名古屋地方裁判所 平成11年(ワ)2319号 判決 2003年2月28日
反訴原告
X
反訴被告
有限会社安藤運輸
ほか一名
主文
一 反訴被告らは、反訴原告に対し、各自、金二九六万三一一五円及びこれに対する平成九年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを二分し、その一を反訴原告の、その余を反訴被告らの各負担とする。
四 この判決の第一項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 反訴原告
1 反訴被告らは、反訴原告に対し、各自、金六一八万二四一一円及びこれに対する平成九年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は反訴被告らの負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言。
二 反訴被告ら
1 反訴原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は反訴原告の負担とする。
との判決。
第二基礎的事実関係
次の各事実は、当事者間に争いがなく、本件の基礎となる事実関係である。
一 交通事故の発生
反訴原告と反訴被告Y1との間で、次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
(一) 発生日時 平成九年一〇月二〇日午前一〇時二〇分ころ
(二) 発生場所 名古屋市天白区原二丁目八〇一番地先路上
(三) 加害車両 大型貨物自動車(三河○○う○○○)
同運転者 反訴被告Y1
同保有者 反訴被告有限会社安藤運輸(以下「反訴被告会社」という。)
(四) 被害車両 普通乗用自動車(名古屋○○せ○○○)
同運転者 反訴原告
(五) 事故態様 渋滞していた反対車線から自転車が飛び出してきたので反訴原告がこれとの衝突を避けるため停車したところ、後続の加害車両が衝突したもの。
二 反訴被告らの責任原因
反訴被告Y1は前方不注視の過失によって本件事故を惹起したものであり、民法七〇九条に基づき、反訴原告が被った損害を賠償する責任がある。
反訴被告Y1は、反訴被告会社の従業員であり、反訴被告会社保有の加害車両を業務として運転中に本件事故を惹起したものであるから、反訴被告会社は、民法七一五条、自賠法三条により、反訴原告が被った損害を賠償する責任がある。
三 反訴原告の受傷及び治療
反訴原告は、本件事故により、頸、肩、腰挫傷の傷害(以下「本件傷害」という。)を受け、次のとおり入通院して治療を受けた。
(一) 平成九年一〇月二〇日~同月二一日(実日数二日)
江崎外科に通院
(二) 同年一〇月二一日~同年一一月九日(二〇日間)
江崎外科に入院
(三) 同年一一月一〇日~同年一二月七日(実日数一七日)
江崎外科に通院
(四) 同年一二月七日~平成一〇年四月一五日(一二八日)
江崎外科に入院
(五) 平成一〇年四月一六日~平成一一年二月一五日(実日数一〇九日)
江崎外科に通院
(六) 平成一〇年一月二四日~同年二月二七日(実日数六日)
はら眼科に通院
(七) 平成一〇年一月二〇日~同年一月三〇日(実日数五日)
名古屋第二赤十字病院に通院
(八) 平成九年一一月一二日~同月一四日(実日数二日)
伊藤整形外科に通院
(九) 上記のほか、上前津針灸院に通院
四 被害車両及び動産類の破損
本件事故により、反訴原告所有の被害車両及び次の動産類が破損した。
(一) 被害車両
(二) カメラ
(三) 眼鏡
(四) 携帯電話
五 自賠責保険からの支払及び物損に係る既払金
反訴原告は、自賠責保険から三八万四九一〇円の支払を受けた。
また、反訴原告は、反訴被告らから被害車両破損に伴う代車料二三万四八八五円の支払を受けた。
第三当事者の主張
一 反訴請求原因
反訴原告は、上記第二記載の事実関係を基礎に、次のとおり主張し、本件事故による損害金の残金六一八万二四一一円及びこれに対する本件事故の日である平成九年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
1 反訴原告の後遺障害
反訴原告は、平成一一年二月一五日に症状固定し、めまい、ふらつき、耳鳴りという頑固な後遺障害(以下「本件後遺障害」という。)が残った。
2 反訴原告の損害
(一) 治療費 金一一五万二二五四円
別紙「治療費明細書」記載のとおり合計一一五万二二五四円を要した。
(二) 入院雑費 金二〇万七二〇〇円
一日当たり一四〇〇円の一四八日分
(三) 休業損害金 一五六万九五一九円
