名古屋地方裁判所 平成24年(行ウ)105号 判決 2015年3月05日
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1 鈴鹿税務署長が平成23年5月24日付けでした原告P1株式会社の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち納付すべき税額1375万2800円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
2 鈴鹿税務署長が平成23年5月24日付けでした原告P1株式会社の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分のうち消費税の納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)125万2218円を超える部分及び地方消費税の納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)31万3054円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
3 鈴鹿税務署長が平成23年5月24日付けで原告株式会社P2に対してした平成21年4月1日から平成22年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額につきマイナス(欠損金額)1828万0409円を超える部分,納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)83万9431円を超える部分,翌期へ繰り越す欠損金につき1828万0409円を下回る部分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
第2事案の概要等
1 事案の概要
本件は,①原告P1株式会社が,平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度(以下「平成21年3月期」といい,他の事業年度についても同様とする。)の法人税及び平成20年4月1日から平成21年3月31日までの課税期間(以下「平成21年3月課税期間」という。)の消費税・地方消費税(以下「消費税等」という。)についてそれぞれ確定申告をしたところ,鈴鹿税務署長から,これら確定申告には原告株式会社P2に対する寄附金を営業権の対価であるなどとして過剰に損金算入した違法があることなどを理由として,平成23年5月24日付けで,法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに消費税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため,これらの処分(以下「本件原告P1各処分」という。)の各取消し(ただし,各更正処分については,上記確定申告により自ら確定させた納付すべき税額を超える部分に限る。)を求めた抗告訴訟(請求の趣旨1項及び2項に係る訴え)と,②原告株式会社P2が,平成22年3月期の法人税について確定申告をしたところ,鈴鹿税務署長から,原告P1株式会社から受けた寄附金に係る受贈益の計上漏れがあることなどを理由として,平成23年5月24日付けで,法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため,これらの処分(以下「本件原告P2各処分」といい,本件原告P1各処分と併せて,以下「本件各処分」という。)の各取消し(ただし,更正処分については,上記確定申告により自ら確定させた納付すべき税額等を超える部分に限る。)を求めた抗告訴訟(請求の趣旨3項に係る訴え)である。
2 関係法令の定め
別紙1「関係法令の定め」記載のとおりである。
3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は,特記しない限り枝番を含む。)
(1) 原告ら
ア 原告P1株式会社(以下「原告P1」という。)は,ゴルフ場,スポーツ施設の設計,施工及びその経営等を目的として昭和61年7月18日に設立された株式会社(法人税法2条10号の同族会社)である。(甲19,23,乙1,4,弁論の全趣旨)
イ 原告株式会社P2は,生コンクリートの製造・販売等を目的として昭和59年11月28日に設立された株式会社(法人税法2条10号の同族会社)であり,平成12年11月15日,商号を旧商号(P3株式会社)から現在の商号である「株式会社P2」に変更した(以下では,商号変更の前後を問わず,「原告P2」という。)。(乙5,証人P4,弁論の全趣旨)
ウ 原告らの代表取締役は,現在,いずれもP5が務めている。
(2) P6(以下「本件ゴルフ場」という。)の概要等
ア 本件ゴルフ場は,三重県鈴鹿市α内にある敷地総面積73万9490.65㎡,18ホール(パー72)の預託金会員制のゴルフクラブである。(甲23,47,51,52,乙29,45,51,証人P4,弁論の全趣旨)
イ 原告P2は,昭和60年頃,本件ゴルフ場を建設・運営するための初期投資を始めた。その後,本件ゴルフ場の運営会社として原告P1が設立され,後記ウのとおり,本件ゴルフ場の会員(以下「本件会員」という。)から原告P1に対して保証金(以下「預託金」という。)が払い込まれるようになると,原告P2は,原告P1に対して本件ゴルフ場の開発に係る事業を承継し,事業承継後は,原告P1が本件ゴルフ場の開発を進めた。(甲7,乙5,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
ウ 三重県知事は,昭和62年10月30日,原告P1に対し,森林法に基づく開発行為の許可をした。これを受けて,原告P1は,本件ゴルフ場の建設予定地の開発行為を進め,併せて,昭和62年11月から平成2年11月までの間,本件会員の募集を行った。本件ゴルフ場は,平成元年10月9日に完成し,平成2年5月12日から営業が開始された。本件ゴルフ場の営業開始後,原告P2は,ゴルフコースの増設改良工事などを担当し,平成4年10月頃からは本件ゴルフ場の管理業務を担った。(甲6,7,23,24,26,乙21,35,45,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
(3) 原告らの間で締結された平成16年4月1日付けの契約の概要等
ア 原告P1では,多くの会員について入会から10年の預託金償還期限が到来する平成10年頃から,預託金の返還を求める会員が増加し,これに応じるための資金繰りに追われるようになった。そこで,原告らは,原告P1が原告P2に対して本件ゴルフ場の施設や設備を賃貸し,原告P2において,原告P1に代わって本件ゴルフ場を運営することによってこれに対処することとし,平成11年4月1日付けで,本件ゴルフ場の建物,施設及びその管理に関する契約(以下,「平成11年契約」といい,同契約に係る契約書を「平成11年契約書」という。)を締結した。(甲1,7,23,24,26,乙45,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
イ 原告P2は,平成11年契約締結後,これに基づき,本件ゴルフ場を運営していたところ,平成12年12月14日,原告P1を被告とする預託金返還請求訴訟に勝訴した本件会員から,原告P1に対する破産手続開始の申立てがされた。そこで,原告P1は,民事再生法に基づく再生手続開始の申立てをするため,平成13年5月17日付けで,平成11年契約を合意解約した。(甲6,7,23ないし25,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
ウ 原告P1は,平成13年12月3日付けで,名古屋地方裁判所(以下「名古屋地裁」という。)に対し,民事再生法21条1項に基づく再生手続開始の申立てをした。(甲7,乙4の2,8,弁論の全趣旨)
エ 原告P1は,平成14年1月21日午前10時,名古屋地裁から,民事再生法33条1項に基づく再生手続開始の決定を受けた。次いで,原告P1は,同法174条1項所定の再生計画認可決定を受け,同決定は,平成15年2月4日に確定した。その後,同年3月31日には再生計画に基づく配当が実施され,平成16年11月26日,原告P1に対する再生手続は終結した。(甲19,乙4の2,証人P4,弁論の全趣旨)
オ 原告らは,平成16年4月1日付けの契約書(甲2。以下,「平成16年契約書」といい,同契約書に基づく契約を「平成16年契約」という。)を取り交わした。平成16年契約書の概要は,別紙2「平成16年契約書の概要」記載のとおりであり,これを平成11年契約書と比較すると,①平成11年契約書には,原告P1が,原告P2に対し,本件ゴルフ場の維持管理及び運営に必要な全ての物(ただし,本件ゴルフ場内の土地及び建物を除く。)を契約締結から1年後の簿価で売却し,契約締結から1年間は有償貸与とする旨の条項があったのに対し,平成16年契約書には,これに対応する条項が存在しないこと,②平成11年契約書では,契約期間は5年とし,期間満了3か月前までに意思表示がなければ5年間延長するとされていたのに対し,平成16年契約書では,契約期間は3年とし,期間満了3か月前までに意思表示がなければ3年間延長するとされていたこと等の相違点はあったものの,そのほかは,平成11年契約書とほぼ同じ内容であった。(甲1,2)
カ 本件ゴルフ場は,平成16年契約が締結された平成16年4月1日以降,原告P2によって運営され,同原告の決算書類上,本件ゴルフ場の利用者が支払う利用料金等は,同原告の売上げとして計上されており,本件ゴルフ場の維持・管理に必要な費用は,同原告によって支出された。本件訴訟において,原告P2が,同日以降,本件ゴルフ場の運営を行っていたことは,当事者間に争いがない。(甲30ないし56,弁論の全趣旨)
(4) 原告P1と株式会社P7(以下「P7」という。)との間で締結された契約の概要等
ア 原告P1は,平成19年10月頃,ゴルフ場の所有・運営等を目的とする株式会社であるP7に対し,本件ゴルフ場の買収を打診した。これを受けて,P7は,本件ゴルフ場の立地条件などを考慮した上で,本件ゴルフ場を買収することを決め,平成20年1月頃から,P5や原告P1の顧問税理士であるP8(以下「P8税理士」という。)らとの間で買収交渉を進めた。(甲8,14,24,26,乙28,50,証人P9,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
イ 原告P1とP7は,平成20年3月18日付けで,本件ゴルフ場の譲渡に関する基本合意(以下「平成20年基本合意」という。)をした。平成20年基本合意では,原告P1が,新設分割の方法により設立する子会社に対して本件ゴルフ場の運営に必要な全資産を承継した上で,新設分割の際に当該子会社から割り当てられる同子会社の株式全てをP7に譲渡し,P7が,同株式の対価として本件ゴルフ場の価値に相当する金額を支払う方法により,本件ゴルフ場の買収を行うことなどが確認された。(甲3,8,乙28,50,証人P9)
ウ 平成20年基本合意を受けて,原告P1は,平成20年10月1日付けで,新設分割の方法により株式会社P10(以下「P10社」という。)を設立した。その際,P10社は,事前に定められた新設分割計画に基づいて発行された同社の普通株式200株(以下「本件株式」という。)全部を原告P1に割り当てるとともに,同日,原告P1から,本件ゴルフ場に係る土地,地上権,家屋・構築物,事業用資産を譲り受けた。(甲19,証人P9,弁論の全趣旨)
エ 原告P1とP7は,平成20年10月1日付けで,本件株式を譲渡の対象とする株式譲渡契約(以下「本件株式譲渡契約」という。)を締結した。本件株式譲渡契約では,原告P1がP7に対して本件株式を20億5000万円(以下「本件株式譲渡代金」という。)で譲渡することとされ,原告P1とP7の間では,同日,本件株式譲渡契約に基づき,本件株式の譲渡と本件株式譲渡代金全額の授受が行われた。(甲5,乙29,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
(5) 原告らの間で締結された平成20年9月1日付けの契約の内容等
