事務官作成の写真撮影報告書(甲25)
一 中村うめ、中村文枝(二通)、中村寛(二通)、中村末江子、小林勝次郎(二通)、加藤伸次及び後藤忠紀の大蔵事務官に対する各質問てん末書
(法令の適用)
一 罰条 所得税法二三八条
一 労役場留置 刑法一八条
一 刑の執行猶予 刑法二五条一項(但し、懲役刑にのみ適用)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 澤田経夫)