名古屋地方裁判所 平成13年(ワ)5236号 判決 2005年8月30日
原告
X
被告
Y
主文
一 被告は、原告に対し、九八七万九五八〇円及びこれに対する平成七年四月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
(1) 被告は、原告に対し、一億四九五四万九七三九円及びこれに対する平成七年四月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
(1) 交通事故の発生
次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
ア 日時 平成七年四月六日午後三時二五分ころ
イ 場所 群馬県太田市岩瀬川町五二九―一市町村道上
ウ 加害車両 被告運転の普通乗用自動車(<番号省略>)(以下「被告車」という。)
エ 被害車両 原告運転の原動機付自転車(<番号省略>)(以下「原告車」という。)
オ 態様 優先道路を走行中の原告車に、脇道から飛び出してきた被告車が左方から衝突し、原告は、路上に投げ出された。
(2) 責任原因
被告は、本件事故当時、加害車両を所有し、その使用に供していたもので、被告車の運行供用者であるから、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条本文に基づき、本件事故により原告に生じた人的損害を賠償する責任がある。
(3) 原告の受傷
原告は、本件事故により、頚椎捻挫、両下肢挫創、左母趾剥離骨折等の傷害(以下「本件傷害」という。)を負った。
(4) 入通院の状況及び症状固定日
原告は、本件傷害の診察及び治療を受けるために、次のとおり、平成七年四月六日から平成一一年三月一五日までの一四四〇日の間に、一四日間入院し、延べ七〇九日通院した。そして、原告の本件傷害は、平成一一年三月一五日に症状固定(以下「本件症状固定」という。)となった。
ア 総合太田病院
平成七年四月六日から平成七年九月二九日まで通院
実通院日数 三九日
イ 聖霊病院
平成七年四月二五日から平成七年五月八日まで入院
入院日数 一四日
ウ はちや整形外科病院
平成七年七月三日から平成八年一月九日まで通院
実通院日数 三二日
エ セントラルたなか鍼灸院
平成七年七月二四日から平成九年一〇月三一日まで通院
実通院日数 二二七日
オ 大渕病院
平成七年一〇月二日から平成七年一〇月三一日まで通院
実通院日数 一三日
カ 本島総合病院
平成七年一一月一一日から平成八年三月一六日まで通院
実通院日数 四四日
キ 加藤外科病院
平成八年三月三〇日から平成九年一二月四日まで通院
実通院日数 二六五日
ク 名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院
平成九年九月一〇日から平成一一年三月一五日まで通院
実通院日数 八九日
(5) 原告の後遺障害
ア 原告には、本件症状固定当時、本件事故による右上肢の大幅な筋力低下、右手握力の大幅な低下、右上肢の知覚障害、右上肢の可動域制限、脊柱頚椎部の可動域制限、頚部の頑固な神経症状などの症状が残存し、外傷性右胸郭出口口症候群、反射性交感神経性ジストロフィー(以下「RSD」という。)ないし複合性局所疼痛症候群(以下「CRPS」という。)、陳旧性頚部捻挫の障害が残った。
イ 上記後遺障害の程度は、右上肢の上記各症状を合わせると自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表五級六号(以下、同等級表の等級を、「後遺障害等級五級六号」というように表示する。)の「一上肢の用を全廃したもの」に、脊柱頚椎部の可動域制限は、後遺障害等級六級五号の「脊柱に著しい運動障害を残すもの」に、頚部の神経症状は、後遺障害等級一二級一二号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当し、併合して後遺障害等級四級となる。
(6) 原告の損害
本件事故により原告に生じた損害は、以下のとおりである。
ア 治療費等 四九一万四八八一円
イ 入院雑費 二万一〇〇〇円
上記入院期間一四日について、一日当たり一五〇〇円の入院雑費を要した。
計算式 1,500×14=21,000
ウ 休業損害 一二四九万〇二二四円
(ア) 原告は、本件事故当時大学生であり、本件事故がなければ大学卒業後の平成八年四月一日から就職して賃金を得ていたから、原告の休業期間は、同日から、本件傷害が症状固定となった平成一一年三月一五日までである。
(イ) 原告は、本件事故に遭わなければ、二四歳で大学を卒業後、年齢相応の大卒男子労働者の平均賃金と同程度の収入を得ていたところ、賃金センサス学歴別年齢別の大学卒・該当年齢・男子労働者の平均賃金は、次のとおりである。