ア 原告らは,平成20年9月1日付けで,「P6営業譲渡契約書」(甲4。以下,「平成20年9月1日付け契約書」といい,同契約書に基づく契約を「平成20年9月1日付け契約」という。)を取り交わした。平成20年9月1日付け契約書には,①営業譲渡の基準日を平成20年9月30日として,原告P2が原告P1に対して本件ゴルフ場の営業権を譲渡すること,②営業権の譲渡の対価(原告P2が所有していた営業用動産の価格を含む。)は14億2000万円とすることなどが記載されていた。(甲4,11,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
イ 原告P1は,平成20年10月1日,原告P2に対し,P7から支払を受けた本件株式譲渡代金20億5000万円のうち10億円を平成20年9月1日付け契約に基づく債務(総額14億2000万円)の履行として支払った。その後,原告P1は,平成21年7月21日,原告P2に対し,上記債務の残金として4億2000万円を支払った。(甲19,乙18,弁論の全趣旨)
(6) 原告らがした確定申告の内容等
ア 原告P1は,法定の申告期限内である平成21年6月1日,鈴鹿税務署長に対し,平成21年3月期の法人税及び平成21年3月課税期間の消費税等に関して,別紙3「課税の経緯(原告P1)」の「確定申告」欄各記載のとおり,納付すべき法人税額を188万0700円とし,納付すべき消費税等は存在しないことなどを内容とする各確定申告(以下「本件原告P1確定申告」という。)をした。本件原告P1確定申告の中で,原告P1は,平成20年9月1日付け契約に基づいて原告P1が原告P2に支払った14億2000万円から原告P2所有の営業用動産(以下「本件営業用動産」という。)の対価に当たるものを控除した金額である13億5912万6250円(以下「本件金員」という。)が本件ゴルフ場の営業権の対価であるとして,法人税の所得金額の計算上,本件金員の消費税抜価額である12億9440万5952円を同営業権の償却費(以下「本件営業権償却費」という。)として損金の額に算入し,併せて,同額を消費税等の差引納付税額の計算上,課税仕入れに係る支払対価の額として仕入税額控除を計算した。(甲12,14の5,乙1,2,31,弁論の全趣旨)
イ 原告P2は,法定の申告期限内である平成21年6月1日,鈴鹿税務署長に対し,平成21年3月期の法人税に関して,本件金員の消費税抜価額である12億9440万5952円を益金の額に算入して確定申告をした。次いで,原告P2は,法定の申告期限内である平成22年5月27日,鈴鹿税務署長に対し,平成22年3月期の法人税に関して,別紙4「課税の経緯(原告P2)」の「確定申告」欄記載のとおり,欠損金額を1828万0409円とし,納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)83万9431円とする確定申告(以下「本件原告P2確定申告」といい,本件原告P1確定申告と併せて,以下「本件各確定申告」という。また,本件各確定申告の際に提出された各確定申告書につき,以下「本件各確定申告書」という。)をした。(乙3,弁論の全趣旨)
(7) 本件各処分の内容等
ア 鈴鹿税務署長は,平成23年5月24日付けで,原告P2は本件ゴルフ場の営業権を有していなかったから,本件原告P1確定申告の中で損金として算入されている本件営業権償却費は,原告P2に対する寄附金(法人税法37条7項)に該当するとして,これを所得金額に加算し,また,本件金員のうち消費税等相当額である6472万0298円は課税仕入れの対象にならないなどとして,原告P1に対し,別紙3「課税の経緯(原告P1)」の「更正等」欄各記載のとおり,本件原告P1各処分をした。(甲16,17,19)
イ 鈴鹿税務署長は,平成23年5月24日付けで,平成20年9月1日付け契約に基づいて原告P1が原告P2に対して支払った本件金員は,原告P2がその対価として譲渡したとする本件ゴルフ場の営業権自体が存在しないため,その全額が原告P1からの寄附金(法人税法37条7項)に該当し,これは単なる金銭の贈与であるから,その金額のうち未収金となっている金額は,原告P2が益金の額として計上した平成21年3月期ではなく,実際にその金銭の交付を受けた平成22年3月期の益金の額に算入されるべきところ,本件原告P2確定申告ではその旨の益金の計上がされていないから,受贈益の計上漏れがあるなどとして,原告P2に対し,別紙4「課税の経緯(原告P2)」の「更正等」欄記載のとおり,本件原告P2各処分をした。(甲18,弁論の全趣旨)
(8) 原告らの不服申立て等
ア 原告P1は,平成23年7月19日,本件原告P1各処分のうち法人税に係る部分につき国税通則法75条4項1号に基づき直接審査請求をし,次いで,同月22日,消費税等に係る部分につき異議申立てをした。(乙6,7)
イ 原告P2は,平成23年7月19日,本件原告P2各処分につき国税通則法75条4項1号に基づき直接審査請求した。(甲20,乙10)
ウ 鈴鹿税務署長は,平成23年9月22日付けで,原告P1がした前記アの異議申立てを棄却する旨の決定をした。これを受けて,原告P1は,同年10月13日,本件原告P1各処分のうち消費税等に係る部分につき審査請求した。(甲19,乙8,9)
エ 国税不服審判所長は,平成24年6月18日付けで,原告らがした前記アないしウの審査請求をいずれも棄却する旨の各裁決をした。(甲19,20)
(9) 本件訴えの提起等
ア 原告らは,平成24年9月28日,本件訴えを提起した。(顕著な事実)
イ 本件訴訟の中で,原告らは,平成20年9月1日付け契約に基づき,同契約の基準日である同月30日(以下「本件基準日」という。)時点で原告P2に帰属していた本件ゴルフ場の営業権が,原告P2から原告P1に譲渡されたとして,本件金員には対価性があるから原告P1の原告P2に対する寄附金には当たらない旨主張するとともに,仮に,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が帰属していなかったとしても,原告P1が原告P2に対して本件金員の全部又は一部を支払ったことには経済的な合理性がある旨主張している。(顕著な事実)
4 被告が主張する本件各処分に係る税額等
被告が本件訴訟の中で主張する本件各処分に係る税額の算出根拠等は,別紙5「被告主張額の根拠等」記載のとおりである。
5 争点
(1) 本件の主な争点は,原告P1が平成20年9月1日付け契約に基づいて原告P2に支払った本件金員(合計13億5912万6250円。平成20年9月1日付け契約の中で授受の対象とされた14億2000万円から本件営業用動産の対価に相当する6087万3750円を控除したもの。)が法人税法37条7項所定の寄附金に該当するか(被告の主張),あるいは,本件ゴルフ場の営業権その他原告P2が有していた経済的利益に対する対価として合理性を有するものであるか(原告らの主張)というものである。
具体的には,(1)平成20年9月1日付け契約で定められた本件基準日(平成20年9月30日)の時点で,原告P2は,本件金員の対価に当たる本件ゴルフ場の営業権を有していたか否か(①原告P2は,平成16年契約に基づき,原告P1から,本件ゴルフ場の営業権を譲り受けていたか否か,②平成16年契約に基づいて原告P2が本件ゴルフ場の運営を続けたことにより,本件基準日の時点で,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が生じていたか否か。),(2)上記(1)において,本件基準日の時点で,原告P2が本件ゴルフ場の営業権を有していなかった場合,本件金員の全部又は一部を原告P1ではなく原告P2が取得することに合理的な理由があると認められるか否かである。
(2) これら争点に関連する部分を除き,原告らは,別紙5「被告主張額の根拠等」に記載した被告主張の本件各処分の根拠及びその計算関係を争っていない。
6 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)①(原告P2は,平成16年契約に基づき,原告P1から,本件ゴルフ場の営業権を譲り受けていたか否か。)
【原告らの主張の要旨】
ア 後記イないしエによれば,原告P2は,平成16年契約に基づき,原告P1から,本件ゴルフ場の営業権を譲り受けており,平成20年9月1日付け契約に基づき,原告P1が原告P2に対して本件ゴルフ場の営業権の対価に相当する本件金員を支払ったことには合理的な理由がある。したがって,本件金員は,法人税法37条7項所定の寄附金ではないから,その全額につき損金算入が認められるべきである。
イ 平成16年契約は,原告P1に対する民事再生手続が終結したことを踏まえて,原告P2が本格的に本件ゴルフ場を再建することを目的として原告らの間で締結されたものである。
原告P2は,平成16年契約の締結日である平成16年4月1日以降,本件ゴルフ場を運営し,本件ゴルフ場の利用者等から支払を受けた利用料その他の収入を取得する一方で,本件ゴルフ場の維持・管理や広報活動の支出を行ったほか,ゴルフ場利用税の特別徴収義務者としての義務も果たしていた。平成16年契約書の文言上も,原告P2が本件ゴルフ場内にある全ての建物・施設をその営業の目的のために使用し,自らの責任及び負担において維持・管理するものとされていたところ,このことは,平成16年契約が,本件ゴルフ場の施設の賃貸借だけでなく,営業権の譲渡も目的としたものであることを示すものである。以上によれば,平成16年契約によって,原告P1から原告P2に対して本件ゴルフ場の営業権が譲渡されていたことは明らかであり,平成16年契約を単なる賃貸借契約を定めたものにすぎないとして,平成16年契約に基づき,本件ゴルフ場の営業権が原告P1から原告P2に譲渡されたことを否定する被告の主張は失当である。
ウ 平成16年契約締結の際,原告らの間で本件ゴルフ場の営業権の対価の支払としての現金の授受が行われていないことは被告が指摘するとおりである。しかしながら,これは,原告らの間では,本件ゴルフ場の営業権の対価は後払いとする旨の合意が成立していたからにすぎず,平成16年契約書の中に,原告P2が原告P1に対して賃料のほかに純利益の15%を支払う旨の規定があるのは,本件ゴルフ場の営業権の後払いの合意が成立していたことを示している。
エ 原告P2が,確定申告書に添付した決算書類の中で,本件ゴルフ場の営業権の価額を計上していないことは被告が指摘するとおりである。しかしながら,これは,原告P2において,本件ゴルフ場の営業権の取得価額を計算することができなかったからにすぎず,決算書類に本件ゴルフ場の営業権に関する記載がないからといって,原告らの間で本件ゴルフ場の営業権の譲渡がされていないと認定することは誤りである。
【被告の主張の要旨】
ア 後記イないしカによれば,平成16年契約により,原告P2が原告P1から本件ゴルフ場の営業権を譲り受けたということはできず,原告P2は,原告P1から賃借した本件ゴルフ場に係る土地,建物及び施設を利用し,原告P1の営業方針等に従うことを条件に,本件ゴルフ場の運営をしていたにすぎない。したがって,本件基準日の時点で,本件ゴルフ場の営業権が原告P1から原告P2に移転していたわけではなく,原告P1が原告P2に支払った本件金員は,本件ゴルフ場の営業権の対価としての性質を有するものではないから,本件金員が原告P1から原告P2に対する寄附金に当たるとの判断に基づいてされた本件各処分は適法である。
イ 平成16年契約の際に原告らの間で取り交わされた平成16年契約書の中には,譲渡の対象,譲渡価額及び譲渡期日の定めなど,営業権の譲渡契約の本質的な要素となる内容を定めた規定は存在しない。
ウ 原告P2は,平成16年契約締結後の事業年度に係る法人税等の確定申告をした際,確定申告書に添付した貸借対照表において,資産の部に本件ゴルフ場の営業権を計上しておらず,同じくこれら確定申告書に添付した損益計算書の中でも,本件ゴルフ場の営業権の減価償却をしていない。このことは,平成16年契約によって本件ゴルフ場の営業権が原告P2に移転しておらず,原告P2自身,平成16年契約に基づいて,本件ゴルフ場の営業権を譲り受けたという認識を有していなかったことを示している。
