名古屋地方裁判所 平成18年(ワ)1533号 判決 2007年2月28日
原告
X1
ほか二名
被告
Y1
ほか一名
主文
一 被告Y2は、原告X1及び同X2に対し、各三八〇万三〇四九円及びこれに対する平成一五年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告Y2は、原告X3に対し、七五五万六〇九八円及びこれに対する平成一五年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告Y1は、原告X1及び同X2に対し、各三三万五〇〇〇円及びこれに対する平成一五年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告Y1は、原告X3に対し、六七万円及びこれに対する平成一五年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 原告らのその余の請求を棄却する。
六 訴訟費用は、これを六〇分し、その四四を原告らの、その一五を被告Y2の、その一を被告Y1の各負担とする。
七 この判決は、原告ら勝訴部分に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告X1に対し、連帯して金一五三二万四〇三四円及びこれに対する平成一五年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告X2に対し、連帯して金一五三二万四〇三四円及びこれに対する平成一五年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告らは、原告X3に対し、連帯して金三〇六四万八〇六九円及びこれに対する平成一五年一〇月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、普通貨物自動車が歩行者に衝突し、その後普通乗用自動車が同人を轢過して引きずり死亡させた事故について、被害者の相続人である原告らが、自動車を運転していた被告らに対し、民法七〇九条、同法七一九条、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、上記事故により生じた損害の賠償を求めた事案である。
一 前提事実(当事者間に争いがないか又は認定の後にかっこ内に掲示した証拠により容易に認められる事実)
(1) 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生
ア 日時 平成一五年一〇月二八日午後五時四〇分ころ
イ 場所 栃木県小山市城北四丁目三七番地一九
ウ Y2車 自家用普通貨物自動車(<番号省略>)
同運転者 被告Y2
エ Y1車 自家用普通乗用自動車(<番号省略>)
同運転者 被告Y1
オ 被害者 A
カ 事故態様 Aが横断歩道を東から西に横断していたところ、時速六〇キロメートルでY2車を走行させていた被告Y2がAに衝突し同人を転倒させた(以下「第一事故」という。)。さらに、Y1車を走行させていた被告Y1が転倒したAに衝突し、制動の措置を取らずに約五五〇メートル同人を引きずった(以下「第二事故」という。)。
(2) Aの死亡
Aは、本件事故によって死亡した。
(3) 被告Y2の責任原因
被告Y2は、横断歩行者の有無を確認しながら進行し、もって事故の発生を未然に防止すべき業務上の義務があるのにこれを怠り、左方道路の安全確認に注意を奪われ前方不注視の過失により、同速度のまま走行し、本件第一事故を発生させたものであり、民法七〇九条の不法行為責任に基づく損害賠償責任を負うものである。
(4) 相続
原告X3はAの妻、原告X1及び同X2はAの子である。Aの死亡により、本件事故に基づくAの損害賠償請求権を原告X3は二分の一、原告X1及び同X2は各四分の一の割合で相続した。
(5) 既払金五七六〇万九九一〇円
ア 自賠責保険から五七四九万三九〇〇円
イ 被告らの契約する保険会社から一一万六〇一〇円(弁論の全趣旨)
二 争点
(1) 被告Y1の過失の存否及びその内容
(原告の主張)