a 平成八年四月一日から同年一二月三一日までの二七五日間、二四歳の平均賃金は、年額三一九万六〇〇〇円、日額八七五六円である。
b 平成九年、二五歳の平均賃金は、年額四六一万九二〇〇円である。
c 平成一〇年、二六歳の平均賃金は、年額四五六万二一〇〇円である。
d 平成一一年一月一日から同年三月一五日までの七四日間、二七歳の平均賃金は、年額四四四万四五〇〇円、日額一万二一七六円である。
(ウ) 以上によると、原告の休業損害は、一二四九万〇二二四円となる。
計算式 8,756×275+4,619,200+4,562,100+12,176×74=12,490,224
エ 後遺障害による逸失利益 一億〇六九四万二五七五円
(ア) 原告は、本件事故により、後遺障害等級併合四級の上記後遺障害が残り、その労働能力の九二パーセントを喪失した。
(イ) 原告は、本件事故当時二三歳と若年であり、大学卒業後、生涯を通じて、大卒男子労働者の賃金センサスの平均賃金と同程度の収入を見込むことができたから、逸失利益の算定に当たっては、その全年齢の平均賃金を基礎とするのが相当であるところ、本件症状固定があった平成一一年の賃金センサスによると、年額六七七万四四〇〇円である。
(ウ) 原告は、本件症状固定時において二七歳であるところ、本件事故がなければ六七歳までの四〇年間以上にわたって就労が可能であったから、四〇年に対応する年五分の割合によるライプニッツ係数一七・一五九により中間利息を控除する。
(エ) 以上によると、後遺障害による逸失利益は、一億〇六九四万二五七五円となる。
計算式 6,774,400×0.92×17.159=106,942,575
オ その他雑費 二〇万〇〇〇〇円
原告は、本件傷害の治療のため、群馬県と名古屋市との間を多数回往復し、その雑費として二〇万円を支出した。
カ 入通院慰謝料 五〇〇万〇〇〇〇円
原告は、本件事故日から本件症状固定日までの一四四〇日の間に、一四日間入院し、合計七〇九日の実通院をしており、このような長期間の入通院を要する本件傷害に対する慰謝料は、上記金額が相当である。
キ 後遺障害慰謝料 二〇〇〇万〇〇〇〇円
原告には、本件事故により後遺障害等級併合四級の重篤な後遺障害が残ったが、この後遺障害に対する慰謝料は、上記金額が相当である。
ク 以上合計 一億四九五六万八六八〇円
ケ 損害填補 五〇一万八九四一円
原告は、損害の填補として、被告の契約する保険会社から五〇一万八九四一円の支払を受けた。
コ 差引計算 一億四四五四万九七三九円
サ 弁護士費用 五〇〇万〇〇〇〇円
本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、上記金額である。
シ 損害合計 一億四九五四万九七三九円
(7) よって、原告は、被告に対し、自賠法三条本文に基づいて、上記損害合計一億四九五四万九七三九円及びこれに対する本件事故日である平成七年四月六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)の事実は認める。
(2) 同(2)の事実は認める。
(3) 同(3)の事実は認める。
(4) 同(4)の事実は認める。
(5) 同(5)について
ア アの事実中、本件症状固定時に、右上肢の症状以外の症状が存在したことは否認する。右上肢の症状は、本件事故後約一年を経過したころに初めてその存在が診断書に記載されているが、それまでの間はカルテ等の医療関係資料に一切記載がないから、本件事故との因果関係は認められない。
外傷性右胸郭出口症候群の障害が残ったことは認めるが、本件事故との因果関係は否認する。RSDないしCRPSの障害が残ったことは否認する。陳旧性頚部捻挫の障害が存在したことは認めるが、これに起因する症状は、本件症状固定時には、既に存在していなかった。
イ イの事実は否認する。原告には、本件症状固定時において、後遺障害等級に該当する後遺障害は存在していなかった。
(6) 同(6)について
ア アの事実は認める。
イ イの事実は否認する。入院雑費は、一日当たり一三〇〇円とするのが相当である。
ウ ウの事実は否認する。
エ エの事実は否認する。
オ オの事実は否認する。
カ カの事実は否認する。
キ キの事実は否認する。
ク クの主張は争う。
ケ ケの事実は認める。
コ コの主張は争う。
サ サの事実は否認する。
シ シの主張は争う。
三 抗弁
(1) 過失相殺
原告には、前方安全確認義務違反の過失があり、原告の同過失も本件事故の一因というべきであるから、原告の損害を算定するにあたっては、原告に二割の過失があるとするのが相当である。
(2) 寄与度減額
原告には、本件事故直後から精神不安定の状態が続いており、その影響によって身体症状に悪影響を与えたのであるから、原告の損害を算定するにあたっては、心因的要因としての減額がされるべきである。
