名古屋地方裁判所 昭和35年(ワ)184号 判決
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〔判決理由〕原告は原告より大平商事に対する本件不動産の譲渡は営業の譲渡であるところ、これについては原告会社の株主総会の特別決議を経ていないから、右売買契約は無効であると主張するので、この点について検討する。
営業の譲渡(商法二四五条一項)とは、単なる客観的な個々の営業財産や権利の譲渡をいうのではなく、これらに得意先関係、経営の組織等を含めて有機的一体をなす営業的活動の全部又は重要な一部を譲渡するものにして、譲渡後、譲渡人が譲受人に対して競業避止義務を負う(商法二五条)に至る場合をいうと解すべきところ、原告会社が本件不動産において菓子販売、飲食並びに旅館業を経営していたことは当事者間に争いがなく、そして<証拠>を総合すれば、右売買予約の目的となつた物件は本件不動産およびこれに備え付けられた畳、建具、什器、備品等、原告会社の右営業に必要な一切の物であつたことが認められるけれども、前記説示の意味における営業の譲渡であつたとは認められない。換言すれば、大平商事は原告会社が貸金を返済しない場合には、本件不動産およびこれに備え付けられた動産類を売却して貸金債権の回収を図る目的で右売買予約をしたのであつて、原告会社の営業を承継して、自らこれを経営する意図はなかつたこと、従つて原告会社も営業を譲渡する意思で右売買予約を締結したものでないことが認められる。よつて右売買予約は営業譲渡の予約でないこことが明らかである。
なお原告と大平商事との間に営業経営の委任が成立したことを認めるに足る証拠はない。
してみれば原告と大平商事間の右売買には商法第二四五条第一項の株主総会決議を要しないものというべきである。
(松本重美 吉田宏 千葉勝郎)