名古屋地方裁判所 昭和47年(ワ)2858号 判決 1975年7月18日
原告
成瀬ミシン製作所こと成瀬光一
ほか二名
被告
佐藤建設こと佐藤功
ほか二名
主文
被告佐藤功は、原告成瀬光一に対し金六四一万一、八五六円、原告成瀬まゆみに対し金二万二、〇三〇円、原告成瀬しずかに対し金四、三三〇円および右各金員に対する昭和四七年一二月二六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
原告らの被告佐藤功に対するその余の請求は棄却する。
原告らの被告牛崎俊広、同寺本運送有限会社に対する請求はいずれも棄却する。
訴訟費用中、原告らと被告佐藤功との間に生じたものはこれを一〇分し、その三を原告らの、その七を被告佐藤功の負担とし、原告らと被告牛崎俊広、同寺本運送有限会社との間に生じたものは、原告らの負担とする。
この判決は原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
被告らは連帯して、原告成瀬光一に対し八一五万六、四八八円、原告成瀬まゆみに対し五万二、八三〇円、原告成瀬しずかに対し五万〇、三三〇円および右各金員に対する昭和四七年一〇月二日より完済まで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告らの負担とする。
仮執行の宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
第二請求原因
一 原告成瀬光一は、愛知県豊明市阿野町字上畑一〇五番地所在木造亜鉛メツキ鋼板葺二階建工場兼居宅(延床面積八〇平方メートル、以下、本件二階建という。)およびこれに隣接する木造平家建事務所(以下、本件平家建という。)を所有し、本件二階建の階下を工場として、階上を居宅として使用して、ミシン組立加工業を営んでいた。
二 事故の発生
1 日時 昭和四七年一〇月二日午後一〇時五分頃
2 場所 愛知県豊明市阿野町字上畑一〇四番地先国道一号線
3 加害車(甲車) 訴外出田文雄運転の普通貨物自動車(被告佐藤所有)
4 加害車(乙車) 被告牛崎俊広運転の大型貨物自動車
5 態様 右場所において、西進中の甲車と東進中の乙車が正面衝突し、乙車がその衝突のシヨツクによつて本件建物内に突入した。
三 責任原因
1 被告佐藤は、訴外出田を雇用し、同訴外人が業務の執行として甲車を運転中、酒気帯びのため前方注視が十分でなかつた過失により、本件事故を発生させた(民法七一五条一項)。
2 被告寺本運送は、被告牛崎を雇用し、同被告が業務の執行として乙車を運転中、後記3の過失により、本件事故を発生させた(民法七一五条一項)。
3 被告牛崎は、制限速度を超過し、前方注視を怠つていた過失により、本件事故を発生させた(民法七〇九条)。
四 原告光一の損害
原告光一は本件二階建が全壊した外に左記のとおり損害を蒙つた。
(一) 本件二階建が倒壊したため応急的に仮設の工場を建築したが、これの工事代金は五五万一、六三九円である。
(二) ブロツク塀が損壊し、これの修理工事代金は四万八、五〇〇円である。
(三) 本件平家建が損壊し、これの修理工事代金は五万円である。
(四) 家財道具につき、別表(一)記載の物件が損壊し、四六万七、五〇〇円の損害を蒙つた。
(五) 衣類等が汚染し、これのクリーニング代として二万四、九〇〇円の損害を蒙つた。
(六) 原告光一は本件建物を工場としてミシンの組立加工を営んでいたものであるが、別表(二)記載の機械・什器・備品を損壊し、合計三四万九、〇〇〇円の損害を蒙つた。
(七) 別表(三)記載のミシン組立加工に要する部品および半成品を損壊し、合計六二万四、六一八円の損害を蒙つた。
(八) 訴外吉田ミシン精機株式会社、訴外エレナ工業株式会社、訴外東海工業ミシン株式会社、訴外スクラムミシン株式会社から各々預り保管中の部品につき、別表(四)乃至(七)記載のとおり損壊し、合計三七二万六、九三九円の損害を蒙つた。
