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名古屋地方裁判所 昭和44年(行ウ)37号 判決 1976年2月25日

原告 日比野藤雄

被告 木曾川町長

主文

一  被告木曾川町長に対し、同被告のなした公金支出の違法確認を求める原告の訴を却下する。

二  原告の同被告に対するその余の請求を棄却する。

三  被告大塚正男は木曾川町に対し、三、〇二〇、五六三円につき昭和四二年五月一日より、九、七六四、四九七円につき同四三年四月二六日より、一一、四九〇、四七二円につき同四四年四月一日より、一四、七一六、四七九円につき同四五年四月二七日より、いずれも右各金員が木曾川町に納付されるまで年五分の割合による金員を支払え。

四  訴訟費用中、原告と被告木曾川町長との間に生じたものは原告の負担とし、原告と被告大塚正男との間に生じたものは同被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告木曾川町長(以下被告町長という)が、尾西地方特別都市下水路事業管理組合より同組合の受益者に賦課した負担金のうち、別表記載の金額ならびにこれに対する延滞金を徴収しないことは、違法であることを確認する。

2  被告町長が各当該年度において別表記載の金員を支出したことは、違法であることを確認する。

3  主文第三項同旨。

二  請求の趣旨に対する答弁(被告ら)

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は木曾川町の住民であり、被告大塚正男は昭和三八年四月より同四六年四月まで木曾川町長の職にあつたものである。

2(一)  尾西地方特別都市下水路事業管理組合(以下特水組合という)は、尾西・一宮・木曾川都市計画特別都市下水路事業(以下特水事業という)を執行するために尾西市、一宮市、木曾川町の二市一町により設立された特別地方公共団体であつて、その事業は、右二市一町内の一定区域(排水区域)内にある紡績又は染色整理の工場、その他汚水を排出する工場より排出される汚水を処理するため下水道及び汚水処理場を築造することを目的とするものである。

(二)  右特水事業に要する費用は、国庫補助、県費補助、市町分担金及び受益者負担金と定められ、その各金額の割合は、各々総額の四分の一宛である。受益者は、昭和三六年三月二五日建設省令第六号「尾西・一宮・木曾川都市計画特別都市下水路事業受益者負担に関する省令」(以下単に省令という)二条により、前記排水区域内にある紡績又は染色整理の工場、その他の汚水を排出する工場の経営者とされている。

(三)  特水組合の管理者(以下単に管理者という)は事業の執行年度ごとに受益者に対して負担金を賦課する。各受益者の年度ごとの負担金の額は、その属する負担区の当該年度の事業費に四分の一を乗じて得た額を、その受益者に係る工場の計画排水量に比例し配分した額とされ(省令六条一項)、管理者は、負担金を賦課しようとするときは、各受益者に対し、その納付すべき当該年度の負担金の額、納期及び納付の場所を告知しなければならない(同七条)。

(四)  木曾川町は、特水組合との間の「尾西地方特別都市下水路事業受益者負担金の徴収事務委託に関する規約」(以下委託規約という)に基づき、特水組合が省令七条の規定に基づき木曾川町区域内の受益者に告知した負担金の徴収に関する事務の委託を受けているものである(委託規約一条)。そして特水組合の管理者が受益者に対し負担金を賦課し、木曾川町長へ徴収簿を送付したときは、同町長は、管理者が受益者に告知した負担額を受益者から徴収し、指定期限内に管理者に納付すべきものとされている(同二条)。

3  被告町長は前記負担金の徴収事務を執行するに際し、昭和四二年三月三〇日受益者との間で、「管理組合が賦課した昭和四一年度分の負担金のうち二割相当額は特水事業が完成するまで延納を認め、右延納額は右事業完成後五ケ年間に分割納付する。」との覚書を取交し、右各受益者負担金のうち二割についてその徴収を全くしようとせず、昭和四二年度以降も同様(ただし、不徴収額は昭和四二年度についてはその二割、昭和四三、四四年度についてはその各三割相当額)右負担金の一部を徴収しようとしない(以下徴収懈怠という)。

また、被告町長は、右徴収懈怠にかかる二割ないし三割相当額を木曾川町の財政より公金を支出し、特水組合に納付した。その各年度分の徴収懈怠および公金支出金額は別表記載のとおりである。