エ 原告P2は,平成16年契約締結後,原告P1に対し,本件ゴルフ場の営業権の対価を一切支払っていない。なお,原告P2は,平成17年3月期ないし平成20年3月期の各事業年度において,原告P1に対し,それぞれ5000万円を超える金員を支払っているが,原告P2は,これらの金員を「地代家賃」勘定に計上し,原告P1も,「不動産賃貸料収入」に計上しているから,これらの金銭は,本件ゴルフ場の営業権の対価として支払われたものではない。
オ 平成16年契約は,平成19年3月31日に契約期間の満了により終了しているところ,原告P1は,平成16年契約の終了に当たって,三重県鈴鹿県税事務所長(以下「鈴鹿県税事務所長」という。)に対し,原告P2から原告P1に対する平成16年契約の終了通知を添付した上,本件ゴルフ場の利用税の特別徴収義務者を原告P2から原告P1に変更する旨の申請をしている。原告らが主張するように,本件ゴルフ場の営業権が平成16年契約によって原告P1から原告P2に移転したのであるならば,契約期間の満了に伴って本件ゴルフ場の利用税の特別徴収義務者を原告P2から原告P1に変更する理由はない。
カ 平成16年契約によれば,原告P2は,本件ゴルフ場の営業に当たり,原告P1の営業方針や同社が定める規則を遵守すべき立場に置かれている。仮に,本件ゴルフ場の営業権が,原告P1から原告P2に譲渡されていたとするならば,原告P2が原告P1の営業方針等を遵守して本件ゴルフ場の運営をする必要はないから,平成16年契約に上記のような定めが置かれていたということは,平成16年契約の後も,本件ゴルフ場の営業権が,依然として原告P1にあったことを示している。
(2) 争点(1)②(平成16年契約に基づいて原告P2が本件ゴルフ場の運営を続けたことにより,本件基準日の時点で,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が生じていたか否か。)
【原告らの主張の要旨】
ア 仮に,本件ゴルフ場の営業権が平成16年契約によって原告P1から原告P2に譲渡されたということができないとしても,後記イないしエによれば,原告P2が平成16年契約に基づいて本件ゴルフ場の運営を続けた結果,本件基準日の時点では,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が生じていたというべきであるから,原告P1が原告P2に対して平成20年9月1日付け契約に基づいて本件ゴルフ場の営業権の対価に相当する本件金員を支払ったことには合理的な理由がある。したがって,本件金員は,法人税法37条7項所定の寄附金ではないから,その全額につき損金算入が認められるべきである。
イ 原告P2が本件ゴルフ場の運営を続け,本件ゴルフ場の財産を維持・管理してきた結果,原告P1は,P7との間で本件株式譲渡契約を締結し,20億5000万円という高値で本件ゴルフ場を売却することができた。このことは,P7が外部機関に依頼して作成させた不動産評価報告書(乙45)において,本件ゴルフ場のコース管理上の問題点は「特になし」と記載されていることなどからも裏付けられる。このように,原告P2による本件ゴルフ場の営業の継続という不断の努力によって,上記のとおり,本件ゴルフ場を高額で譲渡する機会を掴むことができたのであるから,その差益を本件ゴルフ場の営業主体であった原告P2が取得することには経済的合理性があり,原告P2と原告P1との間の実質的公平を図る観点からも,本件各確定申告の取扱いには十分な合理性がある。これに対して,被告の主張を前提とすると,本件ゴルフ場を売却したことによる利益を原告P1のみに取得させる結果になるが,そのような被告の主張に立った場合の結論が不合理なものであることは明らかである。
ウ ゴルフ場事業の価値(ゴルフ場ののれん代やゴルフコース)は,買手が出現するかどうかという需給関係の変化に応じ,有利な売却時期まで営業を繋ぐという努力によって生まれるものであるところ,本件では,平成16年4月から平成20年1月までの間,原告P2の下で本件ゴルフ場の事業が継続され,その間,原告P2によってゴルフコースの整備等が行われたために,一旦消滅した本件ゴルフ場の価値が復活し,それを原告P2が原告P1に譲渡したものととらえるべきである。したがって,原告P2が原告P1に譲渡したのは,原告P2が平成16年契約に基づいて本件ゴルフ場を運営する中で付加・復活させた価値を含む複合的な資産であったということができる。
エ P7が採用した不動産評価報告書(乙45)には,DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法による評価額は15億4000万円と記載されており,P7が社内決裁用に作成した「【第2号議案】P6取得の件」と題する文書(乙35・別紙1)の中にも「のれん概算額」は5億3100万円との記載がある。そして,本件株式譲渡代金である20億5000万円は,原告らが有していた土地建物などの所有権,借地権及び有体動産の時価額を遥かに超えるものであるから,本件ゴルフ場の土地,建物及び有体動産のみならず,原告P2が有していた経営基盤としての経済価値を含む対価としてとらえられるべきものである。
【被告の主張の要旨】
ア 赤字企業においては,過去に各種の試験研究や販路拡張等のために支出した資金が個別に工業所有権等の具体的な権利に転化している場合は別として,超過収益力の要因となる多様な諸条件(企業の長年にわたる伝統と社会的信用,立地条件,特殊の製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等)が明確に認められ,かつ,既存の当該営業部門を譲り受けることによる見積り収益と新たに同種営業部門を創設することによる平均収益とを比較して,前者の見積り収益が後者の平均収益を上回り有利であると合理的に予測できる場合に限って,この超過収益力を資本還元したものを営業権と解することになる。後記イ及びウによれば,原告P2に上記の意味での営業権が生じていたということはできないから,本件金員は,本件ゴルフ場の営業権の対価として支払われたものであるということはできない。
イ 本件ゴルフ場の開業費用は,原告P1が支出したものであり,原告P2が本件ゴルフ場の管理諸費,緑化管理費及び修繕費として一旦負担した費用も,原告P1の未払金とされており,同社において負担する費用とされていた上,平成17年3月期ないし平成20年3月期の確定申告書に添付された原告P2の貸借対照表には,本件金員と同額又はこれに近い額の工業所有権その他の具体的な権利は,一切計上されていない。
ウ 原告P2は,平成16年4月1日以降,赤字経営が常態化していたから,平成20年9月1日付け契約の中で営業譲渡の基準日とされた平成20年9月30日までの間に,本件ゴルフ場について,前記アで指摘した「長年にわたる伝統や社会的信用」が築かれていたとは到底認められない。また,本件ゴルフ場は,原告P1の所有地又は同社が賃貸借契約に基づき賃借している借地であって,原告P2が本件ゴルフ場の立地条件に関して独自の利益を保有しているわけではない。さらに,本件ゴルフ場の最も主要かつ重要な取引先である本件会員は,原告P1と契約関係にあり,原告P2との間に特別な取引関係が存在したわけではない。これらの事情に照らすと,原告P2には,超過収益力の要因となる諸条件があるとはいえない。そして,原告P2から本件ゴルフ場を譲り受けることによる収益を見積もることは困難である上,当該見積り収益が新たに本件ゴルフ場を経営することによって得られる平均収益を上回るとの合理的な予測ができるものでもない。したがって,いずれにしても,原告P2に企業会計上の「のれん」に当たる営業権は発生していなかったというほかはない。
(3) 争点(2)(本件基準日の時点で,原告P2が本件ゴルフ場の営業権を有していなかった場合,本件金員の全部又は一部を原告P1ではなく原告P2が取得することに合理的な理由があると認められるか否か。)
【原告らの主張の要旨】
ア 本件ゴルフ場が売却された平成21年3月期の法人税の確定申告に際して,原告P1が損金算入することのできる売上原価には,有体・無体財産の取得対価だけではなく,合理的な理由のある支払も含まれるものと解すべきところ,後記イないしオのとおり,原告P1が原告P2に本件金員を支払ったことには合理的な理由があるということができるから,これを看過してされた本件各処分はいずれも違法である。
イ 平成20年9月1日付け契約が締結された平成20年9月1日時点で,原告P2は,平成19年4月1日をもって契約期間が更新された平成16年契約に基づいて本件ゴルフ場を構成する土地,建物,ゴルフコースに関する賃借権ないし転借権を有していたところ,原告P1としては,原告P2が有するこれら賃借権等を解消しなければ,P7に本件ゴルフ場を売却することはできなかった。このような状況の下で,原告P1が原告P2に対して,立退料的代償措置分として一定の経済的給付を行い,原告P2との間の賃貸借契約の解消を図ったことには合理性がある。そして,このような賃借人に対する立退料の支払は,社会において広く行われている現象であって,賃貸借契約の解消の代償としての金銭の給付は,対価性のない寄附行為ではなく,対価性のある支出というべきである。そして,原告P1にとって,原告P2との間の賃貸借契約を解消することが本件ゴルフ場をP7に売却するために必要不可欠な行為であったから,原告P2との間の賃貸借契約を解消するために必要であった原告P2に対する経済的支出は,原告P1が取得した本件ゴルフ場の売却による益金の売上原価と認定されるべきである。
ウ 原告P2は,平成16年4月1日から本件ゴルフ場が閉鎖された平成20年2月1日までの3年10か月間にわたり,月額700万円,総額で3億2200万円の価値に相当する業務を負担した。これら総額3億円を超える原告P2の本件ゴルフ場に対する貢献があったため,本件ゴルフ場は,P7に対して売却することのできるゴルフ場としてその価値が維持されてきたということができるのであって,仮に,原告P2の上記貢献がなければ,本件ゴルフ場は,ゴルフ場として機能することができない状態に陥り,P7に売却することもできなかったことは明らかである。このような原告P2の長年にわたる本件ゴルフ場の維持管理の結果として,本件基準日の時点で,本件ゴルフ場の資産価値が維持・増進されていたのであるから,それが被告のいう営業権に当たらないとしても,P7から原告P1に支払われた本件株式譲渡代金のうち,その価値相当分については,原告P2に取得させるべきである。
エ 原告P2は,会員から払い込まれた預託金に頼っていた従来のゴルフ場の経営スタイルから脱却し,当時のゴルフ場の利用料金としては破格の料金体系を打ち出して集客を図るなどして,本件ゴルフ場に新たなビジネスモデルを導入した。また,ゴルフコースの維持・管理を少数の従業員で自ら行ったことも,低コストと高品質の両面の実現を可能とした。これら平成16年契約締結以降の原告P2の独自の経営努力によって,原告P1が経営していた当時とは異なる,新たな客層を対象としたゴルフ場サービスが確立され,それは,一定の軌道に乗りつつあった。このように,平成16年契約締結以降の原告P2による本件ゴルフ場経営における不断の努力により,本件基準日の時点において,顧客や従業員を抱えたゴルフ場という社会的存在感に伴うのれん的な価値が生まれていたのであるから,それが被告のいう営業権に当たらないとしても,P7から原告P1に支払われた本件株式譲渡代金のうち,上記価値に相当する分について原告P2に取得させることには経済的合理性がある。
オ 原告P1に対して民事再生手続が開始された平成13年の時点では,本件ゴルフ場につき,ゴルフコースの価値は認められなかったのに対し,P7が本件ゴルフ場を買収した際に使用された不動産評価報告書(乙41)においては,ゴルフコースの価値は8億4720万円と算定されており,ゴルフコースについて経済的価値が生じるに至っている。原告P2が平成16年契約に基づき原告P1から事業主体の移行を受けて本件ゴルフ場の営業を継続したことにより,過去にはゴルフ場の底地としての価値しかなかった本件ゴルフ場を高値で売却する機会をとらえることができたのであるから,それが被告のいう営業権に当たらないとしても,P7から原告P1に支払われた本件株式譲渡代金のうち,その機会利益相当分について原告P2に取得させることには経済的合理性がある。
【被告の主張の要旨】
