大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 平成6年(ヨ)728号 決定 1996年2月28日

東京都文京区小石川四丁目六番一〇号

債権者

エーザイ株式会社

右代表者代表取締役

内藤晴夫

右代理人弁護士

田中克郎

同右

松尾栄蔵

同右

石原修

同右

高市成公

同右

山口芳泰

同右

森﨑博之

同右

中村勝彦

同右

升本喜郎

同右

寺澤幸裕

同右

赤澤義文

同右

長坂省

同右

千葉尚路

右輔佐人弁理士

稲葉良幸

同右

大賀眞司

同右

千且和也

名古屋市東区葵三丁目二四番二号

債務者

大洋薬品工業株式会社

右代表者代表取締役

新谷重樹

右代理人弁護士

脇田輝次

右輔佐人弁理士

小野信夫

主文

一  本件申立てを却下する。

二  申立費用は、債権者の負担とする。

事実及び理由

第一  申立て

一  債務者は、別紙物件目録記載の物件を製造し、販売し、又は譲渡してはならない。

二  債務者の別紙物件目録記載の物件に対する占有を解いて、債権者の委任する管轄地方裁判所執行官にその保管を命ずる。

三  執行官は前項の趣旨を適当な方法で公示しなければならない。

第二  争いのない事実等

一  ドイツ国所在のアスタ ファルマ アクチエンゲゼルシャフトは、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許公報は、別紙1のとおり。)を有しており、債権者は、実施地域を日本全国として、その専用実施権を有している。

特許番号 特許第一0四一四四三号

発明の名称 塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその酸付加塩の製造方法

出願日 昭和四七年一月二二日

公告日 昭和五五年八月一五日

登録日 昭和五六年四月二三日

二  本件特許権の目的物質は、本件特許権の優先権の主張の基礎となる第一国(スイス国)の出願日である昭和四六年一月二二日以前に、日本国内において、公然知られていなかったものであるところ、債務者は、本件特許権の目的物質の一つである塩酸アゼラスチンを含有する別紙2物件目録記載の医薬品(以下「本件薬品」という。)につき、厚生大臣から薬事法による製造承認を受け、厚生省の薬価基準の収載を受けた。

第三  争点とこれに関する当事者の主張の要旨

一  争点

本件薬品が含有する塩酸アゼラスチンの製法は、本件特許権の技術的範囲に属するか。

二  当事者の主張の要旨

1  債権者の主張

(一) 本件薬品に含まれる塩酸アゼラスチンは、特許法一0四条により、本件特許権の方法により生産されたものと推定される。

(二) 仮に、本件薬品に使用する塩酸アゼラスチン原末が、債務者の主張1の方法で製造されているとしても、別紙3「大洋薬品方法」記載の方法と別紙4「遼東化学方法」記載の方法を合わせた方法(以下、合わせて「債務者方法」という。)は、以下のとおり、本件特許権の技術的範囲に含まれる。

<1> 均等1

本件特許権の特許請求の範囲第一項の方法(以下「第一発明」という。)で塩酸アゼラスチンを製造する場合、その方法の一つとして、

<省略>

で表されるベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルと

<省略>

で表される1-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)ヒドラジン2塩酸塩(以下「本ヒドラジン化合物」という。)とを反応させて、塩酸アゼラスチンを得る方法が挙げられるが、本件特許権の基礎となる技術的思想は、

<省略>

で表される骨格(以下「骨格1」という。)を形成する点にその基礎となる技術的思想が存在するから、右方法に即していえば、

<省略>

で表される骨格(以下「骨格2」という。)を有する化合物と本ヒドラジン化合物とを反応させ、骨格1を形成する点にその基礎となる技術的思想が存在するといえる。

ところで、債務者方法は、その出発物質の一つである無水フタル酸が骨格2を有しているから、骨格2を有する化合物に本ヒドラジン化合物を反応させて、骨格1を形成し、塩酸アゼラスチンを製造するものであり、第一発明と同様の作用効果を有しているとともに、本件特許権出願の優先日当時、第一発明の出発物質の一つであるベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子エステルと債務者方法の出発物質である無水フタル酸は、置換可能かつ置換容易であった(もう一つの出発物質である本ヒドラジン化合物は、第一発明と債務者方法とで共通している。)。

そもそも、債務者方法にはアラルキル化及び脱カルボニル化の工程が含まれているが、右アラルキル化の工程は、

<省略>

で表される骨格(以下「骨格3」という。)を導入する工程であるところ、第一発明においては既にアラルキル化済のベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルが出発物質として用いられており、また、右脱カルボニル化の工程は、骨格2を有し、骨格3を有していない無水フタル酸に本ヒドラジン化合物を反応させてその後にアラルキル化を行う工程をあえて採用したことにより必要となる工程であって、アゼラスチンの製造においては本来不要である。したがって、右アラルキル化及び脱カルボニル化の工程は、いずれも本件特許権(又はその専用実施権)の侵害を判断するに当たっては、全く考慮する必要がない。

以上により、債務者方法は、第一発明と実質的には同一の方法であって、その技術的範囲に属する。

<2> 均等2

第一発明の出発物質の一つであるベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルは、無水フタル酸と骨格3を有する

<省略>

で表されるP-クロロフェニル酢酸を反応させて得られることは周知の事実である。したがって、第一発明により塩酸アゼラスチンを得る場合には、別紙5の「特許方法」記載の工程、すなわち無水フタル酸とP-クロロフェニル酢酸を反応させた後、本ヒドラジン化合物を反応させて作られる(別紙5の記載により説明すれば、式Aの化合物と式Bの化合物を反応させた後、式Cの化合物を反応させて塩酸アゼラスチンを得る。)。

これに対して、債務者方法は、ベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルを用いて塩酸アゼラスチンを得ると、本件特許権を直接侵害してしまうから、それを虞れて形式的にそれを回避しようと試みたものである。すなわち、債務者方法は、別紙5の記載により説明すれば、ベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステル自体の製法として周知な式Aの化合物と式Bの化合物とを反応させる段階で、先に式Aの化合物と式Cの化合物を反応させ、その後に式Bの化合物を反応させているに過ぎないものである(なお、別紙5の「特許方法」で使用する化合物Bは、P-クロロフェニル酢酸と呼ばれるカルボン酸であるのに対し、別紙5の「債務者法」で使用する化合物Bは、P-クロロフェニル酢酸 t-ブチエステルと呼ばれるエステルであるが、エステルはカルボン酸の誘導体であり、両者はカルボニル基(-C=O)を有する点で共通し、両者ともに、このカルボニル基の電子吸引性を利用してアゼラスチンの有する