四 抗弁に対する認否
(1) 過失相殺
否認する。原告は、優先道路を走行していたのだから、何らの過失も存在しない。
(2) 寄与度減額
否認する。
理由
一 本件事故の発生
請求原因(1)の事実は、当事者間に争いがない。
二 責任原因
請求原因(2)の事実は、当事者間に争いがない。
三 原告の受傷
請求原因(3)の事実は、当事者間に争いがない。
四 入通院の状況及び症状固定日
請求原因(4)の事実は、当事者間に争いがない。
五 原告の後遺障害
(1) 請求原因(5)ア(本件症状固定時以降、本件事故による原告主張の症状が存在したか、原告主張の障害が残ったか)について
ア 本件症状固定時以降の原告の症状
(ア) (右上肢の大幅な筋力低下、右手握力の大幅な低下、右上肢の知覚障害、右上肢の可動域制限)
上記争いのない事実、証拠(甲九の九ないし一八、甲一四、一五、二〇、五一の一・二、五五、七一の一・二、七三ないし七五、原告本人、本件鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次のとおり認められる。
a 原告の平成一一年三月一五日の本件症状固定について、原告の主治医である名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院のA医師が作成した後遺障害診断書(以下「本件後遺障害診断書」という。)には、原告の自覚症状として、右上肢のしびれ感、疼痛、筋力低下が記載されている。他覚症状及び検査結果について、右上肢腱反射、右上腕二頭筋腱反射やや減弱、他は正常、病的反射は認められず、右上肢筋萎縮認めないが、筋力低下があり、右前腕に知覚鈍麻(痛覚、触覚)が認められ、握力は、右五・七kg、左四七・一kgであり、筋電図検査により、右C五、六、七、八、Th一根部分的軸索変性の所見が認められる旨記載されている。
b 原告は、平成一三年二月九日、身体障害者手帳の交付を受けたが、身体障害者認定申請のためにA医師が作成した平成一二年一二月一七日付け身体障害者診断書・意見書(以下「本件身体障害者診断書」という。)には、現症欄に、右上肢の疼痛、しびれ、筋力低下、右肩、関節拘縮が残存しており、筋電図にて右C五、六、七、八、Th一神経根障害の所見を認めた旨記載されている。
c 整形外科の医師である本件鑑定人Bは、平成一六年五月一七日、鑑定のために、原告を診察したのち、単純X線撮影(両肩、両肘、両手各正面)、単純X線撮影(頚椎四方向)及びMRI撮像(両上肢)を行った。鑑定時の右上肢の症状の状況及び程度に関する診断の要旨は、次のとおりである。
(a) 骨萎縮
右肘の上腕骨小頭に軽度の骨萎縮が存在し、右手指の骨萎縮は存在するものの、ごく軽度なものである。なお、右肩関節周辺の骨萎縮は明らかではない。
(b) 皮膚の変色
右上肢末梢の手指に、ごく軽度のうっ血が認められるが、腕を下垂状態にしていたために生じたものであると考えられ、病的なものではない。
(c) 変温
右腕を動かさないため、少し低温な感じはするものの、明らかな左右差は認められない。
(d) 腫脹
右上肢末梢の手指にごく軽度の腫脹が認められるが、腕を下垂状態にしていたために生じたものであると考えられ、明らかな左右差はない。
(e) 関節拘縮
上肢の関節、肩関節、肘関節、手関節、手指の各関節に可動域制限が存在するか否かは、原告が、動かすと著明な違和感が生じるとのことで測定不能であったため、不明である。
(f) 疼痛
頚部ないし右上肢を動かした時や、同部分が人にぶつかった時に、正座の後のしびれのような強い違和感を感じるが、灼熱痛ではない。自発痛は軽度で、鈍痛程度、時々頭痛があり、頭全体が痛む。
(g) 皮膚栄養障害
指尖部の萎縮はなく、左右差もない。しかし、右体毛がやや薄い傾向がある。
(h) 筋萎縮
筋萎縮は、視診、触診では明らかではなく、MRIでは、上腕筋群、前腕筋群とも輝度変化が生じる神経原性変化はなく、明らかな筋萎縮もない。また、上腕周囲径及び前腕周囲径の左右差もない。
(i) 発汗
明らかな左右差はない。
(j) 原告の鑑定時の症状の状況及び程度に関する結論及び理由
以上のとおりであって、他覚的所見として軽度ではあるが骨萎縮が見られたことから、右上肢が正常に近い状態での十分な使用ができていない可能性は残った。原告は右上肢が何かに触れると強い違和感が生じるとのことで、他動可動域測定は実施できず、また、鑑定人の目の前で見せる普段の一つ一つの日常動作からも、原告が上肢を動かそうとしなかったため、その上肢の動きを観察することができず、結局、関節拘縮の判断は何もできなかった。軽度の上記骨萎縮は、原告が右上肢を十分に使えないことにより生じた可能性がある。関節拘縮は明らかではないが、右上肢を全く動かせないと訴える割には、骨萎縮も軽度であり、筋萎縮、腫脹、皮膚変色なども著明なものはなく、他覚的所見は著しく乏しかった。