(九) 倒壊家屋の除去に要した費用として七万七、〇七二円の損害を蒙つた。
(一〇) 原告はミシン加工業として事故前一ケ月平均約六〇万円の売上金があつたのであるが、本件事故のため昭和四七年一〇月三日から同月九日まで操業を停止せざるを得なくなり、この間に取得できたであろう売上金は一二万円である。
(一一) 原告光一は昭和四七年一〇月初め仮設の工場約八坪をとりあえず建築し、同月一〇日から業務を再開したが、工場が狭く機械設備も損壊したため十分でなく従前に比較し七〇パーセントの操業であつて、今後少なくとも一ケ年はこのような状態が継続するものと思われ、操業短縮によつて蒙る損害は二〇五万六、三二〇円である。
7,200,000×0.3×0.952=2,056,320
(一二) 本件二階建の二階部分を住居として、子供の居室として使用していたものであるが、本件事故のため新しく家を新築するまで一ケ年間外にアパートを借受けざるを得ず、これの賃料相当の損害は六万円である。
本件二階建の損壊自体によつて蒙つた損害については右損害賠償請求債権を訴外愛知県農業共済組合連合会に譲渡した。
よつて原告成瀬光一の被告等に対する損害賠償請求額合計は八一五万六、四八八円である。
五 原告まゆみ、同しずかの各損害
原告まゆみ、同しずかは本件事故当時本件二階建の二階にいたのであるが、同事故により二階から落下し、受傷し、外傷性シヨツクにより治療を受け、各々約五日間療養した。
(一) 治療費、薬代・雑費の合計は原告まゆみ二、八三〇円、同しずか三三〇円である。
(二) 右原告らの本件事故により蒙つた精神的損害に対する慰藉料は各々五万円が相当である。
六 よつて原告光一は八一五万六、四八八円、原告まゆみは五万二、八三〇円、原告しずかは五万〇、三三〇円および右各金員に対する昭和四七年一〇月二日から完済まで年五分の割合による金員の支払を求める。
第三請求原因に対する被告らの答弁
一 被告佐藤
一のうち、原告光一がミシン組立加工業を営んでいたことは認めるがその余は不知。
二は認める。
三のうち、被告佐藤と訴外出田との使用関係は否認する。即ち、被告佐藤は昭和四七年九月二日より同月三〇日まで大工である訴外出田を大工仕事のため臨時的に雇つたもので、その関係は実質的な指揮監督関係のない請負であり、しかも、自動車の運転をさせたことはないばかりか、同年一〇月一日以降においては右使用関係はなくなつていたのにも拘らず、訴外出田は甲車を無断で盗み出して本件事故を惹起したものである。その他の点は不知。
四について、仮に被告佐藤に本件事故の損害賠償責任があるとしても、その損害額は次のとおりである。
(一) 家財道具(請求原因四の(四)) 合計二二万円
(1) 桐ダンス・長持・座敷テーブル・衣類入ガンガン 六、八〇〇円
原告成瀬光一の本人尋問の結果によれば、右物品については購入時より約一三年たつていることが認められるので、残存価値はその一割とすべきである。
(2) 二段ベツト・机・本箱 二万四、八〇〇円
同尋問の結果によれば、右物品については購入時より約一年たつていることが認められるので残存価値は八割とすべきである。
(3) ビニール洋服入れ 二、八〇〇円
同尋問の結果によれば、右物品については購入から約一年以内であることが認められるので残存価値は八割とすべきである。
(4) 雛人形 三、〇〇〇円
同尋問の結果によれば、右物品については購入時より約一〇年たつていることが認められるので、残存価値は一割とすべきである。
(5) カラーテレビ・電気スタンド・扇風機 一三万三、八〇〇円
同尋問の結果によれば、右物品については購入時より二、三年たつていることが認められるので残存価値は六割とすべきである。
(6) オルガン 二万円
同尋問の結果によれば、右物品については購入時より四年たつていることが認められるので、残存価値は四割とすべきである。
(7) カーテン・座ぶとん入・洋風タンス 二万八、八〇〇円
購入時より何年たつているのか判明しないが右物品の内前二つについては四割、他の一つについては、五割の残存価値とすべきである。
