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名古屋地方裁判所 昭和27年(行)3号 判決

原告 吉見覚四郎

被告 愛知県知事

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が別紙目録記載の各土地につき昭和二十七年三月二十九日原告に対してなした訴願人の要求を棄却するとの裁決を取消す。右各土地につき愛知県幡豆郡西尾町長が昭和二十六年十二月八日なした別紙目録記載の各決定価格をそれぞれ当該下段記載の価格に変更する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

(一)  別紙目録記載の各土地は原告の所有にかかるものであるが、昭和二十六年十二月八日愛知県幡豆郡西尾町長は同年度固定資産税の課税標準となるべき価格について同町固定資産評価員の作成した評価調書に基き同目録中決定価格欄記載のとおりそれぞれ決定をした。ところで原告は右町長のなした価格の決定には不服であつたので、昭和二十六年十二月十四日同町固定資産評価審査委員会に対し審査の請求をなしたが、同委員会は原価格の決定を適当と認める旨決定をし、同決定は同二十七年一月六日原告に通告せられた。しかし原告は右審査決定についても前同様不服であつたので更に同年二月四日被告に対し訴願をなしたが、被告は同年三月二十九日原告の訴願を棄却する旨の裁決をなし、その旨同年四月八日原告あてに通知をなした。そして右裁決の理由とするところは、別紙目録記載の各土地が名古屋鉄道西尾線駅横に所在し主要道路に面し地の利を得ており、その大半は興業用地として使用されることも多く、通常は耕作もなさず放置されているものであり、地目はむしろ宅地若しくは原野とすべきであり、家屋が建つていないから家庭菜園に利用するという程度であり、現況利用状況からみて宅地と何等差異はないものというべく、その価値からみて附近住宅と同等の評価をするのは不当でないというのである。

(二)  しかしながら、右各土地は土地台帳上も明らかに畑と記載されているのみならず、原告は昭和二十五、六年には同地上において大豆茄子等の耕作をなし、事実上も畑として利用してきたものであつて、これが現況を宅地として評価をなすことを妥当と考える。従つて西尾町固定資産評価審査委員会の審査決定をそのまま維持した本件裁決は違法として取消さるべきものである。即ち、これらの土地は自作農創設特別措置法の適用をうけない畑であり、かつ附近宅地内に介在する畑ともいうべきものであつて、かかる畑の評価に関しては既に地方財政委員会が各都道府県知事あて発した「土地家屋評価基準」に関する通達によれば、右のような畑については「宅地成り」の期待がある関係上附近宅地の価格に比準し概ね附近宅地の七割程度に相当する金額で評価する旨定められているのである。そして市町村長が固定資産税の課税客体である資産の価格の決定をなす場合には、当該市町村の固定資産評価員のなした評価に基きこれをなすべきであり、かつその評価及び決定にあたつては地方財政委員会及び都道府県知事の指令、通達ないし助言に従わねばならぬことは地方税法に明らかである。故に本件各土地の評価にあたつても、当然西尾町固定資産評価員は前記通達に従い宅地として算出された本件価格の各三割減の評価をなすべき義務があるにもかかわらず、これを怠り、また西尾町長も漫然と右評価に基き別紙目録記載の如く価格の決定をなしたのは評価の方法を誤つた違法の点があり、これらの評価をそのまま妥当として維持した前記審査決定及び本件裁決はすべて一貫して違法であるというべきである。そこで本件裁決庁たる被告のなした裁決の取消を求めると共に、その原処分庁である西尾町長がなした別紙目録記載の決定価格は、すべて前述の理由によりそれぞれその七割に相当する金額を以て妥当な価格であるというべきであるので、右割合に従つて計算した同目録記載の各要求価格に変更さるべきことを求めるため本訴請求に及ぶのである。

次に被告の主張に対し、原告が被告主張の如く本件各土地を偶々サーカスその他の興業に使用したことは認めるが、右は本件各土地の一部に過ぎない上に、その使用期間も農作物の植換時の臨時かつ短期間であつて、あくまで農作物の栽培に支障を来さず、また土地の性質を改変しない限度内の一時的使用であり、その現況及び利用状況はあくまで畑であると述べた(証拠省略)。

被告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、答弁として原告主張にかかる(一)の事実及び同(二)の事実中その主張の如き通達(但し正確に謂えば昭和二十六年四月十八日都道府県知事あて地方財政委員会通達税第八四四号土地及び家屋評価基準)があつたことは認めるがその余の主張事実を否認すると述べ、本件各土地はなるほど台帳上の地目は畑となつているが実際は全然耕作されずに放置されており、昭和二十五年八月以来毎年数回に亘り不定期にサーカス、相撲等の興業用敷地として使用されていたものであつて、現況は畑と認め難いうえに、名古屋鉄道蒲郡線西尾駅横に所在し、交通の便もよく、既に昭和十四年以来耕地整理が行われ宅地としての利用が期待され、その利用価値といい推定売買価値といい全く宅地と異ならない土地である。そして前記地方財政委員会の通達においても、固定資産の評価にあたつては現況主義をとり、地目上は畑であつても右の如く宅地と異ならない場合には宅地と同等に評価することを禁じていないのであつて、原告主張のように自作農創設特別措置法の適用をうけない畑で宅地内に介在する畑につき附近宅地の七割に相当する金額に評価する場合においても、その畑とは現に耕作に供されている畑をいうのであつて現況が畑でなく宅地と殆んど異ならない本件各土地の如きは宅地内に介在する畑とはいい得ないのであつて、当然宅地と同等の評価をなしても何等不当ではないのである。従つてかかる趣旨の下になされた西尾町固定資産評価審査委員会の審査決定並びに被告のなした裁決には何等違法の点はなく、また西尾町長のなした本件各土地の価格の決定も妥当であり変更さるべきものではないと述べた(立証省略)。

