名古屋地方裁判所 平成13年(ワ)4338号 判決 2003年12月03日
原告
X
被告
Y1
ほか一名
主文
一 被告らは、連帯して原告に対し、一五万一七〇四円及びこれに対する平成一二年一二月八日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その八を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
四 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、連帯して原告に対し、一四八万八四八〇円及びこれに対する平成一二年一二月八日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、原告が自転車(以下「原告自転車」という。)で交差点を横断中に、被告名鉄名古屋タクシー株式会社(以下「被告会社」という。)の従業員である被告Y1の運転する自動車(タクシー、以下「被告車」という。)との間に生じた事故(以下「本件事故」という。)により損害を被ったとして、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。
一 前提事実(当事者間に争いがないか又は認定の後の括弧内に掲示した証拠により容易に認められる事実)
(1) 本件事故(甲二)
ア 日時 平成一二年一二月八日午後三時四五分ころ
イ 場所 名古屋市中村区名駅三丁目二六番一三号先路線上(名古屋津島線、以下「本件事故現場」という。)
ウ 原告 原告自転車に乗車して本件交差点を横断中
エ 被告車 事業用普通乗用自動車(名古屋×××あ××××)
オ 同運転者 被告Y1
カ 事故態様 本件事故現場の交差点において、原告自転車の前方が被告車の右側面に衝突し、原告は、原告自転車とともに転倒した(但し、具体的な事故状況については、当事者間に争いがある。)。
(2) 原告は、本件事故により受傷し、田中整形外科に平成一二年一二月九日から平成一三年八月三一日までの間に二〇日間通院した(甲七)。
二 争点
(1) 事故態様(過失相殺)
(2) 原告の損害
三 争点に対する原告の主張
(1) 争点(1)について
ア(ア) 原告は、原告自転車に乗って本件交差点に至ったところ、本件交差点の対面信号が赤であったことから停止していた。原告自転車の右側には黒色の乗用車が停止していた。原告は対面信号が青に変わったことから発進し、原告の右側に停止していた黒色の乗用車も原告とともに発進してそのまま進行して行った。
(イ) 原告が、本件交差点の中央分離帯付近を通過する頃、進行方向左側から、被告車が、交差点内は駐停止禁止場所であるにもかかわらず、赤信号を無視して時速一〇〇キロメートル程度の猛スピードで本件交差点の中央分離帯寄りの第三車線を走行してきた。原告は、全力で原告自転車のブレーキを掛けたが間に合わず、被告車が走行してきた本件交差点の停止線(以下「本件停止線」という。)から約一三メートルの位置で、原告自転車が被告車の後輪付近に衝突した。
(ウ) 原告は、左側に倒れ、原告自転車の下敷きになって起きあがれなかったが、被告Y1は原告を助けようとしなかったことから、後方の停止線で止まっていた自動車の運転者が原告と原告自転車を歩道の柵の中まで運んでくれた。
(エ) 原告は、本件事故で左手掌から血を流し、駆けつけた警察官から病院に行って治療をするように指示されたが、病院が見つからなかったことから、訪問予定のビルの洗面所で手を洗って事故現場に戻った。
イ 被告Y1は、乙一号証の陳述書では、本件事故後被告車を移動していないと陳述しながら、乙七号証の陳述書では、一転して本件事故後被告車を移動したと矛盾する陳述をする。被告Y1は、本件事故が本件交差点中央付近の事故であったことから、パトロールカーが来る前に被告車を移動して、警察官に対し移動後の位置を説明したものである。