以上いずれの物品についても購入時の価格は認める。
(二) 衣類等汚染クリーニング代(同四の(五)) 〇円
甲第二一号証の領収証によると、その日付は昭和四七年一一月二〇日であり、本件事故により汚染した衣類等のクリーニング代と考えることは、事故発生が同年一〇月二日であることからみて、措信し難い。
(三) ミシン組立加工のための機械・什器・備品(同四の(六)) 一八万三、七〇〇円
(1) 大型ストーブ・クーラー 一五万六、〇〇〇円
原告光一の本人尋問の結果によれば、右物品については購入時より二年たつていることが認められるので、残存価値は六割とすべきである。
(2) モーター一馬力、〇・五馬力、〇・二五馬力 三、九〇〇円
同尋問の結果によれば、右物品のうち前二つは購入時より一二、三年たつており、他の一つはそれより少し後のものであることが認められるので、いずれも残存価値は一割とすべきである。
(3) 螢光灯 四、八〇〇円
同尋問の結果によれば、右物品は一〇年位前のものから最近のものまであることが認められるので、残存価値は四割とすべきである。
(4) シヤフト・工具・ビログツプ 一万九、〇〇〇円
右物品について購入時より何年たつているのか判明しないが、いずれも残存価値五割とすべきである。
以上いずれの物品についても、購入時の価格は認める。
(四) ミシン組立加工に要する部品および半製品並びに吉田ミシン精機株式会社外三社から預り保管中であつた部品(同四の(七)、(八)) 〇円
原告光一は、本人尋問の際、一〇〇台分位の量の鉄製品であり、部品は拾い集め水洗いしたがさびついてしまい使いものにならないと陳述するが、甲第一一号証の写真一九ないし二三によれば、部品は一〇〇台分で数が多いこともあり、ダンボール箱の中にさらに小さな箱に分納されて保管されていたとみられること、鉄製品でかつミシン機械の部品であることから油膜におおわれていたことが認められ、単に水洗いしただけでさびることは一般に考えられない。もしさびたとしたら、その後の原告光一の保管上の不手際によるものと考えられる。よつていずれもその損害は生じなかつたものである。
(五) 休業損害(同四の(一〇)) 八万七、五〇三円
甲第四号証ノ一により、売上金額から経費を差し引いた金額は、三一五万一四一円であり、これは九ケ月分であるから、一ケ月の平均は、金三五万一五円、一ケ月四週と考えて、一週八万七、五〇三円である。よつて昭和四七年一〇月三日から同月九日までの一週間分の休業損害は八万七、五〇三円である。
(六) 操業短縮による損害(同四の(一一)) 四二万一八円
六で認めたように一ケ月平均三五万一五円が純売上額であり、原告光一の本人尋問の結果によると、仮設工場では従前の七、八割程度の状態が三月頃まで続いたことが認められる。したがつて短縮期間六ケ月、短縮二割とすべきである。
35万15円×6×0.2=42万18円
(七) 住居部分損壊のためのアパート代(同四の(一二)) 三万円
甲第一九号証によれば、一ケ月五、〇〇〇円であることが認められる。七で認めたように仮設工場での操業は三月頃まで続いたのであり、新家屋の構造(甲第六号証ノ一図面)からいつて同月頃までには新居に移り得たものと考える。
5,000円×6=3万円
その余は不知。
五について、慰藉料は原告まゆみについて二万五、〇〇〇円、同しずかについて五、〇〇〇円とすべきである。その余は不知。
二 被告寺本運送、同牛崎
一は不知。
二は認める。
三のうち、被告寺本運送と被告牛崎との使用関係は認める。被告牛崎の過失の点は否認する、即ち、本件事故は訴外出田が無免許のうえ、酒に酔つてジグザグ運転をし、センターラインを超えて対向車線内に侵入したため、被告牛崎運転の自動車と衝突したことから生じたものであつて、同事故に関しては被告牛崎に過失はない。その余の点は不知。
四、五は不知。
第四証拠〔略〕
理由
一 請求原因一の事実は、〔証拠略〕により、認められる(なお、原告光一がミシン組立加工業を営んでいたことは、同原告と被告佐藤との間では争いがない。)。
二 本件事故の発生