<省略>

で表されるP-クロロベンジル基を導入するという同一の機能を有するものであるから、アゼラスチンの製造においては、等価といって何ら差し支えない。)。つまり、債務者方法は、第一発明の一つである別紙5の「特許方法」記載の方法とは、原料化合物を反応させる順序が異なるに過ぎないのであり、明らかに第一発明の脱法行為である。債務者方法は、本件特許権出願の優先日当時、当業者が自己の専門知識と公知技術とに基づいて、第一発明から容易に想到できるものであり、第一発明と均等方法であることから、本件特許権の技術的範囲に属するものと評価されるべきである。

2  債務者の主張

(一) 債務者方法

本件薬品に使用する塩酸アゼラスチン原末は、別紙3「大洋薬品方法」記載の方法により債務者自ら製造するものであるが、右方法の原料である4-(P-クロロフェル-t-ブトキシカルボニルメチル)-2-(ヘキサヒドロー1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-1(2H)-フタラジノンは、債務者が遼東化学工業株式会社(以下「遼東化学」という。)から購入しており、遼東化学は、右原料を、別紙4「遼東化学方法」記載の方法(以下「遼東化学方法」という。)により製造している。

したがって、右各方法は、本件特許権の方法とは異なるものであるから、債権者の申立ては理由がない。

(二) 均等に対する反論

<1> 均等1に対して

債権者主張のように、骨格2を有する化合物と本ヒドラジン化合物とを反応させることに、第一発明の基礎となる技術的思想が存在するのであれば、骨格2を有さないベンゼン-O-ケトカルボン酸やその反応性誘導体などは、第一発明に含まれないことになるから、特許請求の範囲から排除されているはずであるところ、これらは排除されていない。むしろ、第一発明は、2-(P-クロロフェニルメチルカルボニル)安息香酸(またはその反応性誘導体)と1-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)ヒドラジンを反応させ、フタラゾン環を形成させてアゼラスチンを得る技術思想を開示するものと把握すべきである。

そして、遼東化学方法で1-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)ヒドラジン2塩酸塩と無水フタル酸とを反応させることにより製造されるのは、2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-4-ヒドロキシ-1(2H)-フタラジノン塩酸塩であるのに対し、第一発明で製造される化合物はアゼラスチン又はアゼラスチン塩酸塩であって、目的物質が異なることは明らかであり、両方法の作用効果が同一であるはずはないから、ベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルと無水フタル酸との間には、置換可能性がないばかりか、置換容易性もない。

そもそも、同一目的物質(遼東化学方法では目的物質も異なる。)を得るために、従来の方法で用いていたものと異なる原料化合物を用いれば、新しい処理工程が必要となったり、また、逆に従来存在していた工程が不要となったりすることは当然のことであり、その場合異なった原料を用いる方法を従来の方法と明らかに相違する方法であると判断することは当業者の技術常識である。それにもかかわらず、異なった原料を用いた結果必要となり、意味をもって存在する工程を、明確な理由もなく特許権侵害の判断に当たって全く考慮する必要がないとする債権者の主張は、当業者の技術常識から掛け離れた全く妥当性を欠くものである。

<2> 均等2に対して

(a) 債権者は、別紙5の「特許方法」記載の方法を第一発明と称しており、明らかに第一発明を誤解している。すなわち、債権者は、ベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルが無水フタル酸とP-クロロフェニル酢酸の反応により得られることは当業者に周知であると主張するが、周知ではない上、ベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルの製法は多数存在し、債権者の主張する製法は決して唯一のものではないから、仮に、ベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルが、無水フタル酸とP-クロロフェニル酢酸の反応により得られるものであるとしても、これのみを採り上げて第一発明を設定することは乱暴な議論である。

(b) 次に、債権者は、別紙5を使用した比較において、第一発明も債務者方法も二段階反応としているが、これも誤っている。別紙5の「特許方法」は、アラルキル化反応、脱炭酸-脱水反応及び環形成反応が行われるから、二段階反応とはいえず、また、債務者方法も、環形成反応、アラルキル化反応及び脱カルボニル化反応まりなる三段階反応である。そもそも、第一発明は、一段階反応であるから、特許請求の範囲にも発明の詳細な説明の中にも全く記載されていない無水フタル酸やP-クロロフェニル酢酸を用いて第一発明を勝手に二段階反応とし、これらを第一発明の出発物質とするのは暴論である。

(c) また、債権者は、別紙5の「特許方法」における化合物Bと別紙5の「債務者法」における化合物Bがあたかも同一物の如く表記しているが、別紙5の「特許方法」で使用する化合物Bは、P-クロロフェニル酢酸と呼ばれるカルボン酸であるのに対し、別紙5の「債務者法」で使用する化合物Bは、P-クロロフェニル酢酸 t-ブチエステルと呼ばれるエステルであり、カルボン酸とエステルは性質も異なり、分類的にも異なる化合物とされていることは周知であるから、これらを同一の化合物Bと表記するは明らかな誤りである。この点につき、債権者は、P-クロロフェニル酢酸とP-クロロフェニル酢酸 t-ブチエステルは、アゼンラスチンに存在するP-クロロベンジル基を導入するという同一の機能を有するものであるから、アゼラスチンの製造においては、等価といって何ら差し支えない旨主張するが、別紙5の「債務者法」において、P-クロロフェニル酢酸 tーブチエステルの代わりにP-クロロフェニル酢酸を使用しても、アゼラスチンを製造することは不可能であるから、その主張は誤りである。

(d) ところで、債権者の均等2の主張が、いわゆる均等方法の主張であるとすると、債務者方法で使用されるどの二つの化合物が、それぞれ第一発明の出発原料及び目的物に対応するのか、債務者方法のどの工程が第一発明の工程に該当し、相違する原料及び工程については、どのような理由でそれぞれ置換可能性及び置換容易性があるかを明らかにしなければならないところ、債権者は、第一発明の出発原料について、本件特許権の明細書にも全く記載されていない製造方法を持ち出し、その製法が周知であるとして、同製法と債務者方法とを対比するという均等の要件を完全に無視した主張をしており、失当というべきである。また、債権者の均等2の主張が、いわゆる迂回方法の主張であるとすると、そもそも迂回方法とは、特許発明の侵害を避けるため、技術的必然性がないのにわざわざ余分な工程を付加、迂回して同一物を製造する方法であるところ、化学特許方法では、出発物質、処理手段及び目的物質が発明要旨を構成するから、一工程の反応である第一発明についての迂回方法とは、2-(4-クロロベンジルカルボニル)安息香酸(出発物質)にN-メチル-パーヒドロアゼピン-4-イル-ヒドラジンを作用させ(化学手段)、アゼラスチン(目的物質)を得る一工程方法に対し、出発物質及び目的物質は同一であるが、化学手段を増加させた多工程方法のうち工程の増加に技術的必然性のないものをいうと解される。そうすると、第一発明が二段階反応であることを前提とし、債務者方法がその前後の工程を入れ替えたものであるとの債権者の主張は、第一発明を二段階反応とすること自体全くの誤りであるとともに、これを前提に迂回を論ずるものであるから、その前提を誤った失当なものである。

