名古屋地方裁判所 平成8年(わ)2235号・平8年(わ)2236号・平8年(わ)2237号
主文
被告人大和株式会社を罰金五〇〇〇万円に、被告人大洋観光株式会社を罰金三〇〇〇万円に、被告人東山株式会社を罰金一五〇〇万円に、被告人塩崎雄一を懲役一年六か月に処する。
訴訟費用は被告人らの連帯負担とする。
理由
(犯罪事実)
被告人大和株式会社(以下「被告会社大和」という。)、同大洋観光株式会社(以下「被告会社大洋観光」という。)は、名古屋市東区東桜二丁目一三番三四号に本店を置き、被告人東山株式会社(以下「被告会社東山」という。)は、名古屋市中区錦二丁目一八番一号に本店を置き、いずれも、遊技場の経営等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人塩崎雄一は、各被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人塩崎雄一は、各被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、架空仕入を計上し、減価償却費を過大計上するなどの方法により、所得を隠した上
第一 平成三年八月一日から同四年七月三一日までの事業年度における被告会社大和の実際の所得金額が一億四三九五万二八三一円であったのに、平成四年九月三〇日、名古屋市東区主税町三丁目一八番地の所轄名古屋東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五一四二万七八六二円で、これに対する法人税額が一八五二万五一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五三二二万二〇〇〇円と右申告税額との差額三四六九万六九〇〇円を免れた。
第二 平成四年八月一日から同五年七月三一日までの事業年度における被告会社大和の実際の所得金額が二億五七七二万六六五三円であったのに、平成五年九月二九日、前記名古屋東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六六二九万七八四七円で、これに対する法人税額が二四一〇万一三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額九五八八万七二〇〇円と右申告税額との差額七一七八万五九〇〇円を免れた。
第三 平成五年八月一日から同六年七月三一日までの事業年度における被告会社大和の実際の所得金額が五億六二九七万四一八四円であったのに、平成六年九月三〇日、前記名古屋東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二億三〇四九万一九〇四円で、これに対する法人税額が八五四八万七〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二億一〇一六万八二〇〇円と右申告税額との差額一億二四六八万一二〇〇円を免れた。
第四 平成三年二月一日から同四年一月三一日までの事業年度における被告会社大洋観光の実際の所得金額が一億二三八四万八二一三円であったにもかかわらず、平成四年三月三一日、前記名古屋東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六六〇〇万六七二七円で、これに対する法人税額が二三四八万一五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四五一七万二二〇〇円と右申告税額との差額二一六九万〇七〇〇円を免れた。
第五 平成四年二月一日から同五年一月三一日までの事業年度における被告会社大洋観光の実際の所得金額が一億六九四五万四二八六円であったのに、平成五年三月三一日、前記名古屋東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六四三三万六七二五円で、これに対する法人税額が二三〇二万円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額六二四三万九二〇〇円と右申告税額との差額三九四一万九二〇〇円を免れた。
第六 平成五年二月一日から同六年一月三一日までの事業年度における被告会社大洋観光の実際の所得金額が三億二七八四万六六五一円であったのに、平成六年三月三〇日、前記名古屋東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億一二七〇万七九一〇円で、これに対する法人税額が四一〇三万二〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二一七〇万九二〇〇円と右申告税額との差額八〇六七万七二〇〇円を免れた。
第七 平成三年二月一日から同四年一月三一日までの事業年度における被告会社東山の実際の所得金額が三四五七万四四二〇円であったのに、平成四年三月三一日、名古屋市中区三の丸三丁目三番二号の所轄名古屋中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇三七万一〇一九円で、これに対する法人税額が二八三万八四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一一九一万四五〇〇円と右申告税額との差額九〇七万六一〇〇円を免れた。
第八 平成四年二月一日から同五年一月三一日までの事業年度における被告会社東山の実際の所得金額が八九一〇万一九二八円であったのに、平成五年三月三一日、前記名古屋中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一四二二万七〇九七円で、これに対する法人税額が四四三万九六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三二五一万七四〇〇円と右申告税額との差額二八〇七万七八〇〇円を免れた。
