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名古屋地方裁判所 昭和49年(ヲ)682号 決定 1974年9月02日

申立人 石川和子

右代理人弁護士 早川登

同 桑原太枝子

被申立人 青木鐘七

被申立人 青木産業株式会社

右特別代理人弁護士 小出正夫

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一、申立人は、債権者青木鐘七(被申立人)、債務者青木産業株式会社(被申立人)、物件所有者申立人間の名古屋地方裁判所昭和四九年(ケ)第一一五号不動産競売事件について、同裁判所が昭和四九年八月八日別紙目録記載の不動産についてなした競売開始決定を取消すとの裁判を求めた。

二、当裁判所の判断

(一)  記録によれば、本件不動産競売事件の債務者である被申立人青木産業株式会社は、当庁昭和四六年(フ)第一三二号破産事件において、昭和四六年一一月二六日破産宣告を受け、その破産管財人に弁護士棚橋隆が選任されたが同破産事件は、昭和四八年九月一二日破産終結となったこと及びその後である昭和四九年八月五日前記競売事件の債権者青木鐘七(被申立人)が右競売申立をなすに際し、債務者青木産業株式会社は前記破産終結により消滅し、その代表者を欠いていることを理由に、特別代理人の選任を申請し、当裁判所は右申立を容れて弁護士小出正夫を右特別代理人に選任したうえ、本件不動産競売開始決定をしたものであることをそれぞれ認めることができる。

申立人は、右青木産業株式会社は、破産終結となったが、本件競売事件では債務者となっているから、その範囲内では破産管財人の任務は終了していないので、前記棚橋隆が本件の債務者となるべきであり、仮に同人の破産管財人としての地位がなくなっているとすれば、新たに破産管財人を選ぶべきであるという。しかしながら、破産管財人の職務は、破産の終結により終了するのが通例であって、例外的に追加配当に供すべき財産が存する場合、その管理、換価、配当をなすべき任務がなお存続するもの、換言すれば追加配当の範囲でのみ残務を処理すべき責務があるものと解するのが相当であるところ、本件競売事件における債務者としての立場における職務が、右に説示した破産管財人の残務の範囲に属しないことは多言を要せずして明らかである。それ故、本件につき債務者青木産業株式会社の特別代理人を選任した措置は相当であって、右会社の破産管財人を債務者とすべきであるとの申立人の主張は採るを得ない。

(二)  次に申立人は、本件競売事件の債権者である被申立人青木鐘七が、本件物件の所有者である申立人において昭和四九年六月一〇日三〇万円、同月二九日一〇万円、同年七月三一日一〇万円をそれぞれ支払っているのにこれを支払わないとして、本件競売の申立をしたのは不適法である、と主張する。しかし、仮に債権者が申立てた債権額が過大であったとしても、それだけの理由で競売の申立が不適法となるものではなく、右申立に基づく競売開始決定に対し、不服を申立てることはできないものというべきであるから、申立人の右異議はその内容につき審査するまでもなく、理由がないものといわなければならない。

(三)  以上の理由により、本件異議申立を却下することとし、申立費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 村上悦雄)

<以下省略>

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