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名古屋地方裁判所 平成17年(ワ)600号 判決 2008年2月21日

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1請求

1  被告は,原告Aに対し,1億9892万5075円及びこれに対する平成15年5月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  被告は,原告Bに対し,2205万3380円及びこれに対する平成15年5月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2事案の概要

本件は,被告が開設する被告病院において腹腔鏡下胆嚢摘出術及びS状結腸部分切除術(以下「本件手術」という。)を受けた原告Aが,本件手術の際の縫合における手技上の過失により縫合不全を起こした,本件手術の術後管理を怠ったと主張して,債務不履行による損害賠償請求として,1億9892万5075円及びこれに対する本件手術の日である平成15年5月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,原告Bは,原告Aが被告の債務不履行により被った休業損害を立替払いしたと主張して,弁済者の任意代位又は事務管理の法理の類推適用により,2205万3380円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。

1  前提事実(争いがないか証拠により容易に認定できる事実等)

(1)  当事者

ア 原告Aは,昭和28年生まれの男性であり,原告Bの代表取締役である。

(原告A本人)

イ 被告は,H市内において被告病院を開設し,経営管理している。(争いがない)

(2)  本件の経緯

ア 原告Aは,平成14年11月,健康診断で大腸ポリープを指摘され,G病院で検査を受けたところ,胆嚢結石症,大腸(S状結腸)腫瘍に罹患していることが判明し,同病院で手術を受けることになった。(乙A2p3,p6)

イ その後,G病院での手術は中止となり,原告Aは,平成15年4月15日,被告病院で診察を受けた。(争いがない)

ウ 原告Aは,平成15年4月24日,被告病院で診察や検査を受け,同年5月9日から入院し,5月12日に本件手術を受けることになった。被告病院のE医師及びF医師は,同年5月9日,原告Aに対し,本件手術について説明した。(乙A1p5,乙A2p14~16,乙A48)

エ 平成15年5月12日

被告病院担当医師により,本件手術が行われた。本件手術は,まず腹腔鏡下で胆嚢を摘出し,ペンローズドレーンを留置し,創縫合を行った後,左下腹部を切開し,S状結腸を摘出して,Gambee縫合(縫合の手法の1つ)にて結腸の吻合を行い,ペンローズドレーンを留置するという内容であった。本件手術に要した時間は,3時間13分であった。(乙A2p13,p54,p58)

オ 平成15年5月13日から5月22日

この間の,原告Aの体温,血液検査結果,ドレーンのガーゼ交換時の付着物,原告Aの訴え,投薬等の診療経過は,別紙診療経過一覧表のとおりである。

カ 平成15年5月23日

この日の原告Aの体温は,午前6時の体温は37.9度であり,この日の血液検査の結果,白血球数は1万0600であった。

被告病院担当医師は,原告Aに対し,「本件手術後,発熱,腹痛が続いており,血液検査やCT検査の結果,腹腔内膿瘍と考えられる。原因として結腸吻合部の縫合不全,虫垂炎などが疑われるが特定できない。本日まで抗生剤で治療してきたが,軽快する見込みがないため手術が必要であると考える。」旨の説明を行い,原告Aの同意を得た。

同日,被告病院担当医師により,2度目の手術(以下「本件再手術」という。)が行われ,開腹した結果,結腸の吻合分前壁に2か所の小穴が認められたので,縫合不全による腹膜炎が生じたと判断された。その後,生理食塩水による腹腔内洗浄が行われ,縫合不全部を人工肛門として設置した。(乙A2p104~116,p396,乙A48)

キ その後,原告Aは,平成15年10月7日に被告病院を退院した。(争いがない)

ク 原告Aは,人工肛門閉鎖・再建術のため平成15年11月20日に被告病院に入院し,同年12月27日に退院した。(争いがない)

2  本件の争点

(1)  縫合不全は吻合の手技に過失があったことに起因するものか否か

(2)  平成15年5月17日の処置に過失があるか否か

(3)  平成15年5月18日の処置に過失があるか否か

(4)  後遺障害の有無

(5)  損害

3  争点に対する当事者の主張

(1)  争点(1)(縫合不全は吻合の手技に過失があったことに起因するものか否か)について

(原告らの主張)

縫合不全の発生因子としては,全身性因子及び局所性因子が存在する。

一般に全身性因子としては,①高齢者,②低栄養状態,③糖尿病,肝機能障害,動脈硬化,心肺疾患,④ステロイド,抗癌剤の使用があげられ,下部消化管に限定した縫合不全の全身的因子としては,①慢性閉塞性肺疾患の合併,②術前の腸閉塞,③術前に腹膜炎が存在,④術前の副腎皮質ホルモン剤の使用,⑤輸血(2単位以上),⑥血清アルブミン値3.0mg/dl以下,⑦4時間以上の手術時間,⑧汚染手術,⑨白血球増多,⑩縫合困難,⑪緊急手術,⑫アメリカ麻酔学会スコアを指摘することができる。