請求原因二の事実は当事者間に争いがない。
三 責任原因
1 被告佐藤
(一) 〔証拠略〕によれば、被告佐藤は佐藤建設との通称で建築業を営み、本件事故当時、土工、大工数名を雇用していたこと、訴外出田は昭和四七年八月下旬ないし同年九月上旬ころ、被告佐藤に雇われ、同被告の指示に従つて、大工として稼働し、同被告方の従業員宿泊施設に居住していたもので、以来本件事故当時も右の関係は存続していたこと、被告佐藤は当時ブルトーザー、普通貨物自動車(甲車を含む。)、普通乗用自動車合計六、七台を所有し、これらを右事業のため使用していたところ、訴外出田は大工として稼働していたが、本件事故までの間に、数回、建築資材や作業現場の土砂の運搬などのため甲車を運転したことがあつたこと、被告佐藤は訴外出田の右運転を現認したこともあつたが、これを禁止したことはなかつたこと、訴外出田は、本件事故当日、午後九時半ころ、知人方を訪れるため、被告佐藤の妻の承諾を得たうえ、同被告方事務所の横に駐車してあつた甲車を運転し、右知人方へ赴く途中、本件事故を起したことが認められ、〔証拠略〕(とくに、前記認定のとおり、訴外出田は本件事故当時も被告佐藤方従業員宿泊施設に居住していた―この事実は被告佐藤も自認している。乙第一〇号証―のであるから、当時も雇われていたものと考えるのが自然であること)に照らし措信できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
(二) 以上の事実によれば、被告佐藤は本件事故当時も訴外出田を雇用していたもので、自己の事業のため使用していたものというべきであり、更に同訴外人は本来、大工として稼働し、かつ私用で自動車を運転中に本件事故を起したものではあるが、同被告の業務のため、度々自動車を運転したことがあり、しかも同業務用の自動車を運転中に同事故を起したものであるから、同訴外人の右運転行為は外形上、同被告の事業の範囲内に属するものと認められる。
(三) 従つて、被告佐藤は、後記のとおり、右事故の発生について、訴外出田に過失の認められる本件においては、民法七一五条一項の責任がある。
2 被告寺本運送
被告寺本運送が被告牛崎を雇用していたことは当事者間に争いがなく、被告牛崎が被告寺本運送の業務の執行として乙車を運転していたことは被告寺本運送において明らかに争わないものと認められる。しかし後記のとおり本件事故の発生について被告牛崎には過失が認められない。従つて、被告寺本運送には民法七一五条一項の責任は認められない。
3 被告牛崎
(一) 〔証拠略〕によれば、本件事故現場はほぼ直線で東西に通じる国道一号線上で、道路の幅員は約一一メートルあり、中央線により上下線が区分されていること、同道路は舗装され、交通も頻繁で、毎時五〇キロメートルの速度制限がなされていたこと、同道路の両脇には商店、民家がたち並んでいたこと、訴外出田は、事故当日夕方ビール二本半位を飲んだのち、無免許でありながら甲車を運転して、本件現場付近を時速約六〇キロメートルで西進中、エンジンが高音であつたので、これを調節しようと、暫時、右手のみでハンドルを握持して、左手でチヨーク・ボタンを作動し、これに気を奪われたため、自車が右斜め前方に進路をとり対向車線上に進出したのに気づかず、折柄対向東進中の乙車を前方約二〇ないし三〇メートルの地点に認め、狼狽して更にハンドルを右へ切つたこと、被告牛崎は、乙車を運転し、時速約五五キロメートルで、右国道の中央線より約一メートル内側(北側)を東進し、本件現場付近に差しかかつたところ、対進する普通乗用自動車とすれ違つた直後、これに後続の甲車が中央線寄りを対向西進してきたのを、前方約一七・八メートルの地点に認めたが、その瞬間、同車が中央線を越え、自車の進路直前に進入してきたため、狼狽し、急制動その他の操作もできなかつたこと、その結果、中央線より約一メートルの地点において、甲車の右前部と乙車の右前部が衝突し、被告牛崎はハンドル操作の自由を奪われて、乙車を対向車線上に進出させ、折柄、同所を対向西進中の訴外佐藤仁徳運転の普通乗用自動車と衝突したのち、更に同国道南側(西進車線側)に面していた本件建物に突入したことが認められる。
