大判例

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名古屋地方裁判所 昭和26年(ヨ)339号 決定

申請人 全日本自動車産業労働組合尾三鉄工分会

右代表者 執行委員長

被申請人 高木孝市

一、保証 無保証

二、主  文

被申請人が申請人組合所属の従業員に対し昭和二十六年八月十八日なした解雇の意思表示はその効力を停止する。

三、理  由

当事者双方が提出した疏明資料により当裁判所が認定した事実及びこれにもとずく判断の要旨は次のとおりである。

被申請人は尾三鉄工所なる商号で自動車部品窓枠及びボデー蝶番等の製造販売を業とする事業主であり、申請人組合は右事業主に雇われている従業員をもつて組織している労働組合であるが、被申請人は右鉄工所の従業員全員に対し昭和二十六年八月十八日工場閉鎖全員解雇の申し渡しをなした。その経過としては、同年五月頃右鉄工所従業員は被申請人に対し賃金四割値上の要求をしたところ一割の値上がなされたにすぎなかつたので、従業員の間に労働組合結成の要望が起り同年七月十一日全員無記名投票の結果十二対三で組合結成が決定せられた。これを聞知した被申請人及びその弟Tは組合結成の主唱者であるH、Aに対し組合結成を思い止まるよう説得し、翌十二日に開かれた組合結成大会に出席し「ここでは組合の必要がない。お互に組合については知らないから二ケ月程勉強してその後に組合を結成するか否かを決めようではないか」と発言したため組合の結成は延期された。翌十三日被申請人は従業員のK、Oに対し組合結成の主唱者ということ及び組合が強くなるとの理由のもとに解雇を申渡したので、従業員は一刻の猶予もできないとし組合を結成すべく同年八月十八日就業時間後に懇談会が開かれることになつていたところ、被申請人及びTは組合結成賛成者の意外に多いのに驚き従業員全員を集め工場閉鎖を宣言し、その後全員解雇の手続をとり予告手当を供託するに至つた。従業員等は同日就業時間後大会を開き参加者十四名全員の賛成によつて組合を結成し、同日全日本自動車産業労働組合東海支部傘下に加入することになつたのである。

被申請人が右のように、七月十一日の組合結成大会において組合結成を二ケ月延期することを要求したこと、その直後組合結成の主唱者とみられるK、Oに対し解雇の申し渡しをしたこと、八月十八日組合結成の直前本件工場閉鎖全員解雇の意思表示をなしたこと及びその後においても組合を脱退すれば解雇を取消す旨言明したこと等を総合すると、被申請人は専ら従業員の労働組合結成を嫌い従業員が労働組合を結成しようとしたことを動機として工場閉鎖を仮装し本件全員解雇の挙に出でたこを推認するに十分である。被申請人は右従業員の解雇は事業継続不能のため事業を廃止した結果であつて止むを得ざる処置であつたと主張するが、この点に関する疏乙第一、二号証はたやすく措信しがたく、その他被申請人提出の全疏明資料によつても事業継続不能とは考え得ないし、却つて被申請人の右解雇の意思表示は前記認定のように従業員が組合を結成しようとしたためになされたものと認められるから被申請人の右主張は採用しない。よつて、被申請人の本件解雇は労働組合法第七条にいわゆる不当労働行為としてその効力を発生するに由ないものといわねばならない。

なお被申請人は申請人組合の当事者適格を争うが、元来労働組合は労働者の団結によりその地位の向上改善を目的とするものであるから、使用者が組合結成を妨げる意図の下になした解雇処分に対し組合がその効力を争いうること当然であり、民事訴訟法第四十六条により組合の名においてこれに関し訴訟を提起し得ること勿論といわねばならぬ。

ところで、右のように解雇が一応無効であると認められるにかかわらず本案判決確定に至るまで被解雇者として扱われることは現在の就職困難の時代において蓄財のない申請人組合員がその生活を脅かされること著大であり、組合員死活の問題として組合員保護の任にある申請人組合にとつて緊急の関心事であるから、前記解雇の効力を停止し申請人組合員を従前通りの地位に復せしめる仮処分を求める必要あること明かであつて、本件仮処分申請は正当と考え得られる。

よつて主文のとおり決定した次第である。

(裁判官 山口正夫 中瀬古信由 黒木美朝)

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