ア 反訴原告は、名古屋市消防局に勤務する消防職員で、本件事故前は中村消防署椿出張所の消防第二課消防係に勤務し、運転整備員であった。職務の具体的内容は、緊急時の消防車の運転、火災現場での消防ポンプ操作等である。
イ 反訴原告は、平成九年一〇月一九日まで通常どおり勤務していたところ、本件事故翌日以降の勤務状況は次のとおりである。
<1> 同年一〇月二一、二二日
有給休暇取得(休業)
<2> 同年一〇月二三日~同年一一月一九日
職務専念義務免除(休業)
<3> 同年一一月二〇、二一日
週休(休業)
<4> 同年一一月二二日~同年一二月五日
通常の形態で勤務
<5> 同年一二月六、七日
有給休暇取得(休業)
<6> 同年一二月八日~平成一〇年三月一二日
職務専念義務免除(休業)
<7> 平成一〇年三月一三日~同年七月七日
休職
<8> 平成一〇年七月八日以降
平成一〇年七月八日に復職したが、従前の緊急車両運転業務に就くことはできず、中村消防署総務課庶務係で日勤業務に就くこととなった。また、同日付けで健康管理区分がB三と変更された。そして、運転整備員としての勤務は不可能と判断され、同年九月一日付けで運転整備員を解任された。
ウ 反訴原告は、職務専念義務免除期間と休職期間を通じて一八〇日を超えたため、平成一〇年六、七月分の給与・定額手当が二〇%減額され、その減額分の合計は九万〇〇一三円である。
エ 反訴原告は、本件事故前は月額一一万〇三二三円の超勤・休日給、特殊勤務手当を受けていた(平成八年一〇月~平成九年一〇月の平均)が、職務専念義務免除期間及び休職期間はこれを受けられず、復職後も、勤務形態が変更され、健康管理区分がB三となったためこれらの手当が著しく減少し、平成九年一一月から平成一一年二月までの一六か月間の合計で二八万五六六六円しか支給が受けられなかった。その差額は一四七万〇五〇六円である。
オ 以上により、本件事故による休業損害として、一五六万九五一九円を主張する。
(四) 傷害慰謝料 金二〇〇万〇〇〇〇円
入院五か月、通院一二か月に相当する慰謝料。
(五) 逸失利益 金四二万〇六九二円
ア 反訴原告は、前記のとおり職務専念義務免除期間が一二三日であったため、九か月の昇給延伸を受けており、今後良好な成績で勤務したときは三か月の昇給短縮が得られるが、それでも六か月の昇給延伸が残り、これは定年まで続く。
この昇給延伸による減額を、平成一一年一〇月一日以降六〇歳の定年時まで、ホフマン方式により中間利息を控除して算定すると、控えめにみても、別紙「昇給延伸による給与等差額計算書」記載のとおり四二万〇六九二円となる。
上記逸失利益は、本件後遺障害に伴うものではなく、本件傷害によって職務専念義務免除処分を受けたことによるものである。
イ 反訴原告には前記のとおりの本件後遺障害が残っており、これにより得べかりし給与等を喪失するという損失を受けており、その内容は、例えば、職種変更によって特殊勤務手当等が減額され、これが将来も継続するであろうことなどである。しかし、その内容は現時点では確定しがたいので、上記アの逸失利益の中に吸収して評価し、独立した請求はしない。
(六) 後遺障害慰謝料 金一〇〇万〇〇〇〇円
反訴原告は、本件後遺障害により勤務上や生活上の支障をきたしており、その慰謝料は一〇〇万円が相当である。
(七) 物的損害 合計金五九万一〇八五円
ア 被害車両 金二五万〇〇〇〇円
本件事故前の残存価値二五万円。
イ 代車料 金二三万四八八五円
ウ 廃車処分費用 金二万一〇〇〇円
エ カメラ代 金一万五〇〇〇円
オ 眼鏡代 金六万六〇〇〇円
カ 携帯電話 金四二〇〇円
(八) 弁護士費用 金五六万〇〇〇〇円
二 反訴請求原因に対する認否・反論及び抗弁
反訴被告らは、上記反訴請求原因中、2(七)アないしエの損害は認め、その余の主張は争い、反論・抗弁として次のとおり述べた。
1 反訴原告の本件傷害は、治療期間三か月相当と思料される程度のものであり、入院の必要性はなく、まして長期の入通院を必要とするものではない。
したがって、反訴原告主張の治療費のうち、本件事故と因果関係があるのは、江崎外科の平成九年一〇月から一二月の治療費中入院費相当部分を控除した金額(一〇月分は九万六四六〇円、一一月分は一三万八四四〇円、一二月分は一一万六五四〇円)、伊藤整形外科の治療費(検査料)七万九三七五円、スギヤマ薬局の薬品代四六七〇円、上前津針灸院の治療費五万五五〇〇円のみである。
2 また、反訴原告の主訴(めまい、ふらつき、耳鳴り等)に係る他覚的所見はなく、これらは本件事故による外傷性のものではないし、反訴原告には後遺障害は残存していない。むしろ、上記症状については、起立性低血圧症と睡眠時無呼吸症候群が原因として指摘されている。