ア 後記イないしエによれば,原告P1がP7から支払を受けた本件株式譲渡代金のうち,本件金員の全部又は一部を原告P2に取得させることに経済的な合理性はなく,本件金員は,原告P1の原告P2に対する寄附金に該当する。
イ 原告P2は,平成16年契約に基づき,原告P1に対し,自己の負担で本件ゴルフ場を使用及び維持管理する義務や,契約終了時には本件ゴルフ場の原状を回復する義務を負っていたにすぎず,ゴルフコースを含む本件ゴルフ場の資産価値が原告P2の維持管理によって増加したという事実もない。原告P2が本件ゴルフ場を維持管理することは当然の義務であるから,本件ゴルフ場が20億5000万円でP7に売却されたからといって,原告P1が原告P2に対して本件金員を支払う必要はないことは明らかである。
ウ 本件株式譲渡契約の締結交渉に関与したP7の担当者であるP9の供述によれば,本件株式譲渡代金の金額は,P7が同社の有するゴルフ場運営のノウハウの下で見込まれる収益性を根拠に算定したものであって,これに含まれるものは,純粋に本件ゴルフ場の土地,建物及び備品といった有形固定資産の価値であり,原告P2が保有していた経営基盤の経済価値などというものは一切含まれていない。
エ 本件各確定申告では,原告P1は,平成21年3月期において,本件金員を営業権償却費として損金の額に算入し,一方,原告P2は,平成21年3月期において本件金員を益金の額に算入したものの,同期に欠損金約9億5000万円があったため,同欠損金全額に係る所得控除を受けることが可能となった。その結果,原告らは,原告P1が原告P2に対して本件金員を支払わなかった場合と比較して約9億5000万円もの所得に係る法人税額が減少するという恩恵を被ることになった。そうすると,原告P1が原告P2に対して対価性のない本件金員を支払ったのは,原告ら全体の法人税の圧縮を図るためであったと考えるほかはない。
第3当裁判所の判断
1 認定事実
前記前提事実に,掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
(1) 原告ら
ア 原告P1は,ゴルフ場,スポーツ施設の設計,施工及びその経営等を目的として昭和61年7月18日に設立された株式会社(法人税法2条10号の同族会社)である。(甲19,23,乙1,4,弁論の全趣旨)
イ 原告P2は,生コンクリートの製造・販売等を目的として昭和59年11月28日に設立された株式会社(法人税法2条10号の同族会社)であり,平成12年11月に事業目的としてゴルフ場の設計・施工及びその経営管理を追加し,同月15日に旧商号である「P3株式会社」から現商号である「株式会社P2」に商号を変更した。(乙3,5,証人P4,弁論の全趣旨)
ウ 原告P1の代表取締役は,①昭和61年の設立時から平成15年6月3日まではP5,②同日から平成16年12月15日まではP11,③同日から平成18年1月17日まではP12が務め,その後,④同日から現在まで,再びP5が務めている。(甲19,乙4,8,弁論の全趣旨)
エ 原告P2の代表取締役は,①昭和59年の設立時から平成12年6月29日まではP5,②同日から平成21年3月21日まではP5の義妹であるP4,③同日から平成22年5月27日まではP12が務め,その後,④同日から現在まで,再びP5が務めている。なお,P5は,平成20年5月24日から平成21年3月21日までの間は,原告P2の取締役を務めていた。(甲19,24,29,乙5,証人P4,弁論の全趣旨)
オ 原告らは,平成21年3月期及び平成22年3月期の法人税の所得金額の算定に当たり,取引によって生じる消費税等について,消費税等の額と当該消費税等が生じる取引の対価の額とを区分して経理する税抜経理方式を採用していた。(弁論の全趣旨)
(2) 本件ゴルフ場等の開場に至る経緯等
ア 本件ゴルフ場は,三重県鈴鹿市α内にある敷地総面積73万9490.65㎡(原告P1所有地26万5591.79㎡及び原告P1を借地人とする借地47万3898.86㎡を合計したもの),18ホール(パー72)の預託金会員制のゴルフ場であり,ゴルフコース,クラブハウス,管理棟,スタートハウス,練習場,駐車場,社員寮及びコース売店などから成る。本件ゴルフ場のゴルフコースの設計・監修には,著名なプロゴルファーであるP13が関与した。(甲23,24,47,50ないし52,乙6,29,45,51,証人P4,弁論の全趣旨)
イ 原告P2は,昭和60年頃,本件ゴルフ場の建設のための初期投資を開始した。その後,昭和61年に本件ゴルフ場の運営会社となることを目的として原告P1が設立され,後記エのとおり本件会員から原告P1に預託金の払込みがされるようになった後は,原告P1に対して本件ゴルフ場の開発事業を承継した。なお,原告P2が本件ゴルフ場の初期投資のために支出した費用は,原告P1の原告P2に対する未払金や長期借入金として計上され,本件会員から原告P1に払い込まれた預託金の中から弁済された。(甲7,乙5,8,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
ウ 原告P1は,昭和62年10月30日,三重県知事から,森林法に基づく開発行為の許可を受けた。これを受けて,原告P1は,昭和63年2月に本件ゴルフ場の造成工事等に着手し,本件ゴルフ場は平成2年5月12日にオープンした。本件ゴルフ場のオープン後,原告P1が本件ゴルフ場の運営を行い,原告P2がゴルフコースの増設改良工事等を担うなどしていたが,平成4年10月からは,原告P2が本件ゴルフ場の管理業務を担った。(甲6,7,23,24,26,乙8,21,35,45,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
エ 原告P1は,昭和62年11月から平成2年11月までの間,本件ゴルフ場の会員を新規に募集した。募集の結果,834名が会員となり,これら会員から原告P1に対して払い込まれた預託金は総額で163億円に上った。原告P1は,預託金を使用して本件ゴルフ場の開発を進め,前記ウのとおり,平成2年5月12日に本件ゴルフ場をオープンさせた。なお,本件ゴルフ場の敷地は,原告P1の所有地と借地から成るところ,これら借地の賃貸借契約の当事者(賃借人)は全て原告P1であり,本件基準日時点でも,この状況に変わりはなかった。(甲7,乙23,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
(3) 原告らの間で締結された平成11年契約の内容等
ア 原告P1では,前記(2)エの会員募集から10年が経過して預託金の償還時期を迎えた平成10年頃から,預託金の返還を求める会員が増加し,これに応じるための資金繰りに追われるようになった。そこで,原告らは,原告P1が原告P2に本件ゴルフ場の施設や設備等を賃貸し,原告P1に代わって原告P2が主体となって本件ゴルフ場を運営することによって,これに対処することとし,平成11年4月1日付けで,本件ゴルフ場の建物,施設及びその管理に関する契約(平成11年契約)を締結した。(甲1,7,23,24,26,乙45,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
イ 原告らが取り交わした平成11年契約書(甲1)は,当時の原告らの顧問弁護士に作成を依頼したものであり,その中には概要,以下の記載がある。なお,前記(1)ウ及びエのとおり,平成11年契約が締結された平成11年4月1日当時,原告らの代表取締役はいずれもP5が務めており,平成11年契約書にも,原告ら双方の代表取締役としてP5の名が記されていた。(甲1,原告ら代表者,弁論の全趣旨)1条(目的)
1項 原告P1は,原告P2に対し,本件ゴルフ場内の全ての建物,施設を賃貸し,原告P2は,これを賃借する。
2項 原告P2は,本件ゴルフ場内の全ての建物,施設を営業の目的で使用し,原告P2の責任・負担において維持管理するものとする。
2条(営業方針)
原告P2は,営業に当たっては,原告P1と相談し,原告P1の営業方針に従うものとする。
3条(設備及び什器,備品,管理車両等)
1項 原告P1は,本件ゴルフ場内の土地,建物(建物附属施設及び構築物を含む。以下同じ。)を除く全ての設備,什器,備品,事務用品,営業目的の車両等,ゴルフ場の維持管理及びゴルフ場の運営のために必要な全ての物を,原告P2の営業,コース維持管理の目的のために使用することを条件に契約1年後その時点の簿価で売却する。また,契約時よりの1年間は,有償貸与とする。
2項 原告P1は,平成11年3月時点において,既に償却済みの上記の物については,原告P2に無償で譲渡する。
3項 前記1項,2項の物品の維持管理及び新たな今後の補充については,原告P2の責任・負担において行うものとする。
4条(契約期間)
契約期間は平成11年4月1日から平成16年3月31日までの5年間とする。ただし,期間満了3か月前までに,原告P1,原告P2のいずれかから意思表示がないときは,契約期間を更に5年間自動的に延長するものとし,以後も同様とする。
5条(賃料・施設使用料)
原告P2は,原告P1に対し,土地,建物,ゴルフコース施設の使用料として,下記の合算金額を支払うものとする。
1号 建物(建物附属設備及び構築物を含む。)の平成11年3月時点の簿価を基準価格とし,法定耐用年数から経過後10年を差し引いた年数の償却率(定額法)を乗じて算出した償却相当額。ただし,契約時よりの1年間は設備,什器,備品,車両も同様とする。
2号 土地,建物等にかかわる固定資産税相当額
3号 コース借地にかかわる賃貸料実費相当額
4号 毎年4月1日から翌年3月31日までを1年間として,ゴルフ場の総売上高より諸経費を除いた純利益の15%
9条(費用負担)
1項 原告P2が本施設内で使用する電気料金,水道料金,ガス料金及び燃料については原告P2の負担とする。
2項 本建物及び本施設に課せられる公租公課は原告P1の負担とする。
3項 原告P2の営業及び維持管理に必要な人材,機材,部品,肥料,薬品等の全ての諸費用は原告P2の負担とする。
10条(従業員の勤務)
1項 原告P2は,本建物,施設で営業,維持管理に従事する従業員については,原告P1の定める規則を自己の責任において遵守させるものとする。
2項 (略)
11条(保守,保全,点検,損害賠償)
1項 原告P2は,本建物及び本施設を本契約の趣旨に則り善良なる管理者の注意をもって使用及び維持管理しなければならない。
2項~4項 (略)
14条(原状回復義務)
1項 本契約が終了した場合,原告P2は,契約終了の日より30日以内に自らの費用により設置した自己の所有物を自己の責任において撤去し,建物を原状に回復して原告P1に明け渡さなければならない。
2項 原告P2が前項規定の期間内に本物件及び本施設を原状に回復しない場合,原告P1は原告P2に代わって原告P2の費用によりこれを原状に回復することができる。この場合,撤去した原告P2の所有物の保管については原告P1はその責めに任じないものとする。
15条(契約終了に伴う損害の補償)
期間満了,不可抗力による契約の終了等,原告P1又は原告P2の責めに帰すことのできない事由により契約が終了したときは,原告P2は,原告P1に対し,立退料,営業補償等,名目の如何を問わず,金銭の支払その他の行為を請求することはできない。
ウ 原告P2は,平成11年契約締結後,同契約に基づき,原告P1に代わって,本件ゴルフ場の運営を行った。(弁論の全趣旨)
(4) 原告P1に対する再生手続の経緯等
ア 原告P1は,前記(3)アのとおり,会員からの預託金返還請求の増加に対応するため,平成12年1月16日に開催された本件会員を構成員とする臨時総会において,総会員の過半数の同意を得て預託金の償還時期を10年間延長する旨の決議をするという措置を講じたが,同年12月14日,預託金返還請求訴訟で勝訴した会員から,破産手続開始の申立てがされるに至った。そこで,原告P1は,当時の顧問弁護士とも相談の上,これに対抗して民事再生法に基づく再生手続開始の申立てをすることにした。原告らは,その前提として,本件ゴルフ場の運営主体を原告P1に戻すため,顧問弁護士の指示の下,原告P2作成に係る平成13年5月17日付け「契約解除通知書」と題する書面(甲25)を同原告から原告P1に宛てて内容証明郵便として送付し,これによって平成11年契約を合意解約した。(甲6,7,23ないし25,乙23,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