被告Y1は、自動車運転者としては障害物等に衝突してしまった場合には急制動の措置を講じて直ちに停止し、それが人間でないかを確かめる義務があるのに、かかる義務を怠った過失により本件第二事故を発生させたものであり、民法七〇九条の不法行為責任に基づく損害賠償責任または自己のためにY1車を運行の用に供する者として自賠法三条の運行供用者として損害賠償責任を負うものである。
(被告Y1の主張)
被告Y1からすれば、Aは衝突直前に現れたもので、人かどうか確かめる義務があるということはできない。本件事故が発生したのは、一〇月末の午後五時四〇分ころであり、すでに日没後の時間帯でかなり暗くなっていた上に、事故現場付近は街路灯もなく、当時雨が降っていたため、見通しも悪い状況であった。このように視認状況が悪かったことに加えて、車道上に人が倒れていることを想定することは困難であり、被告Y1はAを人とは気付かずにいたものである。
(2) 被告Y1の過失行為とA死亡の結果との間の因果関係
(原告の主張)
Y1車がAに衝突後、被告Y1がブレーキを踏んでいれば、同人は死に至らなかった。
(被告Y1の主張)
Aの死因は、胸背部への外力に基づく胸腔内臓器損傷と見られるところ、同人は、Y1車の車底部と道路との間に挟まり、その瞬間に致命傷を負ったと考えられる。被告Y1がAを轢過したとき、ただちに停車していたとしてもA死亡の結果は避けられなかった。
(3) 過失相殺
(被告Y2の主張)
ア 本件事故当日の日の入り時間は午後四時四九分であり、事故時は既に日没しており、更に強い雨が降っていて暗く、見通しの悪い状態であった。またAは黒い傘をさして横断しており、Y2車からは発見しにくい状態であった。
イ これに対して、Aが前照灯をつけて近づいてくるY2車を発見しその危険を認識することは十分可能であった。
ウ また、本件道路は、三車線あり両側に広い歩道がついている広い道路で、交通量は車は普通であるのに対し、人は閑散としている状況であり、幹線道路と評価できる。
エ したがって、被告Y2とAの過失割合は、九〇:一〇とするのが妥当である。
(4) 損害
(原告の主張)
ア Aの損害
(ア) 逸失利益 五二二九万〇〇三八円
六〇歳までの逸失利益については、年収七一八万六二〇〇円を基礎として、生活費控除を三割とし、五年間(ライプニッツ係数四・三二九)で計算する。
六〇歳から六七歳までの逸失利益については、平成一四年の大卒当該年齢の平均給与額六七四万四七〇〇円を基礎として、生活費控除を三割とし、八年間(ライプニッツ係数六・四六三)で計算する。
(イ) 慰謝料 三〇〇〇万円
AはX家の大黒柱として家族の期待を一心に集めていたのであり、死亡したその精神的苦痛を思うとき、被告Y2は勿論、被告Y1は自家用車の前輪部にAを巻き込み、生きたままの状態で約五五〇メートル走行したのであるから、この時、Aがいかに苦しみ、痛みを感じていたかは想像を絶するものがある。Aは被告Y1の運転がなければ生きていたはずであり、Aの無念さは筆舌に尽くしがたい。かかるAの苦しみ、痛み、無念さを思い、被告Y1らには三〇〇〇万円の慰謝料を請求する。
(ウ) 以上合計 八二二九万〇〇三八円
(エ) その他に後記被告らの主張ア(ア)ないし(ウ)の損害がある。
イ 原告ら固有の損害
(ア) 慰謝料 三〇〇〇万円
Aは原告X3の夫、同X1と同X2の父であり、X家の大黒柱として精神的、金銭的支えとなってきたのであるから、死亡したことによる原告らの精神的苦痛を思うとき、慰謝料として被告Y2及び被告Y1には原告X3に対して一五〇〇万円、同X1及び同X2に対して各七五〇万円の支払いが相当である。
(イ) 葬式費用 一五〇万円
原告らは一家の大黒柱であるAの葬儀の為少なくとも一五〇万円を要した。
(ウ) 以上合計 三一五〇万円
ウ 弁護士費用 五〇〇万円
(被告らの主張)
ア Aの損害
(ア) 治療費 一二万四四一〇円
(イ) 諸雑費 一一〇〇円
(ウ) 文書料 四四〇〇円
(エ) 逸失利益 三八六八万一二九一円
六〇歳までの逸失利益については、年収七一八万六二〇〇円を基礎として、生活費控除を四割とし、五年間(ライプニッツ係数四・三二九)で計算する。
六〇歳から六七歳までの逸失利益については、平成一五年の大卒当該年齢の平均給与額六五八万七五〇〇円を基礎として、生活費控除を四割とし、ライプニッツ係数は一三年ライプニッツ係数九・三九三五から五年ライプニッツ係数四・三二九四を控除した五・〇六四一で計算する。
(オ) 慰謝料 二六〇〇万円
(カ) 以上合計 六四八一万一二〇一円
イ 原告ら固有の損害
