名古屋地方裁判所 平成2年(わ)1858号 判決 1991年3月18日
本籍
名古屋市中村区靖国町一丁目三六番地
住居
同町 一丁目六番地の一
会社役員
岡孝治
昭和二二年七月三〇日生
本籍及び住居
同区草薙一丁目一〇番地
会社役員
岡敬司
昭和一八年一二月一三日生
右両名に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官松村玲子出席の上審理し、つぎのとおり判決する。
主文
被告人岡孝治を罰金一七〇〇万円に、被告人岡敬司を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人岡孝治において右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
被告人岡敬司に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人岡孝治は、名古屋市中村区草薙町一丁目一〇番地において峰商店の名称でクレーン車リース業を営んでいたもの、被告人岡敬司は、同人の兄であって右峰商店の従業員として経理全般を担当していたものであるが、被告人岡敬司は、不況時に備えるため及び事業規模拡大のために裏金を作ろうと考え、そのために、被告人岡孝治の業務に関し、同人の所得税を免れようと企て、野崎久枝に指示し売上の一部を除外するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和六二年分の実際の所得金額が五八七〇万九〇四四円で、これに対する所得税が二七〇一万二五〇〇円であるのに、同六三年三月一五日、名古屋市中村区太閤三丁目四番一号所在の名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零円であり、これに対する納付すべき所得税額はない旨の虚偽過少の損失申告書を提出し、右所得税額二七〇一万二五〇〇円を免れ、
第二 昭和六三年分の実際の所得金額が九九六一万八〇七四円で、これに対する所得税が四九六九万六六〇〇円であるのに、平成元年三月一四日、前記名古屋中村税務署において、同税務署長に対し、所得金額が零円であり、これに対する納付すべき所得税額はない旨の虚偽過少の損失申告書を提出し、右所得税額四九六九万六六〇〇円を免れ、
もって、いずれも不正の行為により被告人岡孝治の所得税を免れたものである。
(証拠の標目)
判示の事実全部について
一 被告人両名の当公判廷における各供述
一 被告人両名の検察官に対する各供述調書
一 被告人岡孝治(三通)及び同岡敬司(八通)の大蔵事務次官に対する各質問てん末書
一 野崎久枝の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官(五通)に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の査察官調査書二〇通
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の昭和六二年度分に関する脱税額計算書
一 名古屋中村税務署長作成の証明書(昭和六二年度分)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の昭和六三年度分に関する脱税額計算書
一 名古屋中村税務署長作成の証明書(昭和六三年度分)
(法令の適用)
一 被告人岡敬司の判示各所為 いずれも所得税法二三八条
一 両罰規程 被告人岡孝治についていずれも同法二四四条一項、二三八条
一 刑種の選択 被告人岡敬司につき懲役刑選択
一 併合罪加重 被告人岡敬司につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)
被告人岡孝治につき同法四五条前段、四八条一項
一 労役場留置 被告人岡孝治について同法一八条
一 刑の執行猶予 被告人岡敬司について同法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 伊藤新一郎)