イ 原告P1は,平成13年12月3日付けで,名古屋地裁に対し,民事再生法21条1項に基づく再生手続開始の申立てをした。これを受けて,名古屋地裁は,同月6日,同法54条1項に基づき,監督委員による監督を命ずる処分をし,監督委員としてP14弁護士を選任した。この原告P1の再生手続開始の申立てには,かねてから同社の顧問弁護士を務めていたP15弁護士が関与した。(甲7,乙4の2,8,39,弁論の全趣旨)
ウ P14弁護士は,平成14年1月11日付けで,名古屋地裁に対し,原告P1に対して再生手続を開始することの可否に関する意見等を記載した報告書(乙21)を提出した。同報告書には,P16公認会計士作成に係る調査報告書が添付された上,①原告P1では,平成3年3月期以降,営業損失の状態が続いていたこと,②原告P1について,否認対象行為などの違法行為は確認されなかったが,原告P2との関係では,平成11年3月31日に簿外とされていた原告P2からの長期借入金25億円余が計上されるといった不明瞭な会計処理がされており,原告P1に対してこれらの処理の適否を判定するための資料の提出を求めたが,資料の積極的な開示は行われなかったことなどが記載されていた。また,P16公認会計士作成に係る調査報告書には,原告P1は,平成13年3月31日時点で,原告P2に対して3億2569万1575円の債務を負っている旨が記載されていた。(乙21,弁論の全趣旨)
エ 原告P1は,平成14年1月21日午前10時,民事再生法33条1項に基づく再生手続開始の決定を受けた。その後,原告P1は,同法174条1項所定の再生計画認可の決定を受け,同決定は平成15年2月4日に確定した。次いで,同年3月31日には,再生計画に基づく配当が実施された。(甲19,乙4の2,証人P4,弁論の全趣旨)
(5) 原告らの間で取り交わされた平成16年契約書の内容等
ア 原告らは,平成16年4月1日付けで,平成16年契約書(甲2)を取り交わし,平成16年契約を締結した。平成16年契約書の概要は,別紙2「平成16年契約書の概要」記載のとおりであり,これを平成11年契約書と比較すると,①平成11年契約書には,原告P1が,原告P2に対し,本件ゴルフ場の維持管理及び運営に必要な全ての物(ただし,本件ゴルフ場内の土地及び建物を除く)を契約締結から1年後の簿価で売却し,契約締結から1年間は有償貸与とする旨の条項(3条)があったのに対し,平成16年契約書には,これに対応する条項が存在しないこと,②平成11年契約書では,契約期間は5年とし,期間満了3か月前までに意思表示がなければ5年間延長するとされていたのに対し,平成16年契約書では,契約期間は3年とし,期間満了3か月前までに意思表示がなければ3年間延長するとされていたこと等の相違点はあったものの,そのほかは,平成11年契約書とほぼ同じ内容であった。(甲1,2,24,26,証人P4,原告ら代表者)
イ 平成16年契約が締結された平成16年4月1日当時,原告P1の代表取締役はP11が務めていたが,業務執行の実質的な決定権限はP5にあり,平成16年契約書の原告P1の代表取締役欄にはP5の名が記されていた。また,原告P2の代表取締役はP5の義妹であるP4が務めており,平成16年契約書には,原告P2の代表取締役としてP4の名が記されていた。(甲2,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
(6) 平成16年契約締結後の状況等
ア 本件ゴルフ場は,平成16年契約が締結された平成16年4月1日以降,原告P2によって運営され,同原告の決算書類上,本件ゴルフ場のゴルフプレー代金等の営業収入は,同原告の売上げとして計上され,本件ゴルフ場の維持管理のための各種の費用は,同原告によって支出された。また,原告P2は,同年6月15日,鈴鹿県税事務所長に対して「経営開始又は変更年月日」を「平成16年6月1日」と記載した「ゴルフ場利用税特別徴収義務者登録(変更)申請書」(乙11)を提出し,本件ゴルフ場のゴルフ場利用税特別徴収義務者を原告P1から原告P2に変更する旨の登録申請をした。(甲13,30ないし56,乙11,弁論の全趣旨)
イ 原告P1に対する民事再生手続は,平成16年契約が締結された平成16年4月1日から約8か月後の同年11月26日に終結した。(甲2,19,弁論の全趣旨)
ウ 平成16年契約締結後における本件ゴルフ場の営業日数は,平成17年3月期には283日であったが,平成18年3月期は132日,平成19年3月期は204日にとどまる。年間来場者数についても,平成17年3月期は3万0575人であったが,平成18年3月期は8744人,平成19年3月期は1万0079人であった。平成18年3月期に営業日数と来場者数が大幅に減少しているのは,平成18年3月期中に実施された営業方針の転換の結果,原則として,土曜・日曜及び祝祭日のみ通常営業することとし,平日については,事前の予約が6組以上ある場合にのみ営業することになったことによるものである。(甲9,乙8,35,45,弁論の全趣旨)
エ 原告らの平成17年3月期ないし平成20年3月期の決算状況は,別紙6「原告らの営業状況」記載のとおりである。このうち,原告P2は,平成17年3月期には4868万9751円,平成18年3月期には7288万5624円,平成19年3月期には1億1236万2197円,平成20年3月期には4755万7352円の営業損失をそれぞれ計上しており,これら4事業年度の営業損失の合計は3億4319万9434円に上る。なお,当該事業年度中に本件ゴルフ場が閉鎖された平成21年3月期においては,原告P2の売上高は372万9214円,営業損失は5938万5951円であった。(甲14,15,弁論の全趣旨)
オ 平成16年契約の契約期間は,前記(5)アのとおり,平成16年4月1日から平成19年3月31日までの3年間とされ,期間満了3か月前までに,原告らのいずれかからも意思表示がないときは,契約期間は更に3年間自動的に延長されることになっていたところ,原告P2は,期間満了の日(平成19年3月31日)より3か月以上前である平成18年12月30日付けで,原告P1に対して「P1株式会社と株式会社P2が,平成16年4月1日に締結したP6の賃貸借契約は,平成19年3月31日で契約期間満了につき,契約を終了いたします。」と記載した代表者P4名義の通知書(乙12・2枚目。以下「本件終了通知書」という。)を送付し,平成16年契約を終了させる旨の意思表示をした。その後,原告P1は,平成19年4月9日,鈴鹿県税事務所長に対し,本件終了通知書を添付した上で,「経営開始又は変更年月日」を「平成19年4月1日」と記載した「ゴルフ場利用税特別徴収義務者登録(変更)申請書」(乙12。以下「本件登録変更申請書」という。)を提出し,本件ゴルフ場のゴルフ場利用税特別徴収義務者について,原告P2から原告P1に変更する旨の登録申請をした。(甲13,乙12,弁論の全趣旨)
(7) 原告P1とP7との間でされた平成20年基本合意の内容等
ア P5は,遅くとも平成19年頃から本件ゴルフ場の売却を検討するようになり,同年10月頃,本件ゴルフ場内にあるレストランの経営を委託していたP17の仲介で,ゴルフ場の所有・運営を事業目的とするP7に対し,本件ゴルフ場の買収を打診した。P7の担当者であるP9は,P17から,本件ゴルフ場においては,入場者の減少を受けて,事前予約が5組以下であると営業しない態勢が採られ,レストランも採算割れの状態であること等を聞き,同月頃,実際に本件ゴルフ場を訪れた上で,平成20年1月頃から,P5や原告P1の関与税理士であるP8税理士らと買収交渉を進めた。その過程で,P9は,本件ゴルフ場の現状や原告P1の財務状況等の調査を進めたが,本件ゴルフ場には,会則では設置されているはずの理事会が存在せず,本件会員についてもゴルフクラブの会員としての活動実績がないなど,ゴルフクラブとしての機能が低下した状況にあった。また,原告P1は,P9から,決算書に記載されている負債について説明を求められても,これに応じず,過去の売上げ,原価,人件費,経費等に関する資料や,本件ゴルフ場の土地に関する資料等も一切提示しなかった。そこで,P7は,原告P1の財務状況等の詳細が明らかでない状況下で,不測のリスクを負うことを避けるため,原告P1が新設分割によって新会社を設立し,本件ゴルフ場の運営に必要な全ての資産を新会社に承継させた上で,新会社の全株式を原告P1から取得するという方法で買収を行うことにした。(甲8,9,23,24,26,乙28,45,50,証人P9,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
イ 原告P1とP7は,平成20年3月18日付けで,本件ゴルフ場の買収に関する方針等を定めた平成20年基本合意をした。平成20年基本合意は,前記アの方針どおり,原告P1が新設分割により新会社を設立し,本件ゴルフ場を運営する上で必要となる全ての資産を新会社に承継させた上で,新会社の全株式をP7に譲渡し,P7から当該株式の対価の支払を受けること等を内容とするものであり,平成20年基本合意に係る合意書(甲3。以下「平成20年基本合意書」という。)の概要は,以下のとおりであった。(甲3,8,乙28,50,証人P9)
1条(定義)
1項 「本件対象会社」とは,原告P1の完全子会社,原告P1が本件ゴルフ場の事業を分社型新設分割により設立する完全子会社をいう。
2項~5項 (略)
5条(株式の譲渡対価)
1項 本件対象会社の発行済株式総数の全部の譲渡対価の総額は20億5000万円とする。
2項 前項の譲渡対価は,本件決裁時に全額を一括して支払うものとする。
3項・4項 (略)
6条(本決裁時における開始条件)
1項 本件決裁時における実行の開始条件は,原告P1が平成20年基本合意上の譲渡人として次に定める事項の全義務の完全な履行をP7が確認したときとする。
1号・2号 (略)
3号 本件対象会社が本件ゴルフ場を保有・運営するために必要不可欠な諸権利(借地権・登記・登録の伴う不動産所有権など)の全てについて分割する手続を了すること。なお,原告P1において分割されない営業権が存在した場合であっても,原告P1はP7に対して何らの請求権を有しないこと,第5条第1項に記載の金額(中略)以外に一切の対価の請求はしないものとする。なお,会社分割時において原告P1に営業権が残存していても同様とする。
4号・5号 (略)
2項 (略)
7条(本件ゴルフ場内のコースの管理及び運営委託)
1項 原告P1は,P7に対し,平成20年基本合意に基づき,平成20年基本合意書締結日から本件決済時に至るまで本件ゴルフ場内のコースの管理業務及び運営を委託する。
2項~4項 (略)
5項 原告P1は,P7に対し,平成20年基本合意の締結後,本件ゴルフ場を占有使用して施設の改装,修繕工事を行うことに異議を留めない。ただし,そのためにかかる経費はP7の負担とする。
6項・7項 (略)
ウ 本件ゴルフ場は,平成20年基本合意に至る前の平成20年2月1日には,既に閉鎖されており,プレー代収入等の売上げはない状態となっていた。また,本件ゴルフ場は,前記アのとおり,P9が買収交渉開始前に現地確認を行った時点で,既に芝が相当傷み,改修工事の必要な箇所が多数存在する状態であったことから,P7は,平成20年基本合意に基づき改修工事等の設備投資を実施したところ,P7が本件ゴルフ場のオープンまでに投資した金額は,構築物につき約2800万円,機械装置につき約1500万円,車両につき約1600万円,器具備品につき約800万円,ゴルフコースの芝の張り替え等につき約7800万円に上った。(乙13,32,35,36,47ないし50,証人P4,証人P9,弁論の全趣旨)
エ 平成20年3月当時,本件ゴルフ場に勤務していた従業員は,正社員2名及びパート社員のみであった。そのため,P7は,本件ゴルフ場を買収した後,従業員の確保が必要となり,同年10月の本件ゴルフ場のオープンまでに新たに15名の従業員を雇用した。(乙35)
