名古屋地方裁判所 平成7年(わ)336号 判決 1995年7月10日
裁判所書記官
久保則昭
本籍
大阪府堺市中田出井町一丁三番
住居
愛知県一宮市多加木一丁目一番三号 サンレジデンス二〇四号
会社役員
園田秀光
昭和三二年七月一一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、愛知県内において、「パブリック」などの名称で、寝具等の販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際し、売上金額を適宜の過少な金額で計上する方法により所得の一部を秘匿したうえ、
第一 平成元年分の実際の総所得額が四、四三七万九、九七五円であり、これに対する所得税額が一、八〇八万九、五〇〇円であるのに、平成二年三月一五日、大阪府堺市南瓦町二番地二〇号所在の所轄税務署において、同税務署長に対し、平成元年分の総所得金額が六三八万九、四七一円であり、これに対する所得税額が八九万七、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一、八〇八万九、五〇〇円と右申告税額との差額一、七一九万一、七〇〇円を免れ
第二 平成二年分の実際の総所得税額が三、八〇三万三、〇七八円であり、これに対する所得税額が一、四五四万三〇〇円であるのに、平成三年三月一五日、前記堺税務署において、同税務署長に対し、平成二年分の総所得金額が六七七万三、一四七円であり、これに対する所得税額が七二万七、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一、四五四万三〇〇円と右申告税額との差額一、三八一万二、六〇〇円を免れ
第三 平成三年分の実際の総所得額が一億一、一四四万二、一一五円であり、これに対する所得税額が五、一〇三万七、九〇〇円であるのに、平成四年三月一三日、前記堺税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が一、二五九万六、五八〇円であり、これに対する所得税額が二六四万五、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額五、一〇三万七、九〇〇円と右申告税額との差額四、八三九万二、五〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示(公訴事実)全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書
一 園田久美子の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の査察官調書一九通(甲7ないし25)
判示(公訴事実)第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲1)及び証明書(甲4)
判示(公訴事実)第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲2)及び証明書(甲5)
判示(公訴事実)第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲3)及び証明書(甲6)
(法令の適用)
罰条 所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑併科)
併合罪の処理 平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法四五条前段、懲役刑につき同改正前の刑法四七条本文、一〇条(第三の罪の刑に)、罰金刑につき同改正前の刑法四八条二項
労役場留置 前同改正前の刑法一八条
執行猶予 前同改正前の刑法二五条一項
(量刑事情)
三か年分の所得をつまみ申告等により過少申告し、合計七九三九万円余の所得税を免れたものであって、動機は格別同情に値せず、刑事責任は軽視できない。しかし、今回の査察、調査を契機として本件を反省し、経営を法人化するなど経理面を充実し、顧問税理士の指導を受けて二度と脱税をしないよう決意したこと、修正にかかわる本税、重加算税、延滞税等を完納したこと、前科がないこと等を考慮して、罰金額を量定するとともに、今回に限り、懲役刑の執行を猶予することとした。
よって、主文のとおり判決する。
(検察官堀本久美子、弁護人大見宏公判出席)
(裁判官 油田弘佑)