仮に、後遺障害を考えるとしても、その症状固定時期は、平成九年一二月ないし平成一〇年一月ころである。
3 反訴原告の主張する症状は、主として、本件事故前に遭遇していた平成七年一〇月一七日の交通事故(以下「前件事故」という。)による傷害(腰部捻挫、頸部捻挫、右股関節・大腿部挫傷。以下「前件傷害」という。)に基づくものであって、本件事故は、上記事故による傷害の通院治療中に発生したものである。
したがって、本件事故による損害の算定にあたっては、上記既往症の寄与を考慮し、損害の公平な分担の見地から、二〇%以上の減額をなすのが相当である。
また、反訴原告の主訴には、その心因的要因にもその原因が強く求められるところである。
4 既払金
反訴被告らは、反訴原告に対する治療費として八一万五〇八四円を支払った。
反訴原告は、上記反論・抗弁主張中、平成七年一〇月一七日の前件事故により前件傷害を負ったこと及び反訴被告らから治療費として六九万八五四四円の限度で支払を受けたことは認め、その余は争った。
第四当裁判所の判断
一 本件傷害の内容・程度、症状・治療の経過及び後遺障害に係る事実関係
前記第二に記載した事実関係、並びに、甲第三号証の一、二、第一〇、一一号証、乙第一~三、一四号証、第二〇号証の一、二、第二一、二三~二五号証、第二七号証の一、二、第三〇号証の一~五、第三四、三六~四五、五〇号証、中部労災病院に対する鑑定嘱託の結果、反訴原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の各事実が認められる。
1 本件事故は、反訴原告の運転する普通乗用自動車(被害車両)が前記事情で急ブレーキをかけたところ、後続して時速約二〇kmで進行してきた反訴被告Y1の運転する大型貨物自動車(加害車両)が急ブレーキをかけたものの間に合わず追突したものである。
2 反訴原告は、本件事故当日の平成九年一〇月二〇日、江崎外科で診察を受け、両前腕のふるえ、悪心等を訴えたが、当日は帰宅して様子を見ることとなった。
翌日(一〇月二一日)、反訴原告は職場(中村消防署椿出張所)に出勤したが、嘔気がひどくて途中で帰宅し、江崎外科で診察を受け、悪心が強く、昨夕から頭、肩、頸に痛みがあると訴え、しばらく落ち着くまで入院することとなった。また、事故前から腰椎分離すべり症があったが、事故後腰痛が増強したと訴えた。
反訴原告は、上記入院後も、頸部痛、頭部痛、腰痛、悪心、吐気等が継続していたが、その後症状が軽快したので、同年一一月九日に退院した。
この間、湿布、注射、投薬の処方を受け、一一月四日からは頸~肩の理学療法を受けた。頸椎レントゲン検査では異常所見はなかった。
3 反訴原告は、上記退院後同年一二月六日までの間に一七日間、江崎外科に通院して治療を受けた。その間の症状は、頭部から腰部にかけての痛み、吐気等であり、上記2と同様の治療を受けた。
4 上記入通院の間の平成九年一一月一二、一四日、反訴原告は、伊藤整形外科で頸・腰部のMRI検査を受けたが、腰椎分離症の所見が見られた以外は、格別の異常所見はなかった。
5 反訴原告は、名古屋市消防局に勤務する消防職員で、本件事故前は中村消防署椿出張所の消防第二課消防係に勤務して、運転整備員をし、消防車等緊急車両の運転、火災現場での消防ポンプ操作等を担当していた。反訴原告は、平成九年一〇月一九日まで通常どおり勤務してたが、上記入院期間中勤務を休み、同年一一月九日の退院後も、同年一一月二一日までは、職務専念義務免除又は週休により勤務を休んだ。同年一一月二二日から同年一二月五日までは職場に復帰し、従前と同様の形態で勤務したが、中村消防署の上司から見て、体力的に弱々しく、活発性に欠け、職務に耐えれるか心配な状況であった。
6 反訴原告は、同年一二月五日、江崎外科を受診し、動くとむかつくと訴え、頭痛、肩~背部痛、腰痛を訴え、入院を希望した。同月六日にも同外科を受診し、疲労、悪心を訴え、「明日入院」と決定され、同月七日再度江崎外科に入院し、平成一〇年四月一五日まで入院した。この間、ほぼ一貫して頭痛、頸~肩痛、腰痛、悪心等を訴え、これに加えて、平成九年一二月ころからは眼痛や耳鳴り、さらには、めまいを訴えるようになり、いずれも退院時まで概ね継続的に訴えてきている。
この入院の間も、上記2、3と同様の治療を受けた。
7 この間、江崎外科の紹介で、平成一〇年一月二〇日から五日間、名古屋第二赤十字病院を受診し、整形外科では、「頸部挫傷:レントゲン検査上、神経学的所見上、特に明らかな異常所見認めない。悪心等の持続あり、経過観察が必要と思われる。」旨診断され、耳鼻咽喉科では、「両耳鳴症:平成九年一二月ころより両耳鳴症が出現。聴力検査上明らかな聴力低下は認めないが、平成一〇年一月二六日現在も耳鳴は続いている。」旨診断され、眼科では、「両眼調節障害:現在加療中であり、外傷に起因するものもあると考えられる。」旨診断された。
