名古屋地方裁判所 昭和29年(ヨ)144号 判決
申請人が実用新案登録第三七四二一〇号により自転車等軽車輛用番号表示札(検証物甲第五号証)につき実用新案権を有することは本件当事者間に争がなく成立に争なき甲第二号証及検証物甲第五号証によれば右実用新案権の範囲は別紙第一号図面に示す如く表示主体(1)に抜窓(2)を設け該部2に着脱片3を抜差自在に装備せしめ番号を該片3と主体1に於ける窓2の上下両縁片とに跨りて記載せしめ片3を抜取することにより該記載番号が不明となる如くし、抜窓2の底板2には前記番号と同一なる控番号を記載せしめる如くしたる自転車等軽車輌用番号表示札の構造なることが認められる。
而して成立に争なき検証物甲第七号証と検証物乙第二号証を比較対照すれば両者は同一構造なることが認められ、成立に争なき乙第二号証の自転車類用番号標示札につき実用新案登録第三九四三四三号の実用新案権を有することが認められる。而して右乙第一号証によれば被申請人の有する実用新案権の範囲は別紙第二号図面に示す如く基板1の前面に重合して固着したる前面板2に横短冊型上折抜孔3及び横短冊型下打板孔4を上下に並列する様穿設し之等の中間に横帯形案内支持隔片5を前方に弓形に隆起する様形成せしめ上打抜孔3の上孔縁及下折抜孔4の下孔縁に夫々前方に隆起する様形断面の下向係合突縁6及之と対称形の上向係合突縁7を形成し、差込片に於ける上片8縁及下片の縁を夫々下向係合突縁6及び上向係合突縁7に係合せしめ上片8及下片9にて案内支持隔片5を挾みて上片8案内支持隔片5下片9に夫々自転車類番号の数字類分離上部10数字類分割中部11数字分割下部12を標示せしめて成る自転車類用番号標示札の構造なることが認められる。
然らば本件仮処分の客体であり、且被申請人に於て現在製造販売していること、本件当事者間に争なき自転車類用番号標示札(検証物甲第七号証、同第二号証)は明らかに申請人の有する登録第三七四二一〇号実用新案権の自転車等軽車輛用番号表示札と其の基本的構造を同じくし、只申請人の考案せる右番号表示札に多少の改良を施したに止まることが認められる。然らば被申請人の有する実用新案権は其の出願の日前の出願に係る申請人所有の実用新案権に牴触すること明らかなるを以て被申請人が右実用新案権を実施するについては実用新案法第六条第三項により申請人の実施許諾を得なけれはならないこと勿論である。然るに被申請人の実施許諾を得たることは被申請人に於て何等主張立証せざるところなるを以て之を認めるに由がない。
然らば申請人が被申請人に対し別紙図面第二号の自転車類用番号標示札の製造、販売、使用、拡布の禁止を請求する権利については疎明ありというべきである。次に申請人請求の仮処分の必要性につき案ずるに、被申請人が右自転事類用番号標示札を製造、販売することにより申請人の製造する自転車等軽車輌用番号標示札の販路が減少し、申請人が損害を被ることは容易に推測されるところであり、申請人より被申請人に対して提起する右番号標示札の製造札の製造販売等禁止の本案判決確定する迄之を放置するに於ては申請人に於て容易に回復し難い損害を被ることも亦容易に認め得るを以て申請人が被申請人に対し右番号標示札の製造、販売、使用、拡布の禁正及被申請人が現在所有する右番号標示札の完成品及未完成品に対する被申請人の占有を解き之を執行吏の保管に移す旨の仮処分を求むることについては其の必要性につき疏明ありと謂うべきである。
〔編註〕 本件の控訴事件は左の判決をもつて完結した。
(昭和二九年(ネ)一五四号・昭和二九年九月一四日名古屋高)
「被控訴人が本件仮処分判決の執行をなさずして民事訴訟法第七百四十九条第二項の法定期間を経過したことは当事者間に争いのないところであるから右仮処分判決は期間の経過によりその執行を許されなくなつたものであることは明らかである。右の如く執行を目的とする仮処分判決に於て執行力を失つた以上此の判決に対し上訴の申立を維持するは上訴の利益を欠くものというべきであるから本件控訴は保全処分申請の実質的要件について判断するまでもなく失当として棄却」する。