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名古屋地方裁判所 平成5年(わ)157号 判決 1994年1月27日

本店の所在地

名古屋市中村区乾出町二丁目七番地

法人の名称

有限会社邦託商会

代表者の住居

名古屋市中村区乾出町二丁目七番地 正和ビル三〇三号室

代表者の氏名

越喜邦

本籍

愛知県一宮市森本四丁目二一番地の一

住居

名古屋市中村区乾出町二丁目七番地 正和ビル三〇三号室

会社役員

越喜邦

昭和五年一月一九日生

右被告人有限会社邦託商会に対する法人税法違反、右被告人越喜邦に対する同法違反・同法違反幇助各被告事件について、当裁判所は、検察官落合洋司出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社邦託商会を罰金一五〇〇万円に処する。

被告人越喜邦を懲役一年六月及び罰金一五〇〇万円に処する。

被告人越喜邦が右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人越喜邦に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人有限会社邦託商会(以下「被告会社」という。)は、名古屋市中村区乾出町二丁目七番地(平成四年一〇月一二日までは愛知県一宮市音羽二丁目二番二三号)に本店を置き、不動産取引業等を目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人越喜邦は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括するものであるが、被告人越は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、架空経費を計上するなどの方法により、所得を秘匿した上、昭和六三年一一月一日から平成元年一〇月三一日までの事業年度の被告会社の実際の所得金額が、一億〇五七三万三五一五円、課税土地譲渡利益金額が、九三九三万二〇〇〇円あったのにかかわらず、同年一二月二〇日、愛知県一宮市栄四丁目五番七号所在の所轄一宮税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における欠損金額が五九七一万二四四〇円、課税土地譲渡利益金額が三一二四万九〇〇〇円で、これに対する法人税額が九三七万四七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額七一六二万七四〇〇円と右申告税額との差額六二二五万二七〇〇円を免れ

第二  被告人越は、不動産取引業を営む有限会社岩佐の代表取締役岩田直志が、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和六三年一一月三〇日、同会社が永尾玲子から兵庫県姫路市飾磨区三宅字道ノ下一一四番二及び同番五の宅地合計八五四・八二平方メートルを代金合計八億四一四六万円で購入するに当たり、その事実を秘し、前記第一記載の有限会社邦託商会から購入したとして仕入代金を水増し計上するなどの方法により、所得を秘匿した上、平成元年五月一日から同二年四月三〇日までの事業年度の同会社の実際の所得金額が、二億七八一一万二一六七円、課税土地譲渡利益金額が、三億〇三九八万八〇〇〇円あったのにかかわらず、同年七月二日、名古屋市北区清水五丁目六番一六号所在の所轄名古屋北税務署において、同税務署長に対し、同会社の右事業年度における所得金額が、一九七七万二五三九円、課税土地譲渡利益金額が、一六四六万七〇〇〇円で、これに対する法人税額が一一九六万一八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二億〇一五五万四一〇〇円と右申告税額との差額一億八九五九万二三〇〇円を免れるに際し、その情を知りながら、右岩田から依頼を受けて報酬を受け取る約束のもとに

一  同元年一一月三〇日ころ、兵庫県姫路市本町六八番地糸吉ビル内株式会社永尾不動産事務所において、有限会社邦託商会が右宅地を六億二一四六万円で永尾玲子から購入したとする内容虚偽の不動産売買契約書を作成し

二  同二年一月中旬ころ、名古屋市中村区豊国通四丁目一五番地Uコーポ豊国一階株式会社大恵産業事務所において、有限会社邦託商会が前記宅地を一一億五四一四万円で有限会社岩佐に売却したとする内容虚偽の不動産売買契約書を作成し

もって、右岩田直志の犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである。

(証拠の標目)

以下、括弧内の甲乙の番号は検察官の証拠請求番号を示す。

判示各事実

一  第一回公判調書中の被告人越喜邦の供述部分

一  被告人越喜邦の検察官調書二通(乙9、10)

一  安田貴博(甲4)、林隆夫(謄本。甲24)の各検察官調書

一  捜査報告書(謄本。甲5)

同 第一の事実

一  商業登記簿謄本二通(乙13、14)

一  被告人越喜邦の検察官調書五通(乙2ないし6)

一  安田貴博の検察官調書(甲3)

一  岩田直志(三通。甲6、25、31)、永井孝則(二通。甲7、32)、篠田昭(二通。甲8、41)、岩瀬貢(甲9)、後藤昭一(甲10)、伊藤茂(甲11)、中村重雄(甲12)、西川豊子(甲13)、石橋隆男(甲14)、秋田ひさゑ(甲15)、原甫(甲16)、多田憲司(三通。甲17、34、38)、西尾義輝(甲18)、大見英男(甲19)、鈴木正則(甲20)、佐藤大二(甲21)、柴田忠雄(甲22)、平野喜重郎(甲26)、和田正司(甲27)、春日井勝司(甲28)、髙橋章(甲29)、加藤周一(甲33)、水野明(甲36)、渡辺まつを(甲37)、三輪清光(甲39)、掘日出男(甲42)の各検察官調書(但し、甲18、19、42以外はいずれも謄本。)

一  捜査報告書四通(いずれも謄本。甲23、30、35、40)

一  査察官調査書六通(甲43ないし48)

一  証明書二通(甲1、2)

同 第二の事実

一  被告人越喜邦の検察官調書一通(乙7)

一  岩田直志(二通。甲51、52)小南旭(三通。甲53ないし55)、永尾玲子(甲56)、小松徹(甲57)、五藤清(甲59)、西尾智津子(甲60)の各検察官調書(但し、甲59、60以外はいずれも謄本。)

一  捜査報告書(謄本。甲58)

一  証明書三通(甲49、50、61。但し、61のみ謄本。)

(法令の適用)

判示第一の事実

被告会社につき 法人税法一五九条、一六四条一項

被告人越につき 同法一五九条

同 第二の事実(被告人越) 同法一五九条、一六四条一項、刑法六二条一項

刑の併科(被告人越の各事実) いずれも懲役刑と罰金刑を併科(罰金額につき法人税法一五九条二項を適用)

法律上の減刑(被告人越の第二の事実)

懲役刑につき 刑法六三条、六八条三号

罰金刑につき 同法六三条、六八条四号

併合罪の処理(被告人越)

懲役刑につき 同法四五条前段、四七条本文、一〇条(刑の重い第一の罪の刑に法定加重)

罰金刑につき 同法四五条前段、四八条二項

労役場留置(被告人越の罰金刑) 同法一八条

刑の執行猶予(被告人越の懲役刑) 同法二五条一項

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 生野考司)

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