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名古屋地方裁判所 平成14年(ワ)3039号 判決 2003年3月19日

原告

X1

ほか三名

被告

株式会社日本サンプル

ほか一名

主文

一  被告らは、原告X1に対し、各自、金三二六六万二六四六円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、原告X2に対し、各自、金二二四一万三九三二円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは、原告X3に対し、各自、金二〇四九万七四二九円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告らは、原告X4に対し、各自、金一〇二四万八七一四円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

六  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

七  この判決は原告ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告らは、原告X1に対し、各自、金三七二五万円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告らは、原告X2に対し、各自、金二四五〇万円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告らは、原告X3に対し、各自、金二五五〇万円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告らは、原告X4に対し、各自、金一二七五万円及びこれに対する平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言。

二  被告ら

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決。

第二基礎的事実関係

次の各事実は、当事者間に争いがなく、本件の基礎となる事実関係である。

一  亡A(昭○年○月○日生まれ。)及び亡B(平成○年○月○日生まれ。)は、次の交通事故(以下「本件事故」という。)により脳挫傷の傷害を負い、間もなく死亡した。

(一)  発生日時 平成一三年一一月一〇日午後五時四〇分ころ

(二)  発生場所 愛知県西尾市駒場町屋敷二二番地一先路線上(以下「本件事故現場」という。)

(三)  加害車 普通貨物自動車(名古屋○○た○○○)(以下「被告車」という。)

同運転者 被告Y1

(四)  被害者 亡A及び亡B

(五)  事故の態様 亡A及び亡Bが横断歩道を横断していたところ、被告Y1が被告車を運転して、前方不注視のまま制限速度を約三〇km超過する速度で進行した過失により、亡A及び亡Bに衝突したもの。

二  被告両名は、被告車の運行供用者である。

三  亡Aの死亡により、その夫の原告X3が二分の一、その子の原告X1、同X4が各四分の一の割合で亡Aを相続し、また、亡Bの死亡により、その父の原告X1、母の原告X2が各二分の一の割合で亡Bを相続した。

四  被告Y1は、本件事故による亡Aの損害につき五〇万円、亡Bの損害につき五〇万円を支払った。

また、亡Aと亡Bの葬儀費として二〇九万九〇八七円を要し、被告らにおいて全額支払った。

第三当事者の主張

一  原告は、上記第二の事実関係を基に、その余の請求原因として次のとおり主張し、本件事故による損害賠償金及びこれに対する事故の日以降の遅延損害金の支払を求めた。

1  亡Aの損害

(一) 逸失利益 金二四九七万五九九九円

亡Aは本件事故当時六六歳で、X家において家事を分担しており、老齢基礎厚生年金年額一〇四万九一六〇円を受給していた。

よって、その逸失利益は、次のとおり合計金二四九七万五九九九円となる。

<1> 家事労働分

平成一二年賃金センサス女子労働者全年齢平均賃金額三四九万八二〇〇円を基礎とし、生活費控除率三〇%、就労可能年数八年、ライプニッツ方式により算定。

349万8200円×(1-0.3)×6.462=1582万3757円

<2> 老齢厚生年金分

平均余命二〇年(ライプニッツ係数一二・四六二)により算定。

104万9160円×(1-0.3)×12.462=915万2242円

(二) 死亡慰謝料 金二五〇〇万〇〇〇〇円

本件事故は、亡A、亡Bに落ち度がない事故であること、亡Aは本件事故前家事を分担していたこと、本件事故は一回の交通事故で二人の命が失われていること等の事情から、亡Aの慰謝料は一家の支柱に準じる者の慰謝料二五〇〇万円が相当である。

(三) 弁護士費用 金一五二万四〇〇一円

(四) 以上合計 金五一五〇万〇〇〇〇円

2  亡Bの損害

(一) 逸失利益 金二三六七万四九三六円

亡Bのような女子年少者については全労働者の平均賃金を基礎収入とすべきである。

そこで、平成一二年賃金センサス全労働者全年齢平均賃金四九七万七七〇〇円、生活費控除率四〇%、死亡時一歳の被害者のライプニッツ係数七・九二七により算定。

497万7700円×(1-0.4)×7.927=2367万4936円

(二) 死亡慰謝料 金二四〇〇万〇〇〇〇円

前記のとおり本件事故は被告Y1の一方的な過失によって引き起こされ、一回の交通事故で二人の命が失われている等の事情があり、これら個別事件の具体的事情を反映することが必要であるから、亡Bの慰謝料としては二四〇〇万円が相当である。