4  しかしながら、被告町長の前項記載の徴収懈怠および公金支出行為は、次に述べるとおりいずれも違法なものである。

(一) 徴収懈怠の違法について

前記受益者負担金は、法令に基づき負担せしめられた公法上の義務であり、かつ強制徴収の対象となるものであるから、その徴収事務の委託を受けてこれを執行すべき木曾川町長は、受益者負担金の一部延納を許す権限はなく、かつ法的根拠もなく、かつ法的根拠もない。従つて、右延納を許して負担金の一部徴収を怠つていることは違法である。

また、右のとおり、負担金の一部延納は違法で法的根拠を欠くものであるから、所定の納期に納付しない受益者は当然に右負担金につき延滞金を支払わねばならないものである。それにも拘らず、被告町長は右延滞金の徴収もしようとしない。従つて、右延滞金の徴収を怠ることも違法である。

(二) 公金支出の違法について

被告町長が受益者負担金のうち二割ないし三割相当額を特水組合へ納付することは、普通地方公共団体が経費を支出できる場合を定めた地方自治法二三二条一項のいずれにも該当しない。また、右納付は本来受益者が出捐すべき経済的負担を木曾川町の財政より支出したものであつて、その経済的目的および効果としては、受益者の負担を肩替りして軽減すること、即ち受益者に金銭的利得を与えることを意味し、従つてそれは受益者らに対し地方自治法二三二条の二の「補助金」を交付するに等しいものである。しかし、かかる金銭的利得を受益者に与えるにつき、公益上の必要性は全く存在せず、違法な支出である。

なお、被告町長の右公金支出は、木曾川町議会の議決により承認された歳出予算に基づくものであるが、それをもつて違法な右公金支出を合法化するものではない。

5  被告大塚が木曾川町長としてなした前記徴収懈怠および公金支出行為は、同町に対する背任行為であつて、不法行為である。そして右徴収懈怠ないし公金支出により、木曾川町は、税収入等により賄われている貴重な町の公金を少数の受益者の利益のため費消された結果、町から特水組合に対して前記負担金を支出したものと推定される各年度の納付期日の翌日から、別表記載の各金員の完納にいたるまで、年五分の法定利息相当額の損害を蒙つていることは明らかである。従つて、被告大塚は木曾川町に対して右損害の賠償をなすべき義務がある。

6  そこで原告は、昭和四四年五月二〇日木曾川町監査委員に対し、前記徴収懈怠ないし公金支出が違法であるとして、地方自治法二四二条に基づき監査請求をしたところ、右監査委員は、同年七月一九日原告に対し、右監査請求にかかる措置は違法でないとの監査結果の通知をなした。

7  よつて、原告は、地方自治法二四二条の二に基づき被告町長に対し、前記徴収懈怠(延滞金の分も含む)ならびに公金支出の各違法確認を求め、被告大塚に対して、木曾川町に代位して同町へ前記損害金を支払うよう求める。

二  請求原因に対する答弁(被告ら)

1  請求原因126を認める。

2  同3のうち、被告町長が受益者との間で原告主張のような覚書を取交したこと、受益者負担金の二割ないし三割相当額を町の財政より公金を支出したこと、右二割ないし三割相当額が原告主張のとおりの金額であることは認め、その余は否認する。

3  同45は争う。

三  被告らの主張

1  (被告ら)

木曾川町は、町議会の議決を経て、前記受益者負担金につき納期限の延長等を定めた省令八条二項の適用を受益者に受けさせるため、管理組合に対し各年分とも受益者負担金総額の二割ないし三割相当額を同条項の「事業費の財源」として納付することを決定した。そして、当時同町の町長であつた被告大塚は、管理者に対し右負担金の二割ないし三割相当額について省令八条二項の適用方を申入れ、管理者の承諾を受けたものである。

そして、管理者は、受益者に対する各年度の負担金につき、省令八条二項を適用して、町が納付する金額に相当する分に対してはその賦課を延期し、残額についてのみ賦課した。従つて、被告町長は、特水組合との委託規約により、右賦課した金額のみ徴収すべき義務があるにすぎず、右賦課にかかる金額は全額徴収しているから、原告主張の如き徴収懈怠の事実はなく、従つてまた延滞金の徴収を怠つた事実もない。

