名古屋地方裁判所 昭和47年(ワ)76号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕二、(事故の原因)
<証拠略>並に右一、の事実を綜合すれば、つぎの事実が認められる。
本件事故は、昭和四五年三月四日午後五時二五分頃名古屋市中区大須一丁目の道路上で発生した。天候は晴であつた。現場附近の状況は幅員6.0メートルの道路が南北に通じ、市街地で、道路の西側には旅館・人家が並び、東側には「ばあちやんの店」という飲食店がある。路面は舗装されており、平坦で、乾燥していた。道路の両側には南向き及び北向きの車輛が数多く駐車していた。
被告は、軽四輪貨物自動車(ダイハツ・ハイゼット、以下A車という。)を運転し、この道路を南から北へ、両側に駐車している自動車の間を縫うようにして進行して来た。本件事故現場に差しかかつた頃のA車の速度は時速五キロメートル程度であつた。被告は仕事の都合で「ばあちやんの店」へ行くところであつた。A車が「ばあちやんの店」の前へ来たとき、被告は右斜め前方約1.5メートルのところに、折柄道路東側に南向きで駐車していた軽四輪貨物自動車(スズキ・キャブトラック、0.5トン積、以下B車という。)の車の陰から四才位の男の子(それが原告健二であつた。)がA車の進路上に駈け出してくるのを発見した。「アッ」と思つた瞬間被告は急ブレーキをかけたが間に合わず、A車の右バックミラーと原告健二の顔面とが衝突し、同原告はその場に右手を下にして路上に倒れ、A車もその場に停止した。被告が原告健二を発見してから停止するまでにA車の進行した距離は約1.5メートルであつた。
原告健二は、当時四才で、その日は両親(原告京三、同圭子)に伴われ兄弟と共に家族で「ばあちやんの店」で飲食を了え、これから店の前に駐車してあつた自動車(前記B車)で帰宅しようとするところであつた。母の原告圭子は未だ店の中におり、父の原告京三も飲食代金の支払をしていて、原告健二がひとり一番先に店を出て行つた。B車は店の前に南向きに駐車してあり、道路の東側一杯に寄せられていて車の左側からは乗車できない状態であつた。そのため、B車の右側から乗車すべく、原告健二が店から駈け出してB車の後ろから前記道路のほぼ中央に達したとき、折柄進行して来たA車の右バックミラーと原告健二の顔面が衝突し、同原告はその場に右手を下にして路上に倒れ、A車もその場に停止した。この衝突の結果原告健二は右脛骨々折の傷害を負うに至つた。
以上の事実が認められる。乙第二号証(永田京三の供述調書)にはA車の速度が時速約一五キロメートル、原告京三本人尋問の結果にはそれが二〇―三〇キロメートルであつたという部分があるけれども、乙第一、二号証におけるA車の停止距離、道路状況(幅員と両側の駐車状況)、被告の運行方法等から考え合わせると、右の部分は遽かに措信し難い。
右認定の事実によれば、本件事故は原告健二の無暴なとび出し及びこれが保護に当るべき原告京三及び同圭子の不注意に原因するものと認めるのが相当である。而して、その間に被告の過失のかどは見出せない。
三、(免責事由)
以上の事実と弁論の全趣旨によれば、被告はA車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者及びその両親に過失があつたこと、A車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことが認められる。
(藤井俊彦)