第四  当裁判所の判断

一  債権者が、本件特許権の専用実施権を有すること、債務者が、本件特許権の目的物質の一つである塩酸アゼラスチンを含有する本件薬品につき、厚生大臣から薬事法による製造承認を受け、厚生省の薬価基準の収載を受けたことは当事者間に争いがなく、また、証拠(乙一の一、二、乙二ないし五、乙六の一ないし六、乙七、乙八の一ないし三、乙九ないし一四、乙一五の一ないし五、乙一八、乙二0の一、二、乙二一)と審尋の全趣旨によれば、債務者薬品に使用する塩酸アゼラスチンは、まず、遼東化学において別紙4「遼東化学方法」記載の工程が行われた後、続けて債務者において別紙3「大洋薬品方法」記載の工程が行われることによって得られるものであることが一応認められる。

二  そこで、右二つの方法を合わせた方法(債務者方法)が、本件特許権のうち、第一発明の技術的範囲に属するかどうかを検討する。

1  第一発明は、

式1

<省略>

で表される化合物又はその反応性誘導体と、

式2

<省略>

で表されるヒドラジン化合物とを反応させてベンジルフタラゾン誘導体(最終的には、これに適当な酸を用いて生理学上許容し得る酸付加塩に変えるか又は得られるベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変えるしとにより得られる塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその酸付加塩)を製造するものである。これに対し、債務者方法は、出発物質として本ヒドラジン化合物と無水フタル酸を使用している。そして、本ヒドラジン化合物は、式2のPが0、<省略>が窒素原子をメチル基で置換したパーヒドロアゼピニル基である場合であるから、式2で表されるヒドラジン化合物に含まれる。しかし、無水フタル酸は、環状構造を有しているから、環状構造を有していない式1で表される化合物には含まれない。そこで、以下、無水フタル酸が式1で表される化合物の反応性誘導体に含まれるか否かについて検討する。

本件特許権の特許公報によれば、第一発明は、式1で表される化合物又はその反応性誘導体とヒドラジン化合物を反応させ、その反応により直接的にベンジルフタラゾン誘導体を得る方法であり、右ベンジルフタラゾン誘導体は、

<省略>

で表される環状塩基性残基がそのフタラゾン核の第2位にあるアミド性窒素原子と、該環状塩基性残基の炭素原子により直接又はアルキレン鎖を介して結合していることに特徴がある(特許公報6欄18ないし22行参照)が、右環状塩基性残基は、式2で表されるヒドラジン化合物にもともと存在したものがそのまま供給されたものであると認められるから、ベンジルフタラゾン誘導体に存在する

<省略>

で表されるベンジル基は、他方の出発物質から供給されるか、他方の出発物質とヒドラジン化合物との反応により形成されるものである必要がある。したがって、式1で表される化合物の反応性誘導体とは、少なくとも、ベンジル基を含むか、ヒドラジン化合物との反応によりベンジル基を形成できるものでなければならないものというべきである(このことは、本件特許権の特許公報10欄6行以下に、式1で表される化合物の反応性誘導体の例として掲げられた化合物のすべてが、ベンジル基を含むか、ヒドラジン化合物との反応による環状基の開裂でベンジル基を形成できるものであることからも裏付けられる。)。

しかしながら、債務者方法においては、無水フタル酸と本ヒドラジン化合物とを反応させても

<省略>

で表される2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-4-ヒドロキシ-1(2H)-フタラジノン塩酸塩を生成するに過ぎず、ベンジル基を形成することができないから、無水フタル酸は、第一発明における式1で表される化合物の反応性誘導体に含まれるものとはいえない。

また、第一発明が一工程の反応で直接的にベンジルフタラゾン誘導体を製造する方法であるのに対し、債務者方法は、環形成、アラルキル化及び脱カルボニル化によりベンジルフタラゾン誘導体の一つであるアゼラスチンを得る三段階の反応であるから、処理手段も異なっている。

したがって、第一発明と債務者方法とでは、出発物質と処理手段(反応工程)が異なっているから、債務者方法は、第一発明の構成要件を充足しない。

2  債権者は、債務者方法が、第一発明の一実施例であるベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルと本ヒドラジン化合物を反応させることによりアゼラスチンを得る方法と均等であるとの主張をする。

しかし、右方法は、両出発物質を反応させることにより直接的にアゼラスチンを得る方法であるのに対し、債務者方法においては、ベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルの代わりに無水フタル酸を使用するものであるとはいっても、得られるのは2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-4-ヒドロキシ1(2H)-フタラジノン塩酸塩であり、アゼラスチンではないから、第一発明とは作用効果が異なっている(なお、債権者は、債務者方法で用いられている脱カルボニル化の工程は、骨格2を有し、骨格3を有していない無水フタル酸に本ヒドラジン化合物を反応させてその後にアラルキル化を行う工程をあえて採用したことにより必要となる工程であって、アゼラスチンの製造においては本来不要であり、右アラルキル化及び脱カルボニル化の工程は、いずれも本件特許権(又はその専用実施権)の侵害を判断するに当たっては、全く考慮する必要がない旨主張するが、無水フタル酸は、本ヒドラジン化合物と反応させただけではベンジル基を形成することはできないのであるから、その反応後において、さらにアゼラスチンに存在すべきベンジル基を形成するための工程が必要とされるのは当然のことであり、債務者方法におけるアラルキル化及び脱カルボニル化の工程は、アゼラスチンを製造するに当たって意味の有る工程であって、不要な工程であるとは決していえない。)。

したがって、債務者方法は、第一発明と均等であるとはいえない。

3  また、債権者は、第一発明の出発物質の一つであるベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルは、無水フタル酸とP-クロロフェニル酢酸とを反応させて得られるから、第一発明は、無水フタル酸とP-クロロフェニル酢酸とを反応させ、さらに本ヒドラジン化合物を反応させてアゼラスチンを得る方法であるとして、債務者方法は、それとは原料化合物を反応させる順序が異なるに過ぎず、本件特許権出願の優先日当時、当業者が第一発明から容易に想到できるものであるから、本件特許権の技術的範囲内に属すると評価すべきである旨主張する。