d 原告は、現在においても、次のとおりの自覚症状を訴えている。
首及び右腕は触っただけでも痛みを感じ、首については、被って着る物はすべて襟首の部分をくりぬいた物しか着られず、首を動かすことはほとんどできない。ネクタイは、首を締め付けたときに痛みを感じることと、左手のみでは結べないことから、ワンタッチ式の物を使用する。歯磨きをするときには、口をゆすぐときに首が痛くてかがめないため、周りに飛沫が飛んでしまう。うがいも首が上がらないため全くできない。食事、洗顔、入浴、パソコン操作も、左手のみで行っており、外出時はあらかじめひもが結んであるスニーカーしか履けず、理髪店でも洗髪を頼むことはない。買い物では支払に時間がかかるため、あらかじめ小銭を用意している。振り返る動作が瞬時にできないので、危険を感じることがある。右手指で動くのは親指と人差し指だけで、それも物をつまむぐらいの動きしかできない。
以上の事実が認められる。この認定事実によれば、原告の右上肢は、他覚的所見を伴う症状が存在し、正常に近い状態での使用は実現していない。しかし、他覚症状は軽度であり、原告の右上肢の使用については、かなりの改善が可能であると考える余地がある。
なお、原告は、本件鑑定の結果の証明力に関して、様々な指摘をする。例えば、(a)原告の症状に「軽度」や「わずかに」という修飾語を用いるのは不適切である、(b)原告が痛がるからとして可動域検査をしていないが、右上肢に触れて、関節を動かそうとしたときに筋肉の収縮を確かめるだけで目的を達するし、ある程度痛がっても検査を行うべきであった、(c)関節拘縮を不明としているが、日常的に原告を診断している主治医の拘縮ありとする判断を尊重すべきである、(d)判断の資料としたカルテ等の理解を誤っている、(e)鑑定人は、交通事故訴訟で加害者側(損害保険会社側)に沿う意見・鑑定を提出する医師が多く属している大学と同じ大学の出身であるなどというのである。しかしながら、本件鑑定の結果は、医学の専門外である法曹にも分かりやすく、合理的で慎重な内容になっていることが認められるのに対し、上記指摘は、必ずしも専門的な医学の知識が十分とはいえない者が、的確な医学的資料に基づかないで、思いつくままに様々な主張しているにすぎないものと解せられ、上記各点を含む原告の細々とした主張は、いずれも採用し難い。本件鑑定の結果の証明力に疑いを抱かせるような証拠は存在しない。
(イ) (脊柱頚椎部の可動域制限)
甲一五、乙八の一によれば、本件後遺障害診断書には、脊柱頚椎部の運動障害について、前屈三五度、後屈三五度、右屈一〇度、左屈二〇度、右回旋五五度、左回旋五五度という記載があること、名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院のカルテ中、平成一三年一一月一九日時点で、頚部にしびれはなかったものの、屈曲六〇度、伸展〇度、左右側屈一〇度、右外旋二〇度、左外旋一五度の制限と運動痛が存在する旨の記載があることが認められる。また、本件鑑定の結果によれば、平成一六年五月一七日の鑑定時、頚部の運動障害は、原告が痛がって特に後屈をしたがらなかったこともあるが、前屈四〇度、後屈一〇度、左旋二五度、右旋二〇度、左屈一〇度、右屈一〇度と制限されていたこと、単純X線所見では、後屈位でも頚椎後彎を呈していることが認められる。
(ウ) (頚部の頑固な神経症状)
本件症状固定時以降、原告の頚部の神経症状に関して、原告の上記自覚症状の訴えがあるだけで、カルテ、診断書等の医療関係証拠上、明確な記載や言及は存在しない。
したがって、以下、検討の対象から除く。
イ 原告主張の障害が残ったか否か
(ア) (胸郭出口症候群)
証拠(甲九の一ないし一八、甲一五、三六、四〇、四三、四八、六八、乙八の一・二、一六、二四、本件鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば、胸郭出口症候群とは、腕神経叢が胸郭出口において圧迫あるいは牽引刺激要因となり、頚、肩、腕、ときに背中の痛みを引き起こす疾患群であること、原告について、腕神経叢造影の陽性所見、定量筋電図分析での陽性所見、Morleyテスト右陽性、Wrightテスト右陽性、Edenテスト右陽性などから、原告に胸郭出口症候群が存在していたこと、右上肢に軽症ではあるが胸郭出口症候群が発生し、それを契機に上肢症状が出現し、複雑な経過をたどって、現在における原告の症状の状態になったこと、その症状は、右上肢について、右母指・示指がわずかに動く程度で、他は全く動かず、原告の訴えや可動域測定数値(原告が痛がるために測定不能)を信じるならば、一上肢全廃になるが、症状の経過を踏まえて判断すると、原告に筋萎縮や骨萎縮がほとんどみられないことなどから、ある程度の神経症状は存在するものの、原告が自覚症状として訴える状況とは異なり、原告の右上肢はかなりの範囲で使用可能であることが認められる。
