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名古屋地方裁判所 昭和44年(ワ)1623号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>を合わせ考えると、次のような事実が認められる。すなわち、原告は、本件事故現場に向うさい、被告長井運転の加害車に追随していたが、同車が急に速度を落したので停止するものと思い、同車の左側を追い抜こうとして同一速度で、加害車の左後方に出たところ、加害車が左折ウインカーをつけ、左折し如めたので、ブレーキをかけたが間に合わず、接触した。なお、左折直前加害車は道路左端から1.5米の間隔を置いて走行していた。

本件事故については、被告長井に左後方への安全確認を怠つた過失(この点当事者間に争いがない)があること、は勿論であるが、右認定によれば、先行加害者が道路の左側を走行し、急に速度を落したのであるから、これが左折、又は停止することは充分予想されるところであるから、加害車の動向、左折道路の状況など充分考慮にいれて走行すべきところ、加害車と道路左端の間隔が約1.5米あるところから同車を左側から追い抜こうとして、漫然と同一速度で進行したもので、原告にも過失が認められる。

そして、以上認定の双方の過失からすると、本件事故に対する過失の割合は、被告長井が八〇パーセント、原告が二〇パーセントと認定するのが相当である。

二、<証拠>を合わせ考えると、原告の妻佐藤明美は、名古屋市熱田区幡野町所在純喫茶「タチバナ」こと近藤正一方にウエイトレスとして勤務していたが、原告の本件事故により、勤務先を休み、昭和四三年一二月一三日から昭和四四年二月二八日まで、夫である原告の付添い看護をし、その間の得べかりし収入を失つたこと、が認められる。このように近親者が付添のため休業したことによる逸失利益の損害も、被害者自身の損害として請求できるものと考えられるが、この場合の損害は、職業付添人の付添料を標準とし、かつ、その期間は、付添看護を必要と診断された期間に限定するのが相当である。そして成立に争いのない甲一号証によれば、原告の要付添看護期間は昭和四三年一二月一三日から昭和四四年一月二五日(四四日間)までが相当と認められ、また職業付添人の付添料は、少くとも一日一、〇〇〇円を要すると考えられるから、結局、本件看護料としては、一日一、〇〇〇円の割合による四四日分合計四四、〇〇〇円をもつて相当と認める。

三、本件事故による原告の財産的損害は、当事者間に争いのない治療費三八七、一三一円、前記逸失利益一三七、二九〇円、看護料四四、〇〇〇円、合計五六八、四二一円であるところ、前記原告の過失によつて相殺すると、合計四五四、七三六円となる。

この点について、原告は、すでに支払われた強制賠償保険金について過失相殺はできない旨主張するが、保険給付額算定にあたり過失が考慮されなかつたとしても、これを超える金額について、民事上の請求がされた場合、訴訟による損害額算定については、保険給付額算定とは全く無関係に、民事上の規定により過失相殺ができるこというまでもない。したがつて右主張は採用しない。なお、本訴は、一部請求であるが、原告の賠償請求権の有無、数額を判断するには、全損害額を賠償額算出の基礎とし、これについて過失相殺をし、それによつて発生すべき賠償請求権を原告らの請求額の範囲内で認容(強制保険金給付があれば、これを控除)する方法が相当と考えられる。本件損害額の算定についても、右の方法によつた。

四、原告が本件事故による損害賠償請求に関し、原告代理人を委任し、本件訴訟遂行のため要した費用は、本件事故と相当因果関係にたつ損害と認められるところ、その金額については、本件訴訟の結果、その他諸般の事情を考慮し、金三〇、〇〇〇円を相当と認める。

結論 してみると、原告の本訴請求は、被告らに対し、各自金九〇、七三六円と、これに対する本件事故の日である昭和四三年一二月一三日から支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。(加藤義則)

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