原告Aには,縫合不全の一般的な全身的因子としてあげられる高年齢等は存在せず,下部消化管に限定される上記全身的因子①~⑫のいずれも該当するものはない。

次に,縫合不全の局所的因子としては,①吻合部の血流障害,②吻合部にかかる緊張,③吻合部の感染,④不的確な吻合操作があげられているが,排ガス・排便が始まる術後3~4日目ころに発生する縫合不全は吻合の技術的な理由に起因することが多いとされている。上記局所的因子①の吻合部の血流障害は術後7日目以降のことが多いところ,原告Aの縫合不全は術後4日前後に発症しているため,吻合部の血流障害は否定される。また,上記局所的因子③の感染については,感染予防のためマグロトールPの投与がなされており,否定的に解される。

一方,上記のとおり,吻合の技術的な理由に起因する縫合不全は術後4日目に発生することが多いところ,本件においても術後4日目に縫合不全が発生している。また,本件手術では結腸の吻合は手縫いによるGambee縫合が行われているが,手縫い縫合の場合,1針1針確実に吻合部に緊張がかからないように縫合することが必要で,とくに結腸の吻合は吻合部両端の後壁から前壁に移る部分での縫合を確実に行わなければならないとされている(甲B5p755)。

これらの事情を総合的に考慮すると,原告Aに生じた縫合不全は,執刀医が吻合部両端の縫合を確実に行なわず,不的確な吻合操作をしたことにより,吻合部が離開したことによるものと考えられる。

(被告の主張)

本件手術の術部である大腸は,血管構造が終末動脈的で粘膜,粘膜下の血管吻合が疎であり,腸内容は固形で細菌も多いという理由から縫合不全に陥りやすく,手術技量のみでは防御できないものであって,どれほど熟練した技術をもってしてもある一定の確率で縫合不全が発生することは避けられない。したがって,大腸手術の合併症としての縫合不全は,他の臓器の場合に比べて多い。

また,同時に,体質・合併症・性別等患者自身の因子等も縫合不全の原因としてあげられるところ,喫煙は重要な縫合不全の全身的な危険因子である。そして,原告Aは1日40本というヘビースモーカーの喫煙歴を有しており,重要な全身的危険因子を有していたところ,本件手術前の禁煙指示に従わず,(本件手術後の喫煙は確認されていないものの)術後の食べ物に対する言動や治療期間を通じての入・通院態度からは,本件手術後禁煙していたとの保証はないから,より危険因子があった。

さらに,本件では,原告Aは,術後4日目まではADLも順調で排ガスもあり,病棟内を歩行し,たばこを吸いたいとナースに訴えるなど,全身状態は安定し,通常の術後経過を示している。また,術後5日目に至っても,ドレーンの性状が漿液性であった(早期の漏れが多ければ,当然排液に反映する)。

このように,原告Aには縫合不全の危険因子があり,発症が手術直後ではなく,時間を経過して,食事開始後からの発症となっていることを考慮すると,不適切な過失ある手技が縫合不全の原因となったと直ちにはいえないし,推認することもできない。

(2)  争点(2)(平成15年5月17日の処置に過失があるか否か)について

(原告らの主張)

原告Aは,平成15年5月17日撮影の腹部単純X線写真において,横隔膜下に遊離ガスの存在が認められ,消化管穿孔が強く疑われた上,高熱,白血球数及びCRP値の上昇という縫合不全を疑わせる兆候を認めたのであるから,被告病院担当医師としては,縫合不全からの腹膜炎を疑い,排出液の細菌培養検査を行うなどして起炎菌に有効な抗生剤を投与する内科的治療を行うとともに,外科的処置としてドレナージを行うべき注意義務があった。ドレーン排液が漿液性であっても,腫瘍の発生部位にドレーンが設置されていなければ,膿性の排液は排出されないものであるから,排液が漿液性であることによって縫合不全による腹膜炎を否定することはできない。

ところが,被告病院担当医師は,内科的治療も外科的治療も行わなかった。

(被告の主張)

ドレーンからの排液が漿液性で異常ではなかったこと,創部清であったこと,術側腹部に痛みが認められない等,積極的に縫合不全を示す所見がなく,他方では,異常が発症した経過・部位,直腸診の検査結果も前立腺付近に圧痛が著明に認められたこと等から,前立腺炎・急性虫垂炎などの炎症性腸疾患などを疑うべきものであったため,そのように診断したが,縫合不全の可能性も考慮していた。

遊離ガスは,腹部開腹手術後は通常1週間から2週間程度みられるのが通常であり,また,ドレーンが設置されている場合は,外部との交通があるため設置期間中遊離ガスがみられるから,遊離ガスがあることは直ちに消化管穿孔を示すものではない。