(イ) (RSDないしCRPS)
a 甲四〇、四二、四三、四四、四六、四七、乙一八、本件鑑定の結果によれば、RSDとは、異常な交感神経反射を基盤とする疾患の総称であり、典型例では、灼熱痛で代表される疼痛、著しい腫脹、関節の拘縮、皮膚の変色などの四主徴を呈するが、軽症例では様々な症状を呈すること、交感神経の亢進状態がなく、交感神経節ブロックも無効でありながら、RSDと同様な症状を呈する疼痛性疾患も数少ないが存在し、これと従来RSDとされていたものを含め、CRPSと呼ばれていることが認められる。
b 原告が本件症状固定時にRSDないしCRPSに罹患していたとの原告主張事実に沿う証拠として、甲九の一一ないし一八、甲二〇ないし二二、四八、乙八の一が存在し、これらによれば、A医師は、本件症状固定日である平成一一年三月一五日以降、平成一二年一二月一七日付け本件身体障害者診断書作成までの間に、原告がRSDに罹患しているとの診断をし、その後もその診断を変えていないことが認められる。また、本件鑑定の結果において、原告のRSDを完全には否定できないとの意見が述べられている。
c しかしながら、甲二〇、二二、乙八の一によれば、A医師は将来後遺障害の再認定が必要であると考えていること、A医師がRSDを認めた理由は、筋電図検査と同時に行った誘発筋電図の所見からは、右上肢の筋力低下、右肩関節、肘関節の拘縮の原因として、神経根の部分的軸索変性が主原因であるとの診断ができず、他に原因を求める必要があり、そこで考えられたのが廃用性萎縮やRSDであることが認められる。このように、A医師の判断は、確定的なものではないし、積極的な認定でもない。
さらに、本件鑑定人Bは、原告の訴える右上肢の自覚症状、特に右上肢の病状の進行について、胸郭出口症候群のみでは説明がつかないから、右上肢に軽度の胸郭出口症候群が発生し、それが原因でRSD(CRPS)が発症したか、その他の精神的な疾患が発症したか、又は詐病などを考えないと説明ができないが、原告の症状はRSD(CPRS)としては典型的ではないと述べる。鑑定人のかかる判断は、詐病か精神科疾患に該当しなければRSDの発症を否定できないという留保付きの判断であり、むしろ否定的なニュアンスの強い表現であるといえる。本件鑑定人Bは、鑑定の最後に、「左右の単純X線写真と両上肢のMRI撮像を行ったが、骨萎縮も筋萎縮も明らかな所見がなく、原告が痛がっているにもかかわらず、右上肢はかなり使用できる状態であり、廃用肢ではないことが明らかになった。しかし、原告が痛みのためにうまく動かせないことは否定できない。そこで、もし、原告側がこの鑑定に不満で右上肢が廃用肢であることを主張するのであれば、睡眠時にも疼痛のため右上肢は動かせないはずであるので、プライバシーの問題はあるものの、病状を確定する意味で、二週間ほど治療をかねて監視カメラ付きの部屋に入院していただき、診断並びに治療を受けることを勧める。精神神経科に心理療法をかねて入院するのが最適と思われるが、整形外科でもよい。その方がこれからの原告の治療や軽快・治癒に向けて必ずプラスになると考える。もし、原告の症状の訴えが一〇〇パーセント正しいのなら、それを証明する良い機会だとも思うので、是非そうされることをお勧めする。もしも、それを望まないのであれば、原告の症状の訴えを一〇〇パーセント信じるわけにはいかないので、原告の右上肢の症状を生じさせた胸郭出口症候群を広義の外傷性と判断し、その後遺障害等級として一二級一二号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が妥当と考える。」旨述べている。
d 上記bに上記cを対照すると、上記bだけでは、原告の右上肢にRSD(CPRS)が発症した事実を認めるには証拠が不十分であるというべきであり、他に同事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって、以下、検討の対象から除く。
(ウ) (陳旧性頚部捻挫)
甲一五、乙八の一及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告には、本件症状固定時に陳旧性頚部捻挫の障害が残っていたことが認められる。
しかしながら、陳旧性頚部捻挫が、原告の現在の症状にどのような影響を与えているのかは、証拠上、明らかでない。
したがって、以下、検討の対象から除く。
ウ 本件事故と原告の上記アの右上肢の症状及び脊柱頚椎部の可動域制限並びに上記イの胸郭出口症候群との間の相当因果関係
