名古屋地方裁判所 平成10年(わ)1122号
主文
被告人港鋼運株式会社を罰金三〇〇〇万円に、被告人中井勝浩を懲役一年六か月に処する。
被告人中井勝浩に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人港鋼運株式会社(以下、「被告会社」という。)は、肩書本店所在地に本店を置き、一般区域貨物自動車運送事業等を目的とする資本金一六〇〇万円の株式会社であり、被告人中井勝浩(以下、「被告人中井」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人中井は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、運送雑収及び保険金収入等の一部を収益から除外し、右運送雑収等を普通預金にするなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 平成五年四月一日から同六年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九〇一九万六六五円であったにもかかわらず、平成六年五月三一日、名古屋市中川区尾頭橋一丁目七番一九号所在の所轄中川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三二七万八四七五円で、これに対する法人税額が七〇万六六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三二八五万円と右申告税額との差額三二一四万三四〇〇円を免れ、
第二 平成六年四月一日から同七年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九二九五万一七二八円であったにもかかわらず、平成七年六月二日(郵便官署消印は同年五月三一日)、前記中川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七三八万五一三六円で、これに対する法人税額が一九六万五一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三三九九万三九〇〇円と右申告税額との差額三二〇二万八八〇〇円を免れ、
第三 平成七年四月一日から同八年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六九九五万六五六九円であったにもかかわらず、平成八年六月三日(郵便官署消印は同年五月三一日)、前記中川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九三二万六七七五円で、これに対する法人税額が二六〇万三九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二五三四万二〇〇円と右申告税額との差額二二七三万六三〇〇円を免れた。
(証拠)
括弧内の番号は、証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。
一 被告人中井の
(1) 公判供述
(2) 検察官調書四通(乙2ないし5)
一 西川好江の検察官調書二通(甲14、15)
一 閉鎖登記簿謄本(甲1)
一 検察官調査書九通(甲5ないし13)
一 証明書六通(甲2ないし4、16ないし18)
(法令の適用)
罰条
第一ないし第三の事実につき
(被告会社につき)
いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項
(被告人中井)
いずれも法人税法一五九条一項
刑種の選択 (被告人中井につき)
懲役刑
併合罪の処理
(被告会社につき)
刑法四五条前段、四八条二項
(被告人中井につき)
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第一の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予
(被告人中井につき)
刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件は、被告会社の代表取締役である被告人中井が被告会社の実際所得を秘匿し被告会社の法人税を免れたという事案である。
本件が犯行の動機において酌量の余地がない上、脱税額が三年間で合計約八六九〇万円と多額に上ること、ほ脱率も約九四パーセントと高いこと、犯行の手口が裏帳簿を作るなど計画的、巧妙であることなどを考え合わせると、被告会社及びその代表者である被告人中井の刑事責任は決して軽いものではない。
しかし、被告会社は、修正申告を済ませ、本税については既に全額を支払っていること、延滞税、重加算税についても国税庁との間で支払方法につき話し合いがもたれており、その支払が期待できること、被告人中井が本件犯行を素直に認め、深く反省していること、被告会社及び被告人中井には同種前科のないことなど酌むべき事情も多数認められる。
そこで、これら一切の事情を総合勘案し、被告会社を罰金三〇〇〇万円に、被告人中井を懲役一年六か月に処するとともに、被告人中井に対し、今回に限り、その刑の執行を猶予することとした。
(求刑 被告会社につき 罰金三〇〇〇万円 被告人中井につき 懲役一年六か月)
(裁判官 堀毅彦)