(2) 争点(2)について
ア 治療費等 一四万五六八〇円
(ア) 原告は、本件事故により傷害を負ったことから、平成一二年一二月九日から平成一三年八月三一日までの間、田中整形外科に通院して治療を受け、治療費及び診断書料として合計一四万五六八〇円を要した。
(イ) 被告会社の社員のAは、原告に対し、「被告Y1には女房子供があり、免停をくうと生活できない。診断書もいらない、中村警察に行く必要もない、治療費も一切面倒見る。」と約束したが、被告会社は治療費等を一切支払おうとしない。
イ 傷害慰謝料 一三〇万円
原告の受傷内容及び通院期間等によれば、傷害慰謝料は上記金額とするのが相当である。
ウ 物損及び実費 四万二八〇〇円
原告は、本件事故により、交通事故証明書、被告会社の登記簿謄本及び抄本、被告Y1の住民票、郵券や電話料などの通信費、本件事故当時携帯していた時計の損傷等上記金額の損害を被った。
四 争点に対する被告らの主張
(1) 争点(1)について
ア 被告Y1は、被告車を運転して本件交差点に差し掛かり、対面信号が青であったことから前走する車両に続いて本件停止線を越えて本件交差点に進入した。しかし、被告車の進行方向前方は車両が渋滞していたことから、被告車は、本件停止線を越えた位置で停止していたところ、対面信号が赤に変わってしまい、被告車はやむを得ず同地点で停止して、対面信号が変わるのを待っていたとき、交差する道路の右側から本件交差点を横断してきた原告の乗った原告自転車が突然被告車の右前部付近に衝突し、原告自転車と原告は転倒した。
イ 被告車の停止位置は、本件停止線を越えているが、交差する道路を走行する車両の走行経路にはかかっておらず、交差点の形状からして、他の車両の走行を妨げる状態での停止ではない。
ウ 本件交差点には横断歩道や自転車通行帯はなく、もともと自転車の走行は想定されていない交差点である。本件事故当時、被告車は、停止中であり、本件事故は、原告の自損事故であり、被告Y1には何らの過失もない。
(2) 争点(2)について
上記の通り、本件事故について被告Y1には過失は不存在であることから、損害賠償は発生しないが、念のために原告主張の損害について付言する。
ア 治療費等について
(ア) 原告の田中整形外科における診断書には、「両肩の疼痛、腰部の圧痛、右傍脊椎部の疼痛あり。レントゲン撮影では、特に外傷性所見なく、内服薬外用薬にて経過をみる。」と記載されており、原告の症状は、愁訴に基づく主観的なものであり、原告主張の症状があったことの証明はない。本件事故は、原告の主張によったとしても、原告は、被告車と接触した感触がないくらい軽く接触しただけであり、本件事故による症状は、せいぜい打撲や擦過傷にとどまるに過ぎない。
(イ) Aが、原告に対し、原告の治療費等を一切面倒見ると約束した事実はない。
イ 傷害慰謝料について
原告の症状が立証されておらず、慰謝料は発生しない。
ウ 物損及び実費について
原告の請求する損害のうち、時計の損傷は、本件事故との因果関係が立証されておらず、仮に損傷が生じたとしても、昭和三〇年代の年代物であり、減価消却を勘案すれば、損害賠償としての時価額は認められない。原告の請求するその余の費用は、本件事故の損害と認められるものではない。
第三争点に対する判断
一 事故態様(過失相殺)について(争点(1))
(1) 甲一二、一三、二九号証の一及び二、乙四、五、八号証、原告及び被告Y1の各供述によれば、以下の事実が認められる。
ア 本件事故現場の交差点は、東西に通じ、車道の幅が約二三メートルで、幅約一メートルの中央分離帯によって仕切られた片側三車線の道路(以下「東西道路」という。)と、南北に通じる道路(以下「南北道路」という。)が交差する交差点である。東西道路の南側には幅約四メートルの歩道が設置されている。東西道路及び南北道路の交差する本件交差点は見通しを妨げるものはなく見通しはよい。