上記当事者間に争いのない事実、証拠(甲二の一ないし一七、甲三の一ないし四、甲四の一ないし一〇、甲五の一ないし九、甲六の一・二、甲七の一ないし一五、甲八の一ないし二八、甲九の一ないし一八、甲一〇ないし一五、甲四八、乙一ないし七、乙八の一・二、本件鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件事故により原告の上記アの右上肢の症状及び脊柱頚椎部の可動域制限並びに上記イの胸郭出口症候群が発症したこと、すなわち、本件事故とこれらの症状との間の相当因果関係が認められる。このうち、最も重要である胸郭出口症候群については、原告は、本件事故により本件傷害(頚椎捻挫等)を負い、疼痛などにより右肩甲帯を動かさなくなり、このことにより、僧帽筋等を含めた肩甲帯の筋群の筋力が低下し、肩甲帯が下がることで、腕神経叢の牽引や肋鎖間隙での圧迫を増長し、胸郭出口症候群が発症するに至ったものである。
この認定事実に反する甲一六、一九及び乙一三は、上記認定に供した証拠に照らして採用し難く、他に上記認定事実を覆すに足りる証拠は存在しない。
(2) 請求原因(5)イ(後遺障害等級)について
ア 右上肢の後遺障害等級について
本件鑑定の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件症状固定時以降、原告の右上肢に存在する症状については、骨萎縮及び筋萎縮の状態並びに手指の皮膚の状態からは、上肢に全廃又は著しい障害が存在するとの所見は得られないが、腕神経叢造影でTypeⅢ(片岡泰文、胸郭出口症候群の病態―腕神経叢造影を用いて―、日整会誌一九九四;六四)に該当することと、定量筋電図分析で異常所見を得られていることから、他覚的所見ありとして、上肢に頑固な神経症状を残すもの、すなわち後遺障害等級一二級一二号に該当するものであることが認められる。
イ 脊柱頚椎部の後遺障害等級について
上記認定の背柱頚椎部の可動域制限について、それが後遺障害等級の何級何号に該当するかを認めるに足りる証拠は存在しない。
六 原告の損害
(計算は、その都度、円未満を切り捨てて行う。)
(1) 治療費、通院費、装具費 四九一万四八八一円
請求原因(6)アの事実は、当事者間に争いがない。
(2) 入院雑費 一万八二〇〇円
請求原因(6)イについて、上記説示のとおり、原告が本件事故による傷害の治療のために聖霊病院に一四日間入院していたことは当事者間に争いがないところ、原告の入院雑費として、一日当たり一三〇〇円の合計一万八二〇〇円を認めるのが相当である。
計算式 1,300×14=18,200
(3) 休業損害 六六一万三四〇六円
請求原因(6)ウについて、証拠(甲五二ないし六二、七五、原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、本件事故当時大学生であり、本件事故がなければ、原告が大学卒業後の平成八年四月一日から二四歳で就労できた蓋然性が高いことが認められる。したがって、原告の休業期間は、同日から本件症状固定日の平成一一年三月一五日までであるが、この間の原告の不就労について、証拠上、本件傷害がその原因のすべてであるとまでは認め難いから、賃金センサス学歴別年齢別平均賃金(大卒)を基礎に算出した金額の七割を原告の休業損害と認めるのが相当である。そして平成七年の二〇歳ないし二四歳大卒の平均賃金は、年額三一九万六〇〇〇円、日額八七五六円であるから、原告の休業損害は、次のとおり六六一万三四〇六円となる。
計算式 {8,756×(275+365×2+74)}×0.7=6,613,406
(4) 後遺障害による逸失利益 四八〇万四六七三円
請求原因(6)エについて、上記認定のとおり、原告の後遺障害は、後遺障害等級一二級一二号に相当すると認められるから、労働能力を一四パーセント喪失したとするのが相当である。
労働能力喪失期間は、本件鑑定人Bが、症状改善の可能性として、「原告に明らかな筋萎縮、骨萎縮がないので、原告の疼痛が緩和され、精神的にうつ傾向や神経症が治癒され、改善されれば、局所に頑固な疼痛を残す程度に改善し、通常の仕事も可能になると判定する。」旨述べていること、名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院精神科における、平成一二年一〇月一一日付け心理評価報告書に、「現在の一番の問題は、宙ぶらりんな状態で、昼夜逆転の活動性の低い生活をし、目標もなくだらだら過ごしていることです。いろいろ愁訴はありますが、現実の社会生活に戻すことが必要かと思われます。職能を進めながら問題を整理していく方が早いのではないでしようか。」(乙八の一の七八頁)との記載があること、原告は、平成一六年三月にJR東海のキヨスク事務の障害者枠で就職し就労を続け、平成一七年六月二〇日からは、父親の紹介で、相生山病院の一般枠正社員として就労することが決まっていること(甲七五、原告本人)を総合して判断すれば、原告が今後就労を継続することにより、うつ傾向や神経症が治癒され、後遺障害が改善される蓋然性も高く、本件症状固定日から一〇年が経過した平成二一年三月一五日までには労働能力を回復する蓋然性が高いと認められる。よって、原告は、本件症状固定日である平成一一年三月一五日から平成二一年三月一五日までの一〇年間を通じて、その労働能力を喪失したものと認めるのが相当である。