2  (被告大塚)

本件公金支出の経緯は次のとおりである。被告大塚は、木曾川町長として昭和四〇年度までは、受益者より特水事業費の四分の一宛を徴収して管理者に納付していたが、昭和四一年に至り、受益者より一宮市、尾西市における受益者負担金徴収の実情経済情勢の悪化および将来一般公共下水道化等を理由とする負担金の一部延納措置の陳情があつたので、管渠の余裕量に対する将来の公共下水道化等を考慮し、町議会の承認を得たうえで、同年度以降の分につき右陳情をいれ、右負担金の一部延納につき管理者の承認を受けたのである。そして町議会の承認議決をうけて、町の財政より公金を支出して、管理者に対し受益者負担金の二割ないし三割相当額を一時立替納付したものである。

また木曾川町においては、特水事業用の管渠、汚水処理場等の施設を一般公共下水処理に利用することを計画していたものである。それで、特水事業が昭和四五年に完成するに伴ない現にし尿を特水の管渠に投入することにより町のし尿処理に多大の便益をもたらしており、近い将来には、右施設を一般公共下水処理施設としても利用できる可能性がある。従つて、そのために町の経費を支出することは公益上必要があるものである。

よつて、被告大塚が町長としてなした本件公金支出行為は、地方自治法二三二条の二に定めるところにより適法になされたものである。

四  被告らの主張に対する原告の反論

1  被告らの主張はいずれも争う。

2  被告らは、管理者が省令八条二項を適用して、前記負担金の一部につき賦課の延期をした旨主張するが、負担金は受益者に対し全額賦課されているものである。

即ち、(1)省令八条二項による措置は、負担金の賦課があることを前提としている。また、(2)「賦課の延期」なることは省令八条に掲記する措置の何れにも該当せず、許されないものである。

従つて被告町長は、省令八条一項の「徴収猶予」ないし「納期限の延長」をなしているものであるが、被告町長は、それをなす権限を有しない(委託規約一条)。

3  仮に被告ら主張のような「賦課の延期」なる措置がとられていたとしても、それは法律上許されないもので、無効である。

即ち、右措置は、町が受益者負担金の二割ないし三割相当額を特水組合に納付することが、省令八条二項にいう「組合の負担によらないで、その額に相当する金額が事業費の財源として確保されたとき」に該当することを前提としている。しかし、(1)町が右金額を納付することは右の「財源の確保」に当らないし、また(2)町が右金額を町の財政より支出することは前記のとおり違法な支出であり法律上許されないから、右の「財源の確保」が存在しないこととなり、右条項の適用は許されないものである。

第三証拠関係<省略>

理由

一  原告は木曾川町の住民である資格に基づき、被告町長に対し、同被告のなした公金支出の違法であることの確認を求めるので、先ずこの点について考えるに、およそ住民たる資格に基づき普通地方公共団体の機関または職員に対し財務会計にかかる行為の是正を求める訴は、いわゆる住民訴訟として、地方自治法二四二条の二第一項各号に掲記されたものに限り提訴を許されるべきものである(行政事件訴訟法四二条)ところ、原告の本件訴は右各号の規定のいずれにも該当しないので、法律上許されず不適法として却下すべきものである。

二  被告町長に対するその余の本訴請求

1  特水組合、特水事業の内容、特水事業に要する費用の負担、受益者負担金の徴収手続がいずれも原告主張のとおりであること、また、被告町長は昭和四一年度ないし同四四年度分受益者負担金について原告主張の割合による各金額を徴収せず、これと同額の金員を町財政より支出し、特水組合に納付していることは当事者間に争いない。

いずれも成立に争いのない甲第四、第五号証、第九および第一〇号証の各一ないし三、第一一ないし第一三号証の各一ないし四、第一四号証の各一ないし七、乙第五号証の一ないし四、第六号証の一ないし三、第七、第八号証の各一、二、証人加藤正国の証言により真正に成立したと認める乙第三号証、証人安藤護、同山田一正(第一、二回)、同加藤正国、同今井嘉文の各証言、原告日比野藤雄、被告大塚正男、被告町長丹菊義明、同今井嘉文の各本人尋問の結果を総合すると、