同じく平成一〇年一月、はら眼科で検査を受けたところ、「両眼調節衰弱。交通事故による機能的障害と考える。」旨診断された。
さらに、江崎外科では、めまい及び耳鳴につき、名古屋第二赤十字病院神経内科の診察を依頼したが、同年四月一〇日、異常を認めない旨の診断であった。
8 江崎外科のA医師は、前記退院前日の平成一〇年四月一四日、反訴原告の代理人のB弁護士に対し、「平成一〇年二月ころまでは入院が必要であった。その後は必ずしも必要ではないかも。」と説明した。
9 反訴原告は、平成一〇年四月一五日に江崎外科を退院した後も、平成一一年二月一五日までの間に、実日数で一〇九日間江崎外科に通院して、前記2、3と同様の治療、主に理学療法を受けた。
10 この間の平成一〇年五月一三日、反訴原告は、江崎外科の紹介で小林耳鼻咽喉科医院を受診し、「(一)良性発作性頭位めまい:左耳下頭位にて減衰傾向を持つ、反復する眼振を認めた。多分上記によるめまいと考える。(二)聴力はほぼ正常領域。」との旨の診断を受けた。
11 反訴原告は、江崎外科を退院後も、平成一〇年七月七日まで休職し、同年七月八日に復職したが、従前の緊急車両運転業務に就くことはできず、中村消防署総務課庶務係で日勤業務に就くこととなった。また、名古屋市の産業医の判断に基づき、同日付けで健康管理区分がB三(養護者、診療又は経過観察を必要とし、かつ、軽度の勤務制限を必要とするもの)と変更された。そして、運転整備員としての勤務は不可能と判断され、同年九月一日付けで運転整備員を解任された。
12 江崎外科のA医師は、平成一一年三月一日付けで、次の旨の後遺障害診断書を発行した。
「自覚症状:起床時、階段昇降時にくらっとすることがある。耳鳴、視力低下、肩・腰に痛み。
他覚症状及び検査結果:腰椎レントゲン上、第四、五腰椎すべりあり。頸椎レントゲン上異常なし。頸MRI上異常なし。聴力検査にて異常所見なし。
症状固定日:平成一一年二月一五日。
既存障害:平成七年一〇月一七日~平成九年一〇月一六日、頸・腰部挫傷。
増悪・緩解の見込み:緩解すると考える。」
13 また、A医師は、平成一一年三月一二日、上記診断書につき、次の旨補充説明している。
「傷病名は、頸・肩・腰挫傷である。
平成九年一二月中旬ころからは、頭・頸・肩の疼痛、めまい、耳鳴等の訴えが主であり、現在もめまい類似症状であり、腰椎の異常(腰椎分離すべり症)とは無関係と考える。
前記7の名古屋第二赤十字病院整形外科及び耳鼻咽喉科の診断結果から、現在のめまい類似症状は自立神経調節不全からかとも推考するが、確定診断はできない。
初期の症状は外傷に起因したかとも考えられる。
後遺障害については、六か月毎ぐらいに脳脊髄系のチェックをしながらfollow upするのがよいと考える。」
14 反訴原告は、平成一一年七月一五日、愛知医科大学メディカルクリニックのC医師の検査を受けた。その結果は次のとおりである。
「主訴:めまい、耳鳴。
純音聴力検査:年齢相当、特に異常なし。
耳小骨筋反射、自発眼振検査、注視眼振検査、頭位眼振検査、耳レントゲン、頸椎レントゲン、温度眼振検査:いずれも異常なし。
重心動揺検査:ほぼ異常なし。
示標追跡検査:異常なしかわずかに異常。
視運動性眼振検査:解発低下(両側性)。
視運動性後眼振検査:視運動刺激後に左への眼振が記録されており、正常とはいえない。
病名は原因不明のめまい。
障害のある部位は、後頭蓋窩障害か頸部障害。その判断の根拠は、視運動性眼振検査の機能低下は上記の部位での障害といわれている。
反訴原告の症状は、外傷ないし外力が原因となる可能性は否定できないが、一年半前の外傷が原因とする診断はできない。頸部外傷や後頭蓋窩疾患で視運動性眼振検査の機能低下が起こることは、医学的によく知られた所見である。
反訴原告の症状によって、日常生活に支障はないと思われる。就業については、かなり体動を強制される業種では、眼振が記録される間は支障を感ずると思うが、程度は不明。
反訴原告の症状はもう少し継続すると思われる。」
15 本訴において中部労災病院に対して鑑定を嘱託したところ、同病院において、耳鼻咽喉鏡所見、標準純音聴力検査、標準語音聴力検査、自記オジオメター、インピダンスオジオメター、聴性脳幹反応検査、平衡機能検査(指標追跡検査(平滑性眼運動、衝動性眼運動)、注視眼振検査、頭位眼振検査、頭位変換眼振検査、温度眼振検査、視運動性眼振検査等)、立ち直り検査、側頭骨CT、頭部MRI携帯用アプノモニター、起立負荷検査を行い、その結果に基づき、次の旨述べている。