そして、基礎収入について、原告は、平成一一年三月一五日の本件症状固定時に二七歳であったことが認められるから、本件事故に遭わなければ、平成一一年賃金センサス学歴計年齢別平均賃金の年間四四四万四五〇〇円の収入額を得ることができたものと推認されるので、この額を基礎として、上記労働能力喪失率を乗じ、同額からライプニッツ方式により中間利息を控除して、一〇年間の逸失利益の本件事故当時における現価を求めると、その額は、次のとおり、四八〇万四六七三万円となる。
計算式 4,444,500×0.14×7.7217=4,804,673
(5) その他雑費 〇円
請求原因(6)オについて、原告が、本件事故による傷害の治療のため、大学通学時に居住していた群馬県から、両親の居住する名古屋市を往復したことは認められるが(原告本人、甲七五)、実家への帰省と考える余地もあり、これを本件事故に起因する雑費であると認めるに足りる証拠がないから、その他雑費は認められない。
(6) 入通院慰謝料 二三〇万〇〇〇〇円
請求原因(6)カについて、上記当事者間に争いのない事実によれば、原告は、本件傷害の診察及び治療を受けるために、本件事故日から本件症状固定日までの一四四〇日の間に、一四日間入院し、合計七〇九日の実通院をした。このような入院期間、通院期間及び実通院日数を要した本件傷害に対する慰謝料は、上記金額が相当である。
(7) 後遺障害慰謝料 二七〇万〇〇〇〇円
請求原因(6)キについて、上記認定の後遺障害の程度、原告自身の就職に向けての努力、その他本件に現れた諸事情を総合して判断すれば、本件事故によって原告が受けた精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料は、上記金額が相当である。
(8) 以上合計 二一三五万一一六〇円
(9) 過失相殺 五パーセント
ここで、便宜、抗弁(1)の過失相殺について検討する。
ア 上記争いのない事実、証拠(原告本人、甲三三ないし三五、七五、乙一〇ないし一二、二五の一・二)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 本件事故現場
本件事故現場は、南北に走る片側一車線の道路(以下「南北道路」という。)と東西に走る片側二車線の道路(第一車線が直進道路、第二車線が右折道路、以下「東西道路」という。)とが交差する信号機による交通整理が行われていない十字路交差点(以下「本件交差点」という。)である。車道の幅員は、南北道路が約四・九五メートル、東西道路が約九・七メートルであり、東西道路の車道の外側には歩道が設置されている。本件事故当時、南北道路の北方向への一時停止規制はなく、東西道路にも一時停止規制はなかった。東西道路には、横断歩道が設置され、時速五〇キロメートルの速度規制があった。路面は、両道路とも、アスファルト舖装の平坦な乾燥路であった。本件交差点南側から本件交差点に向けて北進した場合(被告車進行方向)、低い緑色のフェンスが南北の道路の東側に連続して設置されているため、本件交差点の存在が分かりにくくなっており、また、本件交差点付近における右方の見通しは、上記フェンスがあるために若干悪くなっていた。一方、本件交差点東側から本件交差点に向けて西進した場合の本件交差点付近における見通しは、上記フェンス、街路樹及び低い生垣のため、同様に若干悪くなっていた。
(イ) 本件事故の態様
被告は、被告車を運転して、南北道路を時速約三〇キロメートルで北進していたが、前方に本件交差点があることに気付かず、左右の安全を確認することなく本件交差点に進入した。一方、原告は、原告車を運転して東西道路を西進していたが、東西道路が南北道路に対して優先道路であることから、本件交差点の存在は認識していたものの、左方の安全を確認せず、被告車に気付かないまま、時速約三〇キロメートルないし四〇キロメートルで交差点に進入し、本件交差点内において、原告車の左前部と被告車の右前部とが衝突した。本件事故により、原告車の前方ライトが破損し、左ハンドル及びサイドミラーが下約四五度の角度で折れ曲がった。
イ 過失の程度についての検討
