名古屋地方裁判所 昭和47年(わ)257号 判決 1973年8月09日
本籍
愛知県豊田市御幸本町一丁目九七番地
住居
同県同市同町三丁目一九八番地
会社役員
岡田勝
昭和二年一月二日生
本籍
愛知県豊田市鴛鴫町東屋敷九八番地
住居
同県同市水源町三丁目二四番地五
銀行員
藪押清兵衛
昭和四年一〇月一日生
被告人岡田勝に対する所得税法違反、被告人藪押清兵衛に対する所得税法違反幇助被告事件について、当裁判所は検察官春日俊二出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人岡田勝を懲役八月および罰金五〇〇万円に、
被告人藪押清兵衛を懲役四月に
処する。
被告人岡田において右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
被告人両名に対しこの裁判確定の日から二年間右各懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人岡田勝は、愛知県豊田市御幸本町一丁目九七番地ほか二ヶ所において「トヨダホール」ほか二店のパチンコ遊技場を経営していたもの、被告人藪押清兵衛は、昭和四二年四月一日から昭和四五年六月一五日にいたるまでの間、同市喜多町四丁目二〇番地所在名古屋相互銀行豊田支店の支店長代理をしていたものであるが
第一 被告人岡田勝は所得税を免れようと企て、
1. 昭和四三年分の実際の総所得金額は、四、一六〇万二、三三一円であり、これに対する所得税額は二、二六五万三、〇〇〇円であるのに、売上収入の一部を架空名義の預金を設定するなどして所得の一部を秘匿したうえ、昭和四四年三月一五日、岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在岡崎税務署において、同署長に対し総所得金額が一、三四二万一、二〇〇円、所得税額が五五四万二、七〇〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もって右不正の行為により正規の所得税額と申告所得税額との差額一、七一一万三〇〇円をほ脱し
2. 昭和四四年分の実際の総所得金額は、三、一三一万四、〇三〇円、これに対する所得税額が一、五七一万六、六〇〇円であるのに、前同様の方法により、所得の一部を秘匿したうえ同四五年三月一六日、前記同轄税務署において、同署長に対し、総所得金額が一、五一七万九、六四八円で、これに対する所得税額が六二七万四、二〇〇円である旨の過少の所得税確定申告書を提出し、もって、右不正の行為により正規の所得税額と申告所得税額との差額九四四万二、四〇〇円をほ脱し
第二 被告人藪押清兵衛は、前記岡田勝から同人の所得税をほ脱する手段として架空名義の預金などを設定してその所得を秘匿するように依頼を受けるやこれに応じ
1. 昭和四三年一月二九日から同年一一月一九日までの間前記豊田支店に所いて、右岡田勝のために架空名義の定期預金などを設定したうえ、そのころ右預金証書および印章を同市水源町三丁目二四番地五の自宅に持ち帰って隠匿するなどして右岡田勝の前記第一の1の所得税ほ脱の犯行を容易ならしめてこれを幇助し
2. 昭和四四年一月一六日から同年一二月二二日までの間、前記豊田支店において前同様に右岡田勝のために架空名義の定期預金などを設定したうえ、そのころ右預金証書および印章を前記自宅に持ち帰って隠匿するなどして右岡田勝の前記第一の2の所得税ほ脱の犯行を容易ならしめてこれを幇助し
たものである。
(証拠の類目)
一、被告人岡田勝の当公判廷における供述
一、被告人藪押清兵衛の各検察官に対する供述調書
一、内田紀作成の各証明書
一、加藤剛志作成の各証明書
一、梅村健吾作成の各証明書
一、被告人籔押清兵衛作成の上申書(44.1.16.付45.5.23.付二通)
一、榊原栄一、成瀬義郎作成の各調査報告書
一、桜井末松、大村平八郎、天野和茂作成の各証明書
一、岩田賢郎、岩平清、宮内正俊、水野 作成の各確認書