「傷病名:頭頸部外傷症候群、右八kHzdip型感音性難聴、右神経性耳鳴症、起立性低血圧症、睡眠時無呼吸症候群。
反訴原告の訴える症状(頸部・腰部の疼痛、めまい、ふらつき、耳鳴)は、本件事故が誘引したものと考えられるが、器質的障害を示すものが少ない。
携帯用アプノモニターで、無呼吸指数二六・七/時で高度睡眠時無呼吸症候群であった。
めまい・ふらつきの症状に対する検査で、他覚的検査所見では、注視眼振、頭位・頭位変換眼振、温度検査では全く異常所見なし。随意的検査では、視運動性眼振検査、衝動性眼運動検査でしっかり指標を見ていない結果であった。
起立負荷検査より、高血圧症で起立性低血圧症がある。これは、本件事故後体動が少なくなり、起立性低血圧症が誘発されたと考える。これにて、内耳・脳循環不全を招き、めまい・ふらつきの症状が出たと考える。
めまい、ふらつきは、高度な睡眠時無呼吸症候群と起立性低血圧症が関与したと考える。本件事故の関与は少ないと考える。
耳鳴は、八kHzdip型感音性難聴で内耳障害によるものであり、本件事故から四五日後の平成九年一二月ころ出現しているので、加齢による障害で、事故とは関連はないと考える。
めまい、ふらつき、耳鳴は、睡眠時無呼吸症候群により夜間の低酸素状態で更に増強されていると考える。
自記オジオメターの検査結果から、心因性素因が認められる。CT、MRIとも事故と関連する所見は全くない。
平成七年一〇月の前件事故による既往障害は、頸部・肩部・腰部の痛みについて関連性がある。
本件事故当日の平成九年一〇月二〇日頸部・肩に痛み、嘔気を訴えたのに対し、江崎外科での投薬、湿布は適切と考える。同月二一日出勤したが嘔気、前頭部痛強くなり同年一一月九日まで入院したことについては、頭頸部外傷の経過観察として、一過性の意識障害を伴えば、入院一~二週間が適切と考える。平成九年一二月七日より低血圧症傾向で血圧の変動が大きい。眼痛、悪心を訴えることが多くなっている。疲労感・悪心を訴え、本人が入院を希望している。江崎外科に入院というより、神経内科・心療内科にての加療が適切であったと思う。
耳鳴・めまい感の症状では、一般的勤務であれば休業を要するものではない。反訴原告が消防職員という職種で、めまい感を訴えるので危険をともなう職種であるため、就労が不可である。」
16 その後、
(一) 藤田保健衛生大学病院のD医師は、平成一四年三月二五、二六日に終夜ポリソムノグラフィー検査(これは携帯用アプノモニターによる検査よりも信頼性が高いとされる。)を行い、平成一四年六月一日付けで、「無呼吸・低呼吸指数一一・七回/時間であり、軽症の睡眠時無呼吸症候群である。また、名古屋大学医学部附属病院での起立負荷試験の結果から、起立性低血圧は認められない。以上より、作業制限の必要はないと思われる。」と診断している。
(二) また、てらしま医院のE医師は、平成一四年六月三日に臥位、座位の血圧検査を行い、「起立性低血圧は考えにくい。」と診断している。
(三) 名古屋大学医学部附属病院のF医師は、平成一四年五月三一日に負荷平衡機能検査等を行い、その検査結果、前記中部労災病院に対する鑑定嘱託の結果、上記藤田保健衛生大学病院の検査結果等によれば、「異常所見があり、反訴原告の訴えるめまい、耳鳴、ふらつき等の症状は存在していると考えられる。起立性低血圧とは認められない。外傷後の海馬障害など中枢異常及びPTSDを疑う。睡眠時無呼吸症候群は軽度である。睡眠時無呼吸症とめまいとは結びつきにくい。聴覚障害は、反訴原告の場合、右耳だけに生じていることから、加齢だけでは説明がつかない。」旨述べている。
二 前件事故による傷害(前件傷害)について
甲第一〇、一一号証、乙第一、四~九、三四号証、反訴原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
1 反訴原告は、本件事故から約二年前の平成七年一〇月一七日に自転車で走行中に自動車と衝突する交通事故(前件事故)に遇って、腰部捻挫、頸部捻挫、右肩挫傷、頭部挫傷、右股関節・大腿部挫傷の前件傷害を負った。
2 反訴原告は、上記事故の当日から冨田整形外科に通院した後、同年一一月六日から同年一二月六日まで同整形外科に入院し、その後、本件事故直前の九年一〇月一六日まで、同整形外科に通院して、治療(主として理学療法)を受けた。
3 上記事故により、反訴原告は、有給休暇及び職務専念義務免除により勤務を五一日間休んだ後、平成七年一二月二七日に従前どおりの職務に復帰した。
4 上記事故による損害については、平成一〇年四月二七日後遺症が生じたときは別途協議するとの留保を付けて、加害者側が合計約四五六万円の損害賠償金を支払う旨の内容で示談解決した。