オ 原告P1は,平成20年5月15日,本件ゴルフ場の売却を進めるため,臨時株主総会を開催した。総会では,①原告P1が新設分割の方法により新たにP10社を設立し,本件ゴルフ場の事業をP10社に承継させること,②P10社は分割に際して普通株式200株を発行し,その全部を原告P1に割り当てることなどを内容とする分割計画案が承認された。次いで,原告P1は,平成20年6月9日,鈴鹿県税事務所長に対し,休業の期間を「平成20年2月1日から」,休廃業の理由を「売却の為」と記載した休業届(乙13)を提出した。(甲5,19,乙7,10,13)
(8) 平成20年9月1日付け契約の内容等
ア 原告らは,平成20年9月1日付けで,「P6営業譲渡契約書」と題する文書(平成20年9月1日付け契約書。甲4)を取り交わした。平成20年9月1日付け契約書の作成日付当時,原告P1の代表取締役はP5が,原告P2の代表取締役はP4がそれぞれ務めていたところ,平成20年9月1日付け契約書は,原告らの顧問弁護士であるP15弁護士から提示された契約書のひな形を参考にして,P4が自ら手書きで作成したものであった。(甲4,11,乙8,証人P4,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
イ 平成20年9月1日付け契約書には,概要,以下の記載がある。なお,平成20年9月1日付け契約書には40万円分の収入印紙が貼付されていたが,これらの収入印紙は,その作成日付である平成20年9月1日から2か月以上経過した後の同年11月20日頃に購入されたものである。(甲4,11,証人P4,弁論の全趣旨)
1条(営業譲渡の基準日)
本件営業譲渡の基準日を平成20年9月30日とする。
2条(動産の売買)
1項 原告P2は,原告P1に対し,①機械装置,②車両運搬具及び③工具器具備品を売り渡し,原告P1はこれを買い受ける。
2項 原告P2は,原告P1に対し,営業譲渡基準日限り,上記動産を引き渡して所有権を移転する。
3条(営業権)
1項 原告P2と原告P1との間で,本件ゴルフ場の営業権の価額(動産を含む。)が14億2000万円であることに合意する。
2項 原告P2は,原告P1に対し,本件ゴルフ場の営業権を譲渡し,原告P1は,これを引き受ける。
4条(債務の引受け)
原告P1は,原告P2の負担する債務を引き受けない。
5条(雇用の引継ぎ)
原告P1は,原告P2の従業員の雇用を引き継がない。
6条(営業権の譲渡の対価)
1項 原告P2と原告P1との間で,第2条ないし第3条の営業譲渡の対価を14億2000万円と定める。
2項 原告P1は,原告P2に対し,前項の対価を平成21年9月30日までに支払う。
ウ 原告P1は,平成20年10月1日,新設分割の方法によりP10社を設立した。P10社は,同日,新設分割の際に発行した本件株式全部を原告P1に割り当てるとともに,原告P1から,本件ゴルフ場に係る土地,地上権,家屋・構築物,事業用資産(機械・器具,農耕具等,車両運搬具,器具・備品)を承継した。(甲19,乙37,38,証人P9)
エ 原告P1とP7は,平成20年10月1日付けで,原告P1がP7に対して本件株式を20億5000万円で譲渡すること等を内容とする平成20年9月1日付け契約を締結した。原告P1は,同日,P7に対して本件株式を譲渡し,P7は,同日,原告P1に対してその対価である20億5000万円を支払った。(甲5,乙29,原告ら代表者,弁論の全趣旨)
オ P7は,DCF法を用いて,平成20年9月1日付け契約に基づく本件ゴルフ場の購入価格を算出した。DCF法とは,ある資産が将来生み出すものと考えられるキャッシュフローの総合計額を現在価値に割り引くことによりその価格を算定するという資産の評価方法であるところ,P7は,同社が本件ゴルフ場を経営した場合にどの程度の収益が見込まれるかという観点から本件ゴルフ場の現在価値を20億5000万円と算定し,これを本件株式の対価とした。(甲8,乙28,35,50,証人P9,弁論の全趣旨)
カ 原告P1は,本件株式譲渡契約締結後である平成20年10月10日,鈴鹿県税事務所長に対し,廃業年月日を「平成20年9月30日」,休廃業の理由を「売却の為」と記載した「休廃業届」(乙14)を提出した。他方,原告P2は,本件株式譲渡契約締結日以降,同様の休廃業届を提出していない。(甲10,19,乙14,弁論の全趣旨)
(9) 本件ゴルフ場に関する原告らの主な会計経理の内容等
ア 法人税法22条4項は,法人の各事業年度の販売費及び一般管理費等の額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定し,その基準に該当する企業会計原則注解(昭和57年4月20日大蔵省企業会計審議会)の注25は,営業権は,有償で譲受け又は合併によって取得したものに限り貸借対照表に計上し,毎期均等額以上を償却しなければならない旨を定めている。原告P2の平成17年3月期ないし平成20年3月期の法人税の各確定申告書ないし修正申告書(以下「確定申告書等」という。)に添付された貸借対照表には,本件ゴルフ場の営業権は計上されておらず,同じく確定申告書等に添付された損益計算書でも,本件ゴルフ場の営業権の額に係る減価償却費は計上されていない。その一方で,原告P2の平成20年3月期の貸借対照表には,生コンクリートの製造・販売に係る営業権の対価として支払ったとする1210万4183円が営業権として計上されていた。(甲8,15,19,乙8,22,弁論の全趣旨)
イ 原告P1は,平成16年契約に基づき,原告P2から,平成17年3月期につき5453万3045円,平成18年3月期につき5755万7649円,平成19年3月期につき5140万2532円を受領し,当該各事業年度の法人税の確定申告書に添付された損益計算書の「不動産賃貸料収入」勘定(ただし,平成17年3月期は「売上高」勘定)にそれぞれ計上した。他方,原告P2は,上記各事業年度の法人税の確定申告書に添付された損益計算書において,原告P1に支払った上記各金員につき「地代家賃」勘定(ただし,平成19年3月期においては,金額の一部につき「租税公課」勘定)にそれぞれ計上していずれも損金に算入し,地代家賃の内訳書の「借地(借家)物件の用途」欄には「ゴルフ場施設一式」と記載した。また,原告P1の総勘定元帳によれば,原告P1は,本件ゴルフ場が閉鎖された日以降の日を含む平成20年3月期にも,原告P2から5263万3208円のゴルフ場賃料を受領したものとされているところ,その多くは,原告P1が原告P2に対して有する仮払金と相殺する形が採られていた。なお,平成16年契約締結後,原告P2が,原告P1に対し,本件ゴルフ場の営業権の対価の名目で金銭その他の資産の譲渡又は経済的な利益の供与をしたことはないことについては当事者間に争いがない。(甲19,乙15,16,弁論の全趣旨)
ウ 原告P1は,平成20年10月1日,原告P2に対し,平成20年9月1日付け契約に基づき,P7から支払を受けた本件株式譲渡代金(20億5000万円)の中から,平成20年9月1日付け契約において本件ゴルフ場の営業権の価額(動産を含む。)とされた14億2000万円のうちの10億円を支払い,残りの4億2000万円については,平成21年3月期の確定申告書に添付した貸借対照表の「未払金」勘定に計上した。また,原告P1は,平成20年10月1日,上記14億2000万円から原告P2所有に係る本件営業用動産の対価を控除した13億5912万6250円(本件金員)のうち,消費税等相当額(6472万0298円)を差し引いた残金12億9440万5952円を,一旦,総勘定元帳の「営業権」勘定の借方に計上したが,同日,「営業権償却」勘定の借方に振り替え,本件原告P1確定申告のうち,①法人税の確定申告においては「営業権償却」勘定に計上して損金の額に算入するとともに,②消費税等の確定申告においては同額を消費税等の差引納付税額の計算上,課税仕入れに係る支払対価の額として仕入税額控除を計算した。(甲12,14の5,19,乙1,2,8,17,31,弁論の全趣旨)
エ 原告P2は,平成20年10月1日,前記ウの4億2000万円を平成21年3月期の確定申告書に添付された貸借対照表上の「未収金」勘定に計上し,本件金員のうち消費税等相当額(6472万0298円)を控除した12億9440万5952円を,同損益計算書の「ゴルフ場営業権譲渡収入」勘定に計上して益金の額に算入するとともに,上記消費税等相当額を課税売上げの対象とした。なお,原告P2には,平成21年3月期において約9億5000万円の欠損金があったため,上記益金12億9440万5952円のうち上記欠損金相当額が所得から控除された。(甲15,19,乙19,弁論の全趣旨)
オ 原告P1は,平成21年7月21日,原告P2に対し,前記ウの4億2000万円を支払った。(甲19,乙8,18,弁論の全趣旨)
(10) 本件各処分に至る経緯等
ア 原告P1は,法定申告期限内である平成21年6月1日,鈴鹿税務署長に対し,平成21年3月期の法人税及び平成21年3月課税期間の消費税等に関して,別紙3の「課税の経緯(原告P1)」の「確定申告」欄各記載のとおり,納付すべき法人税額を188万0700円,納付すべき消費税等は存在しないこと等を内容とする確定申告(本件原告P1確定申告)をした。(乙1,2)
イ 本件原告P1確定申告の中で,原告P1は,原告P2に帰属する本件ゴルフ場の営業権及び原告P2所有の本件営業用動産の譲受けの対価として支払った合計14億2000万円から本件営業用動産価額相当分を控除した13億5912万6250円(本件金員)が本件ゴルフ場の営業権の対価の額に当たるとして,法人税の所得の計算上,その消費税抜価額に当たる12億9440万5952円を営業権償却費として損金の額に算入し,併せて,消費税等の差引納付税額の計算上,課税仕入れの対象として仕入税額控除を計算した。(乙1,2,弁論の全趣旨)
ウ 原告P2は,法定申告期限内である平成22年5月27日,鈴鹿税務署長に対し,平成22年3月期の法人税に関して,別紙4の「課税の経緯(原告P2)」の「確定申告」欄記載のとおり,欠損金額を1828万0409円とし,納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)83万9431円とすること等を内容とする確定申告(本件原告P2確定申告)をした。(乙3)
エ 本件各確定申告に関与したP18税理士法人のP19税理士は,平成23年2月15日,鈴鹿税務署の職員から質問を受けた際,①本件ゴルフ場の営業権の譲渡対価を14億2000万円と算定したことについては,計算上の根拠はなく,税務申告の委任を受けたP5から,原告P2が本件ゴルフ場の経営をしていたことを根拠に14億2000万円が営業権の対価になるといわれたにすぎないこと,②P5からは,原告P2が本件ゴルフ場を経営していたのであるから,本件株式譲渡代金について,原告P1より多くの利益を取って良いのだとの話がされ,税理士としては,その内訳を明らかにしたいと考えて確認を試みたものの,原告P2が取得する部分の内訳を明らかにすることはできなかったため,P5から言われるままの金額で上記対価を計上することにしたことなどを回答した。
また,P19税理士は,同年3月2日,鈴鹿税務署の職員から質問を受けた際にも,①P5から言われるままに決算を組んだこと,②P5からは,税金を抑えたいとの話があり,税額の話をすると,何度も,もう少し少なくならないのかという話をされたこと,③P5から,本件ゴルフ場の営業権を14億2000万円と算定するよう指示され,数年営業しただけでこれだけの金額になることには疑問があったものの,P5に反論することはできなかったことなどを回答した。(甲12,14の5,乙1,2,31,弁論の全趣旨)
オ 本件株式譲渡契約の締結交渉に関与していたP7の社員のP9は,平成23年2月25日,鈴鹿税務署の職員から質問を受けた際,本件株式譲渡代金の内訳は土地・建物・備品であり,飽くまで収益性を考慮しての金額であるため総体の金額しか出すことができず,原告P1に対しては,本件ゴルフ場にある土地・建物,備品に関する代金である旨説明したなどと回答し,本件各処分後である平成25年4月15日に質問を受けた際にも,①本件ゴルフ場の状態に照らし,P7としては,本件ゴルフ場の事業を引き継いだとの認識はなく,土地・建物・備品等のゴルフ場の事業用資産を引き継いだとの認識であること,②これまでP7が買収したゴルフ場について,買収先の営業権を引き継いだことはないことなどを回答した。(甲8,乙28,35)