三、理  由

原告主張にかかる(一)の事実中被告のなした訴願裁決の理由を除きその余の事実及び原告主張の如き地方財政委員会の通達のあつたことは、いずれも当事者間に争がない。そこで原告所有の別紙目録記載の各土地がはたして畑であるか又は宅地であるかについて考えてみるに、証人新美忠松、同安藤喜一の各供述及び同斎藤登茂雄の証言により昭和二十七年五月頃撮影された写真であることを認め得る乙第一号証及び検証の結果によれば、本件各土地の所在場所は、名古屋鉄道株式会社蒲郡線西尾駅の正面より北方に通ずる幅員二十米の町道に沿うて花の木町三丁目三十四番ないし三十七番の各土地及び住吉町三丁目三十五番の土地約半分が存在し、又右町道に通じかつ右蒲郡線に平行して走る幅員九米の町道に沿うて住吉町三丁目三十一番、三十四番の各土地及び同三十五番の約半分が存在し、これらに隣接する他人所有の各土地と共に略三角地帯を形成する土地の一部をなし、前記西尾駅とも極く近接した距離にあり、隣接土地及び附近一帯は人家はもとより各種商店が軒を並べ、交通の便よく場所的に最も地の利を得た土地であること、昭和二十八年三月本件検証当時においては、右住吉町三丁目三十番の土地には白菜、えんどう、そら豆等が栽培してあり、花の木町三丁目三十四番の土地中道路沿には一部小規模にねぎ、大根、ほうれん草等がまばらに耕作してあるが、その余の本件各土地は全部恰も一筆の土地の如く一面に雑草がそう生しているのみであつて、耕作のための手入等はなされておらず、継続かつ反復して農耕の用に供されているものとは称し難く、多少存する前記耕作物の状況も手入は殆んどなされておらず、恰も家庭菜園程度の外観を呈していること、本件各土地は昭和二十五年夏頃より引きつづきこのような状況であり、また昭和二十五年度には二回、同二十六年度には四回、同二十七年度には二回とそれぞれサーカス、相撲等の諸興業用の仮設建物の敷地として利用されていたこと等が認められる。そして更に証人所猛雄の証言及び原告本人尋問の結果(共に後記措信しない部分を除く)によれば、原告は昭和二十六年二月頃本件各土地について、宅地としての地目変更の上これを他に処分しようとした事実が認められるのであつて、かかる事実と前段認定の各事実並に前示地方財政委員会通達の趣旨を併せ考えてみると、本件各土地に対する昭和二十六年度固定資産税のための評価をなすべき基準日たる昭和二十六年一月一日現在において、本件各土地を現況宅地として附近宅地と同様に評価したことが妥当であつたと断定し得よう。以上の認定に反する証人所猛雄の証言及び原告本人尋問の結果は当裁判所の措信しないところである。なお原告は本件各土地は附近宅地内に介在する畑として概ね附近宅地の三割減の評価をなすべき旨主張するが、右通達によれば、かかる畑は現に耕作の用に供されている畑であつて附近宅地内に介在する場合のことであつて、本件の如き現況宅地である土地について、附近宅地と同様にこれを評価することまで禁じている趣旨ではない。従つて西尾町長のなした前示価格の決定はその評価の方法を誤つた違法の点あるものということはできない。そして更に別紙物件目録の記載によれば、本件土地はその花の木町三丁目の土地全部について坪三千三百六十円、住吉町三丁目三十三番、三十四番について坪三千百二十円、同三十一番、三十二番について坪二千八百八十円と定めそれぞれ評価がなされていることが計数上明らかであるが、成立に争のない甲第六号証の一、証人新美忠雄、同斎藤登茂雄の各証言によれば、本件土地と隣接し第三者の所有にかかる花の木町三丁目三十一番の一及び同三十二番、同三十三番の各土地については、それぞれ坪金三千三百六十円と評価されていることを認めることができ、この事実によれば、本件各土地の評価と隣接各地の評価とは一応均衡を保たれていることが明白である。しかして他に本件評価額が昭和二十六年度固定資産税のための評価として西尾町内の各土地に比し不当に高価であつたとの点については、これを認むべきなんらの証拠がない。

以上のように本件土地につき西尾町長が決定した各評価価格は適法かつ妥当のものであるから、これを変更すべき必要がないと共に、成立に争のない甲四号証の記載によれば、被告の本件裁決も右認定と同一趣旨に基きなされたこと明らかであるから、これを取消す必要は存しないというべきである。

よつて原告の本訴請求はすべて理由のないものであるから、これを失当として棄却することにし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主人のとおり判決する。

(裁判官 山口正夫)

(別紙目録省略)

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