しかしながら、第一発明の出発物質があくまで「式1で表される化合物又はその反応性誘導体」と「式2で表されるヒドラジン化合物」であることは、特許請求の範囲の記載から明らかであり、「式1で表される化合物又はその反応性誘導体」の一つであるベンゼン-O-ケトカルボン酸の分子内エステルが、無水フタル酸とP-クロロフェニル酢酸を反応させて得られるとしても、その工程は第一発明の出発物質を製造するための前提工程であって、第一発明とは無関係である。したがって、第一発明とは無関係な前提工程までを第一発明の中に取り込み、あたかも第一発明の出発物質が無水フタル酸とP-クロロフェニル酢酸であるかのような主張をし、それと債務者方法とを対比して、両者は単に原料化合物の反応順序が異なるに過ぎないから、債務者方法は、第一発明の技術的範囲に属するとの債権者の主張は、そもそも特許請求の範囲の記載を逸脱した解釈であって、採用できない。

4  したがって、債務者方法は、第一発明の技術的範囲に属さない。

三  よって、債務者方法により製造された塩酸アゼラスチンを含有する本件薬品を製造し、販売し、又は譲渡する行為は、本件特許権又はその専用実施権を侵害するものとはいえない。

第五  結論

以上判示したところによれば、債権者の本件申立ては、債務者に対する差止請求権の疎明がないことに帰するから、これを却下することとして、主文のとおり決定する。

平成八年二月二八日

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 森義之 裁判官 田澤剛)

別紙 1

日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭55-31154

Int.Cl.3C 07 D 401/04 401/06 403/04 403/06 451/02 453/02/A 61 K 31/50 (C 07 D 401/04 237/00 211/00) (C 07 D 401/06 237/00 211/00) (C 07 D 403/04 237/00 223/00) (C 07 D 403/06 237/00 207/00) 識別記号AEM 庁内整理番号6670-4C 6670-4C 6670-4C 6670-4C 6736-4C 6736-4C公告 昭和55年(1980)8月15日 発明の数 3

塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその酸付加塩の製造方法

<21>特願 昭47-8688

<22>出願 昭47(1972)1月22日

公開 昭47-16486

昭47(1972)9月1日

優先権主張 <32>1971年1月22日<33>スイス(CH)

<31>1912/71

<72>発明者 デイートリツヒ・フオーゲルザング

ドイツ連邦共和国ヘルプブ4913レルヘンヴエーク11番

<72>発明者 ゲルハルト・シエフラー

ドイツ連邦共和国ゼネI4814ハウプトシユトラーセ56番

<72>発明者 ノルペルト・ブロツク

ドイツ連邦共和国ウエーレントルプ4801アムレハーゲン222番

<72>発明者 デイーテル・レンケ

ドイツ連邦共和国ピーレフエルト4800イエレンペツカーシユトラーセ117番

<71>出願人 アスターヴエルケ・アクチーエンゲゼルシヤフト・ヘミフシエ・フアブリーク

ドイツ連邦共和国ブラツクヴエーデ/ヴエストフアーレン4812ビーレフエルデルシユトラーセ79-91

<74>代理人 弁理士 山下白 外1名

<57>特許請求の範囲

1式

<省略>

で表わされる化合物又はその反応性誘導体を式<省略>で表わされるヒドラジン化合物と反応させ、そして、所望により得られるペンジルフタラゾン誘導体を生理学的に許容し得る付加塩に変えるか又は得られるベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変え、そして所望により、得られるラセミ混合物を光学的に活性な対体に分割することを特微とする、式

<省略>

(式中、R1及びR2は同一又は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又は置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Xは式-CH2-、-CH2CH2-又は<省略>で表わされるアルキレン基であり、m及びnは同じであつても相異なつていてもよく、1又は2であり、は0又は1であり、そして基<省略>はその窒素原子C1~6アルキルー置換されうるピロリジニル、ピペリジル又はパーヒドロアゼビニル基であるか、あるいはキヌクリジニル又はトロパニル基であるが、ただしキヌクリジニル又はトロパニル基は上記フタラジノンの2-窒素原子にキヌクリジニル又はトロパニル基の炭素原子を介して直接結合しそしてその他の基はフタラジノンの2-窒素原子に直接か又は式-CH2-、-CH2CH2-又は<省略>のアルキレン基介して結合する)で表わされる塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学的に許容しうる酸付加塩の製造方法

2式

<省略>

(式中、R1、R2、X、m、nおよびpは後記の意味を有し、基<省略>はその窒素原子が水素により置換されているピロリジニル、ピペリジルまたはパーヒドロアゼビニル基である)

で表わされる化合物をアルキル化剤と反応させ、そして、所望により得られるベンジルフタラゾン誘導体を生理学的に許容し得る酸付加塩に変えるか又は得られるペンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変え、そして所望により、得られるラセミ混合物を光学的に活性な対掌体に分割することを特微とする、式

<省略>

(式中、R1及びR2は同一又は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又は置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Xは式-CH2-、-CH2CH2又は<省略>で表わされるアルキレン基であり、mおよびnは同じであつても相異なつていてもよく、1又は2であり、pは0又は1であり、そして基<省略>はその窒素原子がC1~4アルキルー置換されたピロリジニル、ピペリジル又はバーヒドロアゼビニル基である)

で表わされる塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学的に許容しうる酸付加塩の製造方法。

3式

<省略>

で表わされる化合物を式

<省略>

(式中Qはアミド窒素原子の置換の際に脱離される原子又は基を表わす)

の化合物と反応させ、そして、所望により得られるベンジルフタラゾン誘導体を生理学的に許容し得る酸付加塩に変えるか又は得られるベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変え、そして所望により、得られるラセミ混合物を光学的に活性な対掌体に分割することを特微とする、式

<省略>

(式中、R1及びR2は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又は置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Xは式-CH2-、-CH2CH2又は<省略>で表わされるアルキレン基であり、m及びnは同じであつても相異なつていてもよく、1又は2であり、pは0又は1であり、そして基<省略>はその窒素原子がC1~4アルキルー置換されうるビロリジニル、ビペリジル又はバーヒドロアゼビニル基であるか、あるいけキヌクリジニル又はトロパニル基であるが、ただしキヌクリジニルヌはトロパニル基は上記フタラジノンの2-窒素原子にキヌクリジニル又はトロバニル基の炭素原子を介して直接結合しそしてその他の基はフタラジノンの2-窒素原子に直接か又は式-CH2、-CH2CH2-又は<省略>のアルキレン基を介して結合する)で表わされる塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学的に許容しうる酸付加塩の製造方法。