5 前記江崎外科では、平成九年一一月一五日ころに上記前件傷害及び冨田整形外科での入通院治療の事実を知った。
三 本件傷害・本件後遺障害の存否・内容・程度及び本件事故との因果関係について
上記一、二に判示した事実関係及び掲記した証拠関係を基に検討すると、次のとおり認定判断するのが相当である。
1 反訴原告は、本件事故後ほぼ一貫して、頭部・頸部・肩部・腰部の疼痛、悪心、吐気等を訴え、これに加えて、平成九年一二月ころからは、ほぼ一貫して、めまい、耳鳴、ふらつきを訴え、次第にこれらの訴えが主となってきており、本件事故直後から、江崎外科において継続的に治療を受けてきたものであり、かつ、平成一一年二月一五日に上記症状を残して症状固定したものとして後遺障害診断を受けたものであるが、その症状の発現・治療の内容・経過には格別不自然なところはみられないし、反訴原告の上記各訴えが故意による誇張であるものと疑うべき事情も見当たらない。
2 加えて、江崎外科での診察・診断は勿論、中部労災病院に対する鑑定嘱託の結果においても、また、名古屋第二赤十字病院、はら眼科、愛知医科大学メディカルクリニックのC医師、藤田保健衛生大学病院のD医師、てらしま医院のE医師、名古屋大学医学部附属病院のF医師等の診察・検査・診断・意見においても、めまい、耳鳴、ふらつきを発症させている原因・機序については様々の見解が示されているものの、上記各症状が客観的に存在し、客観的・医学的根拠を有する症状であることは、優に肯認されているものというべきであり、レントゲン、CT、MRIの検査結果で異常所見が認められないことでは、上記認定判断は左右されない。
3 そして、本件事故以後に、反訴原告に上記各症状を発症させるような事故・衝撃・疾患等が生じたことを窺わせる証拠は何もないし、本件事故前に上記のようなめまい、耳鳴、ふらつき等の症状が発現していたことを示す証拠もない。
4 しかして、確かに、反訴原告は本件事故から約二年前の平成七年一〇月一七日に前件事故に遇って、腰部捻挫、頸部捻挫、右肩挫傷、頭部挫傷等の前件傷害を負い、本件事故直前の平成九年一〇月一六日まで冨田整形外科に通院して、主として理学療法の治療を受け、反訴原告本人は「本件事故直前にも右肩の痛みがあった。」旨供述しているところであるから、その傷害・症状・治療の内容・時期に照らすと、本件事故後反訴原告の訴えている症状のうち頭部・頸部・肩部・腰部の疼痛については、上記既往症(前件傷害)が寄与していることは否定しがたいところであるけれども、前記判示の前件傷害の内容・程度、治療経過・時間経過等の諸事情並びに甲第一〇号証及び反訴原告本人尋問の結果に照らすと、本件事故当時、前件傷害の症状は相当程度軽快していたものと認められるのであり、これに前記判示の本件事故の状況及び本件事故後の経緯を併せ考えると、本件事故後の頭部・頸部・肩部・腰部の疼痛を招来した主たる原因は前件傷害ではなく、本件事故による本件傷害であると認められるし、まして、前件傷害によってめまい、耳鳴、ふらつき等の症状が発現していたとか、その蓋然性があったとかの事情を示す証拠は何もないのであるから、前件傷害はこれらの症状の発現には寄与していないものと認めるのが相当であり、結局、前件傷害の寄与があることは、本件事故と反訴原告の前記各症状との因果関係を認める妨げとはならないものというべきである。
5 また、中部労災病院に対する鑑定嘱託の結果においては、「反訴原告の症状は本件事故が誘引したものと考えられる。」として、反訴原告の症状の大方については、本件事故との関連性自体は肯定していると解されるものの、「めまい、ふらつきは高度な睡眠時無呼吸症候群と起立性低血圧が関与しており、本件事故の関与は少ない。耳鳴は感音性難聴で、本件事故から四五日後に出現しており、加齢による障害で、本件事故とは関連性がない。」とされ、さらに、反訴原告の心因性素因も指摘されている。
しかして、反訴原告に睡眠時無呼吸症候群があることは、上記鑑定嘱託における携帯用アプノモニターによる検査結果の他、藤田保健衛生大学病院での検査結果でも肯認されているが、同病院における終夜ポリソムノグラフィー検査ではその睡眠時無呼吸症候群は軽症であるとされており、また、前記てらしま医院、名古屋大学医学部附属病院の検査結果並びにE医師、F医師、D医師の診断に照らして、反訴原告に起立性低血圧があったとは確認しがたいものといわざるを得ず、さらに、反訴原告の難聴は右耳にだけ生じていることからするとF医師の述べるとおり加齢だけで説明するのは困難と考えられる。次に、心因性素因の関与については、難聴及びその他の反訴原告の症状につき上記F医師もこれを述べているところであり(乙第四四号証)、A医師の前記見解もこれを否定しない趣旨と理解される。