(二) 以上の事実によれば、本件衝突事故の発生について、訴外出田には、片手による不安定な状態でハンドルを握持するとともに、脇見をして、前方注視を怠つたまま、しかも制限速度を越えて、漫然進行し、中央線を約一メートルも越えて対向車線に進入した過失が認められるが、他方被告牛崎は、甲車が中央線を越えようとしているのを前方約一七、八メートルの地点で発見したもので、それ以前に甲車の対向車線への進入を予見することも、また右発見後、同車との衝突も回避することも、きわめて困難であつたというべきであつて、同被告には過失と評価しうる程の責は認められない。更に、右衝突後、被告牛崎がハンドル操作の自由を奪われ、対向車線に進入したうえ、本件建物に突入したことも、同衝突の態様、程度からすれば已むを得ないものというべきであり、この点についても同被告には過失は認められない。
(三) 従つて、乙車が本件建物に突入したことに関しては、専ら訴外出田の過失に帰因するものであつて、被告牛崎には過失は認められず、民法七〇九条の責任は認められない。
以上のとおり、本件事故による損害賠償については、被告佐藤にはその責任があり、被告寺本運送、同牛崎にはその責任はない。
四 原告光一の損害
〔証拠略〕によれば、本件事故により本件二階建の全部および本件一階建の一部が損壊し、同原告は次のとおり損害を受けたことが認められる。
(一) 仮設工場の建築(請求原因四の(一)) 五五万一、六三九円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
(二) ブロツク塀の修理(同四の(二)) 四万八、五〇〇円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
(三) 本件平家建修理(同四の(三)) 五万円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
(四) 家財道具(同四の(四)) 四六万七、五〇〇円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
これらは、購入後かなり使用されていたもので、中古品であるが、自動車などについて中古車市場が確立し、各種中古車が容易に入手できる状況にあるのとは異なり、同程度の物品を新たに取得することはできないので、修理が不能であるかぎり(本件家財道具について、修理が不能であることは被告佐藤において明らかに争わない。)、新品を取得するほかはなく、その取得に要する費用は相当因果関係の範囲内にある損害というべきところ、同原告主張の金額は購入時の価額であつて(同原告主張の金額が購入時の価額であることは、同原告と被告佐藤との間で争いがない。)、本件事故後に新品を取得するのに要する費用を越えないことは明らかであるので、同原告主張の金額はすべて本件事故と相当因果関係の範囲内にある損害として認められる。
(五) 衣類等のクリーニング代(同四の(五)) 二万四、九〇〇円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
(六) 機械、什器、備品(同四の(六)) 三四万九、〇〇〇円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
前記(四)と同趣旨の理由による。
(七) 部品、半成品(同四の(七)) 六二万四、六一八円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
これらは、本件事故により屈曲したり、泥をかぶつたり、雨にぬれたりなどしたため、すべて屑鉄として売却したもので、同原告主張の金額は、右物品の原価であると認められる(同認定を覆えすに足りる証拠がない。)ところ、右物品が精密なもので他に転用しがたいものであることを考慮に入れると、右の売却の措置は已むを得ないことというべきであり、右物品について同原告主張の金額はすべて本件事故と相当因果関係の範囲内の損害として認められる。