発明の詳細な脱明

本発明は、高い抗ヒスタミン作用を有する新しい塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学上許容し得る酸付加塩の製造方法に関する。

本発明方法により得られる新しいベンジルフタラゾン誘導体は、環状塩基性残基がそのフタラゾン核の第2位にあるアミド性窒素原子と、該環状塩基性残基の炭素原子により直接又はアルキレン鎖を介して結合していることが特微である。塩基性置換フタラゾン化合物は例えば独国特許第1046625号明細書などにより既に知られている。これらフタラゾン化合物は、脂肪族アルキレン鎖上に置換された塩基性残基を有する化合物であり、この塩基性残基は二個のアルキル基により置換されているか又はアルキレン基により置換されて環状残基を形成している第3級アミンである。しかしながら、これらの環状塩基性残基はフタラゾン核のアミド性窒素原子とは該環状アミンの窒素原子によりアルキレン鎖を介して結合している。

本発明による塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体は式1

<省略>

(式中、R1及びR2同一又は異なつて、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル又け置換もしくは非置換のアミノ基を表わし、Xは式-CH2、-CH2CH2又は<省略>で表わされるアルキレン基差であり、m及びnは同じであつても相異なつてもよく、1又は2であり、pは0又は1であり、そして基<省略>はその窒素原子がC1~4アルキルー置換されうるピロリジニル、ビペリジル又はパーヒドロアゼビニル基であるか、あるいはキヌクリジニル又はトロパニル基であるが、ただしキヌクリジニル又はトロパニル基は上記フタラジノンの2-窒素原子にキヌクリジニル又はトロパニル基の環炭素原子を介して直接結合しそしてその他の基はフタラジノンの2-窒素原子に直接か又は式-CH2-、-CH2CH2-又は<省略>のアルキレン基を介して結合する)で表わされる。

式1の化合物及びその生理学上許容し得る酸付加塩のうちでも、式中のR1及びR2が水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、又はトリフルオロメチルであつてm及びnが1又は2であるものが特に有好な性質を有している点で好ましい。特に好ましいものはR1が前述の如き基を表わし、R2が水素原子である化合物である。

これらの化合物のうちでも、式中のXが-CH2であるか又は<省略>であるようなベンジルフタラゾン化合物及び塩類が好ましい。

この化合物群のうちでも、その外に<省略>基がその環状基差内に4~7個の炭素原子を含有する化合物、特に該基がN-置換ピロリジニル、ビペリジル、パーヒドロアゼビニル、キヌクリジル、トロバニル及びスコピル基であつて、該トロパニル及びスコピル基はフタラゾンのアミド性窒素原子と直接該トロパニル又はスコビル基の環炭素原子を介して結合し、一方、前記ピロリジニル、ビペリジル、パーヒドロアゼピニル又にキヌクリジル残基はフタラゾンのアミド性窒素原子と直接に又はアルキレン鎖X(上記において好ましいものとしてあげたもの)を介して結合しているような化合物である。

式1の化合物及びその生理学上許容し得る酸付加塩のうち、最も好ましい化合物群は式中のR1が水素、弗素、塩素又は臭素原子、又はメトキシ、エトキシ、メチル、ヒドロキシ又はトリフルオロメチル基であり、R2が水素原子であり、mが1又は2であり、pが0であり、そして<省略>が、N-メチルパーヒドロアゼビニル、トロパニル又はキヌクリジル基、特にN-メチルパーヒドロアゼビニル-(4)、トロパニル-(3)又はキヌクリジル-(3)基であるような化合物、なかんずく式中のR1がp-クロロ又けp-フルオロ原子であり、そして<省略>がN-メチルパーヒドロアゼビニル-(4)基である化合物からなる。すなわち、これらベンジルフタラゾン誘導体の結合ベンゼン環は非置換であり、前記パーヒドロァゼビニル、トロパニル又はキヌクリジル残基はフタラゾン核のアミド性窒素原子と直接結合している。

式1の新しい塩基性置換ベンジルフタラゾン誘導体及びその生理学上許容しうる酸付加塩の製造方法は、

(A) 式Ⅰ

<省略>

(式中、R1、R2、m及びnは式Ⅰにおける定義を有する)で表わされる化合物又ほその反応性誘導体を式Ⅲ

<省略>

(式中、X、p及び<省略>は式Ⅰにおける定義を有する)で表わされるヒドラジン化合物と反応させるか、

(B) 式

<省略>

(式中、R1、R2、X、m、n及びpは式Ⅰにおける定義を有し、基<省略>はその窒素原子が水素により置換されているピロリジニル、ビペリジルまたはバーヒドロアゼビニル基である)で表わされる化合物をアルキル化剤と反応させるか、又は

(C) 式Ⅳ

<省略>

(式中、R1、R2、mおよびnは式1における定義を有する)で表わされる化合物を式Ⅴ

<省略>

(式中Qはアミド窒素原子の置換のにその電子ダブレツトと共に開裂される原子又は基、例えばハロゲン原子、スルホン酸エステル基などを表わし、X、p及び<省略>は式Ⅰにおける定義を有する)で表わされる化合物と反応させ、そしてこのようにして得られるベンジルフタラゾン誘導体を所望により適当な酸を用いて生理学上許容しうる酸付加塩に変えるか又は得られるこれらベンジルフタラゾン誘導体の塩を遊離の塩基に変えることを特徴とする。

式Ⅱで表わされるカルボン酸の反応性誘導体の例としては、特に酸ハロゲニド、エステル又は無水物があげられる。前記ベンゼン-O-ケトカルボン酸又はそのハロゲニド、エステル、又は無水物に代えて使用してもよい。式Ⅱで表わされる化合物の反応性誘導体のその他の例としては、式X

<省略>

又は式Ⅱ

<省略>

(上記式X及びⅩⅠにおいて、R1、R2、m及びnは式Ⅰにおける定義を有し、Aは素原子であるか又はイミノ基であり、またR3はハロゲン、NH2、ArNH、OH、アルコキシ基などである)で表わされる不飽和又は飽和のフタライド化合物又はフタルイミジン化合物がある.このタイプの化合物の他の例としては、式ⅩⅢ

<省略>

(式中、R1、R2m及びnは式Ⅰにおける定義を有する)で表わされる化合物がある。これら化合物を式Ⅲで表わされる化合物との反応に付すと、式Ⅱで表わされるベンゼン-O-ケトカルボン酸の誘導体が得られる。