一、鎌田賢郎作成の印鑑確認書
一、長尾三男作成の証明書
一、川口一秀作成の証明書
一、鈴本照雄、深津一の各大蔵事務官に対する質問てん末書
一、古川征夫、岩田安右エ門、奥村勲の各上申書
一、榊原栄一作成の各報告書
一、内田博、水野裕 、市原茂、西原豊成、當山昭二、中機図秋作成の各回答書
一、中根昭秋、中西孝一作成の各上申書
一、東海銀行庶務部株式課、田中雄、三井生命岡崎支社岸名悟、高岡農業協同組合、住友生命保険愛知東支社第一生命岡崎支社、加藤七郎、愛知県豊田事務所長、東洋信託銀行名古屋支店、三井銀行株式課、豊田信用金庫、山川 、岡崎税務署長、佐藤保、白石祐裕、高木一郎、 多電、梅村治、深津兵吉、山口亮治、須藤太郎、中村一夫、 沢金美作成の各回答書
一、 村原則作成の調査報告書
一、成瀬郎作成の各報告書
一、宮和男、品田勇、畝和男、坂田文夫、杉山宏史、本沢脩作成の各上申書
一、片岡奈良機、高木一郎、本田芳夫、竹内佐一郎、川原久雄、岡田みつ子、 日仁、深見寅朗の各大蔵事務官に対する質問てん末書
一、被告人籔押清兵衛の大蔵事務官に対する質問てん末書(45.5.16.付)
一、長島春男、川北和弘、山田洋治、前田悠紀吉、伊藤忠夫、富川浩美、中旗元幸、近藤文次、坂井寛、加藤剛志の各検察官に対する供述調書
一、検察事務官広田鍛治作成の調査報告書
一、被告人岡田勝作成の各上申書(45.12.25.付((三通))45.12.20.付、47.111.付)
一、被告人岡田勝の各大蔵事務官に対する質問てん末書(45.9.5付45.5.21.付45.11.16.付45.5.18.付((二通))45.12.22.付、45.12.18.付45.5.28付)
一、証人岡田みつ子の当公判廷における供述(被告人籔押についてのみ)
一、押収してある印鑑一二個(昭和四八年押第二四号の一の一ないし一二)
一、同印鑑一三個(同押号の二の一ないし一三)
一、同印鑑一一個(同押号の三の一ないし一一)
一、同請求書等一綴(同押号の四)
一、同書通預金 一冊(同押号の五)
一、同メモ片一枚(同押号の六)
一、同印鑑九個(同押号の七の一ないし九)
一、同定期預金利息計算書綴一綴(同押号の八)
一、同登記済証書領収書一綴(同押号の九)
一、同該書伝票一綴(同押号の一〇)
一、同源泉徴収書綴(一綴)(同押号の一一)
一、同請求明細書等一綴(同押号の一二)
一、同納品綴等一綴(同押号の一三)
一、同当座約定表一綴(同押号の一四)
一、同信用証五通一綴(同押号の一五)
一、同ミリオンノート一冊(同押号の一六)
一、同ノートメモ一綴(同押号の一七)
一、同借用証二二通等一綴(同押号の一八)
一、同約束手形等綴一綴(同押号の一九)
一、中銀メモ一冊(同押号の二〇)
一、同調勘定元帳一綴(同押号の二一)
一、同 伝票一綴(同押号の二二)
一、同調勘定元帳一綴(同押号の二三)
一、同 種定元帳一綴(同押号の二四)
一、同当座小切手控綴一綴(同押号の二五)
一、被告人岡田勝の各検察官に対する供述調書、検察事務官に対する供述調書(被告人岡田についてのみ)
(ただし47.2.8.付検察官に対する供述調書添付 のみは被告人両名につき)
一、岡田みつ子の各検察官に対する供述調書(被告人岡田についてのみ)
(法令の適用)
被告人岡田勝に対し
一、指示第一の各事実につき 各所得税法二三八条一項
一、(刑量の選択) 所定刑中各徴役刑、罰金刑を併料
一、(併合罪) 刑法四五条前後、懲役刑につき同法四七条、一〇条(犯行の重い第一の1の罪の刑に加量)罰金刑につき同法四八条二項
一、(労役場の留廃) 同法一八条
一、(刑の執行猶予) 同法二五条一項
被告人籔押清兵衛に対し
一、判示第二の各事実につき 各所得税法二三八条一項、刑法六二条一項
一、(刑種の選択) 所定刑中各懲役刑を選択
一、(法律上の減軽) 刑法六三条、六八条三号
一、(併合加重) 同法四五条前段、四七条、一〇条(犯情の重い第二の1の罪の刑に加重)
一、(刑の執行猶予) 同法二五条一項
(裁判官 辻下文雄)