名古屋地方裁判所 平成6年(わ)335号 判決 1994年6月14日
本籍
名古屋市中川区戸田三丁目一一〇八番地
住居
愛知県海部郡弥富町佐古木一丁目七五番地
貿易商
山田光男
昭和二一年一月一一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官星景子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、愛知県海部郡弥富町佐古木一丁目七五番地において「名古屋貿易」の商号で中古車輸出業を営むものであるが、自己の所得税を免れようと企て、中古車売り上げの一部を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 平成元年分の実際総所得金額が七二七三万四七四二円であったのにかかわらず、確定申告書提出期限内である平成二年三月一四日、愛知県津島市良王町二丁目三一番地の一所在の所轄津島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八四五万三一二〇円で、これに対する所得税額が一三九万五三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額三二〇六万六〇〇〇円と右申告税額との差額三〇六七万〇七〇〇円を免れ、
第二 平成二年分の実際総所得金額が一億一六四八万九九四一円であったのにかかわらず、確定申告書提出期限内である平成三年三月一五日、前記津島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八八〇万二九三三円で、これに対する所得税額が一四〇万二八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額五三九二万四〇〇〇円と右申告税額との差額五二五二万一二〇〇円を免れ、
第三 平成三年分の実際総所得金額が九五九四万六四四八円であったのにかかわらず、確定申告書提出期限内である平成四年三月一六日、前記津島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一三三四万四〇九二円で、これに対する所得税額が二九七万八〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四三四九万一五〇〇円と右申告税額との差額四〇五一万三五〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実について
一 被告人の検察官(三通)に対する各供述調書
一 伊藤和美の検察事務官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の各査察官調査書(「売上除外等について」、「車両代等について」、「減価償却資産について」、「借入金等について」及び「貸倒金について」)
一 検察事務官作成の電話聴取書
一 名古屋市中川区長作成の戸籍謄本(附票を含む)
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の確定申告証明書(平成元年分)
一 大蔵事務官作成の各査察官調査書(「雑収入について」、「整備代について」、「塗装代について」、「部品代について」、「運搬代について」、「船運賃について」、「海上保険について」、「乙仲費用について」、「銀行手数料について」、「通信費について」、「事務費について」及び「人件費について」)
判示第二及び第三の事実について
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(経費について)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の確定申告証明書(平成二年分)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書(「車両代について(平成2年分)」)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の確定申告証明書(平成三年分)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項、二項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑の併科刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、以上の刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 田邊三保子)