イ 原告は、本件事故前、自転車に乗って南北道路の車道を北方(那古野町方面)から南方(名駅南方面)に向けて走行し本件交差点に至ったが、本件交差点の対面信号が赤であったことから、南北道路の左寄りに一時停止した。原告自転車の右隣には黒色の乗用車が停止していた。数十秒後、原告の対面信号が青に変わったことから、原告は、ゆっくりとした速度で、南側に向けて、対面信号を見ながら、本件交差点の横断を始めた。原告自転車の右隣に止まっていた黒色の自動車も原告自転車と同時に発進し、原告自転車より先に本件交差点を通過して行った。
ウ 被告Y1は、被告車を運転して、東西道路の西行き車線を、東方(泥江町方面)から西方(名古屋駅方面)に向けて走行し、本件交差点手前の停止線から約一三メートル進んだ地点付近で停止したが、同地点で原告自転車の前方が被告車の右側面に衝突し、原告自転車は進行方向左側に倒れ、原告は原告自転車とともに転倒した。原告は、転倒の際に左手を地面についたことから、左掌にけがをして出血するなどした。
エ 本件事故後、東西道路の西行き車線の本件交差点手前の停止線付近に停止中の車両の運転者が原告のもとに駆け寄り、原告を本件交差点南東角側の歩道上に運ぶとともに、原告自転車も移動した。本件事故後、被告Y1は、原告を介護することなく、携帯電話で警察に本件事故を通報するなどしていた。その後、交番の警察官が本件事故現場に来た。
(2) ア 本件事故時の状況について、原告は、原告自転車が中央分離帯付近を通過する頃、原告の左方の東西道路の西行き車線の第三車線から突然、黒い岩のような感じがする被告車が、時速一〇〇キロメートルの速度で現れたことから、原告は、全身で原告自転車のブレーキをかけたが、本件停止線から約一三メートルの地点で原告自転車の前方が被告車の後部のバンパーにぶつかった旨の主張をし、これに対し、被告らは、被告車は、南北道路の西行き車線の第一車線を走行し、本件交差点に至り、青信号で本件交差点に進入したが、被告車の前方は渋滞していたことから、本件停止線をオーバーした地点(被告Y1は、乙四号証の実況見分調書添付の交通事故現場見取図では約一一メートルの地点であると指示する。)で停止していたところ、対面信号が赤に変わったことから、被告車はそのまま同地点に停止していたとき、原告自転車の前方が被告車の右前部付近に衝突した旨の主張をするとともに、原告及び被告Y1は、それぞれの主張に沿う供述をする。
イ しかし、原告は、本件事故直前に被告車の停止する急ブレーキの音を聞いていないこと(原告本人)、本件停止線から衝突現場までの間にスリップ痕は認められないこと(乙四)、経験則上、普通乗用自動車の停止距離(空走距離と制動距離を合わせた距離)は、時速一〇〇キロメートルで走行中の場合は一〇〇メートル以上、時速六〇キロメートルの場合は四〇メートル以上とされることからすれば、被告車が一〇〇キロメートルないし六〇キロメートルという高速度で走行してきて、本件停止線から約一三メートル付近で急停止したと解することは困難であること、対面信号が青に変わってから、原告の右隣に停止していた乗用車も青信号で発進し、原告自転車より先に本件交差点を通過して行ったこと(原告本人)、原告が一時停止していた地点から本件交差点の中央分離帯を通過するまでの距離は約一五メートル以上であると認められるところ(乙四)、原告は、本件自転車をゆっくりした速度で運転していた(原告本人)ことからすれば、原告の対面信号が青に変わってから原告自転車が本件交差点の中央分離帯に到達するまで一定の時間が経過していたと考えられること、本件事故当時には、東西道路の本件停止線には第一車線から第三車線まで車両が停止していたこと(原告本人)が認められ、以上の事実を総合して考慮すれば、被告車が、本件交差点に進入し、急停止したと解することは困難である。