以上の諸点を併せ考え、さらに、本件事故前に反訴原告の訴えるようなめまい、ふらつき、耳鳴等の症状が発現していたことを示す証拠は何もないことを考慮すると、上記各症状が本件事故直後には訴えられていないことや本件事故のような態様の事故・衝撃で上記の様な症状が発現する頻度が高いとはいえないことを考慮しても、中部労災病院に対する鑑定嘱託の結果が指摘する反訴原告の既往症・素因が上記症状の発現に寄与、加功した程度は、本件事故より高いとまではなしがたいというべきである。
6 以上判示したところからすれば、反訴原告には、本件事故後、前記判示のとおりの各症状が発現、継続し、後遺障害として残存しており、これらの症状は、本件事故と相当因果関係を有するものと認めるのが相当であり、これらの症状を発症させている機序は確定しがたいけれども、このことでは、上記認定判断は左右されないものというべきである。
四 反訴原告の損害
1 治療費 金一五六万五二九四円
(一) 反訴原告は、前記第二3及び上記一記載のとおり、江崎外科に入通院して治療を受け、その間に、はら眼科、名古屋第二赤十字病院、伊藤整形外科に通院して、診察、検査を受け、さらに上前津針灸院に通院して施術を受けたのであるところ、甲第三~五号証の二、第六号証及び弁論の全趣旨によれば、反訴原告は、上記各入通院治療等のために、合計一五六万五二九四円(別紙「治療費明細書」記載の一一五万二二五四円と、江崎外科における平成九年一二月分の入院治療費四一万三〇四〇円との合計額)を要したことが認める。
(二) しかして、上記入通院の間の反訴原告の症状が本件事故と相当因果関係を有するものであることは前記判示のとおりであり、かつ、江崎外科において本件傷害・上記症状に対する治療・改善以外の意図から、あるいはその必要性・相当性を超えて反訴原告を入通院させたものと窺うべき事情は見当たらないから、上記江崎外科での入通院治療は、江崎外科において本件傷害・症状に対する治療として必要かつ相当であると判断してなされたものと認めるのが相当である。
もっとも、江崎外科への入院が反訴原告の希望を発端とするものであることは前記判示のとおりであるけれども、そうであるからといって、江崎外科において入院の必要性・相当性があると判断して入院させたことを否定すべきことにはならないし、また、A医師が平成一〇年四月一四日に「平成一〇年二月ころまでは入院が必要であった。その後は必ずしも必要ではないかも。」と説明したことは前記判示のとおりであるけれども、事後的にそのような評価・説明をしたからといって、入院継続中に退院を勧める等したことを認めるに足りる証拠がない以上、入院継続当時においては入院治療の必要性があると判断していたことを否定すべきことにはならない。
(三) したがって、上記治療費はすべて本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
2 入院雑費 金一九万二四〇〇円
一日当たり一三〇〇円の一四八日分として、一九万二四〇〇円が相当である。
3 休業損害 金一五六万〇五一九円
(一) 乙第一~三、一〇、一四号証、第二〇号証の一、二、第二二号証の一~七、第二一号証、第三一号証の一~四、第三二~三四号証、反訴原告本人尋問の結果、名古屋市消防局に対する調査嘱託の結果及び弁論の全趣旨によれば、<1>反訴原告は名古屋市消防局に勤務する消防職員で、本件事故前は中村消防署椿出張所の消防第二課消防係に勤務し、運転整備員であったところ、本件事故前の職務内容、勤務状況、本件事故後の勤務状況等は反訴請求原因2(三)ア、イ記載のとおりであること、<2>反訴原告は、平成一〇年七月八日付けで健康管理区分がB三と変更され、運転整備員としての勤務は不可能と判断されて同年九月一日付けで運転整備員を解任されたこと、<3>結局、反訴原告は、職務専念義務免除期間と休職期間を通じて一八〇日を超えたため、平成一〇年六、七月分の給与・定額手当が二〇%減額され、反訴原告主張の合計九万〇〇一三円の減額となったこと、<4>反訴原告は、本件事故前は月額一一万〇三二三円の超勤・休日給、特殊勤務手当を受けていた(平成八年一〇月~平成九年一〇月の平均)が、職務専念義務免除期間及び休職期間はこれを受けられず、復職後も、勤務形態が変更され、健康管理区分がB三となったためこれらの手当が著しく減少し、平成九年一一月から平成一一年二月までの一六か月間で反訴原告主張の合計一四七万〇五〇六円の減額となったことが認められる。
(二) したがって、反訴原告は、本件事故により上記の範囲で職務に就くことができなかったため、合計一五六万〇五一九円のうべかりし収入を喪失し、同額の損害を受けたものと認められる。