上記A方法は、通常の溶媒及び助剤の存在下又は不在下に約180℃までに高められた温度にて酸性pH~アルカリ性pHに亘るpH域にて行なわれる。

有用な溶媒としては、例えば水、アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ピリジン、トリエチルアミン、炭化水素類などがある。有用な助剤としては、かかる反応に慣用される塩基類、酸類及び縮合剤などがある。

前記Bの方法は、通常のアルキル化剤例えばギ酸、NaBH4、水素などの還元剤の存在下のホルムアルデヒド、並びにジメチルサルフエートとK2CO3、アルキルハロゲニド類、ジアゾメタンなどを用いて行なわれる。

式Ⅴで表わされるアルキル化剤との反応を行なう場合には、既知のサイクルアンモニウム転位(cyclammonium rearrangement)が生起し、環の大きさが変わる場合がある。

式Ⅰの化合物及びその酸付加塩は大部分フタラゾン核のアミド性窒素原子に、直接又はアルキレン基を介して連絡する環状塩基性基の炭素原子について光学的に活性である。そのラセミ体は、自体既知の方法で光学対掌体に分割してもよい。

本発明による化合物には、ヒスタミン分解作用がある。本化合物の特徴は非経口的、及び就中経口的適用において極めて高活性を有することである.更に、本化合物はこの高活性を長時間に亘つて生じる。この活性はモルモツトにおけるビスタミンエアロゾール試験又は人間における障害(この障害はヒスタミン又はヒスタミン放出体によりひきおこされる)試験(Quaddel-Test)において示すこともできる.

モルモツトにおいて.ヒスタミン分解作用をヒスタミンエアロゾール試験により試験した.各々体重300~700gのバーブライト(Pirbright)系モルモツトを試験した.これら動物にヒスタミンジハイドロクロリドの水性溶液のエアロゾール(濃度4mg/ml)を吸入させる。未処理動物においては、この吸入により2分以内に重篤な呼吸困難(重な呼吸短縮、横転)が生じる。ヒスタミン分解活性を測定するために供試化合物を8~10匹の群に皮下又は経口投写する。次に、それら供試動物を種々の時間に亘り前記ヒスタミンエアロゾールを用いて処理する.それら供試動物が重篤な呼吸困難(横転)を示すことなく10分間のエアロゾール吸入に耐えた場合にそれらは保護されたものとされる。

試験結果の評価のため、投薬量対数と保護頻度との間の関係からプロビツト分析により平均有効投薬量(DE50mg/kg)を決定する。

化学構造上本発明化合物に類似し、したがつて比較試験として用いた化合物は、4-ベンジル-2-(2-ジメチルアミノエチル)-1-(2H)-フタラジノン(商品名.Ahanon、独国特許第1046625号明細書参照、表Ⅰ及びⅡの化合物A).及び高活性のヒスタミン分解剤として知られるβ-ジメチルアミノエチル-(4-クロロ-α-メチルーベンズヒドリル)ーエーテル(一般名クロロフエノキサミン、アルツナイミツテルホルシユング4巻、189頁(1954)、アルツナイミツテルホルシユング4巻、262頁(1954)参照、表Ⅰ及びⅡの化合物B)である。

本発明による生成物と、比較用生成物であるA及びBとの間の差異は供試化合物を供試動物に経口投与し、そして供試動物を8時間後にヒスタミンエアロゾール処理した場合に特に明瞭である.0.0215mg/kgの4-(p-フルオロベンジル)-2-〔N-メチルパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン又は0.215mg/kgの4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノシ又は4-(p-クロロベンジル)-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フクラジノンを適用した場合には各群8~10匹のうち、1匹としてヒスタミンエアロゾール処理後呼吸困難及び横転を示さなかつた.これとに極めて対照的に両比較用化合物をその投薬量の10~100倍投与した場合(2.15mg/kg)、化合物Aの場合は10匹中9匹、また化合物Bの場合は10匹中10匹が依然、極めて重篤な呼吸困難及び横転を示した.

表Ⅰ:ヒスタミンエアロゾール試験によるヒスタミン分解的活性(モルモツト)(エアロソール処理の1時間前に供試化合物を皮下投与)

実施例番号 DE50〔mg/kg〕 相対的活性(Aの活性-1.00)

3 0.0062 17.7

6 0.011 10.0

7 0.0071 15.5

9 0.045 2.44

10 0.031 3.55

11 0.035 3.14

12 0.022 5.00

19 0.016 6.88

24 0.027 4.07

28 0.059 1.86

30 0.026 4.23

33 0.016 6.88

34 0.019 5.79

A 0.11 1.00

B 0.11 1.00

表Ⅱ:ヒスタミンエアロゾール試験によるヒスタミン分解的活性(エアロゾール処理の2及び8時間前に供試化合物を経口投与)

実施例番号 DE50〔mg/kg〕 2時間 8時間 相対的活性(Aの活性-1.00) 2時間 8時間

9 0.16 0.49 19.4 13.1

10 0.037 0.029 83.8 221.0

19 0.010 0.011 310.0 582.0

24 0.087 0.052 35.6 123.0

28 0.20 0.28 15.5 22.9

30 0.038 0.35 81.6 18.3

A 3.1 6.4 1.00 1.00

B 0.52 6.2 5.96 1.03

本発明による化合物のヒスタミン分解作用は、比較用供試化合物A及びBのそれよりも実質的に高い。皮下投与の場合にはその相対的活性は比較用供試化合物のそれよりも約17.7倍高い(実施例番号3参照)。その活性は経口投与の場合に特に明らかである(表Ⅱ参照)。その活性は供試化合物Aの活性に比べて2時間試験においては16~310倍高く、また8時間試験においては13~582倍高い。この8時間試験は、本発明方法による化合物が極めて高い経口活性を有し、しかも該活性が長時間に亘つて生ずることを明瞭に実証している。

本発明による化合物は薬用製剤中の活性成分として用いられ、また通常の形態例えば錠剤、糖衣錠、カプセル剤、座薬、点滴薬、軟膏、クリーム及び注射薬などとして投与することもできる。本化合物は特に種々の形のアレルギーの処置に用いられる。すなわち、本化合物は人の気管支ぜんそくの処置、皮膚及び粘膜の疾患例えばじんましん、クインケ浮腫(Quincke's edema)、掻痒症、湿疹、枯草熱(花粉症)、血管運動神経性鼻炎などの処置に有効に用いられる。一般に本化合物はかかる治療においては患者1人当り、1日当り0.4~4mgの投薬量で投与される。前記アレルギー性疾患の症状は一回投与の場合24時間までの間有効に軽滅することもできる。他の杭ヒスタミン薬に比べて極めて迅速にかつ長時間に亘つて生じる人間に対する本発明化合物の効果はヒスタミン放出体〔Med.Welt.17NF、2794(1966)参照〕により人工的に生ぜしめた障害の大きさの軽滅において特に良好に示すこともできる。本発明による化合物はそのまま用いてもあるいは抗ヒスタミン製剤に慣用される他の活性成分と組合わせて用いてもよい。この点に関しては、それらの最少投薬量が極めて有益である。次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。最終生成物の構造は元素分析及び赤外及びNMRスペクトルにより確認した。

実施例 1.