(1)  特水事業の前身としてこれに類似する事業が、昭和三二年ころより尾西市・一宮市を主体として、昭和三四年ころより一宮市・木曾川町を主体として行なわれていたところ、昭和三六年、右二つの事業が合体して、特水事業となつたこと、

(2)  特水組合から受益者負担金徴収事務の委託をうけていた木曾川町は、昭和四一年度第三、四半期まで受益者負担金の全額を徴収することとしていたが、そのころ受益者より町に対して、負担金が増大し負担加重となつてきたので当時尾西市・一宮市においてとられていたように負担金を一部減額して欲しい旨要請があつたこと、当時の木曾川町長被告大塚は、これを容れることとし、組合管理者とも協議し受益者との間で昭和四一年度分の負担金につき、昭和四二年四月三〇日、管理組合が賦課した昭和四一年度分の負担金のうち二割相当額は特水事業が完成するまで延納を認め、右延納額は右事業完成後五ケ年間に分割納付する趣旨の覚書(乙第三号証)を取交す一方、右組合管理者に対し、木曾川町の受益者に賦課される受益者負担金について、その二割相当額は事業費の財源として別途納付するとして、省令八条二項の適用方を依頼したところ、組合管理者は、町が負担金のうち二割相当額分を事業費の財源として組合管理者に納付するものとし、右納付があつた場合は、同年度分につき受益者に対し右二割の額につき、省令八条二項に基づく徴収猶予または納期限の延長を認め、将来受益者より納付がなされた場合にはこれを木曾川町に返還するとの協定が成立し、よつて被告町長は同年度負担金総額の二割相当額について、受益者より徴収しないで、これを町の財政より支出し、管理者に納付し、ひきつづき、昭和四二年度分について同割合の、昭和四三年度分から三割相当の額につき、それぞれ同様の趣旨で同様の措置がとられたこと、

以上の各事実を認めることができ、他に右認定を妨げる証拠はない。

2  右認定事実によれば、木曾川町は受益者負担金の一部について、公金を支出し、これを受益者のため立替納付することにより、受益者の負担を一時的に軽減することを目途に組合ならびに受益者と前記のとりきめをしたものであるということができるところ、省令八条の趣旨ならびに前顕甲第四号証の記載によれば本来負担金の徴収事務の委託をうけた被告町長は右負担金について減免、徴収猶予および納期限の延長をなす権限はなく、右は組合管理者に留保されているものであつて、前記のとおり組合管理者から一部負担金の徴収猶予または納期限の延長を認められた受益者に対しこれを徴収するに由ないものというほかない。従つて、被告町長は、本件負担金のうち右二割ないし三割に相当する金額ならびにこれに対する延滞金を徴収する義務は課せられていないから、原告主張のような徴収懈怠の事実はなく、この点に関する原告の主張は理由がない。

被告町長は、特水組合より受益者に対し省令八条二項を適用して負担金の一部につき「賦課の延期」の措置がなされ、その部分について賦課処分がない旨主張するが、同条項の措置は、負担金自体の賦課の存在を前提としてなされるものであるから、同被告の右主張は相当でない。

なお、原告は、組合管理者が省令八条二項の措置をとつたとしても、その前提となる「財源の確保」がないから、右措置は無効である旨主張する。しかし、財源の確保の有無は組合管理者にかかる事柄であつて、被告町長の徴収義務の存否に何ら消長を来さないものであるから、原告の右主張は理由がない。

三  被告大塚に対する本訴請求

1  被告大塚が当時の木曾川町長として、昭和四一年度ないし同四四年度の前記受益者負担金のうち二割ないし三割相当額(その明細は別表記載のとおり)を、木曾川町の財政より公金を支出して特水組合に納付していること、右各年度支出については、同町の当該年度にかかる一般予算ないし補正予算に計上し、右予算はいずれも町議会の承認議決を経ていることは当事者間に争いがなく、かつ本件公金支出の経緯・性質は先に認定したとおりである。

