名古屋地方裁判所 昭和47年(わ)161号 判決 1972年5月20日
本籍
愛知県稲沢市矢合町二六六四番地
住居
同右
僧職
橋本竹治
明治四一年二月九日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官加藤元章出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年および罰金九〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罰となるべき事実)
被告人は愛知県稲沢市矢合町二六六四番地の自宅において、一一面観世音(通称矢合観音)を祭祀し、さい銭を得るほか信者に対し祈とう、祭儀等を行ない報酬を得ているものであるが、所得税を免れようと企て、
第一、昭和四三年分の総所得金額は三、三二六万三、四五六円であり、これに対する所得税額は一、七二五万八、六〇〇円であるのに、虚偽帳簿を作成して収入を除外し、架空名義の定期預金を設定するなどして所得の一部を秘匿したうえ、同四四年三月一五日、一宮市明治通二丁目四番地所在一宮税務署において、同署長に対し、総所得金額三五六万八、八五九円、所得税額七三万五、七〇〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により正規所得税額と申告所得税額との差額一、六五二、九〇〇円をほ脱し
第二、同四四年分の総所得金額は三、七五八万七、九三五円、これに対する所得税額は、一、九九一万五、五〇〇円であるのに、前同様の不正な方法により、所得の一部を秘匿したうえ、同四五年三月一六日、前記一宮税務署において、同署長に対し、総所得金額四六七万七、一六二円、所得税額一〇八万三、七〇〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により正規所得税額と申告所得税額との差額一、八八三万一、八〇〇円をほ脱し、
第三、同四五年分の総所得金額は四、一〇七万三、六〇八円、これに対する所得税額は二、一三九万一、八〇〇円であるのに、前同様の不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、同四六年三月一五日、前記一宮税務署において、同署長に対し、総所得金額五二〇万三、一四八円、所得税額一〇三万九、〇〇〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により正規所得税額と申告所得税額との差額二、〇三五万二、八〇〇円をほ脱したものである。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察事務官に対する供述調書および大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、被告人作成の上申書二通
一、上原彦男作成の証明書三通(過少申告の事実につき)
一、鈴木克己、樋田和美作成の各回答書(組税公課につき)
一、才雁栄進、永井八千恵、荒木忠義作成の各回答書(水道光熱費につき)
一、野口輝幸作成の回答書(旅費通信費につき)
一、衣斐主一、井村喜六作成の各回答書(交際接待費につき)
一、滝川清、花木久栄、倉見弘、柴田清一、大崎猶一、大平邦博、太田清、川西実、鵜飼金光作成の各回答書(修繕費につき)
一、松原広、後藤賢市、林峻郎、井上源逸、橋本光美、祖父江光作成の各回答書(消耗品費につき)
一、大崎芳雄、柴田昭平、黒田昇、中谷孝作成の各回答書(雑費について)
一、塚本みわ作成の申立書(給料及び手当について)
一、二川百合子、湯浅宗秋作成の各回答書
一、八木孝雄、日比金二郎、重沢広三作成の各回答書
一、国友銹二作成の各回答書
一、曾我孝、水野正直作成の各回答書
一、山形かね作成の申立書
昭和四三年度金銭出納帳一冊(昭和四七年押第八六号の一)昭和四一年一月一日より同四六年三月一五日までの金銭出納帳一冊(同号の二)、さい銭ノート一冊(同号の三)、重要メモ一綴(同号の四)、昭和四四年度金銭出納帳-表紙のないもの一冊(同号の五)、同年度金銭出納帳-表紙あり一冊(同号の六)、金銭出納帳-バインダー式のもの一冊(同号の七)、昭和四五年度金銭出納帳一冊(同号の八)
(法令の適用)
一、判示各所為につき所得税法二三八条一項
一、(伴合加重)刑法四五条前段、懲役刑四七条一〇条(重い判示第三の罪の刑に加重)罰金刑四八条二項
一、(労役場の留置)同法一八条
一、(懲役刑の執行猶予)同法二五条一項
(裁判官 水谷富茂人)
右は謄本である
同日於同庁裁判所書記官 丸井貞典