大判例

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名古屋地方裁判所 昭和50年(ワ)2308号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

原告の請求原因の骨子は次の通りである。

(一) 訴外宮地産業株式会社(訴外会社)は、昭和四三年頃から鋼製仮設道路用の軽量覆工板の、昭和四六年頃からはミヤマツトの商品名下で同様の路面板の製造・販売・賃貸を主たる業務とし、これに関する実用新案権二件、出願中の意匠権一件の権利者である。

(二) 被告会社代表者である訴外池下兼明(以下、単に池下という。)は、訴外会社名古屋営業所長として勤務中、その地位を利用し、訴外会社の仕入先から訴外会社名義で鋼材を仕入れてこれを転売し、その利益を着服し、更に第三者に前記路面板を製造させ、これを自己名で転売して利益を得、訴外会社に在職中であるにもかかわらず、昭和四九年四月一日には被告会社取締役に就任し、被告会社名義で右同様の方法をもつて訴外会社と同一内容の業務を営むなどの背任行為をしたため訴外会社は同年七月三日池下を懲戒解雇処分に付した。

(三) 右解雇後の同年七月一八日、池下並びに被告会社が訴外会社名義で仕入れた鋼材の清算をするにあたり、池下は、被告会社の代表者をも兼ねて、訴外会社の製品である路面板・軽量覆工板並びにその類似品を製造し、これを販売、賃貸することが訴外会社と競業をすることになるので、右営業を一切行なわない旨訴外会社に対して誓約した。

(四) 昭和四九年一二月一日訴外会社は、鋼材の販売、建設機材の製造・販売・賃貸の営業部門を別会社とすることとして、同月二日原告会社を設立するとともに、右業務に関する一切の権利義務を原告会社に譲渡し、原告会社は、前記誓約による訴外会社の被告会社に対する競業禁止請求権をも承継した。被告会社の前記特約による競業禁止義務に違反する行為の差止を求めた。

【判旨】

被告は、右特約が場所的、時間的範囲において全く制限がなく、また、禁止される営業の範囲も広範に及んで極めて無限定な契約であるから、民法九〇条の規定により無効であると主張する。

しかして、訴外会社と池下及び被告会社との間の合意として成立した右競業禁止特約が場所的、時間的に限定のないものであることは所論のとおりであるが、その禁止の範囲については右特約の「類似性」の解釈におのずから合理的制約の存するところであつて、当裁判所が右の見地に立つて示す見解は後記7に説示するとおりであり、右特約による禁止に従つたからといつて所論のように債務者たる池下及び被告会社がその職業選択、営業の自由を著しく制約され勤労の権利をも奪うという類のものではない。のみならず、前示認定によれば、右のような競業禁止特約が締結されるに至つたのは、池下が訴外会社名古屋営業所長であつたその地位を利用してわざわざ被告会社を設立し、その代表取締役にまでになつて訴外会社の主要製品である仮設道路用路面板ミヤマツトを製造し、これを販売、賃貸するなど訴外会社と同様の業務を行なつた背任行為の解決の一つとして、訴外会社が将来再び池下及び被告会社によつて損害を蒙ることのないよう右池下に前記訴外会社製品の製造等の禁止を要求し、右のような重大な背任行為に及んだ被告会社代表者でもある池下が右要求を容れて右競業の禁止を誓約したからであり、この事情を勘案すれば、何ら非も責もない従業員が退社するに当つて競業禁止を約束するのとはおのずから異り、本件競業禁止特約が場所的、時間的に無限定な内容のものとなつていることから、これを直ちに公序良俗に違反して無効のものということはできない。従つて、右抗弁は採用することができない。

(深田源次)

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