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名古屋地方裁判所 昭和43年(モ甲)275号 判決 1970年5月11日

申請人(異議被申立人) 聯合紙器労働組合

右代表者中央執行委員長 尾上重喜

右訴訟代理人弁護士 小栗孝夫

被申請人(異議申立人) 聯合紙器新労働組合

右代表者中央執行委員長 福田稔

右訴訟代理人弁護士 高橋正蔵

同 辻巻真

同 辻巻淑子

主文

当裁判所が昭和四三年(ヨ)第四六九号妨害禁止等仮処分申請事件につき、昭和四三年五月二〇日なした仮処分決定を認可する。

申請費用は被申請人の負担とする。

事実

申請代理人は、主文同旨の判決を求め、被申請代理人は、本件仮処分決定を取消し、申請人の仮処分申請を却下する旨の判決を求めた。

申請代理人は仮処分申請の理由として、

一、申請人組合は申請外聯合紙器株式会社の従業員に以て昭和三八年八月結成された労働組合であり、被申請人組合は昭和四二年一一月申請人組合を脱退した者によって結成された労働組合である。申請人組合および被申請人組合の名古屋支部は右申請外会社名古屋営業所(工場を含む)の従業員を以て構成されている。

二、申請人組合は、昭和三八年八月以降右申請外会社名古屋営業所から、申請人組合名古屋支部の組合事務所として、別紙目録記載建物の別紙図面赤斜線部分(以下本件組合事務所という)の貸与を受け、爾後現在に至るまでこれを使用、占有している。

三、然るところ、被申請人組合名古屋支部は昭和四三年二月一〇日以降申請人組合に無断で右事務所へ立入り、同月一五日には木製事務机(縦七四・五糎、横一〇〇・六糎、高さ七四糎)一個を、同月一八日には木製事務机(同前)一個、スチールロッカー(縦三八糎、横八八糎、高さ一八〇糎)一個を、いずれも申請人組合に無断で本件組合事務所に搬入し、更に同月二二日には前記建物の北入口西側に「聯合紙器新労働組合名古屋支部組合事務所」と表示した看板を設置した。

右の如き被申請人組合の一連の行為により、申請人組合の本件組合事務所に対する占有が妨害され、申請人組合の組合活動に重大な支障を来たしている。

よって本件仮処分の申請に及んだ。

と述べ、被申請人組合の抗弁事実はすべて否認すると述べた。

被申請代理人は答弁並びに抗弁として、

一、申請人組合名古屋支部が従来本件組合事務所を使用、占有していたこと、被申請人組合が申請人主張の日に、申請人主張の如き木製事務机およびスチールロッカーを本件組合事務所に搬入したことは認める。

二、被申請人組合名古屋支部は昭和四二年一一月一五日申請人組合名古屋支部より分裂したものであるから、分裂後は右二つの支部が本件組合事務所を共同占有するに至ったものである。

仮りに被申請人組合名古屋支部の組合員が申請人組合を脱退したものであるとしても、被申請人組合名古屋支部の役員および一般組合員は、本件組合事務所において執行委員会その他の会合を開催していたものであるから、被申請人組合は本件組合事務所に対し、申請人組合と共同して占有権を有するものである。

三、更に本件組合事務所の使用については、昭和四二年一一月二〇日被申請人組合名古屋支部長船曳宏臣と申請人組合名古屋支部副支部長伊藤清正との間に、両組合が本件組合事務所を共同使用する旨の合意が成立した。なお同年一一月二八日被申請人組合名古屋支部副支部長沢田謙三、書記長松本哮、執行委員小嶋英輔、同岸田吉生、同小林剛の五名と、申請人組合名古屋支部副支部長伊藤清正、書記長吉永信正、執行委員山本春孝、同吉田鈴義、同三輪稔、同安井義信の六名が厚生館集会室に於て会合し、争議中は申請人組合の優先使用を認めるが、争議終了後は従前と同じく本件組合事務所を共同使用する旨の合意が成立した。

と述べた。

(証拠)≪省略≫

理由

一、申請人組合が本件組合事務所を従来占有していたことは当事者間に争いがない。

よって被申請人の共同占有の抗弁について案ずるに、≪証拠省略≫を総合すれば、申請人組合名古屋支部では昭和四二年一一月二日の支部臨時大会において、申請人組合本部の方針に反対する組合員が多数出で、その者らは同年一一月四日申請人組合を脱退することを表明し、同月一五日正式に申請人組合に脱退届を提出し、その頃被申請人組合に加盟し、被申請人組合名古屋支部を結成したことが認められる。してみれば右は組合員の脱退と他の組合に対する加盟という一連の行為であるに止まり、組合の分裂ではないというべきであるから、被申請人組合名古屋支部が申請人組合名古屋支部からら分裂したことを前提とする、本件組合事務所の共同占有の抗弁は採用できない。

≪証拠省略≫を総合すれば、申請人組合を脱退することとなった申請人組合名古屋支部の役員は、昭和四二年一一月四日申請外聯合紙器株式会社に対し、爾後、本件組合事務所、業務その他の事務については、脱退組合員において承継する旨申入れ、同会社の了解を得たこと、および同役員は脱退者を以て新組合を作るため、又被申請人組合に加盟した後はその名古屋支部の役員として、本件組合事務所において組合活動をするためしばしば同所に出入りをしたことが認められるが(≪証拠判断省略≫)、その事実だけで直ちに被申請人組合が本件組合事務所に対し占有権を取得し、申請人組合と右組合事務所を共同占有するに至ったと見るのは困難である。右事実状態は、申請人組合を脱退した役員ないし被申請人組合名古屋支部の役員が、申請人組合の占有下にある本件組合事務所において、組合活動をしていたに過ぎないと解するのが相当である。

二、被申請人は昭和四二年一一月二〇日と同月二八日に、申請人組合と被申請人組合との間に、本件組合事務所を共同使用する旨の合意が成立したと主張するが、≪証拠省略≫によるも、被申請人組合に本件組合事務所に対する使用借権を取得せしめることを内容とする契約が、右当事者間に成立したことを認めるに足らず、そして他にこれを認めるに足る証拠はない。

三、そうすれば被申請人組合は、本件組合事務所を占有し、或は申請人に対抗し得る使用権を有しないものというべきところ、被申請人組合が昭和四三年二月一五日および同月一八日に右事務所内に木製事務机(縦七四・五糎、横一〇〇・六糎、高さ七四糎)二個およびスチールロッカー(縦三八糎、横八八糎、高さ一八〇糎)一個を搬入したことは当事者間に争いのないところであるから、被申請人組合の右所為は、申請人組合の本件組合事務所に対する占有使用を不法に妨害するものといわなければならない。よって申請人が被申請人に対し、右組合事務所に対する占有使用の妨害禁止を求め、且つ右事務机およびロッカーの撤去を求める本件仮処分申請は、被保全権利について疎明があるものというべきである。

四、弁論の全趣旨によれば、申請人組合は狭隘な本件組合事務所へ事務机二個、ロッカー一個を持込まれ、非常に迷惑していることが認められるから、申請人が被申請人に対し、右事務机およびロッカーの撤去を求め、且つ申請人の右組合事務所に対する占有使用の妨害禁止を求めることについては、仮処分の必要性があるものというべきである。

五、よって当裁判所が昭和四三年五月二〇日なした昭和四三年(ヨ)第四六九号仮処分決定はこれを認可すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本重美 裁判官 反町宏 清水正美)

<以下省略>

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