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名古屋地方裁判所 昭和42年(ワ)2829号 決定 1967年12月12日

原告 有限会社ミクニ電機商会

右代表取締役 井上伯

右訴訟代理人弁護士 大場民男

被告 同栄信用金庫

右代表理事 笠原慶蔵

右訴訟代理人弁護士 山崎保一

右同 伊藤哲郎

主文

本件を東京地方裁判所に移送する。

理由

被告に対する本訴請求の要旨とするところは原告は(分離前の共同被告)新日本教材株式会社に対し金一一二万円並之に対する昭和四二年九月一五日以降完済迄年六分の割合による金員の支払請求権を有するところ、右会社は昭和四二年八月二日に別紙物件目録記載物件につき被告のため同登記目録記載の登記をしたが、当時右会社は倒産状態にあり、前記行為は詐害行為であるから、右登記の抹消登記手続を求めるため本訴請求を求めると云うにある。

被告訴訟代理人は管轄違の主張をなし、原告は本訴において(分離前の共同被告)新日本教材株式会社、文松堂印刷株式会社、松井太に対する約束手形金請求と被告に対する詐害行為取消請求とを共同訴訟として提訴しているが右両訴は共同訴訟の要件を欠きその他当被告に対する本件訴につき名古屋地方裁判所が管轄権を有する理由がないから本件を管轄の東京地方裁判所に移送されたい、と述べ、本案につき請求棄却の判決を求め請求原因事実中登記の事実は認め他は争うと述べた。

思うに本件訴状によると原告は(分離前の共同被告)新日本教材株式会社(外二名)に対する約束手形金請求をなすと共に右手形金債権の対外的効力として右会社より根抵当権設定登記を受けた被告に対し詐害行為取消請求(抹消登記手続請求)をなしていることが明かである。然らば前記会社に対する約束手形金請求権の存在は被告に対する詐害行為取消請求権の成立につき当然の論理的前提をなすものであり、両個の請求権につき斯様な関係の存する場合は民事訴訟法第五九条中段の「訴訟の目的たる権利が同一の事実上及法律上の原因に基く場合」に該当するとして共同訴訟が許されるものと解すべきである。

よって名古屋市に普通裁判籍を有する右手形の裏書人(分離前の共同被告)文松堂印刷株式会社、同松井太並に前記新日本教材株式会社を共同被告として当庁に提起した被告に対する本訴請求は民事訴訟法第二一条により適法と云うべきである。

しかしながら職権を以て考えるに、本件訴訟は東京地方裁判所に移送するのが相当と思われる。即ち分離前の共同被告文松堂印刷株式会社、同松井太に対する第一審手続は欠席判決を以て既に終了しているし、本件手形振出人である文松堂印刷株式会社も実質的に争う態度をみせぬままに既に一審判決を受けている状況である。それ故、当被告に対する詐害行為取消請求についても争訟の実質上の争点は原告の債権の存否の点よりも文松堂印刷株式会社の根抵当権設定行為の詐害性、同社の悪意、被告の善意の諸点にあり、尋問を予想される人証(文松堂印刷株式会社及び被告会社各関係者)も多くは右両社本店所在地たる東京都附近に居住するものと予測される。それ故右の訴訟状態を考慮するならば、原、被告間の本件訴訟を当庁で審理する時には「著き損害及び遅滞」を生ずるおそれがあり之を避けるためには被告本店所在地を管轄する東京地方裁判所へ移送するのが相当と考える。

よって民事訴訟法第三一条を適用して主文の通り決定する。

(裁判官 夏目仲次)

<以下省略>

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