したがって,被告病院担当医師のこの日の診断・加療に過失はない。

(3)  争点(3)(平成15年5月18日の処置に過失があるか否か)

(原告らの主張)

原告Aは,平成15年5月18日には,高熱,白血球数及びCRP値の上昇に加えて,ドレーン排液の汚染が認められたのであるから(ドレーン排液の汚染が確認されれば,縫合不全はほぼ確実である。),被告病院担当医師としては,縫合不全からの腹膜炎を疑い,排出液の細菌培養検査を行うなどして,起炎菌に有効な抗生剤を投与する内科的治療を行うとともに,外科的処置としてドレナージを行うべき注意義務があった。

ところが,被告病院担当医師は,内科的治療も外科的治療も行わなかった。

(被告の主張)

被告病院担当医師は,前日までの経過,当日の経過にしたがって,合理的根拠をもって診断・加療しており,縫合不全を見落としているものでもなく,可能性を含めて考えて対応し,それによる加療効果もあるので,この日の診断・加療に過失はない。

細菌培養検査については,白血球数が減少し,CRP値も低下し,発熱も下がり,腹痛も軽減するという加療効果がある中では,この時点でなすことに大きな有意性はなく,したがって,不可欠なものではなく,実施は状態をみて判断されるのであり,その不実施は裁量の範囲内でありこれを過失ということはできない。

また,ドレーン抜去部から汚染した排液が認められたが,保存的治療を優先させ,ドレナージを行わなかったことも一般的な治療方針として普通である。新たにドレナージを行うことは,それ自体それなりの手術で,新たな侵襲になるものであり,保存的治療が奏功しているなかであえて行わないとの判断は,根拠をもったものであり,ドレナージを行わなかったことを過失ということはできない。

(4)  争点(4)(後遺障害の有無)について

(原告らの主張)

原告Aは,現在,腹痛,下痢,倦怠感,不眠等の症状に悩まされているが,これは腸管の癒着によるもので,腸管癒着は縫合不全後の腹膜炎に起因するものである。

本件手術においては,開腹下でS状結腸部分切除術が行われており,腹膜炎の他にこの開腹手術が腸管癒着の原因である可能性は一応ある。しかし,切除された部位は大腸であるS状結腸であり,癒着により通過障害を来す腸管は主に小腸で,大腸によるものはほとんど存在しないことに照らすと,癒着の原因が開腹手術の治癒機転の結果とは考えがたく,原告Aに発症した縫合不全に伴う腹膜炎が人工肛門を造設するほど重度の炎症であったことに鑑みると,癒着の原因は,腹膜炎にあると考えられる。

したがって,原告Aの腹痛,下痢等の症状は,腹膜炎に起因するもので,後遺障害等級9級11号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外に服することができないもの」に該当する。

(被告の主張)

一般的に開腹手術により大なり小なり腸管癒着は起こるものであり,S状結腸切除など開腹手術を受けた患者にも一般的に認められる症状である。したがって,腹膜炎が腸管癒着の主たる原因とはいえない。

原告らは,不眠,倦怠感を主張するが,これらの症状と癒着との間に直接的な機序・関連性はない。原告Aの体重増加,アルコール摂取等の心因的なもの,生活リズム,食事の乱れ等がその原因であると考えられる。したがって,相当因果関係はない。

(5)  争点(5)(損害)について

(原告らの主張)

ア 原告Aの損害 1億9892万5075円

(ア) 入通院慰謝料

原告Aは,本件事故のため長期間入通院治療を余儀なくされたもので,入通院慰謝料は280万円が相当である。

(イ) 後遺障害慰謝料

原告Aは,後遺障害により生活に重大な支障が生じており,これによって多大な精神的苦痛を被っている。原告Aの苦痛を慰謝するには700万円をもってするのが相当である。

(ウ) 逸失利益

原告Aは,昭和28年10月5日生まれで,被告病院で人工肛門造設術を受けた当時49歳であり,67歳までの18年間働くことができたはずである。そこで,平成14年度の原告Aの収入4756万円の労働対価分4280万4000円(支払額の9割)を基礎とし,原告Aの後遺障害は後遺障害別等級第9級11号「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に該当するので,労働能力喪失率35パーセントとし,原告Aの就労可能年数に対するライプニッツ係数11.6895として計算すると,原告Aの逸失利益は1億7512万5075円となる。

42,804,000×0.35×11.6895=175,125,075円

(エ) 弁護士費用

被告は,任意の賠償に応じないため原告Aは原告代理人らに本訴提起及び訴訟追行を委任したが,被告の債務不履行と相当因果関係にある弁護士費用は1400万円が相当である。