カ P5は,平成23年3月25日,鈴鹿税務署の職員から質問を受けた際,「本件ゴルフ場の営業権は原告P2にあると自分が決めたのであるから税務署に言われる理由はない。営業権が原告P1と原告P2のいずれにあるかは,全て自分の判断である。」,「平成11年契約書については記憶にない。平成16年契約書を作成したかについても記憶がないが,原告らの実質的な権限は全て自らにあるから,どちらの会社でも同じである。」旨回答した。また,P5は,平成19年4月9日付けで本件ゴルフ場のゴルフ場利用税特別徴収義務者を原告P2から原告P1に変更する旨の届出をしたことについて,「当時,本件ゴルフ場は余り営業しておらず,本件ゴルフ場を売却する気になり始めた頃だから,原告P1に変更したのかもしれないが,本件ゴルフ場の営業権は原告P2にあるものと考えている。」旨回答した。
なお,P5は,原告ら代表者尋問の際にも,「P7から支払を受けた20億5000万円のうち,本件ゴルフ場の営業権の対価の金額を14億2000万円とすることを決めたのは自らであり,その根拠は,本件ゴルフ場に対する貢献度である。」,「20億5000万円のうち,原告P2の取り分が14億2000万円,原告P1の取り分が残り6億3000万円としたのは,両方とも自分が社長をしていたから,いくらでもよかった。」,「原告P1の取り分を6億3000万円と決めたのには,全く理由はない。」旨供述した。(乙30,原告ら代表者)
(11) 本件各処分の内容及び原告らの不服申立て等
ア 鈴鹿税務署長は,平成23年5月24日,原告P1が原告P2に対して本件ゴルフ場の営業権の対価とした12億9440万5952円(ただし,消費税抜価額)は,原告P2に営業権自体が存在しないことから,原告P1から原告P2に対する寄附金と認められ,営業権の償却費として計上した12億9440万5952円は損金の額に算入されず,また,原告P1が本件ゴルフ場の営業権及び原告P2所有の本件営業用動産の譲受けの対価として支払った合計14億2000万円から本件営業用動産価額相当分を控除した13億5912万6250円(本件金員)のうち消費税等の額である6472万0298円は課税仕入れの対象にもならないなどとして,原告P1に対し,別紙3「課税の経緯(原告P1)」の「更正等」欄各記載のとおり,本件原告P1各処分をした。(甲16,17,19)
イ 鈴鹿税務署長は,平成23年5月24日,原告P2は平成21年3月期の法人税の申告において本件ゴルフ場の営業権の対価として本件金員全額を損金の額に算入しているところ,本件金員は,本件ゴルフ場の営業権が存在しないため,その全額が原告P1からの寄附金に該当し,これは単なる金銭の贈与であるから,その金額のうち未収金となっている金額は,平成21年3月期ではなく,実際にその金銭の交付を受けた平成22年3月期の益金の額に算入することになるので,本件原告P2確定申告には受贈益の計上漏れがあるなどとして,別紙4「課税の経緯(原告P2)」の「更正等」欄記載のとおり,本件原告P2各処分をした。(甲18)
ウ 原告P1は,平成23年7月19日,本件原告P1各処分のうち法人税に係る部分につき審査請求をし,次いで,同月22日,消費税等に係る処分につき異議申立てをした。また,原告P2は,同年7月19日,本件原告P2各処分につき審査請求をした。これら不服申立ての中で,原告らは,鈴鹿税務署長が原告らに対してした本件各処分には,本件基準日の時点で原告P2に本件ゴルフ場の営業権が帰属していたにもかかわらず,事実を誤認してそれが存在しないものとして損金として算入することを認めなかった違法がある旨の主張をしていた。(甲19,20,乙6ないし10,弁論の全趣旨)
2 争点(1)①(原告P2は,平成16年契約に基づき,原告P1から,本件ゴルフ場の営業権を譲り受けていたか否か。)について
(1) 原告らは,本件ゴルフ場の営業権は平成16年契約によって原告P1から原告P2に譲渡された旨主張し,証人P4作成の陳述書(甲24)及び同証人の証言並びに原告ら代表者作成の陳述書(甲26)及び同代表者尋問の結果中には,これに沿うかのような供述記載部分ないし供述部分が存在する。
(2) しかしながら,前記1で認定した事実によると,①平成16年契約の際に原告らが取り交わした契約書(平成16年契約書)の中には,譲渡の対象となる営業権の内容,譲渡の価額及び譲渡の基準日など,営業権を譲渡した場合であれば通常は取り決められるはずである事柄を定めた条項が一切存在せず,むしろ「原告P1は,原告P2に対し,本件ゴルフ場内の全ての建物,施設を賃貸し,原告P2は,これを賃借する。」(1条1項),「原告P2は,営業に当たっては,原告P1と相談し,原告P1の営業方針に従うものとする。」(2条),「原告P2は,本件ゴルフ場の建物,施設で営業,維持管理に従事する従業員については,原告P1の定める規則を自己の責任において遵守させるものとする。」(9条1項)など,本件ゴルフ場の営業権譲渡が行われたという原告らの主張とはおよそ相容れない内容の条項が定められていたこと,②実際,原告P2は,平成16年契約の締結時に原告P1に対して本件ゴルフ場の営業権の対価を支払っておらず,平成17年3月期ないし平成20年3月期に原告P2が原告P1に対して支払ったものとされている毎期5000万円程度の金員は,いずれも「地代家賃」勘定(原告P2)ないし「不動産賃貸料収入」(原告P1)に計上されており,営業権の後払いとしての決算処理もされていなかったこと,③平成16年契約締結後の平成17年3月期ないし平成20年3月期における確定申告においても,原告P2は,これら各事業年度の貸借対照表の中で,本件ゴルフ場の営業権の価額を計上しておらず,損益計算書でも,当該営業権の額に係る減価償却費を計上していなかったこと,④原告P1は,平成16年契約で定められた契約期間の満了後に,鈴鹿県税事務所長に対し,原告P2から原告P1に対する平成16年契約の終了通知を添付した上で,本件ゴルフ場の利用税の特別徴収義務者を原告P2から原告P1に変更する旨の申請をしているところ,原告らが主張するように,原告P2が平成16年契約によって原告P1から本件ゴルフ場の営業権の譲渡を受けたというのであれば,契約期間の満了に伴って上記変更申請をすることに合理的な理由は見い出し難いこと,⑤そもそも,平成16年契約締結当時における原告P1の業務執行の実質的な決定権限を有していたP5自身,本件各処分の前である平成23年3月25日に実施された税務調査の際,「本件ゴルフ場の営業権が原告P1と原告P2のいずれにあるかは全て自らの判断によるものであって,本件ゴルフ場の営業権は原告P2にあると自ら決めたのであるから税務署に何か言われる理由はない。」,「平成16年契約書を作成したかについても記憶がないが,原告らの実質的な権限は全て自らにあるから,どちらの会社でも同じである。」旨回答し,原告ら代表者尋問の際にも,「原告P2の取り分が14億2000万円,原告P1の取り分が残り6億3000万円としたのは,両方とも自分が社長をしていたから,いくらでもよかった。」,「原告P1の取り分を6億3000万円と決めたのには,全く理由はない。」旨供述したこと,⑥本件各確定申告に関与したP19税理士も,鈴鹿税務署の職員に対し,本件各確定申告書の作成の際,P5から,「本件ゴルフ場の営業権の価額を14億2000万円とするように指示され,原告P2が数年間営業しただけでこのような金額になることには疑問があったものの,そのままの金額で損金として計上した。」,「原告P2が取得する部分の内訳を明らかにすることはできなかったため,P5から言われるままの金額で営業権譲渡の対価を計上することにした。」,「P5からは,税金を抑えたいとの話があり,税額の話をすると,何度も,もう少し少なくならないのかという話をされた。」旨供述したこと等を指摘することができる。
これら諸点に照らすと,前記(1)の証人P4及び原告ら代表者の供述記載部分ないし供述部分をそのまま信用することはできず,他に,平成16年の時点で本件ゴルフ場の営業権が原告P1から原告P2に対して譲渡されたという原告ら主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
かえって,上記諸点に加え,前記1で認定したとおり,本件各確定申告において,原告P1が本件金員(原告P1が平成20年9月1日付け契約に基づいて原告P2に支払った14億2000万円から原告P2所有の本件営業用動産の対価に当たるものを控除した金額である13億5912万6250円)を本件営業権償却費として損金の額に算入し,原告P2が本件金員を益金の額に算入した上で同事業年度に生じた欠損金を理由として所得控除を行ったことにより,約9億5000万円の所得に係る法人税額を減少させたことをも併せ考慮すると,平成20年9月1日付け契約は,原告らの法人税額を減少させるために行われたものであると推認することができる。
そうすると,平成16年契約に基づいて原告P1から原告P2に譲渡された本件ゴルフ場の営業権を更に平成20年9月1日付け契約で譲渡したという原告らの主張も,原告らの平成21年3月期の法人税額を減少させるための方便にすぎないとみるのが相当である。
したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。
(3) これに対し,原告らは,①平成16年契約は,原告P1に対して進められていた民事再生手続が終結したことを踏まえ,原告P2が本格的に本件ゴルフ場を再建していくことを目的として締結されたものであり,平成16年契約締結後,原告P2は,本件ゴルフ場の運営による収入を取得する一方で,本件ゴルフ場の整備や管理のための必要な支出を行ったり,広報活動のための支出を行ったりしていたところ,このことは,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が帰属していたことを示すものである,②平成16年契約の際に原告らの間で営業権の対価の授受がされなかったのは,両社の間で後払いの合意が成立していたからにすぎず,平成16年契約の中で,原告P2が原告P1に対して本件ゴルフ場の施設の賃料に加えて本件ゴルフ場の運営によって生じた純利益の15%を支払うことと定められていたのは,本件ゴルフ場の営業権の後払いの趣旨を含むものである,③原告P2の貸借対照表の中に本件ゴルフ場の営業権の価額が計上されていないのは,原告P2において,原告P1から営業権を取得した際の価額を算定することができなかったためであるなどと弁明する。
しかしながら,上記①の点については,平成16年契約が締結された平成16年4月1日以降,原告P2が本件ゴルフ場を運営し,本件会員等の利用者から支払われるゴルフプレー代金等を収受する一方で,本件ゴルフ場の維持・管理のための各種費用を負担していたことは原告らが指摘するとおりであるけれども,平成16年契約では,原告P2が本件ゴルフ場内にある全ての施設をその営業のために使用し,原告P2の責任において維持・管理する義務を負う旨が定められていたのであるから(1条2項),原告P2が,本件ゴルフ場の運営によって生じる売上金を収受し,本件ゴルフ場の維持・管理に必要な費用を支出していたことをもって,平成16年契約に基づき,本件ゴルフ場の営業権が原告P1から原告P2に譲渡されていたというわけにはいかない。
次に,上記②の点については,仮に,原告らが主張するように,本件ゴルフ場の営業権の対価についての後払いの合意が成立していたというのであれば,営業権の譲渡に関する契約の中で,譲渡の価額や支払時期などについて具体的な定めを置いておくのが通常であるところ,既に認定・説示したとおり,原告らが本件ゴルフ場の営業権の譲渡を定めた契約書であると主張する平成16年契約書には,本件ゴルフ場の営業権の対価を後払いで支払うことや,譲渡の価額及び支払時期に関する定めは一切存在しない。また,原告らの平成17年3月期ないし平成20年3月期の決算書類の中には,本件ゴルフ場の営業権が後払いとされたことを示す記載は全くなく,かえって,原告P2は,これら各事業年度に原告P1に対して支払った5000万円を超える金員についていずれも「地代家賃」勘定に計上し,原告P1も「不動産賃貸料収入」に計上するなどしており,原告らが主張するように,平成16年契約に基づいて本件ゴルフ場の営業権が譲渡されたことを前提とする経理処理が何らなされていないことは既に説示したとおりである。
