大判例

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名古屋地方裁判所 平成9年(わ)144号 判決

主文

被告人神尾昌夫を懲役一年に、被告人小林泰夫を懲役一年六月及び罰金五〇〇万円に処する。

被告人小林泰夫に対し、未決勾留日数中八〇日をその懲役刑に算入する。

被告人小林泰夫において、右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人両名に対し、この裁判確定の日から三年間それぞれの懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

分離前の相被告会社株式会社学志館は、愛知県岡崎市美合町字平地四八番地三に本店を置き、学習塾の経営等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人神尾昌夫は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたもの、松本忠昭、被告人小林泰夫、長谷川哲也こと金炳大及び松木一也は、被告人神尾昌夫から依頼されて同会社の法人税の確定申告手続に関与したものであるが、被告人神尾昌夫、松本忠昭、被告人小林泰夫、長谷川哲也こと金炳大及び松木一也は、共謀の上、同会社の前記業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の事業所拡大費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、別紙修正損益計算書のとおり、平成六年三月一日から同七年二月二八日までの事業年度における同会社の実際所得金額が、二億五九五八万五二六二円であったにもかかわらず、同年五月一日、愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在の所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一億〇九五八万五二六二円で、これに対する法人税額が四〇二八万三二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、別紙脱税額計算書のとおり、同会社の右事業年度における正規の法人税額九六五三万三二〇〇円と右申告税額との差額五六二五万円を免れた。

(証拠の標目)

括弧内の数字は、証拠等関係カードの検察官証拠請求番号を示す。

一  被告人両名の公判供述(なお、第二回公判期日におけるものは、被告人小林泰夫の関係での、第三回公判期日におけるものは、被告人神尾昌夫の関係での証拠)

一  被告人神尾昌夫(乙一、二)及び同小林泰夫(乙五、六)の検察官調書

一  吉田俊雄(謄本・甲八)、鈴木人史(謄本・甲九)、松本忠昭(謄本・甲一二、一三)、長谷川哲也こと金炳大(謄本・甲一四)及び松木一也(謄本・甲一五)の検察官調書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(謄本・甲一、二)及び証明書(謄本・甲三、四)

一  登記簿謄本(甲一一)

(法令の適用)

(本項で適用する刑法はいずれも平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法である。以下「改正前刑法」と表記する。)

罰条 被告人両名の関係で改正前刑法六〇条、一五九条一項、二項

刑種の選択 被告人神尾の関係で懲役刑を、被告人小林の関係で情状により懲役刑及び罰金刑を選択

未決勾留日数の算入 被告人小林の関係で改正前刑法二一条

労役場留置 被告人小林の関係で改正前刑法一八条

刑の執行猶予 被告人両名の関係で改正前刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告人神尾が自分が代表取締役をしていた株式会社学志館の平成六年三月から平成七年二月までの事業年度における法人税につき、実兄の被告人小林らいわゆるエセ同和団体の者らと共謀の上、五六〇〇万円余りの法人税を脱税した事案である。

被告人神尾は、双子の兄で株式会社学志館の代表取締役をしていた小林隆夫が胃癌に罹患し、死期を悟った隆夫の意向で、学志館を引き継ぎ代表取締役に就任した。隆夫の死後、被告人神尾は、隆夫の遺志に基づき、同人が死亡したときに支払われた株式会社学志館を受取人とする約三億一〇〇〇万円の保険金につき、被告人神尾及び隆夫の実兄であり、いわゆるエセ同和団体である全日本同和事業連盟の構成員であった被告人小林泰夫を通じ、同団体に対し脱税工作を依頼し、本件犯行に及んだものであるが、結局は、被告人両名とも、自己の利得に目がくらんでの犯行といえ、被告人神尾については、双子の兄の遺志に基づくものとはいえ、友人の鈴木税理士の忠告を無視しており、格別酌量すべき事由とはいえない。また、被告人小林については、自己が所属するエセ同和団体の活動として職業的に行った犯行であり、五五〇万円以上の脱税報酬を得ていたもので犯情悪質である。

そして、本件脱税額は五六〇〇万円余りで、ほ脱率も約五八パーセントに及び、脱税としての規模も大きい上、一億五〇〇〇万円もの架空経費を計上するなど、犯行態様も大胆かつ計画的であり、納税者の誠実な申告を基礎とする申告納税制度に与えた悪影響も無視しえない。被告人神尾は、本件脱税を最終的に決断した者であり、被告人小林は脱税の話を全日本同和事業連盟の松本忠昭らに取り次ぎ、自ら岡崎税務署との交渉に当たるなどしており、いずれも本件犯行における役割は重要である。そうすると、被告人両名の刑事責任を軽視することはできない。

しかしながら、他方で、被告人神尾については、本件犯行を認め反省していること、本件の責任をとって株式会社学志館の代表取締役を退任していること、前科前歴がなく真面目に稼働してきたこと、扶養すべき妻子がいること、被告人小林については、本件犯行を認め反省していること、エセ同和団体と手を切り真面目に働く意思を表明していること、その妻が指導監督を誓約していること、前科前歴がないこと、未決勾留が相当期間に及んでいること、扶養すべき妻子がいることなど被告人両名にとって斟酌すべき事情もある。

当裁判所は、かかる被告人両名に有利な事情も総合考慮して、主文のとおり量刑し、被告人両名とも今回は懲役刑の執行を猶予して社会内で更生する機会を与えるのが相当と判断した。

(求刑 被告人神尾昌夫に対し、懲役一年 同小林泰夫に対し、懲役一年六月及び罰金五〇〇万円)

(裁判官 長倉哲夫)

修正損益計算書

<省略>

脱税額計算書

<省略>

税額の計算

<省略>

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