大判例

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名古屋地方裁判所 昭和25年(行モ)1号 決定

申請人 川本芳三郎 外三十二名

被申請人 瀬戸市長

一、主  文

本件申請は之を却下する。

申請費用は申請人等の連帶負担とする。

二、理  由

申請代理人は、被申請人が別紙目録記載の土地について行う瀬戸市都市計画街路中一等大路第一類第一号宮川線並びに二等大路第三類第五号瀬戸新居線附設役宮前廣場工事の実施及び右土地の收用手続を、名古屋地方裁判所昭和二十五年(行)第二号都市計画に基く道路工事禁止等事件の判決あるまで停止する、執達吏は現場に於て相当の処分をなせとの趣旨の裁判を求める旨申立て、その理由の要旨は右申請趣旨中記載の街路工事は被申請人が都市計画事業として施行しようとしているものであるが、

(イ)  右敷地となる別紙目録記載の土地は戰時中防空法により強制疎開をして被申請人が強制使用をしていた土地であつて、終戰により防空法の廃止をみ、憲法により戰爭抛棄のあつた後も申請人等から再三返還請求をしたに拘らず引続き今日迄不法に其の占有を続けて來たものであつて、今般右不法占有を奇貨とし土地收用法を惡用して之を道路敷地に充てようと強引に本件申請趣旨中記載の道路等の工事に着手しようとしているのは断じて許さるべからざるところであり、

(ロ)  しかも本工事は瀬戸市の繁栄と経済を無視する無謀の計画であつて同市民四万三千名中実に一万数千名の猛反対を受けている都市計画法第一條に違反の事業であり、

(ハ)  瀬戸市会は本工事を不当として其の修正変更方を上申したのに愛知縣土木部長が頑として聞き入れず其の修正変更を許可しなかつた爲市議会で止むなく原案を通過させたもので右は本來瀬戸市の事業であるものを政府や其の手先官僚が自治体の意思を無視蹂躙し而も其の費用は瀬戸市に負担させるものであるから右は憲法第九十四條、第十三條及び憲法主文の精神からして全く許されない所で、斯る自治体の独立自主自由の権利を侵害する事業を認めるが如き都市計画法第三條、第五條乃至第七條は憲法違反の法律でありこれに基いて企てられた本件都市計画の一連の行政処分亦從て総て憲法違反の処分である。

而も斯る違法な本工事が実施されるに於ては申請人等は遂に回復出來ない損害を蒙るに至るので本申請に及んだ。(疏明省略)

仍て審案するに都市計画法による都市計画は「交通衞生防空経済等に関し永久に公共の安寧を維持し又は福利を増進する目的」を達成の爲立案せられる「重要施設の計画」であつて、市其の他の一定の区域を限つて行われるものであることは都市計画法第一條により明白で殆んど自然発生的ともいふべき状況の下に発展して來た我国多数都市に対し斯る計画の必要であること、右の如き目的を達成する爲の計画の立案に当つては計画区域に限られた局地的見地にとらはれることなく、所謂国土計画的な立場に立つて遠い將來を予測して充分な調査研究の必要があることは明白で斯る場合地方自治の或程度の制限は固より止むを得ぬとろであり同法第三條に「都市計画、都市計画事業は都市計画審理会の議を経て主務大臣これを決定し、内閣の認可を受けねばならぬ」と定めているのは固より適切な規定であると共に、他面本件の如く市を区域とする都市計画によつて最も利便を受けるものは同市の住民であるから所謂受益者負担の制度が相当廣く認められている現在市に其の負担を命ずる規定があつたとて別段異とするに足らぬところであり右の如き都市計画に事業の実施に当つて、土地の強制收用、強制換地等の処分の必要があることも亦明瞭である。

然るに申請人等は以上の趣旨を規定した都市計画法第三條、第五條乃至第七條を憲法第九十四條、第十三條其他憲法主文に違反するものと主張するのだが右憲法第十三條は個人の尊重を言ふと共に其の自由、幸福追及の権利も「公共の福祉」によつて制限せられるものであることを明にして居るのであり、憲法第九十四條は地方公共団体に財産の管理権事務を処理し、行政を執行する権限等所謂自治の権限のあることを明にしているが、この自治の権限も廣い国家的立場から、法令により制限せられることのあるは固より当然で都市計画法の前記各法條が憲法の右規定に対しては勿論其他の憲法の法條精神に違反するものとは到底認められない。

更に申請人等は本件都市計画は瀬戸市の繁栄と経済を無視する無謀の計画で都市計画法第一條に違反するとも主張するのでこの点につき考へるに右第一條により立案せられる都市計画は固より同條記載の前記目的に適切妥当のものでなければならぬことは明白で、其の間主務大臣の恣意等の許さるべきでない所謂法規裁量事項であることは明白だが仮に計画に不適当の瑕疵があつたとて取消の対象となるは格別外観上明白且つ重大な場合でない限り無効と解すべきでなく申請人等提出の疏甲第五号証其他の疏明では本件都市計画に斯の如き明白、重大な瑕疵あるとも認められない。

尚申請人等は戰時中防空法により強制疎開をした土地を其の儘返還せず不法に占拠し來り、今に及んで都市計画事業として之を強制收用するは許されずとも主張するが、仮に右の如き事実があつても彼と此とは直接には無関係の事実で強制收用には何等の妨となるものでない。

以上説明の通り申請人等の本申請の理由とするところは一も採用し得るものないので行政事件特例法第十條による処分を求める本申請は本案事件との関連其他右処分に当り必要な諸点についての判断をまたず失当と認め、申請費用の負担に付民事訴訟法第八十九條第九十三條を適用し主文の通り決定する。

(裁判官 山口正章)

(別紙目録省略)

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