(八) 預り保管中の部品(同四の(八)) 三七二万六、九三九円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
前記(七)と同趣旨の理由による。
(九) 倒壊家屋(本件二階建)の除去(同四の(九)) 七万七、〇七二円
同原告主張の損害額が認められる。(〔証拠略〕)
(一〇) 休業損(同四の(一〇)) 八万一、六七〇円
同原告方ミシン組立加工業の昭和四七年一月一日から同年一〇月二日までの間(事故前九か月)の純収益は三一五万〇、一四一円で、一か月平均三五万〇、〇一五円である(甲第四号証)ところ、本件事故のため同年一〇月三日から同月九日までの七日間全く操業できなかつたことが認められ(原告光一本人尋問の結果)、その間八万一、六七〇円の収入を失つたことが認められる。
(350,015÷7/30≒81,670)
(一一) 操業短縮損(同四の(一一)) 四二万〇、〇一八円
同原告方では、本件事故のため、昭和四七年一〇月一〇日から昭和四八年三月ころまでの六か月間、従前の八割しか操業できなかつたことが認められ(〔証拠略〕)、その間右操業短縮により四二万〇、〇一八円の収入を失つたことが認められる。
<省略>
(一二) アパート賃借料(同四の(一二)) 四万円
本件二階建が全壊したため、居宅を新築するまでアパートを賃借せざるを得ず、その賃借料は一か月五、〇〇〇円であつたことが認められる(〔証拠略〕)ところ、本件建物と同程度の建物の建築には通常八か月を要するものと考えられるので、八か月分の賃料四万円が本件事故と相当因果関係の範囲内の損害として認められる。
(一三) 損害の控除 五万円
前記(七)記載のとおり、使用不能の部品等は屑鉄として売却されたところ、その価額は五万円であり、同原告がこれを受領したものと認められる(〔証拠略〕)ので、前記損害額から五万円を控除すべきである。
(一四) 損害合計 六四一万一、八五六円
そうすると、同原告の損害合計は六四一万一、八五六円となる。
五 原告まゆみ、同しずかの各損害
〔証拠略〕によれば、原告まゆみ、同しずかは本件事故当時本件二階建の二階にいたところ、同事故により同所から落下し、原告まゆみは五日間の安静加療を要する外傷性シヨツクおよび右大腿部挫傷を、原告しずかは外傷性シヨツクの傷害をそれぞれ受け、次のとおり損害を蒙つたことが認められる。
(一) 原告まゆみ 二万二、〇三〇円
治療関係費として二、〇三〇円を出費したことが認められ、慰藉料は二万円が相当と認められるので、同原告の損害合計は二万二、〇三〇円となる。
(二) 原告しずか 四、三三〇円
治療関係費として三三〇円を出費したことが認められ、慰藉料は四、〇〇〇円が相当と認められるので、同原告の損害合計は四、三三〇円となる。
六 結論
よつて、原告らの本訴請求は、被告佐藤に対し、原告光一につき六四一万一、八五六円、原告まゆみにつき二万二、〇三〇円、原告しずかにつき四、三三〇円および右各金員に対する本訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和四七年一二月二六日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当であるから、これを認容し、その余は失当としてこれを棄却し、被告寺本運送、同牛崎に対する請求はいずれも失当であるからこれを棄却し、訴訟費用については民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言についは同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 熊田士朗)
別表 (一)
<省略>
別表 (二)
<省略>
別表 (三)
<省略>
別表 (四)
<省略>
別表 (五)
<省略>
別表 (六)
<省略>
別表 (七)
<省略>