イ 原告Bの損害  2205万3380円

(ア) 休業損害

原告Aは,原告Bの代表取締役の職に就き,発行済株式16万株のうち5万7566株を所有し,同社の業務全般を統括し,得意先との交渉にあたっていたものである。

このような事情に徴すると,原告Aが被告の債務不履行により休業した期間の休業損害及び逸失利益については,本来,被告から原告Aに支払われるべきものであるが,原告Bの出捐により立替払いとして,原告Bが原告Aに支払ったものあるいは将来支払われるものであるから,弁済者の任意代位又は事務管理の法理の適用により,被告は原告Bに対して休業損害相当分を支払うべきである。

原告Bから原告Aに対する支払額(年額4756万円)のうち,労働対価部分は,原告Bの実態と原告Aの役割等に鑑みて支払額の9割とみるべきである。また,原告Aは被告の債務不履行がなければ平成15年6月1日に就労可能であったが,平成16年1月4日までの合計171日休業を余儀なくされたのである。

したがって,原告Aの休業損害額は,以下のとおり2005万3380円となり,被告は原告Bに対し,上記金額を支払う義務がある。

47,560,000×0.9×171/365=20,053,380円

(イ) 弁護士費用

被告は,任意の賠償に応じないため,原告Bは原告代理人らに本訴提起及び訴訟追行を委任したが,被告の債務不履行と相当因果関係にある弁護士費用は200万円が相当である。

(被告の主張)

ア 原告Aの損害について

いずれも否認ないし争う。

原告Aの高額な収入は,原告Bの代表者としての役員報酬であり,それは企業の同族オーナーという立場からのものであるといってよいから,役員報酬は,原則として全額が相当因果関係のある損害ではないといえる。そのうち,労働対価分を考えるとしても,原告Bは,多数の従業員と車両を抱え,従業員の現業を中心とする,規模が大きく,営業が継続的に行われ,経営が確立している企業であり,個人ないしそれと同視しうるような企業ではない。このような原告Bの実態からすると,原告Aの役割は,真に代表者・経営者としての判断業務がその中核であり,現業業務は限られるものであるといえる。したがって,原告Aの労働対価分が役員報酬の9割であるとの原告Aの主張は,実質上は,企業損を労働対価分に言い換えているものである。

仮に,労働対価分を考えるとしても,上記の実態からは,通常の労働者分には達せず,限定されるべきであって,労働対価分として役員報酬の9割であるとの主張,また,その35パーセントが喪失したとの主張には,いずれも合理性・蓋然性はなく,相当因果関係はない。

仮に,被告病院担当医師の縫合に過失があったとしても,加療が必要であった原因は原告Aの素因からであり,必要期間分は因果関係はないし,因果関係のある部分についても素因減額されるべきものである。

また,仮に,被告病院担当医師に縫合不全の発見後れの過失があったとしても,本件ではいずれ再開腹術は必要であったものであり,加算される損害は発生していない。

イ 原告Bの損害について

いずれも否認ないし争う。

原告Bは,原告Aの役員報酬の9割が労働対価分であると主張するが,そのような高額な労働対価は考え難く,立替払いをいうにしても実質上は企業損害を言うに等しい。したがって,その意味では,一般に損害ということはできないし,また,損害発生の蓋然性はなく,相当因果関係もないものというべきである。

仮に,原告Bの主張を相当な労働対価分として限定的に考えるとしても,その基礎となる原告Aの損害がさらに限定ないし否定されるべきものであることは,上記アの被告の主張のとおりである。

第3当裁判所の判断

1  縫合不全について

(1)  縫合不全とは,消化管の吻合部または断端閉鎖部の治癒が障害され破綻した状態をいうところ,縫合不全の発生原因としては,吻合手技,吻合部の感染,血行障害等の局所的要因のほかに,栄養状態の低下,肝疾患や糖尿病の合併,ステロイド療法等の全身的要因も発生原因となりうるとされている(甲B6,9,11,乙B1,7)。

また,大腸は,血管構築が終末動脈的で粘膜,粘膜下の血管吻合が疎であり,腸内容は固形で細菌も多いことから,縫合不全に陥りやすい(乙B2,7)。

縫合不全が発生した場合,消化管内容物が腹腔内に漏出し,腹膜炎を発症する(甲B9)。

(2)  吻合を行うに際しては,縫合不全を防ぐため,適式な術式を選択し,縫合が細かすぎたり結紮が強すぎたりして血行を悪くしないこと,吻合部に緊張をかけないことが必要である(甲B10,乙B9)。

(3)  縫合不全の発生は,ドレナージの不良(ドレーン排液の汚染・悪臭),全身状態(腹痛・腹満・発熱等)の悪化,血液検査の結果(白血球増多・CRPの上昇等),腹部CTによる検査(腹腔内の液体貯留),ガストログラフィンによる消化管造影(造影剤の漏出)などにより診断される(甲B9,10,11,乙B1,7,8,9)。