2  ところで被告大塚は、右公金支出は地方自治法二三二条の二に規定する場合に該当し、法により許容されている旨主張するので、以下検討する。

地方自治法二三二条の二は「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる」と規定している。本件公金支出は、木曾川町が受益者に対しその負担金の一部の延納が認められるようにするため、町にとつて本来支払義務のない受益者負担金の二割ないし三割相当額を支出しているものであるから、右条項に規定する地方公共団体が「補助をすること」に該当すると認められる。

そこで次に、本件公金支出が「その公益上必要がある場合」に該当するか否かについて検討するに、受益企業である繊維産業が当該地方にとつて重要な地位をしめ、その健全な発展が公益に合致するものであること、本件特水事業が公害予防的性格を有し、その事業の遂行完成が木曾川町にとつても有益なものであることは、省令により、木曾川町を含む二市一町が国、県、受益者と共にそれぞれ事業費の四分の一宛を負担すべきこととされていることからも明らかである。しかしながら、木曾川町が右省令で定められている法定分担金の外に受益企業のために公金を支出するためには、それなりの別個の合理的理由即ち公益上の必要がある場合でなければならないことは当然である。この点について、被告大塚は、特水事業用の管渠、汚水処理場等の施設が将来一般公共下水処理に利用することが計画されていたものであり、昭和四五年事業完成後は現に町のし尿処理に多大の便益をもたらしている旨主張する。しかし、本件証拠中右主張事実を認めるにたりる証拠はなく、かえつて証人安藤護、同山田一正(第一回)、同宮川昭一の各証言、原告、被告町長丹菊義明の各本人尋問の結果によれば、その管渠に受益者工場の排水用以外に一般公共下水処理に利用する余裕は殆どなく、汚水処理場にしても現在のままでは一般公共下水処理施設としては使用できないものであることが認められるのである。

また、本件公金支出の措置が採られるようになつたのは受益者負担金が年々高額となつてきたため受益者からの強い要請があつたことによるものであることは先に認定したとおりであり、さらに一宮市においては受益者負担金の金額を、尾西市においては同負担金の三割相当額をそれぞれ両市が負担している実情にあることは格別当事者間に争いがないのであるが、右両市における措置はそれぞれの事情にもとづくものであり(例えば、管渠が一般公共下水処理にも利用されているなど)、直ちに木曾川町における本件公金支出の公益性を認めさせるものではなく、また、受益者負担金が高額となつたことも、そのことのみでは町費支出の合理性を認めさせるにたりないものである。

結局、本件公金支出が木曾川町の「公益上必要がある場合」に該当すると認めるにたりる証拠はなく、右に該当するとの被告大塚の主張は理由がないといわなければならない。

3  してみると、被告大塚が木曾川町長としてなした本件公金支出は何等法令の根拠に基づかずしてなされたものであつて違法といわざるをえない。また、右支出が前記のとおり町議会の議決を経てなされているけれども、右公金支出が実質的に違法である以上、被告大塚は当時の木曾川町長としてこれを阻止すべき権能と職責を有するものであるから、右議決によつて本件支出が適法となるものでない。従つて、被告大塚は右支出が町に損害を与えるものであることを知りまたは知りうべきものであつたと認めることができるので、同被告は故意または過失により木曾川町に対し前記支出額と同額の損害を蒙らせたこととなるところ、原告は同被告に対し右支出後の法定損害金の支払のみを求めているので検討するに、本件各年度受益者負担金納付期の翌日であること格別当事者間に争いない原告請求趣旨第二項記載の日以降それぞれ各年度右違法支出金額に相当する金員が木曾川町に納付されるに至るまで、これらに対する年五分の割合による損害を賠償すべき義務があることは明らかである。

4  よつて、木曾川町の住民である原告が地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき木曾川町に代位して被告大塚に対し右損害の賠償を求める請求は理由がある。

四  以上の理由により、原告の本訴請求のうち、被告町長に対し公金支出の違法確認を求める訴は不適法として却下し、同被告に対して徴収懈怠の違法確認を求める本訴請求は理由がなく失当として棄却し、被告大塚に対する本訴請求は理由があるので正当として認容することとし、訴訟費用についてはいずれも民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山田義光 窪田季夫 小熊桂)

別表<省略>

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