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名古屋地方裁判所 平成3年(ワ)417号 判決 1992年9月25日

主文

一  被告は、原告に対し、金六二七万五九五七円及びこれに対する昭和六一年一月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分してその一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対し、二七一五万八八五五円及び内二四六五万八八五五円に対する昭和六一年一月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、原告が左記一1の交通事故の発生を理由に被告に対し自賠法三条により損害賠償請求をする事案である。

一  争いのない事実

1  交通事故

(一) 日時 昭和六一年一月一日午後一〇時四〇分ころ

(二) 場所 愛知県豊田市扶桑町二―一八一先路上(県道細川―豊田線)

(三) 加害車両 被告所有、運転の普通乗用自動車(三河五八ゆ九五三七号)

(四) 被害車両 訴外藤村久江運転、原告同乗の普通乗用自動車(三河五八て三八九二号)

(五) 態様 加害車両が前記道路を走行中、左にカーブしている場所で曲がり切れず、対向車線に進入し、同車両を走行してきた被害車両に正面衝突し、被害車両に同乗していた原告(事故当時一〇歳)外に傷害を与える等した。

2  責任原因

被告は、加害車両を自己のために運行の用に供していた者である。

3  本件につき、被告の加入している自賠責保険から原告に対し、原告の後遺障害中、左眼眼瞼の醜形、前額部皮膚の醜形等顔面の醜状痕(症状固定日昭和六一年二月一三日)が自賠法施行令別表後遺障害等級表七級一二号(「女子の外貌に著しい醜状を残すもの」)に、右眼角膜混濁、硝子体混濁、絶対性瞳孔強直による右眼視力障害(視力0.05 眼鏡による矯正視力0.2ないし0.3 さらにコンタクトレンズを併用した矯正視力0.7)、右外斜視、両眼性複視(正面視、左右上下視)、右眼球運動麻痺(注視野障害)(症状固定日昭和六三年一月七日)が同表一二級に各該当し、併合して(自賠法施行令二条一項二号ニ)同表六級に該当するとされ、合計一一五四万円が支払われた。

二  争点

原告の傷害及び後遺障害の内容とこれによる原告の損害額の評価である。

第三  争点に対する判断

一  本件傷害の態様

当事者間に争いのない事実、証拠(<書証番号略>、原告本人)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。

1  原告は本件事故により、右強角膜裂傷、左眼瞼裂傷、顔面挫傷、挫傷の傷害を負い、愛知県厚生農業協同組合連合会加茂病院において昭和六一年一月一日から同月二月三日までの三四日間入院し、同月四日から昭和六三年一月七日までの間通院し(実通院日数は三一日)、なお症状固定後も平成元年一月一一日まで通院したが(症状固定後も含む実通院日数は三二日)、前記後遺障害を残した。

2  原告の後遺障害のうち、顔面の醜状痕は、左眼上部に九センチメートルの線状痕があるほか、額及び唇上部等に長さが確認されているものだけでも六本の線状痕があるというものである。

二  損害

1  文書料(請求額三〇〇〇円)

三〇〇〇円

証拠(<書証番号略>)及び弁論の全趣旨によると、本件立証のため必要な後遺障害診断書の交付を受けるため要した費用であることが認められる。

2  入院諸雑費(請求額四万〇八〇〇円) 三万四〇〇〇円

原告は前記のとおり三四日間入院したところ、入院諸雑費は一日当たり一〇〇〇円が相当であるので、頭書金額となる。

3  通院付添費(請求額六万二〇〇〇円)

六万二〇〇〇円

証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によると、原告は前記三一日間の通院中、祖母に付き添ってもらったことが認められるところ、原告の年齢、傷害の内容に照らすと、右付添いは必要であったものと解される。そして親族による通院付添費は一日当たり二〇〇〇円が相当であるので、頭書額となる。

4  通院交通費(請求額八万四六六〇円) 二万七九〇〇円

証拠(<書証番号略>、原告本人)によると、原告はタクシーや祖母の運転する自動車で通院していたこと、しかしバスを使用して通院することも可能であり、その場合バス利用金は、片道大人三〇〇円、小人一五〇円であったことが認められる。本件にあっては原告及び祖母についての右バス料金相当分が本件事故による相当な損害と解するので、頭書金額となる。

(300×2+150×2)×31

=27,900

5  医師等への謝礼(請求額三万六〇〇〇円) 〇円

これを認めるに足りる証拠はなく、また右支出が仮に認められたしても本件事故による相当な損害と解するに足りないものである。

6  眼鏡等購入代金(請求額六万三八〇〇円) 六万三八〇〇円

証拠(<書証番号略>により認められる。

7  入通院慰謝料(請求額三〇〇万円) 九〇万円

本件傷害の部位、程度、前記治療の経緯等に照らすと右金額をもって相当する。

8  後遺障害慰謝料(請求額一二〇〇万円) 一一〇〇万円

本件は前記のとおり事故当時一〇歳の女子である原告の顔面に醜状を残し、視力障害等を残したというもので、右は前記のとおり自賠法施行令別表所定の等級に該当するとされるものであること、後記のとおり原告に逸失利益の損害を認めなかったことその他本件にあらわれた諸般の事情を考慮すると本件事故による後遺障害によって原告が受け又は受けるであろう精神的苦痛に対する慰謝料は頭書金額が相当である。

9  逸失利益(請求額二〇九〇万八五九五円) 五一二万五二五七円

本件により原告は前記の後遺障害を負ったものであるが、うち顔面醜状の点については、一般の女性の顔面醜状の事件につき、当該醜状の程度、年齢、職業、事故前後の稼働状況等によっては当該被害者に逸失利益が認められることが想定されると解するとしても、本件にあっては右逸失利益の存在を認めるに足りない。

しかしながら視力障害等の後遺障害については、本件により原告は、一八歳から六七歳までの間(なお事故時は前記のとおり一〇歳)、その一四パーセントの労働能力を喪失したものと解されることから、平成三年版賃金センサス全国産業計、企業規模計、旧中・新高卒一八歳ないし一九歳女子労働者平均賃金一八二万九九〇〇円を基準に新ホフマン係数により算出すると、頭書金額となる。

1,829,900×0.14×20.006

=5,125,257

10  弁護士費用(請求額二五〇万円) 六〇万円

本件につき原告はその解決を原告訴訟代理人に委任したところ、右弁護士費用は、本件事案の態様、認容額等に照らすと頭書金額をもって相当とする。

11  合計

一七八一万五九五七円

以上の合計は、頭書金額となる。

3,000+34,000+62,000+27,900+0+63,800+900,000+11,000,000+5,125,257+600,000 =17,815,957

三  原告は本件事故につき、前記のとおり既に、一一五四万円の支払を受けている。

四  結論

以上によれば、被告は原告に対し、損害金六二七万五九五七円及びこれに対する本件事故日から完済までの遅延損害金の支払義務を負うものである。

(裁判官 北澤章功)

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