(4)  縫合不全が発生する時期は,術後4日から10日以内が多く,術後3日以内に発生したものは,縫合の不備などを考えて早期に再手術を行うことを検討し,術後4日以後に発生したものについては,ドレナージの状況(ドレーン排液が汚染されているか否か等)や,全身状態を観察し,血液検査やCT等による腹腔内の検査を行いながら,保存的治療を試み,治癒傾向が認められない時や腹膜炎が悪化する時には再手術を選択するのが一般的である(甲B9,11,乙B1,7,8,9)。

2  争点(1)(縫合不全は吻合の手技に過失があったことに起因するものか否か)について

(1)  上記前提事実及び証拠(乙A48,証人E医師)によれば,以下の事実が認められる。

ア 本件手術の術者は,E医師,F医師及びC医師の3名であり,まず,執刀医であるC医師(助手はE医師)が,腹腔鏡下で胆嚢を摘出し,ペンローズドレーンを留置した上,創縫合をし,その後,C医師からF医師に執刀医を交代し(助手はE医師),F医師が,左下腹部の切開して,S状結腸を摘出し,良性腫瘍であることを確認した後,手縫いであるGambee縫合にて結腸の吻合を行い,ペンローズドレーンを留置した。

イ そして,本件再手術の結果,結腸の吻合分前壁に3mmと5mmの2か所の小穴が認められたので,縫合不全による腹膜炎が生じたと診断された。

(2)  吻合の手技についての過失の有無について検討する。

ア 上記(1)認定事実によれば,本件手術におけるS状結腸摘出後の吻合部位において縫合不全が発生したことが認められる。

もっとも,上記1認定のとおり,吻合手技は縫合不全の発生原因となりうるが,それ以外にも縫合不全の発生原因となるものがあるから,縫合不全が起こったことをもって,直ちに吻合手技に過失があったということはできない。そして,上記1認定のとおり,縫合不全を防ぐためには,縫合に際し,適式な術式を選択し,縫合が細かすぎたり結紮が強すぎたりして血行を悪くしないこと,吻合部に緊張をかけないことが必要であるとされていることを考慮すると,債務不履行に該当する吻合手技上の過誤があるというためには,選択した術式が誤りであるとか,縫合が細かすぎた,あるいは結紮が強すぎた,もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたと認められる場合に限られると解するのが相当である。

イ 原告らは,原告Aに生じた縫合不全の原因について,①原告Aには縫合不全の発生因子とされる12項目の全身性因子は存在せず,②吻合の技術的な理由に起因する縫合不全は術後4日目に発生することが多いところ,本件においても術後4日目に縫合不全が発生していること,③本件手術では手縫いによるGambee縫合による吻合が行われたということを理由に,本件の縫合不全はF医師が不適切な吻合操作をしたことが原因であると主張する。そして,D医師作成の陳述書(甲B6)には,原告らの上記主張に沿う記載部分がある。

まず,原告らの主張①については,上記1認定のとおり,栄養状態の低下,肝疾患や糖尿病の合併,ステロイド療法等は縫合不全の原因となりうることが認められるところである。しかし,上記1の(1)認定の引用証拠(甲B6,乙B1,7)も,上記全身性因子がない場合にはすべて手技上の過誤による縫合不全が原因であると断じているわけでもないことを考慮すると,原告ら主張の全身性因子が原告Aに存在しなかったということから,直ちにF医師の吻合手技に過失があったと推認することはできない。

また,証拠(乙B2)によれば,喫煙も縫合不全の原因となり得るものであることが認められるところ,原告Aは1日40本位の煙草を吸うヘビースモーカーであり,入院中の一時外出中にも煙草を吸っていた(乙B2p42,p44)ことを考慮すると,原告Aに縫合不全の危険因子がなかったとはいえないというべきである。

また,原告らの主張②については,証拠(甲B6)中には同主張に沿う記載部分がある。しかし,証拠(乙B9)によれば,開腹手術をしてから4日前後の時期は,手術後8時間ころから回復し始めた腸管運動による排ガスがみられる時期であり,このころに腸管内圧が高まること,また,同時期は,吻合部の治癒機転からみても機械的な癒合から生物的な癒合に移行する時期で,もっとも吻合部の組織が脆弱であることから,吻合部に血行障害や物理的圧迫などなんらかの障害が生じている場合には,縫合不全が発生する可能性が高いことが認められる。そうすると,開腹手術後4日目に縫合不全が発生することが多いのは,その時期に腸管内圧が高まる反面,吻合部の組織が最も脆弱な状態になっていることに起因するのであるから,開腹手術後4日目に縫合不全が発生したことは,吻合手技に問題があったことを直ちに裏付けるものとはいえない。また,上記1認定のとおり,大腸は,血管構築が終末動脈的で粘膜,粘膜下の血管吻合が疎であり,腸内容は固形で細菌も多いことから,もともと縫合不全が発生しやすい部位であることを考慮すると,開腹手術後4日目に縫合不全が発生したということをもって,吻合手技に問題があったと推認することも困難であるというべきである。

