名古屋地方裁判所 平成4年(わ)1015号 判決
判決主文
一 被告会社(有限会社丸八不動産)を罰金三五〇〇万円に処する。
二 被告人(李忠熱)について
1 被告人を懲役二年に処する。
2 本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予する。
3 被告人を右猶予の期間中保護観察に付する。
犯罪事実
被告会社は、前記本店所在地に本店を置いて不動産取引業等を営む資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上除外などの方法により所得の一部を秘匿したうえ、
第一 昭和六二年四月一日から昭和六三年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は九四二八万四四八六円であり、課税土地譲渡利益金額は二億二四一三万二〇〇〇円であったにもかかわらず、昭和六三年五月三一日、名古屋市千種区振甫町三丁目三二番地の所轄千種税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における欠損金額が二八九万二四二円、課税土地譲渡利益金額が零円で、納付すべき法人税はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度における正規の法人税額九一五二万六五〇〇円を免れ、
第二 昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は九三八万四九九〇円であり、課税土地譲渡利益金額は六九四六万五〇〇〇円であったにもかかわらず、平成元年五月三一日、前記千種税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における欠損金額が三万二二七二円、課税土地譲渡利益金額が零円で、納付すべき法人税はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度における正規の法人税額二三八二万七〇〇円を免れ、
第三 平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は七五三六万二五一五円であり、課税土地譲渡利益金額は七九四〇万一〇〇〇円であったにもかかわらず、右法人税の申告期限である平成二年五月三一日までに前記千種税務署長に対し法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もって、不正の行為により右事業年度における正規の法人税額五三〇八万五一〇〇円を免れたものである。
法令の適用
被告人の前記第一ないし第三の各所為はいずれも法人税法一五九条一項(被告会社については更に法人税法一六四条一項)に該当するところ、罰金額については、免れた法人税の額がいずれも五〇〇万円を超えるので、情状により各罪につき同法一五九条二項を適用して、それぞれ免れた法人税の額に相当する金額以下とすることとし、被告人については所定刑中いずれも懲役刑を選択するが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社に対しては、刑法四八条二項により合算した罰金額の範囲内で罰金三五〇〇万円に処し、被告人に対しては、刑法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い前記第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役二年に処し、情状により刑法二五条一項を適用して本裁判確定の日から五年間右懲役刑の執行を猶予し、なお同法二五条の二第一項前段を適用して被告人を右猶予の期間中保護観察に付することとする。
量刑の事情
本件犯行は被告人が三年間にわたり申告納税制度を悪用して合計一億六八四三万余円にものぼる被告会社の法人税をすべて巧妙に逋脱したというものであり、その刑事責任が重いことは、右逋脱金額及び逋脱率のみに照らしても明らかであるうえ、右逋脱にかかる正規の本税のうち僅かな金額が納付されただけで、その余の本税はもとより重加算税及び延滞税についても、いまだ全く納付されていないことに照らすと、被告人に対して刑の執行を猶予するのは相当でないとも考えられる。しかしながら、被告人は、名古屋国税局に対し右本税につき被告会社振出の約束手形一二通(最終支払期日・平成六年三月二五日)を交付して納付を委託したうえ、右各税未納分の納付については、訴求中の仲介手数料を充てるほか、被告会社及び被告人夫婦名義の不動産を可能な限り有利に順次売却し、担保権者とも協議してその売却代金の中から少しでも多く右納付に充てるべく努力している(なお、同じ逋脱犯人とはいっても、いわゆるバブル崩壊前にあっては、起訴にかかる正規の本税のほか重加算税等を比較的容易に完納して刑の執行を猶予された者との権衡も考慮せざるをえない)こと、また、被告人は、子宮頸癌の手術を受けて通院中の妻を扶養しなければならないことなど被告人にとって有利な情状もあるので、これら諸般の事情を考慮して主文のとおり量刑した。
裁判官書記官 河合茂春
(裁判官 松永眞明)