大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和45年(行ウ)29号 判決 1970年10月30日

名古屋市中川区小栗通二丁目三番地

原告

西川大八郎

右訴訟代理人弁護士

小久保義憲

名古屋市中川区西古渡町六丁目八番地

被告

中川税務署長

宮尾典

右指定代理人

野々村昭二

松井茂夫

内山正信

須山米一

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、被告が原告に対してなした昭和四二年分贈与税額金二一万四〇〇〇円、無申告加算税額金二万一四〇〇円とする贈与税および無申告加算税の各賦課決定処分を取消す、訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、請求の原因として

一、原告は昭和三一年二月富田稔より同人が先代より相続すべき名古屋市中川区小栗通二丁目九番の二宅地四五坪(一坪は三・三〇五七平方米)を代金金三六万七、六〇〇円で買受けたところ相続人間に紛争があり、その所有権移転登記手続が遅延し漸く昭和四二年二月八日に至り富田稔より原告所有名義にその所有権移転登記手続が完了した。

二、ところが被告は右宅地は原告の父西川清が富田稔より買受けて原告に贈与したものとして原告に対して昭和四二年分贈与税額金二一万四、〇〇〇円、無申告加算税額金二万一、四〇〇円とする贈与税および無申告加算税の各賦加決定処分をなした。しかし原告は父清より右宅地を贈与せられたことはないから右各決定処分に対する不服の申立をなし結局昭和四四年一二月審査請求をなしたところ名古屋国税局長太田満男は昭和四五年三月二〇日付にて右審査請求を棄却した。

三、よつて被告の右各賦課決定処分は違法であるからその取消を求める。

と述べ、被告の主張事実一、二、三の各点と右土地の贈与時という時期における時価が金一五三万円である点を認めた。

被告は主文と同旨の判決を求め、請求の原因たる事実中一の点を争い、ただ原告主張の如く所有権移転登記手続のなされた点を認め、二の点を認め、ただ贈与でない。との点を争い、三の点を争う。と答弁し、被告の主張として

一、原告は昭和四二年二月八日富田稔から同月七日名古屋市中川区小栗通二丁目九番の二宅地一四八・七六平方米(四五坪)を買受けたことを原因としてその所有権移転登記手続をなしたところ被告中川税務署所はこれを調査して右は原告の父西川清が昭和三一年二月頃坪(三・三〇平方米)当り金八、〇〇〇円、総額金三六万七、六〇〇円で富田稔から売買により取得したものを、昭和四二年二月八日中間登記を省略して直接原告名義に所有権移転登記手続をなした(富田稔の相続登記手続未了のため右の移転登記手続も遅延した。)もので即ち原告が対価を支払わないで昭和四二年中に原告の父西川清から右土地を取得したもの、即ち贈与を受けたものと認められるから贈与に該当し、かつ右土地の贈与時の時価は金一五三万円と認められるから原告は相続税法(昭和二五年三月三一日法律第七三号)第二八条の規定により昭和四三年三月一五日までに贈与税の申告書を提出すべき義務があるのに右申告をしなかつたので被告は国税通則法(昭和三七年法律第六六号)第二五条の規定により原告の昭和四二年分の贈与税の課税標準および税額を別紙目録のとおり決定するとともに同法第六六条の規定により右決定税額に一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額に相当する無申告加算税の賦課決定をし、昭和四四年七月二三日付でこれを原告に通知した。

二、原告は右の処分等を不服としてその取消を求める異議申立書を昭和四四年八月二三日被告に提出し、被告はこれを再調査した結果右の申立を理由のないものと認めてこれを棄却する旨の決定をなし昭和四四年一一月一五日付でこれを原告に通知した。

三、原告は右の棄却処分を不服とし昭和四四年一二月一三日名古屋国税局長に原処分の取消を求める審査請求を提出し、右局長はこれを審査してその請求の理由のないことを認めて右審査請求を棄却する旨の裁決をなし昭和四五年三月二日付でその旨を原告に通知した。

四、よつて被告の本件各賦課決定処分には何んらの違法もない。

と述べた。

証拠として、原告は甲第一号証を提出し、証人西川清の証言と原告本人尋問の結果を各援用し、乙号各証(乙第二号証は原本の存在も)の成立を認め、被告は乙第一ないし第四号証を提出し、証人水野喜幸の証言を援用し、甲第一号証の成立を認めた。

理由

一、請求の原因たる事実一のうち所有権移転登記手続のなされた点同二の点(但し贈与でないとの点を除く。)は当事者間に争いがなく被告の主張事実一、二、三の各点と被告の贈与時という時期における本件土地の時価が金一五三万円である点も当事者間に争がない。而して成立に争いのない乙号各証、甲第一号証、と証人水野喜幸の証言によると被告主張の贈与の事実を容易に認定することができ、右認定に反する証人西川清の証言と原告本人尋問の結果における各供述部分は被告の右各証拠に対比して措信できず他に右認定を左右するに足る証拠はない。

右の認定事実によると被告が原告に対し国税通則法第二五条および第六六条により別紙目録記載のとおり本件贈与税および無申告加算税の賦課決定処分をなしたことは適法であり、他に右各賦課決定処分を違法とすべき理由はないので原告の請求は理由のないことが明らかであるからこれを棄却し、民事訴訟法第八九条により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小沢三朗 裁判官 日高乙彦 裁判官 太田雅利)

目録

昭和四二年分贈与税等課税処分内訳

(1)その年に取得した財産の価額 一、五三〇、〇〇〇円

(2)基礎控除額 四〇〇、〇〇〇円

(3)控除後の課税価額((1)-(2)) 一、一三〇、〇〇〇円

(4)(3)に対する贈与税額 二一四、〇〇〇円

(5)無申告加算税賦課決定額((4)に対する10/100) 二一、四〇〇円

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例