さらに,原告らの主張③については,証拠(甲B5)によれば,手縫いの場合にはGambee縫合による吻合が合理的とされていることが認められるから,Gambee縫合による吻合を選択したことが誤りであったとはいえない。また,原告らは,F医師は経験の浅い医師であったから縫合不全は縫合手技に起因すると考えられると主張する。F医師のGambee縫合の経験数は不明であるが,上記(1)認定のとおり,本件手術にはA医師が助手として立ち会っているところ,E医師はF医師の先輩であり,被告病院において年間200例程度行われる大腸の手術に関与している(証人E医師)のであるから,F医師の吻合手技に,縫合が細かすぎた,あるいは結紮が強すぎた,もしくは縫合部に対し過度の緊張を与えたといった問題があったにもかかわらず,E医師がそのまま手術を終了させるとは考え難い(E医師も,本件手術に際しF医師の縫合がちゃんとできていることを確認した旨供述している。)。また,上記1認定のとおり,手術後3日以内に発生した縫合不全については縫合の不備が疑われて再手術が検討されるところ,上記前提事実のとおり,本件手術後3日目である平成15年5月15日までの間に特に異常は窺えなかったところである。これらを考慮すると,原告ら主張の事情をもって吻合技術に問題があったと推認することはできないというべきである。

ウ 以上のとおり,本件手術は,縫合不全が発生しやすい大腸(S状結腸)を対象とするものであったこと,原告Aは喫煙者であり,縫合不全の危険因子がないとはいえず,縫合手技以外の原因により縫合不全が発生した可能性が十分あること,F医師による吻合の方法が不適切であったことを裏付ける具体的な事情や証拠はないことを考慮すると,原告Aに生じた縫合不全がF医師の不適切な吻合操作によるものであると認めることはできないというべきである。

したがって,争点(1)に対する原告らの主張は理由がない。

3  争点(2)(平成15年5月17日の処置に過失があるか否か)について

(1)  上記前提事実及び証拠(乙A2p68~81,乙A48,証人E医師)によれば,以下の事実が認められる。

ア 平成15年5月16日

(ア) 被告病院担当医師は,午前8時ころ原告Aを診察したが,ドレーンのガーゼ交換では漿液性の付着物が認められた。被告病院担当医師は,上記診察の結果,原告Aに留置してあった経尿道的バルーンカテーテルを抜去した。

(イ) 原告Aは,この日から食事の摂取を開始したが,午後3時過ぎから下腹部から陰部にかけて疼痛を覚えるようになり,午後3時45分ころ陰部の亀頭先端が痛いとして排尿困難を訴えた。被告病院担当医師は,上記バルーンカテーテル抜去後に排尿困難と下腹部から陰部にかけての疼痛の症状が出たこと,上記バルーンカテーテルを本件手術前に挿入する際に困難を伴ったことから,原告Aの上記症状は上記バルーンカテーテル操作時に尿道損傷,前立腺炎が生じた可能性があると考えた。そこで,まず導尿を行い400mlの尿を流出させたところ,痛みが軽減したとのことであったので,被告病院担当医師は,尿道損傷,前立腺炎の疑いがあるとして経過を観察することにした。

(ウ) その後,午後9時すぎに原告Aが悪寒を訴え,体温も午後10時に39.1度に上昇した。被告病院担当医師は,原告Aの上記症状は,尿道損傷,前立腺炎の炎症による症状と考えて,引き続き経過観察を行うとともに,発熱があったことから抗菌剤であるクラビットを投与した。

イ 平成15年5月17日

(ア) 原告Aの体温,血液検査結果等は,別紙診療経過一覧表の5月17日欄のとおりである。原告Aは,陰部痛の他に腹部全体の腹痛を訴えていたが,腹部について筋性防御は認められなかった。腹部レントゲン検査の結果,横行結腸にガスが存在しているとの所見が認められた。

(イ) 被告病院担当医師は,血液検査の結果からは感染症が考えられるが,腹部レントゲン検査で認められたガスはフリーエアーであり,腹部開腹手術後は1週間から2週間程度認められるのが通常で,ドレーンも設置してドレーンを通して腹腔と外部との交通があることから,ガス(フリーエアー)の存在が消化管穿孔を示すものとはいえないこと,原告Aが訴える腹部痛は吻合した左腹部ではなく右腹部であり,陰部痛も訴えていたことから,原告Aの症状について縫合不全の可能性は否定できないが,原告Aの上記症状からすると本件手術におけるバルーンカテーテル操作時に困難を伴ったので,その時に尿道・前立腺にかけて尿道損傷,前立腺炎を引き起こしたことが疑われると判断し,鎮痛剤の他に抗菌剤のクラビットを引き続き投与した上,縫合不全の可能性も否定できないことから絶食の措置をとって,しばらく原告Aの症状を観察しながら必要な治療を行うことにした。