上記アの認定事実に基づいて検討すると、原告が走行していた東西道路には中央線があるのに対し、被告車の走行していた南北道路には中央線がないから、東西道路が優先道路であるところ、被告は、前方に本件交差点があることに全く気付かず、左右の安全確認を怠って本件交差点に進入したものであり、その過失は著しい。しかしながら、原告としても、信号機により交通整理の行われていない交差点に進入するに当たっては、自己の走行車線が優先道路であったとしても、交差点に進入するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならないから、信号機により交通整理の行われていない本件交差点に進入するに当たっては、左方の安全を確認すべきであったのに、これを怠った過失がある。そうすると、両者の過失割合は、原告五パーセント、被告九五パーセントとするのが相当である。
(10) 寄与度減額 三〇パーセント
ここで、便宜、抗弁(2)の寄与度減額について検討する。
ア 上記五(原告の後遺障害)の認定説示、上記六(4)(後遺障害による逸失利益)の認定説示、上記同(9)(過失相殺)の認定説示、証拠((甲二の一ないし一七、甲三の一ないし四、甲四の一ないし一〇、甲五の一ないし九、甲六の一、二、甲七の一ないし一五、甲八の一ないし二八、甲九の一ないし一八、甲一〇ないし一五、四八、七五、乙一ないし七、八の一・二、原告本人、本件鑑定の結果)及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告車に本件事故による著しい損傷はなく、原告の受傷も軽微であったにもかかわらず、本件事故日から本件症状固定日まで四年弱が経過していること、原告には、本件症状固定後、後遺障害等級一二級一二号の後遺障害が存在すること、現在、原告の右上肢にある程度の神経症状は存在するものの、自覚症状として訴える状況とは異なり、右上肢はかなりの範囲で使用可能であること、原告の後遺障害の発生、拡大について、大学卒業後に長く就労が実現していない焦り、日常生活のストレス、社会的ストレス、自賠責保険の後遺障害認定の期待はずれ、本件事故をめぐる損害賠償問題が一向に解決されない不満、原告自身の性格等の心因的要素が影響していることが認められる。
イ ところで、交通外傷が軽度である場合であっても、被害者の素質、疾患、心因的事情が原因で、症状が慢性化することは多い。このような場合、交通事故の加害者は、その交通外傷により被害者が被った損害につき、賠償責任を負うとするのが相当であるが、通常発生する程度を超える損害があって、かつ、その損害の拡大について被害者の疾患や心因的要因が寄与しているときは、損害の公平な分担という損害賠償法の理念に照らし、損害賠償額を定めるに当たり、民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者側の事情を賠償額の減額要素として考慮することができるものと解される。
ウ そして、上記アで認定した諸事情も、上記イで説示した減額要素に該当するものと解されるが、本件において寄与度減額を検討する場合には、原告の損害額を認定した際に、上記諸事情も考慮し、休業損害を平均賃金に基づいて算出した金額の七割にとどめていること、労働能力喪失期間を四分の一に限定していること、裁判所が認定した後遺障害等級は一二級という比較的低位のものであり、原告の自覚症状からすれば、非常に低い損害賠償額にならざるを得ないことから、上記減額要素を重大視して減額の割合を大きくし過ぎると、被害者である原告にとって酷な結果を招きかねない点に配慮しなければならない。
そうすると、上記諸事情を総合的に考慮し、本件においては、三〇パーセントの寄与度減額をするのが相当である。
(11) 過失相殺及び寄与度減額後の損害額 一四一九万八五二一円
上記(8)の合計二一三五万一一六〇円に対して、上記(9)の五パーセントの過失相殺、及び、上記(10)の三〇パーセントの寄与度減額をしたのちの損害額は、次の計算のとおりであり、上記金額となる。
計算式 21,351,160×{(1-0.05)×(1-0.3)}=14,198,521
(12) 損害填補 五〇一万八九四一円
請求原因(6)ケの事実は、当事者間に争いがない。
(13) 差引計算 九一七万九五八〇円
請求原因(6)コについては、上記金額のとおりである。
(14) 弁護士費用 七〇万〇〇〇〇円
請求原因(6)サについては、上記差引計算した損害額の七パーセント強に相当する上記金額が相当である。
(15) 損害合計 九八七万九五八〇円
請求原因(6)シについては、上記金額のとおりである。
七 結論
よって、原告の本件請求は、自賠法三条本文に基づいて、上記損害合計九八七万九五八〇円及びこれに対する本件事故の日である平成七年四月六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 富田守勝 城内和昭 大澤多香子)