4 傷害慰謝料(通院慰謝料) 金二〇〇万〇〇〇〇円
前記判示の本件傷害・症状の内容、治療内容、入通院期間、その他諸般の事情を考慮すると、本件事故により本件傷害を負い入通院治療を受ける結果となったことによる慰謝料は、金二〇〇万円をもって相当と認められる。
5 逸失利益 金四二万〇六九二円
(一) 前記3に判示した事実関係、掲記した各証拠及び弁論の全趣旨によれば、反訴原告は、前記のとおり職務専念義務免除を受けたため、九か月の昇給延伸を受けており、今後良好な成績で勤務したときは三か月の昇給短縮を得る可能性もあるが、それでも六か月の昇給延伸が残り、これは定年まで続くものと推認される。したがって、この昇給延伸による減額は、控え目にみても、平成一一年一〇月一日以降六〇歳の定年時までの間、別紙「昇給延伸による給与等差額計算書」記載のとおりとなり、反訴原告主張のとおり中間利息を控除して算定すると、四二万〇六九二円となる。
6 後遺障害慰謝料 金五〇万〇〇〇〇円
反訴原告には、前記一に判示した症状が後遺障害(本件後遺障害)として残存していることが認められるところ、前記一の事実関係、乙第二三号証、中部労災病院に対する鑑定嘱託の結果、反訴原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、消防職員という職種であれば、めまい感により危険を伴い就労が困難であるが、一般的勤務であれば格別稼働を妨げるほどのものではないことが認められ、また、その後遺障害は今後相当期間経過後には緩解の可能性もあることが認められ、これらのことに、その他諸般の事情を考慮すると、本件事故による後遺障害慰謝料は五〇万円が相当である。
7 物的損害 合計金五九万一〇八五円
(一) 被害車両 金二五万〇〇〇〇円
当事者間に争いがない。
(二) 代車料 金二三万四八八五円
当事者間に争いがない。
(三) 廃車処分費用 金二万一〇〇〇円
当事者間に争いがない。
(四) カメラ代 金一万五〇〇〇円
当事者間に争いがない。
(五) 眼鏡代 金六万六〇〇〇円
乙第一九号証及び弁論の全趣旨により認められる。
(六) 携帯電話 金四二〇〇円
乙第一七号証及び弁論の全趣旨により認められる。
8 小計 金六八二万九九九〇円
以上1ないし7の合計は六八二万九九九〇円となる。
五 既往症等の寄与による減額の抗弁について
1 前記三に判示したとおり、反訴原告に前記のような症状が発現・継続・残存していることについては、反訴原告の既往症・素因(前件傷害・睡眠時無呼吸症候群・心因性素因等)が寄与、加功しているものと認められ、かつ、前記一ないし三に判示した諸事情に照らすと、その寄与・加功の程度は本件事故より高いとまではなしがたいけれども、本件事故の寄与・加功の程度にかなり近い程度に達しているものと認めるのが相当である。
2 そこで、本件事故による反訴原告の損害につき反訴被告らが賠償すべき額を定めるについては、損害の公平な分担の趣旨により、民法七二二条の規定を類推適用して、上記既往症・素因が寄与、加功している事情を斟酌するのが相当であると解され、この見地から、前記判示の諸事情を考慮すると、前記損害合計につき、その四割を減額して反訴被告らが賠償すべき額と定めるのが相当である。
3 そうすると、反訴被告らが賠償すべき額は、次のとおり、四〇九万七九九四円となる。
682万9990円×0.6=409万7994円
六 損害の填補 合計金一四三万四八七九円
1 前記第二5記載のとおり、反訴原告は、自賠責保険から三八万四九一〇円の支払を受け、また、反訴被告らから被害車両破損に伴う代車料二三万四八八五円の支払を受けた。
2 次に、甲第三~五号証の各二及び弁論の全趣旨によれば、反訴被告らは治療費として八一万五〇八四円を支払ったことが認められる。
七 弁護士費用 金三〇万〇〇〇〇円
本件の事案の内容、審理の経過、上記判示の賠償義務額等に照らすと、反訴原告が本件事故と相当因果関係のある損害として反訴被告らに賠償を求め得る弁護士費用は、金三〇万円と認めるのが相当である。
第五結論
以上の次第で、反訴原告の反訴請求は、反訴被告らに対し、各自本件事故による損害賠償残金二九六万三一一五円及びこれに対する平成九年一〇月二〇日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容すべきであるが、その余は理由がないから棄却すべきである。
よって、訴訟費用の負担につき民訴法六一条、六四条、六五条を、仮執行の宣言につき同法二五九条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 渡辺修明)
治療費明細書
<省略>
昇給延伸による給与等差額計算書
<省略>