4-ベンジル-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン10.3gのフエニルアセトフエノン-o-カルボン酸及び61gのヒドラジンサルフエートを、水100cc中にNaOH3.6gを溶解した溶液に溶解する。その溶液を2時間加熱沸謄する。沈澱を吸引〓過し、水洗し、乾燥する。このようにして得られる9.2gの4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンを、無水アルコール250ccに金属カリウム1.4gを溶解した溶液に添加する。得られる混合物を30分加熱沸謄する。そのアルコールを留去する。10.6gのカリウム塩が得られる。

ジメチルホルムアミド100cc中の3-ヒドロキシメチル-N-メチルピロリジンのトシルエステル124g、及び4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンのナトリウム塩10.6gを100℃にて1時間加熱する。その溶媒を回転蒸発器内で分離しその残留物を水で磨砕する。その不溶物をエーテルに溶解し、そのエーテル性溶液を希塩酸抽出する。その酸性抽出液を水性水酸化カリウム溶液添加によりアルカリ性にする。その分離した油状生成物をエーテルに溶解し。そのエーテル性溶液を無水Na2SO4上で乾燥する。そのエーテルを蒸発すると11gの塩基が得られる。そのフマレートは-水和物として晶析する。融点129~132℃。

実施例 2

4-べンジル-2-{2-〔N-メチルピペリジル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノン

133gのフエニルアセトフエノン-o-カルボン酸及び7.9gのヒドラジンサルフエートを水150cc中の4.7gのNaOHと共に加熱する。実施例1に記載した如く11.9gの4-ベンジルー1-(2H)-フタラジノンを回収する。この化合物を実施例1に記載した如くに無水アルコール300ccに1.9gの金属カリウムを溶解した溶液との反応に付し、4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンのカリウム塩13.7gを得る。

ジメチルホルムアミド25cc中に8.9gの2-(2-クロロエチル)-N-メチルピペリジンを溶解した溶液を、ジメチルホルムアミド150cc中に4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンのカリウム塩137gを溶解した溶液に100℃にて滴加する。得られる溶液を2時間さらに撹拌する。その溶媒を留去し、残留物を水処理する。不溶性生成物をエーテルに溶解し、そのエーテル性溶液を希塩酸抽出し、その酸性抽出液を冷却しつつ水性水酸化カリウムを添加することによりアルカリ性にする。分離する抽を再度エーテルに溶解し、そのエーテル性溶液を無水Na2SO4上で乾燥する。エーテル性塩酸を滴加することにより4-ベンジル-2-{2-〔N-メチルピペリジル-(2)〕-エチル}-1-(2H)ーフタラジノンの塩酸塩が沈澱する。すなわち14gの該塩酸塩が得られる。再結晶後この塩酸塩は201~203℃にて融解する。

実施例1及び2に記載した如くに下記の化合物を製造した。

3. 4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点205~207℃。

4. 4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩水和物。融点90℃以上。

5. 4-ベンジル-2-〔N-メチルピペリジル-(3)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点77℃以上(分解)。

6. 4-(p-メチルペンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点126~128℃。

7. 4-(p-メトキシペンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(2)-メチル〕-1-(2H)-フタラジノン。融点111~114℃。

8. 4-(p-クロロベンジル)-2-(1-〔N-メチルピペリジル-(2)-エチル)-1-(2H-フタラジノンクエン酸塩。融点103~105℃。

実施例 9.

4-ベンジル-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

トルエン20cc中に8gの4-クロロ-N-メチルーバーヒドロアゼビンを溶解した溶液を無水トルエン250cc中の4-ベンジル-1-(2H)-フタラジノンのカリウム塩13.7gの懸濁液に40℃にて激しく撹拌しつつ滴加する。加熱を徐徐に続けて沸謄させた後、もう5時間還流を続ける。その溶媒を回転蒸発器内で分離し、その残留物を水洗する。不溶性油状生成物をエーテルに溶かし、そのエーテル性溶液を希塩酸抽出する。その酸性抽出液を水性水酸化カリウムの添加によりアルカリ性にし、分離する油を再度エテルに溶かす。そのエーテル性溶液を無水Na2SO4上で乾燥する。溶媒を蒸発させると32gの粗製生成物が得られる。この生成物をそのフマール酸塩にして再結晶すると4-ベンジル-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンのフマール酸塩水和物が得られる。融点156~160℃。

更にその母液から4-ベンジル-2-{2-〔N-メチルーピロリジニル-(2)〕エチル}-1-(2H)-フタラジノンを回収してもよい。

実施例 10.

4-(p-クロロベンジル)-1-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

30.6gのp-クロロベンジルアセトフエノン-o-カルボン酸及び16gのヒドラジンサルフエートを水250cc中のNaOH9.4gと共に加熱する。洗浄及び乾燥後4-(p-クロロベンジル)-1-(2H)-フタラジノン2.7gが得られる。

2-(2-クロロエチル)-N-メチルピロリジン塩酸塩20gを水20cc中にNaOH4.4gを溶解した溶液に添加する。この溶液を70℃に加熱し、既に得た27gの4-(p-クロロベンジル)-1-(2H)-フタラジノンと40ccの50%ソーダライ(soda lye)との70℃に加熱された混合物に滴加する。その混合物をこの温度に保ち、さらに1時間加熱する。冷却及び水による希釈後不溶性物質を分離し、塩化メチレンに溶解する。その溶液を希塩酸抽出し、その酸性抽出液を水性水酸化カリウムの添加によりアルカリ性にする。分離した油を再度塩化メチレンに溶解し、その溶液を乾燥し、蒸発させる。粗製最終生成物が理論の90%を越える収率で得られる。それを塩に変え、再結晶により精製する。この4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼビニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンの塩酸塩は225~229℃にて融解する。

〓液からは再結晶により4-(p-クロロベンジル)-2-(2-〔N-メチルピロリジニル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノンを回収することもできる。