(ア) 原告ら固有の慰謝料については否認する。
(イ) 葬式費用については金額を争う。
ウ 弁護士費用については否認する。
第三争点に対する判断
一 争点(1)(被告Y1の過失の存否及びその内容)について
(1) 証拠(乙一―三、一―四、一―六、一―七、一―九ないし一八、一―二六ないし二九、一―三一、丙一)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故の状況について、以下の事実が認められる(別紙参照)。
ア 平成一五年一〇月二八日午後五時四〇分ころ、被告Y2は直線道路を時速約六〇キロメートルで南から北進していたが、信号機の設置されていないT字型交差点において、左方道路の安全確認に注意を奪われ、前方注視を怠ったため、東から西へ道路を歩行横断中のAの発見が遅れ、急制動の措置をとる間もなく、同速度のまま走行し、自車右前部を同人に衝突させ、右前方路上に転倒させた。
イ Aが道路を横断し始めたとき、被告Y1はそのときAがいた地点(
一地点)から約一二八・八メートルの地点(地点)にいた。
ウ Y2車がAに衝突した約二秒後、反対車線を時速約五〇キロメートルで北から南進していた被告Y1は、転倒していたAに衝突し、同人をひきずったまま約五五〇メートル走行した。その際、被告Y1は、Aが道路上に倒れていた地点(<ア>地点)から六・〇メートルの地点で、<ア>地点の道路上に黒っぽいものがあるのを認めたが、そのまま時速約五〇キロメートルで同物体の上を通過し、車の下からガタガタと音がし続けていたことから、約五五〇・七メートル走行して車を止めた。
エ 事故当時、日没後で、雨が降っており、付近には街路灯が設置されているが、さほど明るいという状態ではなかった。
(2) 以上を前提に被告Y1の過失について判断するに、Aが被告Y1の進行車線を通りすぎたとき、Aは
一地点から二・八メートル進んでおり、Aの歩行速度は秒速一・二メートルであるとして、約二・三秒を要している。その間に被告Y1は、時速五〇キロメートル、秒速一三・七メートルで走行しているとして、地点から約三一・五メートル進んでおり、Aの位置との距離は約九七・三メートルあり、Aの姿を確認することは不可能であった。また、AがY2車と衝突したとき、Aは 一地点から七・四メートル進んでおり、約六秒を要している。その間に被告Y1は、地点から約八二・二メートル進んでいるが、Aとの間の距離は少なくとも四六・六メートルはあり、この時点においてもAの姿を確認することは不可能であったし、第一事故について認識することも不可能であった。よって、被告Y1が道路上にある物体が人間である可能性を明確に認識する契機は存在しなかった。ちなみに、時速五〇キロメートルで走行の車は路面が濡れていると、停止距離は三二・二メートルとなるが、実況見分での再現では、前部バンパーから運転席の距離二メートルを加算した三四・二メートル手前でAは確認できない。 しかし、被告Y1は、Aが倒れていた地点から六・〇メートルの地点で、何か黒っぽいものがあることに気付き、それを轢過した衝撃を感じ、その後車体の下に轢過した物体が引っかかっていることを認識していた。被告Y1が発見した物体は、Aであり、それなりの大きさであることは認識し得ていたといえる。そうであれば、それが人である可能性に鑑み、急制動の措置を講じて直ちに停止し、安全確認をする義務があったといえる。しかし、被告Y1は、そのまま約五五〇メートルを速度をゆるめることもなく走行したのであり、上記安全確認義務違反の過失があったといえる。 二 争点(2)(被告Y1の過失行為とA死亡の結果との間の因果関係)について (1) 証拠(甲三、四、乙一―一八ないし二〇、一―三〇)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故によるAの死因について、以下の事実が認められる。 ア 本件事故により、Aは死亡した。胸背部内部において多発肋骨骨折、右胸鎖関節脱臼、心嚢破裂、心臓破裂、背挫傷、大動脈損傷が認められ、Aの死因は、胸背部への外力に基づく胸腔内臓器損傷であると認められる。 イ かかる死因に関する損傷の殆どは、Aがうつぶせの状態で車底部と路面に間に挟み込まれた状態で車両に轢過されたことによって生じた。