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名古屋地方裁判所 平成9年(わ)2272号

主文

被告人を懲役一年六か月及び罰金四〇〇〇万円に処する。罰金を全額納めることができないときは、未納分につき金四〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間懲役刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、平成四年、名古屋市内において、ファッションヘルス「チーク」を開店し、以後、「コルトンブルー」、「ブルーホール」、「ブルーコーナー」を開店して合計四店舗で風俗関連事業を営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、他人名義で店舗を営業し、帳簿書類を破棄するなどの方法により所得を秘匿した上、以下の各犯行を行った。

第一  被告人は、平成五年分の実際総所得金額が三二四九万五一八七円であったにもかかわらず、所得税の納期限である平成六年三月一五日までに、名古屋市瑞穂区瑞穂町字西藤塚一番地の四所在の所轄昭和税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで、納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成五年分の所得税額一一四〇万九四〇〇円を免れた。

第二  被告人は、平成六年分の実際総所得金額が七五一五万三九五六円であったにもかかわらず、所得税の納期限である平成七年三月一五日までに、前記昭和税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで、納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成六年分の所得税額三〇七六万二三〇〇円を免れた。

第三  被告人は、平成七年分の実際総所得金額が一億七三三四万一五一四円であったにもかかわらず、所得税の納期限である平成八年三月一五日までに、同市東区主税町三丁目一八番地所在の所轄名古屋東税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで、納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成七年分の所得税額七九六二万三七〇〇円を免れた。

(証拠)

(括弧内の甲乙の番号は検察官請求番号を示す。)

全部の事実について

1  被告人の

(1)  公判供述

(2)  検察官調書四通(乙二ないし五)

(3)  上申書七通(甲三八ないし四四)

2  竹間真理の検察官調書(甲六二)

3  佐藤淳子の質問てん末書三通(甲五一、五三、五五)

4  稲垣正の質問てん末書(甲五六)

5  黒柳健の質問てん末書(甲五七)

6  水野康広の質問てん末書(甲五八)

7  谷口政年の質問てん末書(甲五九)

8  宇野三郎の質問てん末書(甲六〇)

9  竹田麻里の質問てん末書(甲六一)

10  阿知波敬司の質問てん末書二通(甲六三、六四)

11  北沢正秀の質問てん末書(甲六五)

12  小橋忠直の質問てん末書(甲六六)

13  佐藤和徳の質問てん末書(甲六七)

14  中村裕の質問てん末書(甲六八)

15  査察官調査書三一通(甲一、二、四、ないし一四、一六ないし二三、二六ないし二九、三一ないし三六)

16  査察官報告書(甲七二)

第一、第二の各事実について

17  池田恵美の質問てん末書(甲五〇)

第一、第三の各事実について

18  査察官調査書(甲一五)

第二、第三の各事実について

19  大竹ルミ子の質問てん末書二通(甲四八、四九)

20  査察官調査書(甲三)

第二の事実について

21  査察官調査書(甲二四)

第三の事実について

22  赤川千枝子の質問てん末書三通(甲四五ないし四七)

23  査察官調査書(甲三〇)

(法令の適用)

1  罰条

各事業年度毎に

所得税法二三八条一項、二項

2  刑種の選択

懲役刑及び罰金刑(情状により)

3  併合罪の処理

懲役刑につき

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第二の罪の刑に法定の加重)

罰金刑につき

刑法四五条前段、四八条二項

4  労役場留置(罰金刑)

刑法一八条

5  懲役刑の執行猶予

刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、風俗店四店舗を営業していた被告人が、三年間にわたって、所得を一切申告しないで、多額の所得を秘匿した上、多額の税金の支払いを免れたという事案である。そのほ税額は合計約一億二〇〇〇万円にも及んでおり、ほ税率は一〇〇パーセントというもので、この種事案の中でも甚だ悪質である。

その動機は、自己の蓄財を図るというもので、自己中心的で酌むべき点は認められない。

その手口は、極めて計画的で悪質である。すなわち、被告人は、その経営する四店舗の全てについて、他人名義の営業許可を受け、各店舗の売上、経費について、各店長から報告を受けて、全店舗の経営状況を把握し、各店舗の収支を毎月集計した後、帳簿、日計表等を従業員に指示して全て破棄させていたものであり、その態様は、計画的かつ悪質である。

しかも、被告人は、留保した所得を預金及び不動産等によって秘匿していた。

被告人の本件犯行は、我が国の租税制度の根幹をなす申告納税制度を無視した悪質な犯行であって、納税者に対して不公平感を抱かせるものであって、厳しい非難を免れないところである。

他方、被告人は、査察後、修正申告により本税、重加算税、延滞税全てを納付していること、一部の店舗を会社組織にし、一部の店舗は近々閉鎖予定であること、新たに就任した顧問税理士の指導により各店舗の経理税務の体制の改善に努めており、本件後、適正な申告を心がけていること、また、被告人は、査察開始後、捜査公判を通じて、事実を全て認め、反省の態度を示しているほか、その反省の証として、法律扶助協会に二五〇万円の贖罪寄付、犯罪被害者救援基金に二五〇万円を寄附している。被告人には、これまで罰金前科四犯のほか、懲役前科一犯があるものの一〇年以上も前のものであること等の事情も認められる。

そこで、これらの事情を総合考慮して、被告人に対して、その懲役刑の執行を猶予することとした。

(求刑 懲役一年六か月、罰金四〇〇〇万円)

(裁判官 久保豊)

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