実施例9及び10に記載した如くに下記の化合物を製造した。

11.4-(p-メチルベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点199~203℃。

12.4-(p-メトキシベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点203-205℃。

13.4-(3、4-ジメトキシベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点118~120℃。

14.4-(2-クロロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点198~200℃。

15.4-(3-クロロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点77~78℃。

16.4-(p-クロロベンジル)-6、7-ジメトキシ-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点286~290℃。

17.4-(2、4-ジクロロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点207~211℃

18.4-(p-ジメチルアミノベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点177~182℃。

19.4-(p-フルオロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点211~220℃。

20.4-(p-プロモベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩。融点215~220℃。

21.4-(p-アセトアミノペンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン硫酸塩水和物。融点275~278℃。

22.4-(p-アミノベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンジ塩酸塩水和物。融点270~277℃。

23.4-(p-ヒドロキシベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点260~266℃。

実施例 24.

4-(p-クロロベンジル)-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン

p-クロロフエニルアセトフエノシ-o-カルボン酸5.5gを30ccの2Nソーダライ及び30ccの水に溶解する。そこへ4.3gの3-キヌクリジルーヒドラジンジ塩酸塩を添加し、その混合物を窒素雰囲気下に3時間加熱沸謄させる。冷却すると極めて粘い赤色油が分離するが、これはスクラツチすると晶析する。その固体物質を〓過し、水洗し、再結晶する。44gの4-(p-クロロベンジル)-2-(キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノンが得られる。この生成物は181~182℃にて融解する。

実施例 25.

4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

11gのp-クロロフエニルアセトフエノン-o-カルボン酸をエチルアルコール120ccに溶解する。そこへ8gのN-メチルピペリジル-(4)-ヒドラジンジ塩酸塩の溶液を添加し、その混合物を窒素雰囲気下に8時間加熱沸謄させる。そのアルコールを留去し、その残留物を希ソーダライ処理する。不溶性の油性生成物をクロロホルムに溶解し、そのクロロホルム溶液を洗浄、乾燥する。蒸発すると8.4gの前記フクラジノン塩基が得られる。そのフマール酸塩は191~193℃にて融解する。

実施例24及び25に記載した如くに下記の化合物を製造した。

26.4-ベンジル-2-〔N-メチルピペリジル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン水和物。融点106~110℃。

27.4-(p-クロロベンジル)-2-〔1、3-ジメチルーピペリジル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点219~221℃。

28.4-(p-クロロペンジル)-2-〔トロパニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩水和物。融点270~274℃。

29.4-ベンジル-2-(2-〔N-メチルピロリジニル-(2)〕-エチル)-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩水和物。融点95~99℃。

30.4-ベンジル-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩水和物。融点233~235℃。

31.4-(p-クロロベンジル)-2-(2-〔N-メチルピロリジニル-(2)〕エチル)-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点220~224℃。

32.4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点117~120℃。

33.4-(p-メトキシベンジル)-2-〔キヌクリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点236~237℃。

34.4-(p-フルオロベンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点90~93℃。

35.4-(p-メチルベンジル)-2-〔N-メチルピロリジニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点96~98℃。

36.4-(p-クロロベンジル)-2-〔ノルトロパニル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン塩酸塩。融点320℃。

37.4-(p-クロロベンジル)-2-〔パーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンフマール酸塩。融点:分解。

実施例 38.

4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノン

1.0gの4-(p-クロロベンジル)-2-(パーヒドロアゼピニル-(4)〕-1-(2H)-フタラジノンを10gの40%水性ホルムアルデヒド溶液及び11.6gのギ酸と共に5時間加熱する。この溶液を蒸発させ、その残留物を希ソーダライ処理する。不溶性物質をクロロホルムに溶かし、そのクロロホルム溶液を乾燥、蒸発させる。その残留物をエーテルに溶かす。エーテル性塩酸を添加することにより0.8gの塩酸塩が沈澱する。アルコールから再結晶後その化合物は225~229℃にて融解する。

この化合物は実施例10により得られた最終生成物と同一である。

実施例38に記載した如くに下記の化合物を製造した。

39.2-〔N-メチルーパーヒドロアゼピニル-(4)〕-4-(p-トリフルオロメチルベンジル)-1-(2H)-フタラジノン。

実施例 40.

4-(p-クロロベンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン

4.9gの3-〔4-(p-クロロベンジル)-1-オキソーフタラジニル-(2)〕-1-メチルピリジニウム沃化物を、触媒としてのP1O2の存在下80℃及び100気圧の水素圧にて7時間エチルアルコール300cc中の水素添加反応に付す。その触媒を〓過し、アルコールを留去する。残留物を希ソーダライ処理し、不溶性物質を塩化メチレンに溶かす。その塩化メチレン溶液を水洗し、カリ上で乾燥する。溶媒を留去し、固体残留物を60~70%エチルアルコールから再結晶する。収量は25gであり融点は154~156℃である。

実施例40に記載した如くに下記の化合物を製造した。

41.4-(p-メチルベンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点137~139℃。

42.4-(p-メトキシベンジル)-2-〔N-メチルピペリジル-(3)〕-1-(2H)-フタラジノン。融点87~93℃。

物件目録

左記医薬品

商品名 アゼピット錠1mg

別紙 2

大洋薬品方法

4-(p-クロロフェニル-t-ブトキシカルボニルメチル)-2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-1(2H)-フタラジノン(Ⅱ)を酢酸中還流下反応させ、4-(p-クロロベンジル)-2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-1(2H)-フタラジノン(Ⅰ)とした後、塩酸で処理し塩酸アゼラスチンを得る。

別紙 3

<省略>

遼東化学方法

1-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)ヒドラジン2塩酸塩(Ⅲ)と無水フタル酸(Ⅳ)を水酸化ナトリウム水溶液中で反応させ、2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-4-ヒドロキシ-1(2H)-フタラジノン塩酸塩(Ⅵ)を得る。得られたⅥをオキシ塩化リン中で還流下反応させ、4-クロロ-2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-1(2H)-フタラジノンとした後、p-クロロフェニル酢酸t-ブチルエステル(Ⅴ)とジメチルホルムアミド中で反応させ、4-(p-クロロフェニル-t-ブトキシカルボニルメチル)-2-(ヘキサヒドロ-1-メチル-1H-アゼピン-4-イル)-1(2H)-フタラジノン(Ⅱ)を得る。

別紙 4

<省略>

別紙 5

<省略>

特許公報

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例