大判例

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名古屋地方裁判所 平成3年(行ウ)48号 判決

原告

鈴木正雄(X1)

福井幸一(X2)

福井敬一(X3)

右三名訴訟代理人弁護士

鈴村昌人

被告

小木土地改良区(Y)

右代表者理事

長谷川鉞二

右訴訟代理人弁護士

大場民男

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  無効確認訴訟(主位的請求)の原告適格について

1  まず、本件換地処分により、本件従前地の所有者である原告鈴木はその所有権の目的物に変更を受け、原告福井両名は売買予約の目的物に変更を受けるから(土地改良法五四条の二第一項、二項)、行政事件訴訟法三六条にいう「法律上の利益を有する者」に該当する。

2  次に、被告は既に本件換地処分の登記を経ているので、原告らには、本件換地処分の無効確認を求める方法以外に本件従前地に対する従前の登記を回復する方法がないから、原告らは、現在の法律関係に関する訴えによっては目的を達することができない。

3  したがって、原告らは、本件換地処分の無効確認訴訟について、行政事件訴訟法三六条の原告適格を有する。

二  本案の争点(本件換地処分の無効)について

1  本件換地処分は、一の行政処分であるから、これが無効であるというためには、重大かつ明白な瑕疵がなければならない。

2  そこで、検討するに、〔証拠略〕によると、以下の事実を認めることができる。

(一)  本件従前地(畑)は、本件土地改良事業開始前から、原告鈴木の了承の下、原告福井幸一が畑として耕作し、果樹、植木、野菜等を植えていたこと。

(二)  被告は、昭和四九年、別紙図面2のa、d、e、ケ、コ、カ、5、6、aの各点を順次直線で結んだ範囲内の土地を本件従前地に対する仮配分地(畑)、同図面の1、f、d、a、1の各点を順次直線で結んだ範囲内の土地を蜂須賀某に対する仮配分地(畑)、別件係争地(一)を長谷川時教に対する仮配分地(田)の一部と決定したこと。

(三)  そして、被告は、そのころ、右蜂須賀某に対する右仮配分地については、別紙図面2の1、イ、ア、1の各点を順次直線で結んだ範囲内の部分及び同図面のオ、f、d、b、オの各点を順次直線で結んだ範囲内の部分に盛土する等して整地工事を行った上、これを畑とし、長谷川時教に対する仮配分地の一部とした別件係争地(一)については、樹木を移転し、土を取り除くなどの整地工事をして田としたが、本件従前地の仮配分地と指定した部分については、原告福井幸一からそのままでよいとの申し出があり、また、畑とするために盛土等をする必要もなかったため、工事をしなかったこと。

(四)  しかし、その後、原告福井幸一は、右の仮配分地の決定について不満を抱き、被告に対し、本件従前地を本件土地改良事業の地区から除外すべき旨申し入れ、自ら杭を設置し鉄条網を張るなどして、別紙図面2のア、イ、ウ、エ、オ、b、a、アの各点を順次直線で結んだ範囲内の土地の占有を確保したこと。

(五)  そこで、被告は、昭和五六年五月二五日、本件従前地についてて、当初の予定(仮配分地)を変更して、別紙図面2の1、2、5、6、1の各点を順次直線で結んだ範囲内の土地をその一時利用地として指定するとともに、本件従前地のうち、別件係争地(一)を長谷川時教の一時利用地(田)の一部として、別件係争地(二)を長谷川重之の一時利用地(田)の一部として指定したこと。

(六)  しかし、原告福井幸一は、これに同意せず、別件各係争地の占有を続け、その結果、別件係争地(二)については、原告福井幸一の樹木等を移転した上、土を取り去って田とする工事をすることができなかったこと(別紙図面2の2、f、e、ク、キ、2の各点を順次直線で結んだ範囲内の部分については、そのころまでに、土は除去された。)。

(七)  被告は、本件換地の境界について、昭和五〇年九月から昭和五一年三月までの間に圃区と道路との境界を示すコンクリート杭を別紙図面2の6の地点に設置していたが、昭和五六年二月から一二月までの間に、原告福井幸一が別件係争地(二)に植木等を植えて畑として利用している状態で、換地処分をするための確定測量を行い、その際、同図面の1、2、5の各地点にコンクリート杭を設置したこと。

(八)  そして、被告は、昭和五七年八月二七日、右測量結果に基づき、本件換地処分をし、また、別件係争地(一)を長谷川時教の換地(田)の一部、別件係争地(二)を長谷川重之の換地(田)の一部とする換地処分をし、現在、右確定測量に基づき、本件換地の範囲を確定できること。

(九)  原告福井幸一は、本件換地処分のされた時点では、本件換地について、土を入れ替えたり、作物や植木の植え替えをする工事を希望していなかったこと。また、長谷川時教は別件係争地(一)を原告藤井幸一が前示のように占有している状況で換地処分をすることを受け入れ、長谷川重之も別件係争地(二)につき工事未了のまま換地処分をすることを受け入れたこと。

3  ところで、法五四条旧二項は、換地処分は当該換地計画に係る地域の全部について当該土地改良事業の工事が完了した後において、遅滞なくしなければならない旨規定していたが、その趣旨は、工事完了後に確定測量、清算金算定のための土地評価をさせることにより、それらの正確性を確保するとともに、換地処分後、直ちに、関係者が各換地において従前地と同様の利用ができるようにするためであると解せられる。

そこで、本件について見るに、前示の事実によると、本件換地は、本件換地処分のされた時点において、既に境界が確定して畑としての形質を備え、また、原告福井幸一において本件従前地と同様の状態で使用できるようになっていたのであるから、本件換地に関する限り必要な工事は一応終えていたものということができる。もっとも、別件係争地(一)については原告福井幸一が占有していたため田として利用できる状態ではなく、別件係争地(二)については原告福井幸一所有の樹木等が残存し田への形質変更が終了しておらず、したがって、また、本件換地と別件係争地(二)との境界の工事も完了していなかったのであるから、本件土地改良事業の工事は、本件換地処分の時点で完了していたとはいえない。しかしながら、前示のように、別件係争地(二)について、樹木等の移転と田への形質変更の工事が未了となったのは原告福井幸一が応じなかったためである上、右の工事が未了であったことにより換地の確定測量と清算金の算定が正確性を欠くに至ったとまで認めることはできない。また、別件各係争地については、当事者がその状態で換地処分をすることを了承している。そうすると、右の程度の工事未了は、本件換地処分の重大な瑕疵には当たらないというべきである。

4  したがって、本件換地処分に重大かつ明白な瑕疵があるとの原告らの主張は、失当である。

三  土地所有権確認訴訟(予備的請求)の適法性について

被告は、本件従前地について、別件各係争地及び別紙図面1のカ、コ、7、5、カの各点を順次直線で結んだ範囲内の土地を除き、原告鈴木が所有権を有することを争っておらず、また、争っている部分についても、原告鈴木の所有権と相容れない権利を有すると主張しているものではないから、原告らは、被告との間で、原告鈴木が本件従前地について所有権を有することの確認を求める利益はない。したがって、原告らの本件訴え中、予備的請求に係る部分は、不適法である。

第四 総括

よって、原告らの主位的請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、原告らの本件訴え中、予備的請求に係る部分に不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条及び九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 後藤博 入江猛)

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