第九 平成五年二月一日から同六年一月三一日までの事業年度における被告会社東山の実際の所得金額が一億〇五八一万六七七五円であったのに、平成六年三月三〇日、前記名古屋中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二〇九三万九五四五円で、これに対する法人税額が七〇一万九七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三八八四万八五〇〇円と右申告税額との差額三一八二万八八〇〇円を免れた。
(証拠)カッコ内の甲乙の番号は、検察官請求証拠番号を示す。
全部の事実
一 各被告会社代表者兼被告人塩崎雄一の公判供述、検察官調書(乙2)
一 塩崎千太郎の検察官調書(甲64)、大蔵事務官調書(甲61、62、63)
一 塩崎長司郎(甲65)、山本克志(甲58、59)の検察官調書
一 山口差代(甲80、81)、辻正博(甲83)、小野八郎(甲84)、川浦和彦(甲85)、渡辺京子(甲86)の大蔵事務官調書
第一から第六の事実
一 槌谷博幸の大蔵事務官調書(甲82)
第一から第三の事実
一 被告会社大和代表者兼被告人塩崎雄一の検察官調書(乙3)
一 米倉善春の検察官調書(甲73)、大蔵事務官調書(甲69から72)
一 市岡信二(甲66、67)、尾坂学(甲68)の大蔵事務官調書
一 査察官調査書(甲5から13)
一 写真撮影報告書(甲51、52、53)
第一の事実
一 脱税額計算書(甲2)、証明書(甲14)
第二の事実
一 脱税額計算書(甲3)、証明書(甲15)
第三の事実
一 脱税額計算書(甲4)、証明書(甲16)
第四から第六の事実
一 被告会社大洋観光代表者兼被告人塩崎雄一の検察官調書(乙4)
一 佐藤大賢(甲74)、吉田武雄(甲75)の大蔵事務官調書
一 査察官調査書(甲21から32)
一 写真撮影報告書(甲54)
第四の事実
一 脱税額計算書(甲18)、証明書(甲33)
第五の事実
一 脱税額計算書(甲19)、証明書(甲34)
第六の事実
一 脱税額計算書(甲20)、証明書(甲35)
第七から第九の事実
一 被告会社東山代表者兼被告人塩崎雄一の検察官調書(乙5)
一 滝憲一(甲76、77、78)、牛越雅喜(甲79)の大蔵事務官調書
一 査察官調査書(甲40から46)
一 写真撮影報告書(甲55)
第七の事実
一 脱税額計算書(甲37)、証明書(甲47)
第八の事実
一 脱税額計算書(甲38)、証明書(甲48)
第九の事実
一 脱税額計算書(甲39)、証明書(甲49)
(法令の適用)
罰条
第一から第三の行為(被告会社大和)、第四から第六の行為(被告会社大洋観光)、第七から第九の行為(被告会社東山)
法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項
第一から第七の各行為(被告人塩崎)
法人税法一五九条一項
刑種の選択(被告人塩崎) 懲役刑
併合罪加重 平成七年法律第九一号による改正前の刑法四五条前段、各被告会社につき前記改正前の刑法四八条二項(罰金額を合算)、被告人塩崎につき前記改正前の刑法四七条、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に加重)
訴訟費用の負担 刑訴法一八一条一項本文、一八二条
(量刑理由等)
本件は、被告人塩崎雄一が代表取締役をしていた被告会社大和、同大洋観光、同東山の三社の法人税法違反事件であるが、ほ税額は、被告会社大和が合計二億三一一六万四〇〇〇円、被告会社東洋観光が合計一億四一七八万七一〇〇円、被告会社東山が合計六八九八万二七〇〇円で、三社合計で四億四一九三万三八〇〇円にのぼり極めて多額である上、ほ脱率も平均で六〇パーセントを超えている。被告人塩崎は、競争の激しいパチンコ業界等において、被告会社の多額の負債を早く返済したかったなどというが、このような規模の大きい脱税事犯において特に有利に考慮すべき事情とはいえない。ほ脱の方法も、資産の減価償却について耐用年数を圧縮して過大に計上する、資産計上すべき設備建設費を修繕費として計上する、売上金で購入した景品の代金を役員が立て替えて支払ったように装い借入金として計上する、資産を除却したとして架空の損失を計上する、現金払いされたたばこ代、弁当代につき、役員が立て替え払いし、後日精算したように装うなど、様々な方法を用いている。被告人塩崎は、税理士事務所の担当の事務員や被告会社の役員、社員に指示するなどして、本件犯行を主導的、積極的に行ったものである。この種多額の脱税事犯はまじめな納税意欲をそぐ危険性が高く、一般予防のためにも厳しい処罰が必要である。したがって、各被告会社、被告人塩崎の刑事責任はいずれも重い。
もっとも、各被告会社は、本件発覚後、銀行から融資を受けて、本税、延滞税や重加算税を全額納付済みであり、税理士を変えるなどして再犯防止の措置を講じている。また、被告人塩崎については、犯行を認めて反省の態度を示し、再犯のないことを固く誓っていること、これまで仕事一途の生活で、犯行も遊興等を目的としたものではないこと、交通関係のほかには前科はなく、実刑となると、代表取締役として経営してきた、被告会社を含む会社への影響が大きいこと、また、下垂体腺腫の摘出手術を受けるなど健康状態にも不安のあることなどの酌むべき事情もある。しかし、事案の重大性、犯行における主導的役割、同種事犯の量刑例などに照らすと、実刑はやむを得ず、これが憲法の禁止する残虐な刑罰に当たるとはいえない。そこで、被告人らのために酌むべき事情も考慮し、各被告会社を主文の罰金刑とし、被告人塩崎を主文の実刑とした。
(求刑-被告人大和株式会社=罰金七〇〇〇万円、被告人大洋観光株式会社=罰金四二〇〇万円、被告人東山株式会社=罰金二〇〇〇万円、被告人塩崎雄一=懲役二年六か月)
(裁判官 安江勤)