(三) 弁護士費用 金一八二万五〇六四円

(四) 以上合計 金四九五〇万〇〇〇〇円

二  被告らは、原告らの上記請求原因主張を争った。

第四当裁判所の判断

一  亡Aの損害

1  逸失利益 金一九二九万四八五八円

甲第二号証の九、一〇、第三、五号証、第六号証の一、二、第七、八号証、原告X1本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、亡Aは本件事故当時六六歳で、原告ら(原告X4を除く。)及び亡A、亡Bの一家において中心的に家事を担っており、老齢基礎厚生年金年額一〇四万九一六〇円を受給していたことが認められる。

よって、その逸失利益は、次のとおり合計金一九二九万四八五八円と認めるのが相当である。

(一) 家事労働分 金一四〇六万四九二二円

平成一三年賃金センサス六五歳以上女子労働者の平均賃金額三〇三万五八〇〇円を基礎として家事労働喪失による逸失利益を算定するのが相当であり、生活費控除率を四〇%とし、就労可能年数を平均余命の二分の一である一〇年として、ライプニッツ方式(ライプニッツ係数七・七二一七)より中間利息を控除して算定すると、次のとおり、一四〇六万四九二二円となる(円未満切捨て。以下同様。)。

303万5800円×(1-0.4)×7.7217=1406万4922円

(二) 老齢厚生年金分 金五二二万九九三六円

平均余命期間二〇年の老齢厚生年金喪失による逸失利益は、生活費控除率を六〇%として算定するのが相当であり、ライプニッツ方式(ライプニッツ係数一二・四六二二)により算定すると、次のとおり、五二二万九九三六円となる。

104万9160円×(1-0.6)×12.4622=522万9936円

2  死亡慰謝料 金二一〇〇万〇〇〇〇円

本件事故は、亡Aに落ち度がない事故であること、亡Aは本件事故前家事を分担していたこと、亡Aの年齢、その他諸般の事情を考慮すると、本件事故により亡Aの受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては金二一〇〇万円をもって相当と認められる。

3  損害額合計 金四〇二九万四八五八円

4  被告の支払分の控除

前記の被告Y1の支払額五〇万円を上記三から控除すると残額は三九七九万四八五八円となる。

二  亡Bの損害

1  逸失利益 金二一九二万七八六五円

亡Bは本件事故当時満一歳の年少女子であり、将来の就労可能性は広範多様であると解されることに、男女の就労機会格差・収入格差が解消しつつある社会的・経済的趨勢を考慮すると、亡Bの逸失利益の算定に当たっては、全労働者の平均賃金を基礎収入とするのが相当であると解される。

そこで、平成一三年賃金センサス全労働者全年齢平均賃金五〇二万九五〇〇円を基礎とし、生活費控除率を四五%として、一八歳時から六七歳時までの稼働収入の喪失による逸失利益を、ライプニッツ方式(死亡時一歳の被害者のライプニッツ係数七・九二七〇)により中間利息を控除して算定すると、次のとおり、二一九二万七八六五円となる。

502万9500円×(1-0.45)×7.9270=2192万7865円

2  死亡慰謝料 金二二〇〇万〇〇〇〇円

本件事故は亡Bに落ち度がない事故であること、亡Bの年齢、その他諸般の事情を考慮すると、本件事故により亡Bの受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては金二二〇〇万円をもって相当と認められる。

3  損害額合計 金四三九二万七八六五円

4  被告の支払分の控除

前記の被告Y1の支払額五〇万円を上記三から控除すると残額は四三四二万七八六五円となる。

三  原告らの相続

1  亡Aの損害分

亡Aの死亡により、原告X3は上記一4の損害残額の二分の一の金一九八九万七四二九円、原告X1、同X4は、それぞれ上記一4の損害残額の四分の一の九九四万八七一四円の損害賠償請求権を相続取得したものである。

2  亡Bの損害分

亡Bの死亡により、原告X1、同X2は、それぞれ上記二4の損害残額の二分の一の金二一七一万三九三二円の損害賠償請求権を相続取得したものである。

四  弁護士費用

本件の事案の内容、審理の経過、上記判示の賠償義務額、填補額等に照らすと、原告らが本件事故と相当因果関係のある損害として被告らに賠償を求め得る弁護士費用は、次のとおりと認めるのが相当である。

一 原告X1 金一〇〇万円(亡Aの損害分三〇万円、亡Bの損害分七〇万円)

二 原告X2 金七〇万円

三 原告X3 金六〇万円

四 原告X4 金三〇万円

五 まとめ

そうすると、原告らの損害賠償請求権の額は次のとおりとなる。

一 原告X1 金三二六六万二六四六円

二 原告X2 金二二四一万三九三二円

三 原告X3 金二〇四九万七四二九円

四 原告X4 金一〇二四万八七一四円

第五結論

以上の次第で、原告らの本訴請求は、被告らに対し、各自上記第四に判示した損害賠償金及びこれに対する本件事故の日である平成一三年一一月一〇日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。

よって、原告らの請求を上記理由のある限度で認容し、その余はいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条、六五条、仮執行の宣言につき同法二五九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡辺修明)

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