名古屋地方裁判所 平成17年(ワ)2616号 判決 2006年11月21日
主文
1 被告は、原告に対し、474万4000円及びこれに対する平成17年7月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 請求原因
(1) 被告は、鳳来イーストヒルゴルフクラブを経営していた会社である。
(2) 原告は、被告が経営する鳳来イーストヒルゴルフクラブに平成4年10月1日入会し、入会に際し、被告に保証金として530万円を預託した(以下、原告と被告が締結した鳳来イーストヒルゴルフクラブに関する契約を「本件ゴルフ会員権契約」、原告が被告に預託した保証金を「本件保証金」という。)。
(3) 本件保証金については、本件ゴルフ会員権契約の会則7条において、「保証金には利息を付けず、会員が資格を喪失した場合には、その会員の会社に対する凡ての債務と対当額において相殺し、残額を10カ年毎年均等額償還する」と規定されている。
(4) 原告は、被告に対し、平成15年6月26日、鳳来イーストヒルゴルフクラブを退会する旨の意思表示をした。
(5) 原告は、被告に対し、本件ゴルフ会員権契約において被告から原告に対し10年間で均等額償還される約定となっている本件保証金に関する2回目の償還金53万円を、平成17年6月26日限り支払うことを催告するとともに、同日限り支払いがない場合には、本件ゴルフ会員権契約を同日をもって債務不履行解除する旨を、平成17年5月23日、被告に通知した。
(6) 被告は、平成17年6月26日までに、2回目の償還金53万円の支払をせず、本件ゴルフ会員権契約は、同日限り債務不履行解除された。
(7) よって、原告は、被告に対し、本件ゴルフ会員権契約の解除に基づく原状回復義務履行請求権に基づき、原告が被告に預託した本件保証金530万円から、返還を受けた53万円及び2万6000円を控除した474万4000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成17年7月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否
(1) 請求原因(1)から(5)、請求原因(6)のうち、被告が平成17年6月26日までに2回目の償還金53万円の支払をしなかったことはいずれも認める。
(2) しかし、原告は、平成15年6月26日、鳳来イーストヒルゴルフクラブを退会する旨の意思表示をし、本件ゴルフ会員権契約は既に約定解除されているのであるから、約定解除により既に失効した本件ゴルフ会員権契約を、改めて、法定解除する余地はない。
第3 当裁判所の判断
1 請求原因事実はいずれも争いがない。
2 被告は、本件ゴルフ会員権契約は既に約定解除されているのであるから、約定解除により既に失効した本件ゴルフ会員権契約を改めて法定解除する余地はないと主張する。
本件ゴルフ会員権契約においては、会員が資格を喪失した場合、保証金は10か年で毎年均等額ずつ、期限の利益を付して返還する約定となっていたのであり(争いがない。)、退会の意思表示によって本件ゴルフ会員権契約が約定解除された後も、被告は、上記約定に基づき、本件保証金の返還については期限の利益を有していることになる。
そうすると、本件ゴルフ会員権契約は、原告から退会の意思表示があった後も、本件保証金の返還債務に期限の利益を付与している限度で、完全に失効したわけではないから、その約定に基づく本件保証金の返還債務の履行が遅滞したときには、原告は債務不履行に基づいて本件ゴルフ会員権契約を法定解除し、原状回復請求として未返還の本件保証金の一括返還を求めることができるというべきである。
3 よって、原告の請求はすべて認められるから、主文のとおり判決する。
(裁判官 西村康夫)