Aの受傷箇所、受傷の程度等からすると、Aの身体が車底部と路面の狭い部分に挟まれて胸部を強く圧迫されたと認められ、車底部と路面の間に挟まれて圧迫されたのとほぼ同時に、心臓破裂等の胸腔内臓器損傷の致命傷を負ったと考えられる。 (2) 以上を前提に、被告Y1の上記過失行為とA死亡の結果との間の因果関係について判断するに、Aは車底部と路面に身体が挟まれた瞬間に致命傷を負ったのであり、被告Y1の上記過失行為とA死亡の結果との因果関係は認められない。 三 争点(3)(過失相殺)について (1) 上記一で認定した事実を前提に過失相殺について判断するに、事故当時、日没後で雨も降っており、街灯はあるものの明るくはなかったという状態からすると、車からは歩行者を発見するのは容易ではないのに対して、歩行者からはライトを点灯している車の発見は容易であり、Aが左右の安全を確認すれば、Y2車に気付いて事故を回避できた可能性は否定できない。 しかし、交通整理の行われていない横断歩道にあっては、車は、横断歩行者がいないことが明らかでない限り、当該横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず、横断中あるいは横断を開始しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、その通行を妨げてはならない。それにもかかわらず、被告Y2は、左方道路の安全確認に注意を奪われ、前方注視を怠った上、減速することなく横断歩道を走行しており、被告Y2側に著しい過失が認められる以上、過失相殺は認められないというべきである。 四 争点(4)(損害)について (被告Y2の過失行為から生じた損害) (1) Aの損害 ア 治療費 一二万四四一〇円 イ 諸雑費 一一〇〇円 ウ 文書料 四四〇〇円 (以上については、当事者間に争いはない。) エ 逸失利益 (ア) 定年退職までの間の得べかりし収入 証拠(甲一)及び弁論の全趣旨によれば、Aは、昭和○年○月○日生で、本件事故当時は五五歳であったこと、Aの年収は七一八万六二〇〇円であったこと、Aは、本件事故当時、原告らを扶養していたことが認められる。 したがって、Aが定年退職までの間に得べかりし収入は、上記年収を基礎とした上で、生活費控除率を三〇パーセントとし、ライプニッツ方式により五年間の中間利息を控除すると、下記の算式のとおり、二一七七万六三四一円となる。 718万6200×(1-0.3)×4.329=2177万6341円 (小数点以下切捨て) (イ) 定年退職後の得べかりし収入 弁論の全趣旨によれば、Aが大学卒業という学歴を有していたことが認められ、定年退職後の基礎収入としては、平成一五年の大卒男子労働者全年齢平均賃金(年収六五八万七五〇〇円)を採用するのが相当である。 また、証拠(甲一)によれば、Aが定年六〇歳で退職した時点で、原告X2は二九歳、原告X1は二七歳にそれぞれ達していることが認められるから、原告X2及び同X1は、いずれも別に世帯を設けている蓋然性が高いというべきである。そうとすれば、Aは、原告X3と二人だけの生活を送っているということになるから、生活費控除率は四〇パーセントとするのが相当である。 したがって、Aが定年退職後六七歳までの就労可能期間に得べかりし収入は、上記年収を基礎とした上で、上記生活費控除率を用い、ライプニッツ方式により一三年間の中間利息から五年間の中間利息を控除すると、下記の算式のとおり、二〇〇一万五八五五円となる。 658万7500×(1-0.4)×(9.3935-4.3294)=2001万5855円(小数点以下切捨て) オ 慰謝料 Aは、妻子三人の家庭の支柱であったこと、被告Y2の前方不注視という一方的な重過失が原因で、結果的にY1車の轢過による死亡という事態を引き起こしており、Aの無念さには計り知れないものがあること、その他本件訴訟に現れた一切の事情を勘案し、後記のとおり、原告らに固有の慰謝料が認められることも考慮すると、本件事故によりAが被った精神的損害に対する慰謝料としては、二〇〇〇万円が相当である。 カ 小計 上記アないしオの合計額は六一九二万二一〇六円となるから、原告X3が二分の一、原告X1及び同X2が各四分の一の割合でAの損害賠償請求権を相続したので、原告X3は三〇九六万一〇五三円、原告X1及び同X2は各一五四八万〇五二六円の損害賠償請求権を取得したことになるところ、原告らは、五七六〇万九九一〇円の損害の填補を受けているから、これを、二分の一の割合で原告X3の分に、各四分の一の割合で原告X1及び同X2の分に、それぞれ填補すると、原告X3は二一五万六〇九八円の、原告X1及び同X2は、各一〇七万八〇四九円の損害賠償請求権を取得したことになる。 (2) 原告ら固有の損害 ア 慰謝料 原告らは、被告Y2の著しい過失行為により、一家の大黒柱であるAを失ったのであり、その精神的苦痛は計り知れないものがあり、その精神的苦痛に対する慰謝料としては、原告X3につき四〇〇万円、原告X1及び同X2につき各二〇〇万円を認めるのが相当である。 イ 葬式費用 葬式費用は、被害者の突然の死により予期せぬ時期に葬儀を執り行わなければならなかった負担を損害として評価するものであり、ある程度一律的な損害を認定するのが相当であって、原告X3につき七五万円、原告X1及び同X2につき各三七万五〇〇〇円の計一五〇万円をもって損害と認める。 (3) 弁護士費用 認容額、本件の難易等諸般の事情を総合考慮すれば、本件第一事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、原告X3につき六五万円、原告X1及び同X2につき各三五万円を認めるのが相当である。 (4) 損害合計 以上のとおり、原告X3の損害額は、前記二一五万六〇九八円に固有の損害四七五万円と弁護士費用六五万円を加えた七五五万六〇九八円となる。原告X1及び同X2の各損害額は、前記一〇七万八〇四九円に固有の損害二三七万五〇〇〇円と弁護士費用三五万円を加えた三八〇万三〇四九円となる。 (被告Y1の過失行為から生じた損害) (1) Aの慰謝料 Aが、被告Y1の過失行為により、約五五〇メートルの間、Y1車に身体を引きずられて受けた身体的・精神的苦痛に対する慰謝料としては、一〇〇万円を認めるのが相当である。 原告X3が二分の一、原告X1及びX2が各四分の一の割合でAの損害賠償請求権を相続したので、原告X3は五〇万円、原告X1及びX2は各二五万円の損害賠償請求権を取得したことになる。 (2) 固有の慰謝料 本件事故の態様、原告らが受けた精神的苦痛、原告X3の本件事故の究明に対する努力など本件訴訟に現れた一切の事情を考慮すると、固有の慰謝料として、原告X3につき一〇万円、原告X1及び同X2につき各五万円を認めるのが相当である。 (3) 弁護士費用 認容額、本件の難易等諸般の事情を総合考慮すれば、本件第二事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、原告X3につき七万円、原告X1及び同X2につき各三万五〇〇〇円を認めるのが相当である。 (4) 損害合計 以上のとおり、原告X3の損害額は、前記五〇万円に固有の損害一〇万円と弁護士費用七万円を加えた六七万円となる。原告X1及び同X2の各損害額は、前記二五万円に固有の損害五万円と弁護士費用三万五〇〇〇円を加えた三三万五〇〇〇円となる。なお、被告Y1は被告Y2の過失、Aの死亡との因果関係を異にしており、共同不法行為とは言えない。 四 したがって、原告X1及び同X2の被告Y2に対する各請求は、三八〇万三〇四九円及び不法行為の日である平成一五年一〇月二八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないからこれを棄却し、原告X1及び同X2の被告Y1に対する各請求は、三三万五〇〇〇円及び不法行為の日である平成一五年一〇月二八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないからこれを棄却することとし、原告X3の被告Y2に対する請求は、七五五万六〇九八円及び不法行為の日である平成一五年一〇月二八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないからこれを棄却し、原告X3の被告Y1に対する請求は、六七万円及び不法行為の日である平成一五年一〇月二八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法六四条本文、六一条、六五条一項ただし書を適用して、主文のとおり判決する(自賠法三条による場合でも結論は変わらない。)。なお、被告らの仮執行免脱宣言の申立ては相当でないので、却下する。 (裁判官 德永幸藏) 交通事故現場見取図 <省略>