(2)  縫合不全の発生は,ドレナージの不良(ドレーン排液の汚染・悪臭),全身状態(腹痛・腹満・発熱等)の悪化,血液検査の結果(白血球増多・CRPの上昇等),腹部CTによる検査(腹腔内の液体貯留),ガストログラフィンによる消化管造影(造影剤の漏出)などにより診断される(上記1の(3))。

そして,術後3日以内に発生した縫合不全については,縫合の不備などを考えて早期に再手術を行うことを検討し,術後4日以後に発生した縫合不全については,ドレナージの状況や,全身状態を観察し,血液検査やCT等による腹腔内の検査を行いながら,保存的治療を試み,治癒傾向が認められない時や腹膜炎が悪化する時には再手術を選択するのが一般的である(上記1の(4))。

上記(1)認定のとおり,平成15年5月16日及び同月17日の段階で,原告Aには,白血球の増多・CRP値の上昇の他に発熱及び腹痛の症状が認められたものの,ドレーン排液は漿液性であり,腹痛も吻合部である左腹部ではなく右腹部であったこと,腹部レントゲン検査の結果からは縫合不全を裏付ける所見は認められなかった反面,原告Aが訴える陰部痛については,本件手術におけるバルーンカテーテル操作時に困難を伴ったことに起因する可能性があったことが認められる。

そうすると,原告Aの症状について,縫合不全であることの可能性は否定できないとしつつも,尿道損傷・前立腺炎の疑いがあるとの被告病院担当医師の判断が不合理であったということはできない。

そして,上記判断を前提に抗菌剤であるクラビットを投与しつつ,絶食として経過をみることにしたという被告病院の医師の措置が不合理であったともいえない。

(3)  原告らは,平成15年5月17日に撮影の腹部単純X線写真において横隔膜下に遊離ガスが存在しており,消化管穿孔が強く疑われた上,高熱,白血球数及びCRP値の上昇という縫合不全を疑わせる兆候を認めたのであるから,被告病院担当医としては,縫合不全からの腹膜炎を疑い,排出液の細菌培養検査を行うなどして起炎菌に効果のある抗生剤を投与する内科的治療を行うとともに,外科的処置としてドレナージを行うべき注意義務があったと主張する。そして,D医師作成の陳述書(甲B6)には,原告らの上記主張に沿う記載部分がある。

上記(1)認定のとおり,平成15年5月17日に行われたレントゲン検査では横行結腸にガスの存在が認められたが,これは開腹手術後には通常存在するものであり,直ちに縫合不全を裏付けるものとはいえない。また,上記(1)認定のとおり,原告Aに発熱,白血球増多及びCRP値の上昇が認められたものの,吻合部の左腹部ではなく右腹部の腹痛を訴えていたこと(乙B1号証によれば,吻合部位ではなく他部位で縫合不全からの漏出による炎症・感染・痛みが生じるケースはかなり稀であることが認められる。)や,ドレーン排液は漿液性であった反面,尿道損傷・前立腺炎を疑う理由もあったことが認められるのであるから,縫合不全であることの可能性は否定できないとしつつも,尿道損傷・前立腺炎の疑いがあるとの被告病院担当医師の判断が不合理であったということはできない。そうすると,被告病院担当医師において,排出液の細菌培養検査やドレナージを行うべき注意義務があったとはいえない。

したがって,争点(2)に対する原告らの主張は理由がない。

4  争点(3)(平成15年5月18日の処置に過失があるか否か)

(1)  上記前提事実及び証拠(乙A2p80~87,乙A48,証人E医師)によれば,以下の事実が認められる。

ア 平成15年5月18日午前1時50分ころ原告Aのドレーン抜去部のガーゼに膿が付着していることが認められた。そこで,被告病院担当医師は,点滴により抗生剤(カルベニン)を投与することにした。

イ 同日午前3時30分ころ,原告Aの体温は38.1度であり,尿道の痛みを訴えたため,被告病院担当医師は,鎮痛剤(ロピオン)を投与することにした。

ウ 同日午前7時20分ころドレーン抜去部のガーゼ交換をした際にガーゼに膿が付着していた。原告Aは,尿道の痛みと右腹部痛を訴えていた。

エ 同日午前9時45分ころから,原告Aに対し,腹部CT検査が行われ,被告病院担当医師は,「直腸膀胱窩から右傍結腸溝にかけて被包化されたeffusion(滲出液)を認め,辺縁は淡く濃染し,内部に一部air density(空胞陰影)を認めます。腹腔内abscess(膿瘍)が疑われます。周囲脂肪織の炎症性変化は目立ちません。腹壁下にair densityと内部にeffusionが見られ,術後変化と思われます。腹水,有意なリンパ節腫大は指摘できません。」との所見を認めた。