ウ 被告車の走行経路について、原告は、中央分離帯寄りの第三車線の延長線上である旨の主張及び供述をするが(原告本人)、原告の署名がされた事故発生状況書(甲一三)には、被告車は、第二車線を走行してきたとの記載があり、原告は、原告作成の調停申立書添付の事故状況説明図(乙八)では、被告車は、歩道寄りの第一車線を走行してきたと記載し、さらに、「事故発生状況書の訂正」と題する書面添付の事故状況説明図(甲二九号の二)及び原告本人尋問においては、被告車は、中央分離帯寄りの第三車線を走行してきたと記載及び供述するなど、原告の主張は変遷している。原告は、乙八号証の事故状況説明図は、損害調査会社から送ってきた図面をそのまま写したのであり、甲二九号証の二の事故状況説明図の記載が正確である旨の供述をするが(甲二九の一、原告本人)、損害調査会社の調査員が、原告から事情を聞いて作成した甲一三号証の事故発生状況書には、被告車は、第二車線を走行した旨記載してあり、第一車線を走行してきたとする乙八号証の記載と矛盾する。これによれば、本件事故当時の被告車の走行車線は、被告Y1の供述と乙八号証の記載が一致する第一車線であると考えるのが相当である。なお、原告は、被告Y1は、乙一号証の陳述書では、本件事故後被告車を移動していないと陳述しながら、乙七号証の陳述書では、一転して本件事故後被告車を移動したと矛盾する陳述をするとするが、前記各陳述書の内容は、本件事故時には被告車は停止していたが(乙一)、本件事故後には交通の妨げにならないように被告車を移動した(乙七)とする趣旨であり(被告Y1本人)、被告Y1の前記各陳述書の記載内容は、被告Y1の走行経路の判断に影響を与えるものではない。
エ 以上によれば、本件事故は、本件交差点が青であったことから、前走車に続いて本件交差点に進入した被告車が、被告車の前方が渋滞中であったことから、本件停止線から約一三メートル進行した本件交差点内で停止中に、対面信号が黄色から赤に変わり、同地点に停止していたとき、交差する南北道路の北方から南方に本件交差点を横断しようとした原告が被告車を発見し、急ブレーキを掛けたが間に合わず、原告自転車の前方が被告車の右側面に衝突したと認めるのが相当である。
(3) ア 被告Y1は、被告車の前方の交差点は、車両が渋滞し(被告Y1は、速度は時速一〇キロメートルから一五キロメートルであったと供述する。)、低速度でしか進行できない状態であるにもかかわらず、被告車の前を走行する車両に続いて本件交差点に進入したことから、結局、本件交差点内に停止せざるを得なくなった(乙七、被告Y1本人)。被告らは、被告車の停止した位置は、交差する道路を走行する車両の走行経路にはかかっておらず、交差点の形状からして、他の車両の走行を妨げる状態での停止ではない旨の主張をするが、被告車の停止位置は、本件停止線を約一三メートル(被告らの主張によっても約一一メートル)も越えた地点であり、本件交差点の形状を考慮するとしても、被告車の停止した位置は、自転車等の車両の走行する経路にかかると言わざるを得ない。これによれば、本件事故について被告Y1には過失があると認められる。
イ 一方、原告の進行方向から、本件交差点の左方の見通しを妨げるものはなく(乙四、五)、原告は、進行方向前方に注意を払っていれば、進行方向前方に被告車が停止していることを容易に認識することができたはずであり、そして、原告自転車の速度からすれば、原告がこれを認識して原告自転車をわずかに転把する措置を講ずれば被告車との衝突を回避することは容易であったと考えられ、これによれば、本件事故の発生について原告には過失があると認められる。