さらに,上記③の点については,前記1で認定したとおり,平成16年契約の締結以前から,原告らには弁護士や税理士が関与していたのであるから,平成16年契約に基づいて本件ゴルフ場の営業権が譲渡されたのであれば,これら弁護士等に依頼して本件ゴルフ場の営業権の価額を算定した上で,その決算書類に反映することも十分可能であったはずである。それにもかかわらず,原告らの決算書類の中に本件ゴルフ場の営業権に関する記載が一切ないのは,むしろ原告らの主張するような営業権譲渡の事実はなかったことを示すものというほかはない。
以上によれば,原告らの上記各弁明は,いずれも採用することができない。
3 争点(1)②(平成16年契約に基づいて原告P2が本件ゴルフ場の運営を続けたことにより,本件基準日の時点で,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が生じていたか否か。)について
(1) 原告らは,仮に,本件ゴルフ場の営業権が平成16年契約によって原告P1から原告P2に譲渡されたということができないとしても,原告P2が平成16年契約に基づいて本件ゴルフ場の運営を続けた結果,本件基準日(平成20年9月30日)の時点では,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が生じていた旨主張するところ,確かに,前記第2の3(3)カの前提事実のとおり,平成16年契約が締結された平成16年4月1日以降,同契約に基づいて原告P2が本件ゴルフ場の運営を行っていたことは,当事者間に争いがない。
(2) しかしながら,前記1で認定した事実によると,①原告P2は,平成16年契約に基づき本件ゴルフ場を運営していた平成17年3月期から平成20年3月期の各事業年度のいずれにおいても多額の営業損失を計上し,これら4事業年度で原告P2に生じた営業損失の総額は約2億8000万円に上ること,②本件ゴルフ場は,平成18年3月期中に実施された営業方針の転換により,原則として土曜日,日曜日及び祝祭日のみ営業し,平日については6組以上の予約がある場合にのみ営業していたこと,③P5は,鈴鹿税務署の職員による調査の際,本件登録変更申請書を提出した平成19年4月9日頃には,本件ゴルフ場は余り営業していなかったことを自認する旨の供述をしていること,④本件ゴルフ場は,平成20年2月1日までには閉鎖され,その後,原告P2は,本件ゴルフ場の運営を行ってはいなかったこと,⑤本件ゴルフ場は,P7のP9が現地の確認を行った平成19年10月の時点で多数の改修を要する状態にあり,そのため,P7は,平成20年基本合意成立後,総額1億円以上を掛けてゴルフコースの芝の張り替え工事その他の新たな設備投資を実施したこと,⑥本件株式譲渡契約が締結された平成20年10月1日当時,本件ゴルフ場には,通常のゴルフクラブであれば存在するはずの理事会の実態はなく,ゴルフクラブの会員としての活動実績もないなど,ゴルフクラブとしての機能が低下した状態にあったこと等を指摘することができる。
これら諸点に加えて,前記1で認定したとおり,平成16年契約に基づいて原告P2が本件ゴルフ場の運営を行ったのは,平成16年4月1日から平成20年3月31日までのわずか4年にすぎない上,森林法に基づく開発行為の許可を受けたのは原告P2ではなく原告P1であり,本件会員やゴルフコースの地権者との間で契約関係にあるのも原告P1であることなどをも併せ考慮すると,平成16年4月1日以降,原告P2が本件ゴルフ場の運営を行っていたからといって,それのみで,本件基準日当時,原告P2が,本件ゴルフ場について,いわゆる営業権を取得するに至っていたということはできず,他に,これを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。
(3) なお,原告らは,P7が採用した不動産評価報告書(乙45)には,DCF法による評価額は15億4000万円と記載され,P7が社内決裁用に作成した「【第2号議案】P6取得の件」と題する文書(乙35・別紙1)の中にも「のれん概算額」として5億3100万円の記載があることを指摘し,これらの事実は,本件基準日時点において原告P2に本件ゴルフ場の営業権が帰属していたことを示すものである旨主張する。
しかしながら,証拠(乙35)によると,P7内部文書の「事業リスク」欄には,「営業は,土曜,日曜の5組以上しか行っておらず,過去数値は参考にならない」,「グリーンの張替えを必要とする状況で,既に2月からクローズしており(降雪ではなく,営業を行う気がない)3月の必要な時期から工事を開始する必要がある」などと記載されていることが認められるから,P7において,原告P2に本件ゴルフ場の営業権が帰属している旨の認識を有していたとは考え難く,原告らが指摘するこれらの記載の存在をもって,原告P2に営業権が帰属していたことを示すものであるということはできない。
4 争点(2)(本件基準日の時点で,原告P2が本件ゴルフ場の営業権を有していなかった場合,本件金員の全部又は一部を原告P1ではなく原告P2が取得することに合理的な理由があると認められるか否か。)について
(1) 前記2及び3で説示したところによれば,本件基準日の時点で,本件ゴルフ場の営業権が原告P2に帰属していたということはできないから,本件金員(原告P1が平成20年9月1日付け契約に基づいて原告P2に支払った14億2000万円から原告P2所有の本件営業用動産の対価に当たるものを控除した金額である13億5912万6250円)が本件ゴルフ場の営業権の対価であるとは認められない。したがって,他に,原告P1が原告P2に対して本件金員の全部又は一部を支払う合理的な理由があるということができない場合には,本件金員は,原告P1の原告P2に対する寄附金であるということになる。
(2) この点に関して,原告らは,①原告P1にとって,平成16年契約を解消することが本件ゴルフ場の売却を進める上で必要不可欠なものであったから,原告P2に対してした本件金員の支払は,平成16年契約を解消するために必要な立退料的代償措置に当たる,②原告P2は,本件ゴルフ場がオープンしていた平成16年4月1日から平成20年2月1日までの3年10か月間,月額約700万円,総額約3億2200万円の価値に相当する業務を負担しており,これら多額の支出を伴う原告P2の本件ゴルフ場の維持・管理に係る貢献があったために,本件ゴルフ場はその価値を維持してきたのであるから,同貢献相当分である本件金員を取得する合理的な理由がある,③原告P2が本件ゴルフ場を運営したことにより,営業権が生じていたということができないとしても,営業権に類似する経済的な価値が生じていたというべきである,④平成16年契約に基づき原告P2が本件ゴルフ場の営業を続けたことにより,過去にはゴルフ場の底地の価値しか付かなかった本件ゴルフ場を20億5000万円という高値で売却する機会を得ることができたのであるから,原告P2が上記機会利益相当分に当たる本件金員を取得する合理的な理由があるなどとして,原告P1が原告P2に対して本件金員を支払うことには経済的合理性がある旨主張する。
(3) しかしながら,上記①の点については,前記1で認定したとおり,平成16年契約書においては,期間満了,不可抗力による契約の終了等,原告P1又は原告P2の責めに帰すことのできない事由により契約が終了したときは,原告P2は,原告P1に対し,立退料,営業補償等,名目の如何を問わず,金銭の支払その他の行為を請求することはできないものとされている(14条)ところ,平成16年契約は,原告P2が原告P1に対して本件終了通知書を送付したことにより平成19年3月31日の契約期間満了により終了しており,原告ら自身,鈴鹿県税事務所長に対し,同年4月9日付けで本件終了通知書を添付した上で本件ゴルフ場のゴルフ場利用税特別徴収義務者の変更登録申請をしているのであるから,上記契約終了を当然の前提としていたことは明らかである。そうすると,原告P2は,平成16年契約の規定上,原告P1に対して立退料相当額の金員の支払を求めることができない筋合いであったというほかはない。これに加えて,立退料ないし立退料的性格の金員の支払は賃貸人と賃借人の間で合意が成立して初めて生じるものであるところ,原告らの間で取り交わされた平成20年9月1日付け契約書では,本件金員の対価となる譲渡の対象物は,本件営業用動産と本件ゴルフ場の営業権と記載されており(3条1項),原告P2に対して立退料ないし立退料的性格を有する金員を支払う旨の条項は存在しないから,原告らの間で立退料ないし立退料の性格を有する金員の支払に関する合意が成立していたということはできない。したがって,平成20年9月1日付け契約に基づいて支払われた本件金員の全部又は一部が立退料ないし立退料類似の代償措置に当たるという原告らの主張は,いずれにしても採用することができない。
次に,上記②の点については,前記1で認定したとおり,平成16年契約では,原告P2は,本件ゴルフ場内の全ての建物,施設等を営業の目的で使用し,原告P2の責任・負担において維持・管理するものとされていたところ(平成16年契約書1条2項),本件全証拠によっても,原告P2が平成16年契約に基づき負担すべき義務を負う範囲を超える費用を支出したと認めることはできない。したがって,原告P2が,平成16年契約期間中に,本件ゴルフ場の維持・管理に係る費用を支出して本件ゴルフ場の価値を保っていたことを理由として,原告P1が原告P2に対して本件金員の全部又は一部を支払うことにつき合理的な理由があるということもできない。
また,上記③の点については,そもそも,原告らが主張する営業権に類似する経済的価値の内実そのものが詳らかではないばかりか,平成16年契約に基づいて原告P2が本件ゴルフ場を運営したのはわずか4年にすぎない上,原告P2が本件ゴルフ場の運営を行った事業年度のいずれにおいても多額の営業損失が生じており,しかも,本件ゴルフ場は,平成18年3月期中に実施された営業方針の転換により,原則として土曜日,日曜日及び祝祭日のみ営業することとし,平日は6組以上の予約がある場合に限って営業していたことなど,前記3で認定・説示した原告P2の下での本件ゴルフ場の運営状況に照らすと,原告P2が本件ゴルフ場を運営していたことにより,本件ゴルフ場について,前記3(2)で説示した意味での営業権に類似する経済的な価値が生じていたということはできない。
さらに,上記④の点については,前記1で認定したとおり,本件株式の譲渡に関与したP7のP9は,鈴鹿税務署の職員に対し,本件株式譲渡代金である20億5000万円の内訳は土地,建物及び備品であり,これら資産についてP7のノウハウの下に営業した場合にどの程度の利益が見込めるのかをDCF法によって算定したものであって,原告P2による過去の実績は全く考慮していない旨回答しているのであるから,本件株式譲渡代金の価額が,過去に算定された本件ゴルフ場の底地の価格を上回っているからといって,そのことから直ちに同底地との差額について原告P2が本件金員の全部ないし一部を取得することに合理性があるということはできない。
以上によれば,原告らの上記各主張は,いずれも採用することができない。そうすると,本件金員の支払には,原告らが主張するような合理的な理由があるということはできず,本件金員の支払は対価性のないものといわざるを得ない。
5 本件各処分の適法性について
以上によれば,平成20年9月1日付け契約に基づいて原告P1が原告P2に対して支払った14億2000万円から原告P2所有に係る本件営業用動産の価額を控除した金額に相当する13億5912万6250円(本件金員)は,原告P1の原告P2に対する寄附金(原告P2にとっては,原告P1からの受贈益)に当たるということになるところ,このことを前提に,原告P1の平成21年3月期の法人税及び平成21年3月課税期間の消費税等並びに原告P2の平成22年3月期の法人税の額を算定すると,いずれも別紙5「被告主張額の根拠等」記載1及び2のとおりとなり,本件各処分における納付すべき税額及び各過少申告加算税の額と同額であるから,本件各処分はいずれも適法である。
第4結論
以上の次第で,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福井章代 裁判官 富澤賢一郎 裁判官 西脇真由子)
file_2.jpg別紙