オ 同日午後3時ころに被告病院担当医師が原告Aを診察したが,原告Aの体温は37.8度であり,相変わらず右腹部痛を訴えていた。そこで,被告病院担当医師は,再度ドレーンを挿入したが,十分な排液が得られないため,適切な位置まで到達していないと考えたものの,それ以上無理に押し込むのはかえってよくないと判断し,それ以上挿入することは控えた。

カ 被告病院担当医師は,原告Aに発熱の症状が継続し,白血球数及びCRP値も高いことから縫合不全の可能性は否定できないが,腹部CT検査で認められたeffusion(滲出液)は吻合部の左腹部ではなく右腹部であったこと,原告Aが訴える腹部痛も左腹部ではなく右腹部であったことからすると,急性虫垂炎をはじめとする炎症性腸疾患を疑って治療をするのが相当であると判断し,クラビットよりも強力な抗生剤であるカルベニンを投与して,しばらく原告Aの症状を観察しながら必要な治療を行うことにした。

(2)  縫合不全の発生は,ドレナージの不良(ドレーン排液の汚染・悪臭),全身状態(腹痛・腹満・発熱等)の悪化,血液検査の結果(白血球増多・CRPの上昇等),腹部CTによる検査(腹腔内の液体貯留),ガストログラフィンによる消化管造影(造影剤の漏出)などにより診断される(上記1の(3))ところ,上記(1)認定のとおり,平成15年5月18日において,原告Aは,発熱が継続し,白血球数・CRP値が依然高い状態であり,ドレーン抜去部のガーゼには膿が付着していたことが認められる。

しかし,一方,同日におこなわれた腹部CT検査では,腹腔内にeffusion(滲出液)の存在は認められたものの,その部位は吻合部である左腹部ではなく右腹部であり,原告Aが訴える腹部痛の位置も同様であったものである。

そうすると,縫合不全の可能性も考えた上,急性虫垂炎をはじめとする炎症性腸疾患を疑ってカルベニンを投与して,しばらく原告Aの症状を観察しながら必要な治療を行うことにしたという被告病院担当医師の判断が不合理なものであったということはできない。

(3)  原告らは,原告Aにおいて,5月18日に,高熱,白血球数,CRP値の上昇に加えて,ドレーン排液の汚染が認められたのであるから,ドレーン排液の汚染が確認されれば,縫合不全はほぼ確実であり,被告病院担当医師としては,縫合不全からの腹膜炎を疑い,排出液の細菌培養検査を行うなどして,起炎菌に効果のある抗生剤を投与する内科的治療を行うとともに,外科的処置としてドレナージを行うべき注意義務があったと主張する。そして,D医師作成の陳述書(甲B6)には,原告らの上記主張に沿う記載部分がある。

ところで,原告らは,ドレーン排液の汚染が確認されれば縫合不全はほぼ確実であると主張するが,腹部CT検査ではeffusion(滲出液)は吻合部である左腹部ではなく右腹部に存在し,吻合部位ではなく他部位で縫合不全からの漏出による炎症・感染・痛みが生じるケースはかなり稀である(乙B1)ことを考慮すると,縫合不全がほぼ確実であるとは直ちにいえず,被告病院担当医師が縫合不全であると直ちに判断しなかったことが不合理なものであったということはできない。

また,排出液の培養検査や消化管造影検査が行われなかったことは原告ら主張のとおりであるが,上記のとおり被告病院担当医師は,腹部CT検査の結果等も考慮して,縫合不全の可能性も考えた上,急性虫垂炎をはじめとする炎症性腸疾患を疑ってカルベニンを投与し,しばらく原告Aの症状を観察しながら必要な治療を行うことにしたものであり,平成15年5月18日の時点における原告Aの状態に照らすと,さらに原告ら主張の上記検査を行って原告Aの症状が縫合不全に起因するものであるか否かを確定すべき注意義務があったとまでは認められないというべきである。

したがって,争点(3)に対する原告らの主張は理由がない。

5  まとめ

以上のとおり,本件手術,平成15年5月17日及び同月18日における被告病院担当医師の処置・判断に過失があった旨の原告らの主張はいずれも理由がない。

したがって,争点(4)(後遺障害の有無)及び争点(5)(損害)について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきものである。

第4結論

よって,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 永野圧彦 裁判官 田邊浩典 裁判官 奥田大助)

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