ウ 以上を前提に被告Y1と原告の過失を総合勘案すると、その過失の程度は、原告の方が大きいと解され、原告側が自転車であること、さらに本件事故当時の原告の年齢を考慮するとしても、本件事故における過失割合は、原告七割、被告Y1三割と解するのが相当である。これによれば、被告Y1は、民法七〇九条に基づき、被告Y1は、本件事故当時、被告会社の業務として被告車を運転していたことから、被告会社は、民法七一五条に基づき原告に生じた損害を賠償する責任がある。なお、被告らは、本件交差点には横断歩道や自転車通行帯はなく、もともと自転車の走行は想定されていない交差点である旨の主張をするが、自転車を含む車両は、歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならないと定められているところ(道交法一七条一項本文)、本件全証拠によっても、本件交差点が自転車の通行が禁止されていることを認めるに足りる証拠はなく、原告が、原告自転車に乗って本件交差点を横断したことを過失と評価することはできない。
二 原告の損害について(争点(2))
(1) 原告の損害について
ア 治療費等 一四万五六八〇円
(ア) 原告は、本件事故により原告自転車とともに転倒し、両肩捻挫、腰部挫傷の傷害を負ったことから、田中整形外科に平成一二年一二月九日から平成一三年八月三一日までの間に二〇日間通院して、内服薬、外用薬等による治療を受け、治療費及び診断書料として合計一四万五六八〇円を要した(甲五ないし七)。
(イ) 被告らは、原告の症状は愁訴に基づく主観的なもので、原告に症状があった証明はない旨の主張をするが、原告の症状は、レントゲン検査による異常は認められなかったが(甲七)、原告は、田中整形外科通院中、両肩の疼痛、腰部の圧痛及び右傍脊椎部の疼痛を訴え、これは、原告が原告自転車とともに転倒し、身体を地面に打ち付けたこと(原告本人)、これに通院回数及び原告の年齢(本件事故当時六九歳であった。甲二)を併せて考慮すれば、原告の田中整形外科への上記通院治療が本件事故と相当因果関係を有しないとは言えない。
(ウ) 原告は、Aが、原告に対し、「被告Y1には女房子供があり、免停をくうと生活できない。診断書もいらない、中村警察に行く必要もない、治療費も一切面倒見る。」と述べたとして、原告と被告会社間で、原告の治療費全額を被告会社が支払う旨の合意が成立したかのような主張をするが、原告の供述以外に、合意書面等の的確な証拠はなく、これによれば、原告と被告会社との間で、原告の主張するような合意が成立したと認めることはできないと言わざるを得ない。
イ 傷害慰謝料 三六万円
原告の前記受傷内容、通院期間及び実通院日数並びに後記(ウ(ア))の腕時計の損傷に伴う事情等によれば、傷害慰謝料は上記金額とするのが相当である。
ウ 物損及び実費 〇円
(ア) 原告は、本件事故により転倒した際、腕時計を損傷したとしてその損害の賠償を請求するが、同腕時計は、原告が婚姻直後の昭和三〇年代に購入したものであるところ(原告本人)、同時計の現在の交換価値を立証する証拠はなく、これによれば、原告の同腕時計の損傷を物的損害として、具体的に損害額を認定することはできないと言わざるを得ない。しかし、本件事故当時、同時計は作動していたこと、原告は、同時計に愛着を持っていたこと(原告本人)を考慮すれば、同時計の損傷という事情は、原告に伴う精神的苦痛の一事情として考慮するのが相当である。
(イ) さらに、原告は、交通事故証明書、被告会社の登記簿謄本及び抄本、被告Y1の住民票、郵券や電話料などの通信費の実費を損害として請求するが、上記各費用の支出について、具体的にこれを立証するに足りる証拠はなく、これによれば、上記各費用を本件事故に基づく損害と認めることはできないと言わざるを得ない。
(2) 過失相殺後の原告の損害 一五万一七〇四円
原告の損害は五〇万五六八〇円となるところ(一四五、六八〇+三六〇、〇〇〇)、これに七割の過失相殺をすると、原告の損害残額は上記金額となる。
三 結論
以上によれば、原告の請求は、一五万一七〇四円の限度で理由があることから、その限度でこれを認容し、その余は理由がないことからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判官 城内和昭)