大判例

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名古屋地方裁判所 平成10年(わ)517号

主文

被告人を懲役一年二か月及び罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、平成元年二月ころから平成六年九月まで名古屋市中区栄四丁目一八番四号フレンドビル二階においてパブハウス「ODCパートⅡ」を、平成六年一〇月から平成八年八月まで同区栄四丁目一一番六号東栄ビル二階においてパブハウス「ODC」を、平成七年九月から平成八年六月ころまで同区栄四丁目八番七号第一二オーシャンビル五階においてパブハウス「フィーリン」をそれぞれ営んでいたものであるが、竹村茂朗と共謀の上、自己の所得税を免れようと考え、パブハウス「ODCパートⅡ」及びパブハウス「フィーリン」の営業名義を竹村らとし、竹村にパブハウス「ODC」の店舗を賃貸したかの如く仮装して、所得は同店舗の賃貸料のみであると申告するなどの不正行為により所得を秘匿し、

第一  平成五年分の実際の総所得金額が二、四三七万〇、一九七円であったのにもかかわらず、所得税の納期限である平成六年三月一五日までに、同区三の丸三丁目三番二号所轄名古屋中税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成五年分の自己の所得税額七四四万四、〇〇〇円を免れ

第二  平成六年分の実際の総所得金額が二、七一一万九、八三六円であったのにもかかわらず、所得税の納期限である平成七年三月一五日までに、前記所轄名古屋中税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成六年分の自己の所得税額七〇一万四、〇〇〇円を免れ

第三  平成七年分の実際の総所得金額が七、八〇二万六、八〇九円であり、これに対する実際の所得税額が三、一九八万五、〇〇〇円であるのにもかかわらず、平成八年三月一四日前記所轄名古屋中税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が五三一万円で、これに対する所得税額が三四万八、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、平成七年分の自己の正規の所得税額との差額三、一六三万七、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)

判示全部の事実について

1  被告人の公判供述、検察官調書(乙5ないし14、16ないし20の一五通)及び大蔵事務官調書(乙15)

2  岸本安廣(甲54)、竹村茂朗(甲65ないし71の七通)及び浅野公平(甲84)の各検察官調書

3  大谷孝爾の大蔵事務官調書(甲51、52の二通)及び検察官調書(甲53)

4  服部和吉(甲72ないし74の三通)、古橋和幸(甲81)、大谷幹人(甲82)及び沢田淳(甲83)の各大蔵事務官調書

5  名古屋中税務署長作成の証明書(甲1ないし12{ただし12は判示第三のみ}の一二通)

6  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲13{判示第一}、14{判示第二}、15{判示第三}の三通)、査察官報告書(甲16、45ないし49の六通)、査察官調査書(甲19ないし32の一四通)及び写真撮影報告書(甲98)

7  検察官作成の捜査報告書(甲17)、証拠物解析結果報告書(甲34)、派遣手数料認定報告書(甲50)、派遣規模及び派遣形態報告書(甲55)、証拠物解析結果報告書そのⅠ(甲56)及び証拠物解析結果報告書そのⅡ(甲57)

8  検察事務官作成の証拠物分析結果報告書(甲18)及び捜査報告書(甲33)

(法令の適用)

罰条 各所得税法二三八条、判示第一、第二につき、平成七年法律第九一号による改正前の刑法六〇条、判示第三につき、同改正後の刑法(以下、単に「刑法」という。)六〇条

刑種の選択 各懲役と罰金を併科

併合罪加重 刑法四五条前段

懲役刑につき、刑法四七条本文、一〇条(犯情の重い第三の罪の刑に)

罰金刑につき、刑法四八条二項

労役場留置 刑法一八条(一日金五万円に換算)

刑の執行猶予 刑法二五条一項(懲役刑につき)

(量刑の理由)

本件は、被告人が平成元年二月ころから平成六年九月にかけてパブハウス「ODCパートⅡ」を、平成六年一〇月から平成八年八月にかけて同「ODC」を、平成七年九月から平成八年六月にかけて同「フィーリン」を営んでいたが、共犯者竹村と共謀の上、所得税を免れようと、右「ODCパートⅡ」及び「フィーリン」の営業名義を竹村らとし、竹村に右「ODC」の店舗を賃貸したかの如く仮装して、所得は同店舗の賃貸料のみであると申告するなどの不正行為により所得を秘匿し、平成五年分ないし平成七年分の実際の総所得金額合計が一億二、九五一万六、八四二円であったのに、平成五年分及び平成六年分は所定の納期限までに所得税確定申告書を提出せずにその納期限を徒過させ、また、平成七年分は虚偽の所得税確定申告書を提出し、平成五年分ないし平成七年分の所得税合計四、六三九万五、〇〇〇円を免れたという所得税法違反の事案である。

右犯行動機は、所得税を免れようとした利欲的、自己中心的なものであって酌むべき事情はない。営業名義を竹村らとしたり、竹村に店舗を賃貸したかの如く仮装したりする不正行為により所得を秘匿した上、三年分にわたる所得税法違反を犯したものであって、その犯行態様は悪質である。その結果のほ脱額も多額であり、ほ脱率も一〇〇ないし九八パーセントというものであり、申告納税制度の根幹を損ねるもので、犯情は悪く、被告人の刑事責任を軽視することができない。

しかしながら、被告人は右三年分の本税、延滞税、重加算税をすべて納めていること、これに関連する他の負担すべき税についても納める意思と能力があること、被告人が捜査段階から本件を認め、反省の態度を示しており、今後このような犯罪を犯さない旨述べていること、被告人の妻も今後の被告人の更生に助力する旨述べていること、被告人は昭和五〇年九月から昭和五四年六月にかけて業務上過失傷害罪や恐喝未遂罪により処罰されたが、本件と同種の前科はないことなど被告人のために酌むべき情状も認められる。以上の諸事情を勘案すると、今回は懲役刑の執行を猶予する主文掲記の懲役及び罰金が相当であると判断する。(求刑・懲役一年六か月及び罰金一、五〇〇万円)

(検察官酒井治幸、私選弁護人猪子恭秀 各出席)

(裁判官 山本哲一)

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